山本明子さん(仮名)47歳の体験談です。
母親が亡くなり、父親が手元供養を選択した当時、山本さんは38歳、当時42歳の姉と46歳の兄は、親族への体裁上、戸惑う場面もありました。
けれども父親の希望を汲み、母親の遺骨は一部を手元供養とし、残りは海洋散骨を選んでいます。
69歳で亡くなった母親
実家から10分ほどの地域にマイホームを構え暮らしていた山本明子さん(仮名)は当時、69歳になっていた母親の典子さん(仮名)の体調に、違和感を覚えるようになっていました。
いつも元気に早起きをして、笑顔で庭いじりをしていた典子さんが、「疲れた、疲れた」と言っては、ソファーで休む日が増えたためです。
●その変化が顕著になってきたある日、典子さんが「背中が重い」と言うので、明子さんは母親を連れて、病院へ連れていきます。
…すると精密検査を受けた後、すい臓がんの診断を受け、それから4ヶ月の闘病の末69歳で亡くなりました。
当時、病院の先生から明子さんへすい臓がんの告知があったものの、家族は相談をして、母親にはがん告知はしないことに決めています。
そのため母親である典子さんご自身は、遺言書やエンディングノートなどを残すことはありませんでした。
父親の希望で、手元供養へ
山本明子さん(仮名)は母親が亡くなった後、父親の希望により、家族で母親の遺骨を手元供養にしました。
●遺言書やエンディングノートなど、特別なものは残していなかったものの、父親へ生前「片方が生きているうちは、お互いに手元供養でもいいよね」と話をしたことがあったためです。
また父親の実家は北海道ですが、現在暮らしているのは沖縄ですので、先祖代々墓に入れるには遠すぎますし、かと言って沖縄で新しくお墓を建てる気持ちにはなれなかったと言います。
「お墓を建てる気持ちにはなれなかった」理由は、父親ご本人にも分からないとのことでしたが、典子さんにすい臓がん告知があってから4ヶ月、突然の喪失へのショック「グリーフ」が、そうさせたのではないでしょうか。
母親の遺骨を粉骨する
とは言え、母親の遺骨を全て手元供養にするとなると、家にそれなりのスペースがなければなりません。
「今は手元供養も注目されているけど、実際にはどのように供養するのだろう?」
手元供養を調べるなか、下記2つの方法のいずれかを検討することになりました。
・遺骨を粉骨する(粉骨代金3万円)
・喉仏(など)一部を残す
そこで家族で話し合った結果、母親の遺骨は粉骨して一部を小さな骨壺に納め、コンパクトな手元供養用のお仏壇を用意して祀ることにします。
母親の手元供養仏壇を仕立てる
母親が亡くなったことをきっかけに、父親は家が広く掃除が大変になるであろう自宅を売却し、運転免許を返納しても交通の便が良い、モノレール圏内に小さな分譲マンションを購入しました。
そのため大きなスペースはなく、小さな手元供養用のお仏壇を設けて、リビングに仕立てることを選びます。
・ステージ…約50,000円
・骨壺…約25,000円
・仏具セット…約50,000円
・線香(消耗品)…約2,000円
・ロウソク(消耗品)…約1,500円
・写真立て…約3,000円
・手元供養用ブレスレット…約40,000円
———————————-
合計…約171,500円
手元供養用ブレスレットは、母親の粉骨した遺骨を納めるアクセサリーです。
父親は位牌を購入せず、骨壺を位牌代わりにお仏壇(ステージ)の中心に祀ることにしました。
骨壺自体もコンパクトで持ち運びしやすいものですが、日々肌身離さず持ち歩くように、手元供養用のブレスレットも共に購入しています。
母親の遺骨を海洋散骨
ただ小さな手元供養用のお仏壇に祀るため、骨壺も小さいものです。
手元供養のお仏壇の大きさはA4サイズほど、そこに祀る骨壺も、父親が旅行へ行く時には、持ち運びしやすいサイズでした。
そのため例え粉骨しても、骨壺に収まる大きさではありません。
●粉骨を依頼した業者で海洋散骨も請け負っていたため、残りの遺骨を海洋散骨にします。
…海洋散骨を業者に委託する形式で、約20万円ほどでした。
海洋散骨した遺骨は残らないものの、石碑に散骨をした人々の名前を刻んでくれるシステムだったため、後々お彼岸の時には家族で石碑へ手を合わせるようになったそうです。
・沖縄で注目される「海洋散骨」とは?費用相場で違う3つの形式を解説!
葬儀は小さな自宅葬
冒頭でもお伝えしたように、両親の実家は北海道にありますが、現在山本さんご家族が住んでいるのは沖縄です。
北海道には高齢の父親がいましたが、何時間も飛行機を乗り継いで来るほどの体力はなく、もう何年も来ていませんでした。
●そのため沖縄に住む家族と近しい身内のみ、15人の自宅葬にして、親族や知人友人には、ひと通りの葬儀を終えた後、訃報をハガキでご報告しています。
訃報を伝えると、御香典や供物が届いたり、なかには北海道から飛んで来てくださる親族もいました。
海洋散骨と手元供養のご報告をすると驚いていたものの、「ずっとご家族と一緒にいられる典子さんは幸せね」と言ってくださる親族もいて、ホッとしたそうです。
父親が亡くなり、母親とともに火葬
その後、新型コロナが到来するなか、父親が肺病で亡くなりました。
長く供養をしてきた母親の骨壺は、木製でできていたため、父親の棺に納められました。
母親が亡くなり手元供養用の骨壺を購入した当初から、父親は母親の骨壺を自分と一緒に火葬しようと考え、天然素材のものを選んでいたようです。
●父親の棺に、木製の母親の骨壺を納め、一緒に火葬されました。
長年ブレスレットに収まっていた母親の遺骨の一部は、骨壺に納めなおしています。
●そして「お墓を持ちたくないから、骨仏にしてくれ」と、生前から父親に託されていたため、寺院のご住職を訪ねて骨仏にしていただきました。
最後に
以上が山本明子さん(仮名)が、母親のすい臓がん発覚当初から見てきた、ご両親の物語です。
「骨仏(骨佛/こつぶつ)」とは、「お骨仏(おこつぼとけ)」などとも呼ばれ、仏像の胎内に遺骨の一部を納骨し供養します。
父親は自分の死期を予見し始めた頃から、仏教の本を深く読むようになり、とある寺院のご住職に相談をして、生前契約をしていました。
・骨仏費用…約30,000円
・管理費…無料
母親とともに夫婦二人で永代に渡り、仏様の胎内で供養される選択です。
残りの父親の遺骨も、母親と同じく海洋散骨としました。
そのため明子さんご兄弟は、残された手元供養用のお仏壇(ステージ)に、ご両親お二人の御位牌と、写真を祀り供養をしています。
まとめ
山本明子さん(仮名)の手元供養体験談
[1]母親を手元供養へ
・粉骨…約3万円
・仏壇など…約17万円[2]残りの遺骨は海洋散骨
・約20万円[3]葬儀は15名の自宅葬
[4]父親が亡くなり母親の遺骨とともに火葬
[5]父親(と母親)の遺骨を骨仏へ
(残りの遺骨は海洋散骨)
・骨仏費用…約3万円