【沖縄の終活相談①】「未成年後見人」とは?小学生の子どもがいるひとり親、親権の終活

2023.02.17
【沖縄の終活相談④】「未成年後見人」とは?小学生の子どもがいるひとり親、親権の終活

「未成年後見人」とは、親権者がいなくなった未成年者を保護するため選任される制度で、親と同様に財産管理や契約等を代行します。今回は胃がんの発見がきっかけで終活をはじめた、小学生の子どもがいるひとり親、上田保美さんの相談事例をお伝えします。

「未成年後見人」とは、親権者がいなくなった未成年者を保護することを目的とし、家庭裁判所から選任される制度で、親と同様に財産管理や相続などの契約等を代行します。

40代で胃がんが見つかった上田保美さん(48歳契約社員:仮名)は、ひとり親で子どもが2人、下の子はまだ小学3年生です。

私がいなくなったら、子ども達はどうなるんでしょう?
保美さんは、何よりも誰が子どもたちを育てるのか、が気になっています。

・ひとり親が亡くなったら子どもは?
・未成年後見人とは?
・元気なうちに子どものためにできることは?

今回は40代で胃がんが見つかった上田保美さん(48歳契約社員:仮名)の、子どもの養育に関する相談に役立つ未成年後見人とは何か?体験談とともにお伝えします。

「未成年後見人」とは

「未成年後見人」とは<
●「未成年後見人」とは、未成年への親権者がいなくなった場合に選出される法定代理人制度です

未成年の子どもがいる親権者が病気などで亡くなった場合など、親権者としての役割が担えなくなった時に、子どもを保護する目的で親権者と同じ権限を持つ存在が、未成年後見人です。

<未成年後見人とは:資格のない人>
・未成年
破産した人(復権していれば可)
・行方不明
未成年者へ訴訟をした者、その配偶者、その直系血族
・家庭裁判所により免ぜられた法定代理人、保佐人、補助人

ただ現実的には、祖父母や親族が親権者の代わりを担う事例が多いです。
血縁上は他人である者に、子どもの養子になってもらう時の契約手続きや、子どもに遺産が残されていた場合、相続手続き(遺産分割)などのシーンで選任されることが多いでしょう。

<未成年後見人とは:役割>
●未成年者を保護する目的として、基本的に親権者と同じ権利を有する
・監護養育(同居など)
財産管理
・契約など(相続など)
・法的手続き
・保護

一般的には未成年者である子どもの親族などが未成年後見人に選任されますが、前述したように決まり事がないため、友人知人が選任されることもあります。

また法人が成人後見人に選任される、複数の大人が成人後見人になることも可能です。(2012年4月以降)
いずれにしても最終的に選任するのは家庭裁判所です。

「未成年後見人の選任」とは?

「未成年後見人の選任」とは?
●親権者がその役割を担えなくなった時、未成年後見人が家庭裁判所で選任されるでしょう

両親共に亡くなった場合はもちろん、上田保美さんのように離婚をしてひとり親になった場合でも、日本では基本的に、母親・父親いずれか一方のみが親権者となる「単独親権」を取っています。

<未成年後見人の選任とは?>
●両親共に親権を持つ「共同親権」ではないため、例え元配偶者が存命であっても、自動的に親権が元配偶者に移行することはありません。

・親権者が役割を果たせなくなった時点で、元配偶者が未成年後見人に適した環境・状況であるかは分からないためです。

ただ上田保美さんのケースでは、ご自身はひとりっ子で兄弟姉妹はおらず、ご両親はすでに亡くなっているので、元夫へ未成年後見人の打診が行く判断が多いでしょう。

元配偶者に未成年後見人になって欲しくない!

