・自宅に置くお墓「自宅墓」とは?
・自宅墓は違法?
・自宅墓の費用目安は?
近年、墓じまいをしたり、お墓がない家で注目されている、自宅内にお墓を設けた「自宅墓」とは、複数の遺骨を自宅で安置・供養する手元供養のひとつです。
遺骨はメンテナンスの後、粉骨して真空パックにした後、本のような箱に納められて保管・管理されます。
本記事を読むことで、お墓を建てる必要のない自宅墓について、費用目安や進め方、メリット・デメリットを解説します。
「自宅墓」とは?
◇「自宅墓」とは、複数の遺骨を収蔵した仏壇です
自宅墓は遺骨を自宅で安置・供養する手元供養のひとつの形で、家族や先祖代々のご遺骨まで、複数の遺骨を仏壇に収蔵します。
仏壇下のスペースに本棚のように遺骨が収蔵できるため、収蔵できる遺骨はお墓と同じ、約6柱~8柱ほどの柱数になるでしょう。
「手元供養」とは?
◇自宅で遺骨を祀る、遺骨の供養方法です
自宅墓の大きなカテゴリーとなる「手元供養」とは、遺骨を自宅で祀る供養方法となり、多くは自宅に遺骨を祀る祭壇を設けて、位牌と同じように供養します。
遺骨は骨壺のまま祀ることもできますが、手元供養としてキチンと準備する家では、遺骨を粉骨してコンパクトにした後、おしゃれで小さな骨壺などに収蔵することが多いでしょう。
手元供養と自宅墓の違いとは?
◇手元供養は個人を祀り、自宅墓は複数の家族を祀ります
自宅墓も手元供養の一種なので大きな違いはありませんが、手元供養では夫や妻など個人の遺骨を祀る傾向にあり、一方で自宅墓は祖父母、両親など、複数の家族の遺骨を収蔵する傾向です。
また先祖代々、複数の遺骨を収蔵する自宅墓では、遺骨を仏壇や祭壇に祀ることはほとんどありません。
<手元供養と自宅墓の違いとは> | |
①手元供養 | ・個人を祀る(夫や妻など) ・骨壺を祭壇に祀る ・祭壇は小さいものが多い |
②自宅墓 | ・先祖代々を祀る(祖父母など) ・骨壺は仏壇下に収蔵される ・祭壇は仏壇型が多い |
自宅墓では、仏壇下に遺骨を収蔵するため、縦置き型仏壇を購入する家が多いです。
一方でコンパクトにした遺骨を1柱のみ祀る手元供養では、小さな祭壇を多く見受けます。
また手元供養の場合は、より繋がりの深い故人を祀ることが多いため、アクセサリーに遺骨を入れて持ち歩く人も多いです。
自宅墓は違法にならない?
◇遺骨を埋葬しない限り、違法ではありません
人の遺骨の葬送に関する法律は「墓地埋葬法(墓埋法)」に記載されていますが、遺骨の埋葬や収蔵に関しては、第2章第4条で以下のように明記されています。
「埋葬又は焼骨の収蔵は、墓地以外の区域にこれを行なってはならない」
「焼骨を自宅で保管する事は、本条に違反するものではない」
このように墓埋法では、焼骨した遺骨を自宅の庭など、墓地以外の場所で埋葬することはできないものの、自宅で保管することは違反しないとし、違法にはなりません。
ただし自宅墓として自宅で収蔵していた遺骨は、自宅の庭など、墓地以外の場所に埋葬できない法律があります。
また霊園や寺院墓地に将来的に遺骨を埋葬したい時には、火葬場で発行された「埋葬許可証」が必要です。
埋葬許可証は、遺骨とともに保管すると失くしにくいでしょう。
・墓じまいを進める9つの流れとは?ステップごとの費用目安やかかる日数、墓石や遺骨は?
・厚生省令第24号:墓地、埋葬等に関する法律施行規則(昭和23年7月13日)
自宅墓を仕立てる理由は?
