【沖縄の葬儀】自宅で臨終を迎えた時。アミチュージの儀礼

2021.10.26
温かなお顔で見送る

沖縄でも家族水入らずの葬儀が増えましたよね。自宅で亡くなる人々も増え、家族が故人の生前の悩み苦しみを清める沖縄の葬儀儀礼をささやかながら丁寧に行い、手厚く見送りたい「心の葬儀」が増えたためです。そこで今回は、昔ながらの沖縄の葬儀儀礼を順を、ご臨終から葬儀打ち合わせを行う前までを、流れとともに追っていきます。

沖縄の葬儀は大勢の弔問客が集まることで知られていますよね。けれども新型コロナ到来により、その規模も縮小されるようになりました。

家族葬など家族水入らずの葬儀が増えるなか、大勢の弔問客が集まる代わりに、昔ながらの沖縄の葬儀の風習を丁寧に進め、個人の霊魂を供養したいとする声が増えています。

在宅介護も増え自宅で亡くなる人々も増えるなか、沖縄では葬儀も自宅で、家族が故人の生前の悩み苦しみを清める沖縄の葬儀儀礼をささやかながら自分達で行い、手厚く見送りたい「心の葬儀」が増えたためです。

そこで今回は、昔ながらの沖縄の葬儀儀礼を順を追ってお伝えしていきます。今回はご臨終の瞬間から、沖縄で葬儀打ち合わせを行う前までを、流れとともに追っていきますので、ご参考にしてください。

ご臨終の瞬間から、儀礼の流れ

ご臨終の瞬間から、儀礼の流れ
全国的に高齢者が増え、病床問題も背景のひとつとして、病院ではなく自宅で最期を迎える人々が増えました。

病院ではその流れのまま看護師さんなどが「清拭(せいしき)※」をしてくれる施設が多いですが、自宅で最期を迎えた時、沖縄では葬儀まで自分達で進めたいとする家族が増えています。

(※)清拭(せいしき)とは、ご臨終を迎えた後に全身を拭いて清め、必要な箇所に脱脂綿を詰める作業です。(近年ではアルコールで拭き清めるのではなく、バスルームで洗う施設もあります。)

【 沖縄の葬儀儀礼。ご臨終の直後に行うアミチュージ 】

● アミチュージは全国的には「湯灌(ゆかん)」と言い、この世の穢れを清める意味合いがあります。アミチュージの大きな流れは下記の通りです。

(1) サカミジ(逆水)を準備する → サカミジ(逆水)はぬるま湯ですが、昔の沖縄ではウブガー(産井戸※)で水を汲み、そこにお湯を合わせてぬるま湯にしていました。

(2) 脱脂綿を詰めて瞼を閉じる → 口や耳、鼻の他、お尻まで脱脂綿を詰めた後、口をそっと閉じ、上から静かに閉じるように瞼を閉じます

※ 口はあごをそっと上げるようにすると、自然です。

現代では基本的にこれらのアミチュージの儀礼は看護婦さんが行ってくれます。病院はもちろんのこと、今家で最期を迎える方々もかかりつけ医がいて、死期が近くなると家族がお医者様に電話をすることがほとんどです。

そのため訪問看護師が中心に進めますが、アミチュージの儀礼(サカミジで清めること)は、故人の生前の悩み苦しみを浄化する意味合いがあると言われるため、家族で行いたいとする家も見受けるようになりました。

(※)ウブガー(産井戸)は産まれた地域の井戸を差し、その昔の沖縄では産まれた時に産湯に使った井戸(ウブガー)の水を、アミチュージの儀礼でも使うとされてきましたが、今ではそれも難しい家が多いため、あまりこだわらない傾向です。

沖縄の葬儀儀礼、グソースガイ

沖縄の葬儀儀礼、グソースガイ
グソースガイは、「グソー」が「後生」であの世、「スガイ」は「すがえる=着替える」の意味合いを持つ沖縄の言葉で、故人の着替えの儀礼です。

沖縄の葬儀儀礼、グソースガイはまだ体が動く早い段階から着せてあげなくてはなりません。目安は二時間ほどですので、あまり考えたくないことですが、生前の服を着せてあげたい場合には、着替えを準備しておくと慌てずに済みます。

【 沖縄の葬儀儀礼。グソースガイ 】

● 昔ながらの沖縄の葬儀儀礼では「グソージン(後生衣)」と呼ばれる、いわゆる死に装束を着ていました。けれども最近では、終活が活発になったこともあり、故人が生前によく着ていた服などを着せる家も増えています。

