沖縄の仏壇における仏具の置き方。他県と違う3つの習慣

2021.09.21
沖縄の仏壇における仏具の置き方。他県と違う3つの習慣

檀家制度を持たない沖縄のお仏壇にはご本尊がありません。先祖崇拝を信仰三本柱のひとつに掲げる沖縄では、お仏壇の中心は位牌です。今回は、変わりつつある現代沖縄のお仏壇事情も添えながら、仏具やお供え物の配置について、3つの違いを中心にお伝えします。

独自の信仰文化を持つ沖縄では、お仏壇の仏具やウサギムン(お供え物)の配置も違いますよね。

今でこそ本州では宗教に拘らない民間霊園が広く認知されるようになりましたが、その昔には檀家制度にあり、どの家も菩提寺の宗旨宗派に則ってご本尊を祀り供養してきました。歴史的には檀家制度は戸籍の役割を果たしていたとも言います。

けれども檀家制度を持たない沖縄のお仏壇にはご本尊がありません。先祖崇拝を信仰三本柱のひとつに掲げる沖縄では、お仏壇の中心は「尊い位牌」である「トートーメー(先祖代々位牌)」です。

今回は、変わりつつある現代沖縄のお仏壇事情も添えながら、沖縄のお仏壇での仏具やウサギムン(お供え物)の配置について、3つの違いを中心にお伝えします。

家の中心にお仏壇があった

家の中心にお仏壇があった
昔ながらの沖縄の家は、平屋で六つの部屋から成ります。

一番右の玄関から入る部屋が一番座、その隣が家の中心(現代ではリビングに当たる)である二番座、その奥に三番座があり、三番座の奥には土間(台所)、二番座・一番座の奥に寝室などの家がありました。

このような昔ながらの沖縄の家では、リビングに当たる二番座に大きなお仏壇を据えて建てます。つまり新居を建てた時から、祀るべきイフェー(位牌)があろうとなかろうと、大きなお仏壇スペースが設けられていたことになります。

【 沖縄のお仏壇は家に据え置き 】

★ そして今でこそ緩くなった門中やヤー(家)も増えましたが、一度トートーメー(代々ご先祖様の魂が入っているイフェー=位牌)を迎え入れると、そのヤー(家)はムートゥーヤー(本家)となり、このヤー(家)からイフェー(位牌)を出すことができない習わしがありました。

→ 昔の旧家で沖縄そば屋さんを営む某店舗では、このような事情から客間に据え置きの沖縄お仏壇とイフェー(位牌)を祀っている場所もあります。

また昔ながらの沖縄平屋が減った戦後は、お仏壇を据え置かずに建て、沖縄お仏壇を迎え入れる事情が出た時に、押し入れをひとつ潰してお仏壇を入れる家庭が増えました。

 

現代沖縄のお仏壇事情

現代沖縄のお仏壇事情
けれども近年では、都心部を中心にマンションブームが起きたり、モダンで価格帯の低いローコスト住宅が本州から入り、さらにコンパクトで近代的な住まいが増えたことで、沖縄のお仏壇事情も大きく変化しています。

暮らしのスペースを保つため、押し入れなどの収納スペースをまるまる潰すような大きな沖縄仏壇が避けられるようになったことと、近代的なおしゃれな暮らしに、昔ながらの沖縄仏壇がマッチしなくなったことが、その一因ではないでしょうか。

【 沖縄のお仏壇、現代事情 】

★ そこで沖縄でニーズが増えたお仏壇が、モダン仏壇です。立って拝むことができる縦置き型のお仏壇の他、棚上に乗せることができる、よりコンパクトなお仏壇も増えました。

→ 高温多湿でシロアリ被害も多い沖縄では、戦後からアメリカの影響により、コンクリート造りの家も増えましたが、コンクリートのひび割れなどにより(現代のRC構造とは違うため)、この数十年で建て替えを余儀なくされる家も増えています。

※ そこで現代の住みやすい家に建て替える際、沖縄ではお仏壇やヒヌカン場所を設けた設計もあるのですが、より安い建売住宅やローコスト住宅によって、これらの場所を設計段階で設けない家が増えたのも一因です。

一方で前項でお伝えした昔ながらの沖縄「ヤー(家)からトートーメーを出してはいけない」しきたりから、家や土地を売却できずに空き家になったまま、トートーメーだけを残した空き家も増えました。

このような残されて誰にも供養・管理されない位牌は「ヒジュルイフェー(冷たい位牌)」と言いとても忌み嫌われます。ですからこのようなイフェー(位牌)は、空き家増加とともに問題視されるようになりました。

 

お仏壇の中心はイフェー(位牌)

沖縄の仏壇における仏具の置き方。他県と違う3つの習慣
沖縄では「人は逝去して7代後にヤー(家)を守る神となる」とする、先祖崇拝信仰がある一方で檀家制度がありません

一部では天教とも言われますが、沖縄ではどの宗旨宗派とも違う、独自の信仰(先祖崇拝・御嶽信仰・ヒヌカン信仰)が今も色濃く残っています。そのため、沖縄でもお仏壇は用いますが、その配置やしきたりが大きく違います

【 沖縄のお仏壇、中心はイフェー(位牌) 】

★ 先祖崇拝の信仰を持つ沖縄では、本州のように菩提寺の宗旨宗派に沿ってご本尊を中心に祀るのではなく、拝む対象としてイフェー(位牌)を中心に据えるのが習わしです。

→ 先祖代々が祀られている沖縄位牌はトートーメーと呼ばれますが、この意味合いも「尊い君」となり、尊び敬う対象であることを意味しています。

ですからこの沖縄位牌に載せる故人の名前自体も、戒名である必要はありません。なかには家の者が直接名前を書き入れたりもするので、本州では驚く方も多いのではないでしょうか。