◇自宅墓を室内に仕立てることえで、日々遺骨の供養ができます
自宅墓を仕立てる人に多い理由は、お墓参りに頻繁にいけない、より丁寧な供養がしたいなどの理由だけではなく、「遺骨の供養やお墓を建てる費用を抑えるため」と言ったものも少なくありません。
<自宅墓を建てる理由> | |
[費用面] | ・お墓を建てる費用を抑える ・墓じまいで取り出した遺骨の供養 (遺骨の永代供養料を節約する) |
[心理面] | ・お墓参りに頻繁に行けない ・日々、供養がしたい ・故人を身近に感じたい |
[お墓問題] | ・将来的な継承者のあてがない ・幼い子どもがいずれ継承するかもしれない |
妻や夫など身近な故人の遺骨を祀る手元供養では、「故人を身近に感じたい」などの心理面による選択理由が目立ちます。
一方で先祖代々の遺骨を祀る自宅墓では、将来的にお墓を建てる可能性や費用面など、現実的な側面が目立つ傾向です。
自宅墓の全骨型・分骨型とは
◇自宅墓で収蔵される遺骨は、全骨型と分骨型に分かれます
現代では遺骨を粉骨してコンパクト化するため全骨型の自宅墓が多いですが、なかには複数の場所で遺骨供養をするために、遺骨を分骨して収蔵する分骨型の自宅墓供養も選択可能です。
<自宅墓の全骨・分骨型とは> | |
①全骨型 | ・遺骨を全骨、収蔵する ・遺骨は粉骨される |
②分骨型 | ・遺骨は分骨して収蔵される ・複数の場所で遺骨供養する ・粉骨される場合が多い ・喉仏のみ保管することもある |
…などです。
例えば一部の遺骨を分骨して自宅墓とし、残りは郷里のお墓に埋葬する、散骨する、などのケースがあります。
分骨型の自宅墓を仕立てる場合、分骨は火葬場で済ませると良いでしょう。
その後の分骨では行政手続きが必要になるためです。
自宅墓の費用目安は?
◇自宅墓は約20万円~100万円ほどが目安です
自宅墓は複数の遺骨のメンテナンスや粉骨が必要になる他、仏壇にもさまざまなグレードがあるので、費用幅は広くなるでしょう。
ただ反対に考えると、予算に合わせて自宅墓を準備できるとも言えます。
<自宅墓の費用目安> ●約20万円~100万円 |
|
①遺骨のメンテナンス | ・洗骨、乾燥…約1万円~3万円/1柱 ・粉骨…約3万円~4万円/1柱 ・真空パック…無料(サービス内) |
②骨壺(桐箱型など) | ・約3千円~2万円/1柱 |
③仏壇 |
・約20万円~100万円以上 |
粉骨した遺骨を収蔵するブック型の桐箱なども、飾りやグレードにより費用幅は広いでしょう。
縦型仏壇を揃えるとして、2~3柱の遺骨を収蔵する場合、約20万円~100万円ほどが一般的な費用目安です。
お墓や納骨堂と比べると?
◇お墓を建てる費用目安は、約125万円~300万円以上です
個人墓地に建つ沖縄の大きなお墓に比べると、霊園で建てるお墓は区画も狭くコンパクトになるため、建墓費用も安く抑えることはできますが、それでも100万円以上は掛かるでしょう。
一方で納骨堂の全国的な費用目安は平均で約44.2万円とされますが、納骨堂では個別スペースが提供されるため、多くは1柱、もしくは夫婦2柱ごとの料金システムです。
<他の供養方法との費用比較> | |
①一般墓 | ・約125万円~300万円以上 ・年間使用料:約1万円~3万円ほど/年間 |
②納骨堂 | ・約50万円ほど/1柱 ・年間使用料:約1万円~3万円ほど/年間 |
③合祀墓(永代供養墓) |
・約5万円~20万円ほど/1柱 |
④樹木葬 |
・合祀型…約5万円~20万円ほど/1柱 ・個別型樹木葬…約20万円~80万円ほど/1柱 ・家族型樹木葬…約80万円~180万円ほど/3柱 |
