沖縄では今、大きな沖縄仏壇からシンプルな棚上仏壇へと変わりつつありますよね。現代の暮らしにもムリのない祀り方へと変化しながら、お供養の心は変わらず引き継ぎたいとする若い世代が増えています。
ご先祖様が家族と共に過ごせるよう、リビングに置いても違和感のないモダン仏壇は、今沖縄で最も人気が高い仏壇スタイルです。大きさもコンパクトでよりカジュアルな印象ですが、日々家族が共に暮らし気に掛ける供養スタイルが受けています。
そこで今回は、息を吸うように沖縄でお仏壇と暮らす方法を、今モダン仏壇を揃える方々に多い質問への回答としてお伝えします。
お線香の上げ方とロウソク
沖縄でお仏壇がコンパクト化したことで、戸惑う声が多いポイントがお線香です。
今までは壁一面に沖縄仏壇が広がり、大きな厚いウコール(香炉)が配置されていましたが、沖縄でお仏壇がコンパクト化することで香炉も小さくスマートになりました。
ところが沖縄では昔からお仏壇には「ジュウニフンウコー(十二本御香)」と言って、ヒラウコー(平線香=沖縄線香)でタヒラ半(二枚と半分)、日本線香では十二本ものお線香を拝しています。
そのため小さな香炉では、熱さに負けてパリンと割れてしまったり、そもそも「香炉が小さくて、十二本のお線香が差せない!」との相談が増えました。
けれども十二本は本格的な御願で扱う本数であって、略式の考え方や仏様の教えに倣った考え方もあります。
【 沖縄のシンプル仏壇。お線香の本数 】
(1) 沖縄の略式
→ 沖縄では「ウティン(御天)・ジーチ(地)・リュウグ(海)」の三神を表すとされ、「三位一体」として三神をお線香一本で数える略式法がありました。
※ この方法を用いると、ジュウニフンウコー(十二本御香)は四本(12÷4)に略されます。
(2) 仏教式
→ 仏教の教えに倣うと、「仏様とご先祖様、私の信仰心が一体となります。」との意味合いを込めて、三本(仏様・ご先祖様・私自身)です。
(3) 仏教式の略式
→ (2)で仏教式では三本とお伝えしましたが、法要などでお線香を拝する人々が大勢いる場合には、一本の略式を取ってきました。そのため一本供えることもあります。
…この方法が今、沖縄のシンプル仏壇で多い選択肢です。このように沖縄では仏壇へ拝するお線香の本数は簡略化されつつありますが、火のつけ方や上げ方には、細やかな習慣が今も残されているようです。
【 沖縄のシンプル仏壇。お線香の上げ方 】
● お線香はロウソクから火を付けることが良しとされてきました。消す時にはロウソク消しか手で仰ぐように消し、決して口で消さないようにします。
→ 沖縄でも仏教の教えでも、「口は災いの元」と言うように口は穢れやすく、災いを招きやすい、悪行が行われやすいとされ、その口でお線香やロウソクの火を吹き消すことは避けられてきました。
沖縄の御願文化ではジュウニフンウコー(十二本御香)の他にも、ジュウナナフン(十七本)など、多くの本数を手向ける習慣がありますよね。
ただヒジュルウコー(冷たい御香=火を灯していないお線香)はともかく、火を付ける場合には火事にならないよう、充分な火の用心は不可欠です。特に沖縄で小さな仏壇でお線香を上げるのであれば、より危険のない方法を選ぶと良いのではないでしょうか。
沖縄の仏壇は家長のように接する
現代、沖縄では仏壇を家長のような感覚で接する家族が多いようです。家族が朝ごはんをいただく前に、沖縄ではお仏壇にご飯を供え、夕方に下げることを基本として、常日頃から嬉しい日常を報告する気持ちで接すると良いでしょう。
ですから季節の果物や珍しい食べ物、美味しい料理なども、沖縄では気軽に仏壇を囲んでいただく家族が多い傾向です。
【 沖縄のシンプル仏壇。季節の果物やいただきもの 】
● 嬉しいいただきものや美味しい食べ物は、家族がいただく前にまずお仏壇にお供えします。「○○さんから○○いただきましたよ~!」と気軽に話しかけても構いません。
→ そして沖縄では仏壇に供えたお供え物を、少し経ったら「ウサンデー」します。沖縄で「ウサンデー」とは、仏壇に供えたお供え物を下げ、皆でいただくことです。