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●元配偶者に未成年後見人になって欲しくない時には、遺言書で遺志を残します

保美さんは、胃がんが見つかった時、最優先は残された子どもの養育問題だったと言いますが、特に元配偶者の養育に不安があったそうです。

この場合に保美さんができる対策として、法的に効力のある遺言書で指定、もしくは拒否があります。
まず、家庭裁判所はどのような流れで未成年後見人を選任するのかを確認しましょう。

<未成年後見人とは:選任方法>
●未成年後見人の選任は、主に下記3つです
遺言書による指定
未成年者本人が家庭裁判所へ請求
親族や利害関係人が家庭裁判所へ請求

親権者が亡くなった時に遺言書がなくても、すぐに元配偶者へ未成年後見人が選任される訳ではありません。

ただ、遺言書によりはっきりと拒否を明言していない限りは、元配偶者が家庭裁判所へ請求することで、未成年後見人になることは可能です。
…では家庭裁判所では、どのような基準で未成年後見人を選任しているのでしょうか。

<未成年後見人とは:選考の基準>
●未成年者(子ども)
・意見や希望
・財産の状況
・生活状況
・精神状態

●未成年後見人の申請者
・職業や職務経歴
・未成年者本人との利害関係
・その他の事情

以上が家庭裁判所にて考慮され、検討されます。
ただ保美さんは「元配偶者が未成年後見人になるのは避けたいけれど、他に未成年後見人を託す人は思い浮かばない」と言う点が不安です。

●未成年後見人の指定ができずとも、遺言書で拒否できる権利があります

つまり、別の未成年後見人を指定できない保美さんの場合、遺言書で特定の人物(この場合は元夫)が未成年後見人に選任されることへの拒否が有効です。

未成年後見人の指定を最優先したい理由

未成年後見人の指定を最優先したい理由
●未成年後見人は選任されると解任や辞任が難しいため、遺言書での指定は慎重に進めます

未成年後見人は一度選任されると、相応の理由がなければ解任も辞任もが難しい制度です。そのため元気なうちに信頼のできる人へ、未成年後見人を打診してみると良いでしょう。

また未成年後見人は審判の申し立てにより、報酬がもらえる可能性があります。
心から愛する我が子を育ててくれる、親の代理を請け負ってくれる人に、未成年後見人を託さなければなりません。

未成年後見人は報酬がもらえる?

●未成年後見人が申請した場合、未成年者の財産から報酬が支払われます

決して未成年者(子ども)本人をスルーして財産から報酬が支払われる訳ではありません。
けれども子どもですから、未成年者後見人や財産に理解が少ない事例が多いですよね。

<未成年後見人とは:報酬の申し立て>
・「報酬付与の審判を申し立て」により請求
・未成年者(子ども)を無視して支払われることはない

保美さんは元夫の金銭面にも不安があったため、「子どもに愛情がないのに、金銭を目的として未成年後見人に申請したらどうしよう」と不安があり、相談に至っています。

未成年後見人はすぐに変えられない

●未成年後見人は選任されると、家庭裁判所が納得できる相応の理由がなければ、辞任や解任ができません

例えば、未成年者(子ども)が未成年後見人と相性が悪かったとします。
未成年者(子ども)が家庭裁判所に「未成年後見人が信頼できない」「未成年後見人が嫌い」と申し立てをしても、まず解任はされないでしょう。

<未成年後見人とは:解任/解約>
●解任の事例
・未成年者の財産を不正に着服
・未成年者への養育を怠った(ネグレクト)

●辞任の事例
・高齢で未成年後見業務が困難
・病気になった

…そのため未成年後見人を遺言書で指定するならば、子どもとの相性を入念に検討して、信頼できる人を指定しなければなりません。

ましてや申請が通れば報酬も発生する役割ですから、何らかの事情で元配偶者に未成年後見人を任せることができないならば、遺言書ではっきりと拒否の遺志を示すべきです。

「善管注意義務」とは

●「善管注意義務」とは、善良に管理人として注意を払う義務です

善行で「未成年者の財産を不正に着服」したことで、未成年後見人を解任された事例をお伝えしました。

このように未成年者後見人は、民法869条/644条によって、善良な意識で慎重に未成年者の財産を管理しなければなりません。

<善管注意義務が課される役割>
・未成年者後見人
・保佐人
・補助人

そのためある意味では、親権者以上の管理責任を担うことになり、この善管注意義務を怠り未成年者(子ども)の財産に何らかの損失が発生した事例では、賠償責任を負ったケースもあります。

適切な未成年後見人がいないと、どうなるの?

