手元供養によってグリーフを乗り越えた自死家族の体験談。納骨堂から家へ迎えて…

2022.03.20
手元供養によってグリーフを乗り越えた自死家族の体験談。納骨堂から家へ迎えて…

手元供養によってグリーフの闇から抜け出した体験談は多いです。特に周囲と分かち合いが難しいケースでは、グリーフの闇が深くなるばかりで、抜け出せない方々も少なくありません。今回は非常に重いテーマになりますが、自死家族が手元供養によってグリーフを乗り越えた体験談です。

手元供養によってグリーフの闇から抜け出した体験談は多いです。「グリーフ」とは大切な人を失った喪失体験によるショックや哀しみを差し、多くの人々が人生のなかでグリーフの闇の時間を乗り越えてきました。

手元供養によってグリーフの闇を抜け出した体験談が多いのは、より身近に故人を感じ、故人と対話をすることによって、自分なりに見つけた真実に、納得できるからかもしれません。

今回は非常に重いテーマになりますが、自死家族が手元供養によってグリーフを乗り越えた体験談です。ご紹介に悩むこともありましたが、必要な人々の元へ、手元供養と言うグリーフケアのひとつの方法が届きますよう、お伝えしていきます。

突然の連絡から、葬儀社探し


典子さん(仮名)が娘さんを亡くしたのは、12月24日のクリスマスイブでした。娘さんの亜紀(仮名)さんは末っ子の女の子、5歳と10歳違いのお姉さんが二人、そして旦那様の康夫さん(仮名)の五人家族です。

43歳と高齢で亜紀さんを出産したため、体力的にもギリギリで、必死に育ててきたと言います。姉妹との年齢差も大きかったことで、家族全員が蝶よ花よと愛情深く育ててきました。「この育て方も悪かったのか…」後々は罪悪感として襲ってきたそうです。

けれども別れは突然訪れました。大学を卒業して東京へ出て就職し、念願のひとり暮らしを謳歌していたはずの娘は、12月25日の深夜に救急車で運ばれたまま、3時間を待たずに息を引き取ったと言います。

(今回は手元供養によりグリーフを乗り越えた体験談ですので、詳しい部分は伏せさせていただきました。)

【 手元供養でグリーフを乗り越える。葬儀社探し 】

● 典子さんと康夫さんが夫婦で駆け付けましたが、その時には警察による検死が行われており、嘘のような時間のなか、亜紀さんの部屋を片付けていたそうです。そして、最初の壁は葬儀社探しだったと典子さんは言います。

→ 康夫さんは淡々と事務的にお通夜や葬儀の手続きを済ませようと、葬儀社探しをしていたそうです。

※ まず以前、祖母の葬儀で利用していた葬儀社A社に問い合わせましたが、亜紀さんのようなケースは取り扱った経験が少ないようで、電話中にも違和感が多く、その葬儀社は取りやめました。

その後も数社の葬儀社に問い合わせをしましたが、どこか引っ掛かるものがあったとして取りやめ、結局、警察の方からご紹介いただいた葬儀社B社に問い合わせています。

葬儀社B社では、亜紀さんのような自死のケースも丁寧に対応してくださり、そちらに決めました。

典子さんがこだわっていたのは、亜紀さんを美しくして見送ること…。この葬儀社B社では、エンバーミング(ご遺体を美しく整える技術)も丁寧に行ってくれたことで、ひとつ目の「引っ掛かり」は解消されたそうです。

【 手元供養でグリーフを乗り越える。家族で決めること 】

● 間もなく結婚をして独立していたお姉さん二人が、亜紀さんの家に到着しました。「今にもコンビニから帰ってきそうな部屋」で、典子さん達家族が決断しなければならない事柄は…、「亜紀さんの死因を周囲に伝えるかどうか」です。

…ただ、ご家族にとって亜紀さんの訃報はあまりに突然であまりにショックで…、参列者へ死因を伝えるかどうかまで、決めることができません。そこで、典子さんと康夫さん、そして二人のお姉さんの4人のみで、密葬を決めたと言います。

納骨できず、自宅にも安置できず…

納骨できず、自宅にも安置できず…
葬儀社の先導で、東京でそのままお通夜と告別式を経て、12月27日に亜紀さんは火葬されました。遺骨を抱えて自宅へ戻り、四十九日法要後には家の裏山にある寺院墓地の先祖代々墓に納骨される予定だったと言います。

けれども、お仏壇の横に置かれているピンク色の亜紀さんのご遺骨を見る度に、さまざまな想いが駆け巡り、典子さんはどんどん「闇」に落ちて行ったそうです。

【 手元供養でグリーフを乗り越える。日々変わる感情 】

● 生前の亜紀さんがお姉さんが独立した後にケンカをした際、「家にお姫様は一人でいい!私は家を出て行く!」と言った場面を思い出し、「私が先にいなくなっていれば…」とネガティブに考えて、自分も後追いを考えてしまったり…。