ちなみに沖縄ではこの、仏壇にお供え物を供えたり、下げたりする役割を子どもに任せる家族が多いでしょう。
これは子ども達が、日々の何気ない沖縄の暮らしのなか、仏壇を身近に感じてご先祖様や仏様の存在を心のどこかに根付かせる働きがあります。そしてウサンデーすることで、日々の食事やお供え物の有難みや大切さを、自然な形で根付かせます。
故人の写真を飾る
沖縄では仏壇に故人の写真を飾る家族も多いですよね。沖縄の仏壇の場合、多くは中央の上位に沖縄位牌が配置され、そのひとつ下の下段、左右の脇に故人の写真を飾る家族が多い傾向です。
【 沖縄のシンプル仏壇。写真を飾る 】
● 檀家制度が根付く本州では、仏壇内に写真を飾ることを良しとしない宗派もあります。
→ ただ、そもそも沖縄では檀家制度がなく、御願文化はあるものの神仏習合で独自の信仰がありますから、それぞれの家で決めて構いません。沖縄でも気になる方は、仏壇の脇にまとめて飾る方法も良いでしょう。
また、最近沖縄でシンプル仏壇を仕立てるケースでは、昔ながらの大きなトートーメー(先祖代々位牌)を永代供養してカライフェー(唐位牌=個人の位牌)を改めて仕立てる家族も多いです。
この場合に、先祖代々の位牌札を「過去帳」にまとめるケースも見受けるようになりましたが、過去帳は仏壇内に置きます。過去帳の仏壇内での置き場所は、最上段から二番目、二段目の左右どちらかの脇に置く方法が一般的です。
仏壇の処分
沖縄では仏壇やお墓をはじめとする祭祀に関わる物の買い替えは、神様の眼が届かないユンヂチ(うるう月)やタナバタ(旧暦七月七日)とされています。
ただ一年に一回や、数年に一度のタイミングでは、現代の沖縄で仏壇を買い替えるには、なかなか現実的ではありません。
そのため現代では、沖縄では処分する仏壇の閉眼供養を行い、魂の乗っていない「物」として扱う家族が増えました。
沖縄位牌が祖霊の魂が宿っている「トートーメー(先祖代々位牌)」として在るのと、物としての位牌「イフェー(位牌)」として在るのとで、扱いや存在が分かれているのと同じ考え方です。
【 沖縄のシンプル仏壇。魂抜き 】
● 近所の寺院などで僧侶へ依頼し、処分する沖縄仏壇の閉眼供養(魂抜き)を行った後、沖縄で仏壇を新調したお店に古い仏壇について相談してみてはいかがでしょうか。
沖縄でお仏壇の閉眼供養(魂抜き)をお願いする時は、「お布施」の形でお礼を差し上げます。お布施の目安はだいたい三万円~五万円ですが、決まった料金がない寺院が多いため、心配であれば僧侶へ直接お伺いしても良いでしょう。
この時、お布施は閉眼供養の「料金」ではないため、少しオブラートに掛けてご相談する形として「どれくらい包めば良いでしょうか?」などの言い回しでお伺いすることをおすすめします。
いかがでしたでしょうか、今回は沖縄で増えたシンプル仏壇を仕立てた後の、日々の暮らし方、お付き合いの方法をお伝えしました。
今、沖縄で小さな仏壇を仕立てた/買い替えた家族の間で増えている、最もシンプルなお供養方法に、「六種供養」があります。朝ごはんを家族がいただく前にごはんを供え、夕方に下げるだけのお供養です。
とてもシンプルですが、詳しくは別記事「【沖縄の仏壇】最小限のシンプルな供養方法。お仏壇との付き合い方」でお伝えしていますので、コチラをご参照ください。
また六種供養や沖縄で増えるシンプル仏壇で揃えたい、必要最低限の仏具に関しては「【沖縄の仏壇】六種供養で最小限・心重視の供養を。最小限の仏壇仏具とは」で詳しくお伝えしています。
まとめ
シンプル仏壇、日々の付き合い方
●お線香の本数
・沖縄の略式、四本
・仏教式、三本
・仏教の略式、一本●御馳走やいただきもの
・最初に供える
・暫くしたらウサンデー
・供える役目は子どもがおすすめ●写真
・沖縄は宗派がないので自由で良い
・過去帳があるならば上から二段目の左右●古い仏壇の処分
・魂抜きをして新調した仏具店に相談
・魂抜きのお布施目安は三万円~五万円