⑤散骨 | ・海洋散骨…約3万円~25万円ほど/1柱 ・空葬…約20万円ほど/1柱 ・山林散骨…約5万円~10万円ほど/1柱 |
などなどがありますが、お墓がいらない遺骨の供養に多い「永代供養」は、どれも1柱ごとの料金システムが多いことに注意をしてください。
墓じまいで取り出した遺骨を自宅墓とする場合、自宅墓を日々お世話できる家族がいるうちは自宅墓で供養し、後から永代供養にする方法もあります。
「永代供養」とは、墓地管理者が家族に代わり永代に渡って遺骨を供養・管理する方法で、他の遺骨と一緒に合祀埋葬される合祀墓(永代供養墓)などです。
自宅墓のメリット・デメリット
◇自宅墓を仕立てることで費用を大きく抑えます
自宅墓の何よりのメリットは、お墓を建てる必要がないため費用を抑えているにも関わらず、手厚い供養ができる点です。
お墓参りに行く必要がないので、毎日供養ができます。
・お墓参りの必要がない
・お墓の維持管理の負担がない
・生活環境の変化に対応できる
・費用を抑えることができる
・宗旨宗派を問わない
墓じまいで取り出した遺骨の永代供養料が、思いのほか費用面で負担が大きいとして、粉骨をして自宅墓を仕立てたパターンも少なくありません。
「遺骨を自宅に保管するなんて」などの声もありますが、粉骨加工をすることでカビなども防ぎ、衛生的な状態を保つことができるうえ、見た目にもコンパクトにおしゃれにまとまるスタイルが多いです。
自宅墓のデメリット
◇自宅に遺骨を保管することに抵抗を感じる人もいます
自宅墓は近年注目され始めた新しい形の遺骨供養です。
そのため年配の親族など、身近な人のなかには、遺骨を自宅で保管することに抵抗を感じる人もいるでしょう。
・家族、親族からの反対の可能性
・家族以外の人がお参りしにくい
・遺骨を紛失する可能性がある
・供養者が亡くなった時の対策が必要
自宅墓を仕立てることで、遺骨を管理する人は気軽に供養・管理ができますが、その家に住む家族以外は、お墓のように勝手にお参りができません。
また自宅墓の場合、主に供養を担う人が生きているうちは良いのですが、亡くなった時の遺骨の行く先を検討する必要があります。
墓じまいをして自宅墓にする方法
◇墓じまいの後、遺骨は粉骨して桐箱に納め、仏壇に収蔵します
墓じまいをして取り出した遺骨を自宅墓とするなら、まず遺骨を取り出さなければなりませんが、墓じまいを進めるには「改葬許可証」が必要です
「改葬(かいそう)」とは、遺骨を現在の墓所から取り出して、新しいお墓や納骨堂などの別の墓所へ移動することを指します。
その新しい移動先が、自宅墓となる流れです。
<墓じまいをして自宅墓にする流れ> | |
①お墓の内部調査 | ・石材業者 |
②現在の墓地に報告 | ・埋葬証明書をもらう ・現在の墓地管理者 (寺院墓地、霊園墓地など) |
③改葬許可申請 |
・受入証明は窓口に相談する ・改装許可証をもらう |
④遺骨の取り出し |
・閉眼供養 (僧侶に依頼) ・遺骨の取り出し (石材業者に依頼) |
⑤遺骨のメンテナンス | ・洗骨 ・乾燥 ・粉骨 (粉骨業者に依頼) ・真空パック ・箱に入れる |
⑥仏壇を購入 | ・祭壇 ・仏壇 |
⑦遺骨を仏壇に収蔵 | ・祀っても良い |
自宅墓で遺骨を収蔵する場合、遺骨のメンテナンスや粉骨は必ず必要な工程ではありませんが、遺骨の状態のまま安置すると、水が骨壺の底に溜まったり、カビが生えるなどの可能性が生じます。
「受入許可証」がないけれど?