→ 翌日には「誰が亜紀をここまで追い込んだの!付き合っていた彼氏を告訴してやる!」と怒りに震えたり…。毎日コロコロと変わる自分の感情を、自分でもコントロールできない状況だったそうです。

この時は、これがグリーフの症状であることは気付かず、心療内科などは思い付きもせず、ただただ「しっかりしなければ」と思っていたと言います。

【 手元供養でグリーフを乗り越える。早く遺骨を移動したい 】

● 自分でもコントロールできない感情に、典子さんは亜紀さんの遺骨を毎日見ることが辛くなりました。そこで、四十九日を待たずに納骨したいと、家族に相談します。

→ 慌てて家族が菩提寺に相談をして、三日後には納骨を決めたのですが、いざ納骨が決まると、今度は大切な亜紀さんの遺骨をお墓に埋葬することがとても辛くなり、動けなくなったそうです。

「どうにもならない!」菩提寺のご住職に夫婦で相談したところ、勧められた方法が、納骨堂への収蔵でした。

家の裏山にある菩提寺の納骨堂ですから、比較的すぐに亜紀さんへ会いに行けます。一方、日常生活で亜紀さんの遺骨が目に入る訳ではありませんから、典子さんも少しでもグリーフから距離を置く「訓練」ができると考え、納骨堂への収蔵を選びました。

納骨堂から手元供養へ

【沖縄の仏壇】六種供養で最小限・心重視の供養を。最小限の仏具とは
納骨堂へ収蔵してから三年、典子さんはグリーフについて理解を深めるなか、亜紀さんへの罪悪感や後悔、喪失感などの複雑な感情が湧き出る度に、「これはグリーフなのだ」と理解し、少しだけですが、距離を取って向き合えるようになっていました。

そしてこの三年は丁度、納骨堂の個別スペースに安置する契約期間が切れ、更新するかどうかを判断するタイミングです。

【 手元供養でグリーフを乗り越える。納骨堂の更新 】

● その納骨堂は永代供養が付いていて、契約をしてから三年間は個別スペースに収蔵されます。三年が過ぎて契約更新などがない場合、他の遺骨とともに合葬墓に埋葬され、合祀供養されるシステムでした。

これまでも毎月月命日には納骨堂へ会いに行っていましたが、「今でも亜紀さんが恋しくて仕方がない…」そう考えた典子さんは、亜紀さんの遺骨を自宅に迎えることにしました。

【 手元供養でグリーフを乗り越える。自宅へ迎え入れ 】

● 亜紀さんの遺骨は分骨され、一部は寺院墓地内にある先祖代々墓に埋葬されました。(合葬墓の選択肢もありましたが、先祖代々墓を選んでいます。)

→ そして亜紀さんの残りの遺骨は、自宅へ迎え入れて手元供養を行うことで、典子さんはグリーフを少しずつ、一日一日と薄皮をはぐように乗り越えることができました。

※ 亜紀さんの遺骨を迎え入れる準備として、可愛らしいピンクの骨壺を購入し、亜紀さんの遺骨は粉骨して骨壺に入れて祀っています。

仏教の教えからすると、本来は手元供養は「中陰」として良しとはしないものの、菩提寺のご住職さんは、分骨して一部をお墓に埋葬したことと、これまでの典子さんご家族の苦しみを理解して、受け入れてくださったそうです。

いかがでしたでしょうか、今回は大切な娘を自死により失った典子さんが、手元供養を経てグリーフを乗り越えた体験談をお伝えしました。

今回、手元供養でグリーフを乗り越えた体験談を集めるなかで感じた事は、「人にはなかなか言えない」ショックや闇の中のような喪失感だからこそ、手元供養はグリーフを乗り越える一助になるのかもしれない…、と言うことです。

生きている人には気軽に言えない…。結局最初の段階で、典子さんご家族は、周囲に亜紀さんの死因を隠して過ごすことを決めました。これは亜紀さんの名誉のためです。

だからこそ、怒りに震えても典子さんは「誰か」を訴えることはできませんでしたし、人に当たることも、生きている周囲の人々と本当の哀しみを分かち合うことも、難しい状況になりました。

けれども典子さんは、亜紀さんご自身と向き合い話し合うことが、手元供養によってできて、グリーフから抜け出す道を見出しています。

 

まとめ

手元供養でグリーフを乗り越えた体験談

・娘の突然の訃報
・葬儀社選びの難航
・娘の死因を周囲に隠す
・本当の哀しみを誰にも言えない
・孤独のなかグリーフの闇に襲われる
・罪悪感で娘の遺骨を家に置けない
・お墓に埋葬することもできない
・ご住職より納骨堂の提案
・納骨堂で三年、期限が来る
・手元供養の選択
・娘と向き合いグリーフを癒す日々


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