適切な未成年後見人がいないと、どうなるの?
●最終的には児童養護施設の施設長・弁護士の複数による、未成年後見人の選任が多いです

保美さんのように未成年後見人として適切な人が周囲におらず、最終的な親権者である保美さんの遺言書により、はっきりと父親(元配偶者)への選任が拒否されていた場合、一般的には子どもが入る児童養護施設の施設長が、弁護士とともに未成年後見人に選任されます。

<未成年後見人とは:適切な人物がいない場合>
①保美さんの場合
・身内や適切な人がいない
・父親は遺言で拒否
・父親が不適格

②児童養護施設へ行く場合
施設長生活や養育に関する後見
弁護士財産管理や契約に関する後見

保美さんが最も不安に感じていた点は、「子ども達に残した財産が失われるのではないか?」と言うことでした。

けれども上記のように、弁護士が財産管理を担う事例が多いため、子ども達に残した財産がむやみに失われる可能性は、ほぼないでしょう。

元気なうちに親ができること

●児童養護施設への入所が予想される状況ならば、自分で選ぶこともできます

保美さんのように残された子どもを託せる大人や身内が周囲におらず、元配偶者(元夫)も養育にあたり不安がある場合、児童養護施設に入る可能性が高いです。
そこで保美さんが終活としてできることは、自分で児童養護施設を選ぶことでしょう。

<未成年後見人とは:児童養護施設選び>
●体が動くうちに進めます
現場を見学して確かめる
複数の児童養護施設を見て、見る目を養う
子どもが理解していれば、同行させる

そして安心できる児童養護施設であるか、施設長の人柄に信頼が持てるようであれば、元気なうちに「子どもをよろしくお願いします」とご挨拶をすると、より安心できます。

最後に

以上がひとり親で子どもを育ててきて、胃がんが発見された上田保美さん(48歳会社員:仮名)の相談に対する回答です。

保美さんは元配偶者(元夫)である未成年者(子ども)の父親に対して、養育への不信感を抱いていましたが、なかには両親(子どもの祖父母)など、自分の身内に対して不信感を抱いている相談もあります。
この場合にも、保美さんと同じように遺言書で拒否の遺志を示すと良いでしょう。

ちなみに上田保美さんは胃がんと診断されましたが、その後の手術と長い闘病の末、無事に寛解しています。

※この他、ひとり親の終活体験談は、下記をご参照ください
【沖縄の終活体験談①】ひとり親で癌発見。費用や預け先は?亡き後の子どもはどうする?

 

まとめ

未成年後見人とは?
ひとり親でがんが見つかった終活

●未成年後見人とは
・未成年者を保護する目的
・基本的に親権者と同じ権利を有する

●未成年後見人の資格がない人
・未成年
・破産した人(復権していれば可)
・行方不明
・未成年者へ訴訟をした者、その配偶者、その直系血族
・法定代理人、保佐人、補助人

●未成年後見人の役割
・監護養育(同居など)
・財産管理
・契約など(相続など)
・法的手続き
・保護

●未成年後見人の選任方法
・遺言書による指定
・未成年者本人が家庭裁判所へ請求
・親族や利害関係人が家庭裁判所へ請求

●未成年後見人の選考基準
①未成年者(子ども)
・意見や希望
・財産の状況
・生活状況
・精神状態

②未成年後見人の申請者
・職業や職務経歴
・未成年者本人との利害関係
・その他の事情

●未成年後見人の制度
・未成年後見人は申請すれば、報酬がもらえる
・選任されると選任・解任が難しい
・善管注意義務がある

●未成年後見人がいない場合
・施設長が生活面の管理を担う
・弁護士が財産面の管理を担う
・生前に自分で施設を探すと安心


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