◇改葬許可申請では通常、「受入許可証」が必要です
墓じまいで遺骨を取り出し移動するには、「改葬許可証」を遺骨が埋葬されている自治体の役所で発行してもらわなければなりません。
この行政手続きを改葬許可申請と言いますが、改葬許可申請には現存の遺骨が眠る墓地からいただいた「埋葬証明書」、新しく納骨する場所から「受入許可証」が必要です。
けれども自宅墓の場合、当然「受入許可証」は発行されません。
ただ自宅墓は違法ではなく、単純に自治体の制度が新しい供養の形に精通していないため、行政手続きが追い付いていないだけです。
まずは役所窓口に相談をすると良いでしょう。
・那覇市:改葬許可について
自宅墓以外の手元供養とは
◇身近な家族のみ、手元供養にする方法もあります
墓じまいをして複数の遺骨を取り出した時、自宅墓は費用を抑えることができるうえ、それぞれの遺骨に対しても丁重な供養ができる選択肢です。
けれども多くの遺骨が取り出され、遠いご先祖様など全く面識がない遺骨がある場合、遺骨の主である故人との関係性によって、供養方法を分ける人も少なくありません。
①ブック型
②アクセサリー型
③ミニ祭壇型
自宅墓で複数の遺骨を収蔵する場合、ブック型の供養方法が多いです。
面識のない遠いご先祖様の遺骨を合祀墓などで永代供養する場合、残された身近な家族を手元供養にするには、アクセサリー型やミニ祭壇型が多いでしょう。
自宅墓に多い①ブック型
◇本のように収蔵できます
ブック型なので複数の遺骨を仏壇下の棚に収蔵できるため、複数の場合に便利です。
ブック型の骨箱を購入する他、専門の粉骨業者に粉骨・真空パックの後、ブック型や桐箱に納めてもらうケースもあります。
・スタイリッシュなデザイン
・コンパクトに収まりやすい。
・戒名やメッセージなどの刻印
(お墓の彫刻と同じ役割)
また縦型の「本の形」なので場所を取られることなく、仏壇下の棚などに納めることができるでしょう。
場所をコンパクトに納めながら遺骨を保管したい方には適切です。
故人と一緒②アクセサリー型
◇粉骨した遺骨をアクセサリーに納める方法です
一方、遠いご先祖様の遺骨は合葬墓などに合祀埋葬しながら、思い入れの深い故人の遺骨のみを手元供養にしたい方に選ばれる方法が、アクセサリー型です。
アクセサリー型は粉骨した遺骨を少しだけ納めるため、一部を他の方法(ブック型や祭壇型)で祀り、残りをアクセサリーに納めるパターンが多い傾向にあります。
アクセサリー型は、自分で納める「ネジ封入式」が選ばれる傾向となり、その特徴と選ばれる理由は下記です。
・場所を取らない
・デザインがシンプル
(遺骨を納めているとは分かりにくい)
・錆びにくい
・遺骨が外に出にくい
いつも故人を感じて暮らしていたい方に選ばれる供養方法なので、グリーフケアを目的とした手元供養で選ばれます。
また終活で夫婦墓を購入したご夫婦が、配偶者を先に亡くされた時、ジュエリータイプの手元供養を選び、最終的に一緒のタイミングで納骨される流れも多いです。
遺骨を祀る③祭壇型
◇おしゃれなミニ骨壺を祭壇に祀る供養方法です
「遺骨を祭壇に祀る」と言葉だけ聞くと驚く人もいますが、おしゃれでかわいい、コンパクトな骨壺にまとめられるため、手元供養では最も選ばれます。
粉骨をしているのでミニ骨壺に入る場合もありますが、入りきらない場合は残りの遺骨をブック型などで納めたり、海洋散骨セレモニーを行うケースもあるでしょう。
・場所を取らない。
・バリエーションが豊富
・仏壇の代わりになる
手元供養のなかでは最も一般的なタイプで、骨壺もバリエーション豊かです。
沖縄では琉球ガラスの骨壺などもあります。
特に高齢の方々では「しっかり供養したい」「仏壇の代わりにしたい」などの理由から、祭壇型を選ぶ方が多い傾向です。
保管するお部屋に合わせて、雰囲気やインテリアに合わせられるため、家族皆が納得しやすい形のひとつとなっています。
まとめ:自宅墓で費用を抑え、日々供養ができます
個人墓地が多い沖縄では、継承者がいないとどんどん劣化して、無縁墓になった後も放置され続けてしまいます。
そこで「そうなる前に墓じまいをしてしまおう」と考える墓主が増えました。
墓じまいはまず、霊園業者に内部調査を依頼してから始まります。
内部調査をして初めて、埋葬されている骨壺の数などが分かる家も多いでしょう。
まとめて合祀墓(永代供養墓)に埋葬してもらえることもありますが、状態によっては個々に永代供養をお願いしなければなりません。
費用を貯めるための一時期の方法としても、自宅墓は選ばれます。
・墓じまい後の永代供養とは?取り出した遺骨の供養5つの方法、メリットデメリットも解説