ちなみに今では本州でも無宗教の民間霊園が多々ありますが、その昔は寺院墓地が主流でした。一方、菩提寺を持たない沖縄では、個人の土地を墓地にする「個人墓地」が昔ながらのお墓です。

 

現代沖縄のイフェー(位牌)事情


この先祖代々を祀るトートーメー(沖縄位牌)ですが、沖縄ではお仏壇以前に「トートーメー問題」の呼び名が広がるほど、その継承やしきたりに頭を悩ませる家が後を絶ちません。

現代の暮らしに合わせ随分と緩くはなってきましたが、今回も何度もお伝えしている「一度トートーメーを迎え入れたら、そのヤー(家)から出してはいけない」とする門中や家も、今でも見受けることができますし、トートーメーの継承問題になると尚更です。

トートーメーを継承することは、そのままお墓と家を引き継ぐことを意味します。そのため、一度継承してしまうと、なかなか生家から離れることができませんし、お墓行事やお墓の管理を一生しなければなりません。

ひと昔前までは、その分家の財産も全て引き継ぐしきたりがありましたが、最近では財産相続は法律に倣う家が多いので、ただただ、負担ばかりが増えているのが現状です。

そこでトートーメーを寺院や民間霊園に託し永代供養を依頼して、身軽になったうえで、沖縄では改めて唐位牌(カライフェー)を仕立てる家が増えています。

【 沖縄のお仏壇、位牌の永代供養と唐位牌 】

★ 先祖代々が祀られるトートーメーを永代供養し、唐位牌(カライフェー)へと仕立て直すケースでは、下記2通りの流れが大きいです。

(1)近しい親族のみを祀る → 純粋な供養の意味合いとして、唐位牌(カライフェー)に両親やパートナーなど、近しい故人のみの魂を乗せて祀る方法です。

(2)名前を彫らずにそのまま祀る → 先祖代々の魂を象徴しています。供養と言うよりはヤー(家)を守る先祖崇拝(祖先神)として、日々拝む対象として扱われます。

今、トートーメーを永代供養して唐位牌(カライフェー)に変わっていく流れは、前述したモダン仏壇ブームも影響しているのではないでしょうか。

現代沖縄ではよりコンパクトな仏壇が好まれるため、大きな昔ながらの沖縄位牌では入らない、沖縄の仏壇や家のイメージにマッチしない…、などの声もありました。

また、実は宮古をはじめとしたより昔ながらの供養の形を残す沖縄離島諸国では、沖縄位牌ではなく、唐位牌(カライフェー)を祀っているヤー(家)が多いこともひとつの要因です。

 

お供え物やお線香の違い

お供え物やお線香の違い
沖縄のお仏壇に供えるウサギムン(お供え物)は、イフェー(位牌)を中心にして左右対に整えて供える風習があります。

【 沖縄のお仏壇、供え方 】

★ 上段はイフェー(位牌)の左右には供え花、中段はウサク(お酒)を中心に左右にはウチャトゥ(お茶)、下段はウコール(香炉)を中心として左右にロウソクです。

→ ただ、この供え方は沖縄の家で大きなお仏壇を入れることが一般的だった時代のもので、最近ではモダン仏壇など小さくなっていますので、そのカタシー(片方)を供える家も多くなりました。(イラスト参照)

また、沖縄では日本線香ではなく、日本線香6本分がくっついて板状になった「ヒラウコー(沖縄線香)」を拝します。

ただこちらも、本来はカバシウコー(香り高い線香)と言って、日本線香の方が拝したいお線香です。その昔、沖縄の人々にとっては日本線香がとても高く、特別な拝みの時にのみ、カバシウコーを用いる風習が生まれ、それが現代まで定着しました。

【 沖縄のお仏壇、お線香の拝し方 】

★ ヒラウコーを用いた場合、ユタさんなど御願行事ではさまざまなしきたりがありますが、一般的にはヒヌカンにはタヒラ半(2枚半)、お仏壇ではタヒラ(2枚)を拝します。

→ ただし最近では沖縄のお仏壇やウコール(香炉)がコンパクト化したこと、また日本線香が昔より気軽に手に入りやすくなったことから、ヒヌカンには日本線香5本もしくは15本、お仏壇へは4本もしくは12本を拝する家が多い傾向です。

 

いかがでしたでしょうか、今回は沖縄ならではのお仏壇の仏具やウサギムン(お供え物)の供え方についてお伝えしました。

沖縄のお仏壇や供養行事が本州と大きく違うのは、何と言っても檀家制度がないことです。そのため、一年忌や三年忌(一周忌や三周忌)でも、読経供養などはその都度近所の寺院や霊園業者などに相談して即興的に決めます

沖縄の寺院は臨済宗が多いのですが、読経供養のみお願いする程度で、人々は必ずしも臨済宗を信仰している訳ではありません。そのため沖縄ならではの供養を僧侶を入れずに行う家もあります。

そう考えると、沖縄は本州のお仏壇や供養行事よりも、より自由度が高いのかもしれません。

まとめ

昔ながらの沖縄の仏壇、仏具の配置と現代事情

・平屋の時代は二番座に大きな仏壇スペースを設けた
・現代は暮らしにあったモダン仏壇ニーズが増えている
・沖縄のお仏壇では中心に祀るものはイフェー(位牌)
・昔は沖縄位牌だったが、最近では唐位牌が増えつつある
・沖縄位牌を永代供養してしきたりを緩和する事例が増えた
・仏具やお供え物はイフェーを中心に左右対に供える
・最近では仏壇のコンパクト化により片方のみの仏具配置も増えた
・お線香はヒラウコー(沖縄線香)をタヒラ(2枚)拝する
・お仏壇のコンパクト化に合わせ、日本線香が増えた

 


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