5枚、7枚などの「奇数」の枚数を重ねて着る。
・襟元には左右それぞれ7本、合計14本の針を刺す。
・差した針の穴には、5cmほどの糸を通しておく。

この針と糸はグソー(後生=あの世)でお水などに変わると言われてきました。グソージンの着せ方は全国的なものと同じく、生前とは反対のヒジャイウーシ(左が前になるように着せる)です。

グソースガイまで時間が掛かり、着せることが難しい場合には上からそっと掛けてください。

最期を看取れない人とは

最期を看取れない人とは
霊魂を信じる沖縄では、お墓参りができる日にちも決まっているように、イチミ(生きる身)はそのマブイ(魂)がしっかりと「存在」していないと、「グソー(後生=あの世)へ引っ張られる」としています。

そのため昔ながらの沖縄では、家族であっても最期を看取れない人々がいました。

【 沖縄の葬儀儀礼。最期を看取れない人とは 】

・故人と干支を同じくする人 … 一部の地域では、運が近しいタイミングで廻るとして、同じ干支の家族は臨終や納骨は避けるべきとされてきました。

・妊婦 … 「片足を棺桶に入れている」と言われるように、彼岸と此岸(あの世とこの世)の中間にいる胎児を宿している妊婦(胎児)は、とても不安定な状態です。

昔ながらの沖縄では葬儀儀礼のなかでも、ご臨終及び納骨はマブイ(魂)を引っ張られぬよう、できるだけ避け、お仏壇を通してお供養を捧げる方法が取られてきました。

ですから納骨時にも、地域や門中によってさまざまですが、例えば現代まで昔ながらの風習が色濃く残る沖縄南部糸満地域では、故人の干支の180度反対の干支に当たる人が、お墓を開ける役割でした。

温かなお顔で見送る

温かなお顔で見送る
最近の沖縄では葬儀スケジュール調整などの関係で、お通夜や葬儀を延ばす場合も多いですよね。

このような時には、沖縄でも葬儀社でエバーミング(※)を行うサービスを見受けますが、昔ながらの風習のまま、ご臨終の夜にお通夜→翌日に沖縄で葬儀を執り行い、その日に納骨を済ませる流れであれば、お化粧をして福々しいお顔にしてあげれば大丈夫です。

(※)エバーミングでは故人の体を生前のように美しく整える他、衛生保全液によって滅菌処理をして、長い時間でも衛生的に保つ処理も加わります。

【 沖縄の葬儀儀礼。温かなお顔で見送る 】

● 生前のような美しい見た目に整えるために行う作業です。例えば…、

・頬がこけていたらふくみ綿などを入れてふっくらとさせる。
・頬紅を差して血色を良くする。
髪の毛を整える。
などを衛生的に整える。
薄化粧をして紅を差し、血色を良くする。

…などなどです。

スタッフが行ってくれることが多いのですが、小規模な家族葬の増加により家族にも余裕が産まれ、故人を弔う方法のひとつとして、自分達で行いたいとする家族が増えています。

 

いかがでしたでしょうか、今回は昔ながらの沖縄で行われた葬儀儀礼について、特にご臨終からお化粧までの流れをお伝えしました。

これらの課程は、本文中にあるような全く昔ながらの沖縄の葬儀儀礼ではないものの、全国的な風習に倣った流れとしては、基本的には病院で亡くなると病院で契約をしている葬儀社スタッフが率先して行ってくれます。

故人のお化粧まで整えると、病院でご臨終を迎えた時には霊安室へと移動し、ここで一時的に安置をする流れです。

もしも沖縄の葬儀社が決まっていなければ、霊安室に安置しているタイミングで決めなければなりません。状況によっては数時間しか安置できない施設もあるので、あまり考えたくはない事柄ですが、事前にある程度の検討を付けて契約を進める家族が多い傾向です。

沖縄では葬儀を自宅で行う家庭も多く、霊安室に一度安置した後、自宅へと移送します。沖縄の葬儀会場に直接移送することも多いです。

まとめ

沖縄でご臨終を迎えた後の儀礼とは
・アミチュージ(湯灌)で体を清める
・ウブガーの水にお湯を合わせる(サカミジ)
・服を着替えるグソースガイ
・服の襟元に左右7本ずつの針を刺す
・最近では生前に来ていた服を着せる家も多い
・同じ干支の人と妊婦は最期は看取れないとされた
・お化粧をして温かなお顔で見送る
・葬儀まで日数があるならエバーミングを依頼する


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