現代の沖縄でトートーメーは継承すべき?意識調査で分かる新しいトートーメー・役割の形

2023.01.11
現代の沖縄でトートーメーは継承すべき?意識調査で分かる新しいトートーメー・役割の形

現代の沖縄ではトートーメーの継承問題が深刻化していますよね。高い世代はトートーメーの処分を検討する一方、若い世代では新しい継承の形が受け入れられ始めています。今回は意識調査を元に、現代の暮らしに合わせた新しい継承の形をお伝えします。

現代の沖縄ではトートーメーの継承問題が深刻化していますよね。

そこで沖縄の高齢者は「子や孫に負担を掛けないように」トートーメーを閉じる決断が増えています。
けれども、現代の沖縄で若い世代は、トートーメー文化を残したい人も多いです。

・現代に合わせたトートーメー継承はできないか?
・子ども達世代は、トートーメーをどう思ってる?
・トートーメータブーのない、先祖供養がしたい
・トートーメー継承はしたいが、負担は減らしたい

今回は、それぞれの世代で現代の沖縄の人々が、トートーメーに対してどのように思っているのか…、現代の暮らしに合わせた沖縄のトートーメー継承の事例とともにお伝えします。

現代の沖縄、トートーメー継承の意見は?

沖縄でヒヌカンは、家族専用の神様
●現代の沖縄では、トートーメー継承のしきたりに拘らない人々が、81.4%と大多数を占めています

令和3年1月、沖縄県子ども生活福祉部による「男女共同参画社会づくりに関する県民意識調査」報告書によると、令和2年度でのトートーメー継承に対する個人的意見において、「それぞれの家に任せるべきである」との考えが46.8%でした。

そのため昔ながらの慣習に囚われず、関係者さえ納得できれば、現代の沖縄では昔ながらのトートーメー継承タブーに、それほど神経質にならなくても良い、と判断する家も多いでしょう。

<現代沖縄のトートーメー:継承への意見>
[1]それぞれの家に任せるべき…46.8%
[2]誰が継いでも良い…24.9%
[3]血縁なら女子でも良い…9.7%
[4]長男に限る…7.0%
[5]血縁の男子に限る…4.8%
[6]トートーメーを継ぐ必要はない…2.7%
[7]その他…0.8%
[8]分からない…2.9%
[9]無回答…3.0%

昔ながらの沖縄のしきたりを重んじる回答、「長男に限る」「血縁の男子に限る」の考え方も11.8%あります。

けれども、現代の暮らしに合わなくなったしきたりやタブーに拘らない考え方「それぞれの家に任せるべき」「誰が継いでも良い」「血縁なら女子でも良い」を示す沖縄の人々が、81.4%と大多数を占めている結果です。

一方で現代、沖縄で「トートーメーを継ぐ必要はない」と考える人々は、2.7%に留まりました。

実際にどのように継承されている?

沖縄のトートーメーを残しながらタブーを解消☆祟りなく継承する3つの方法
●実際に現代沖縄でのトートーメー継承は、全体の62.6%が「長男に限る」を選択しています

個人の意見や考え方としては、現代の沖縄ではトートーメーのしきたりに拘らない見解を示す人々が多かった一方、現実問題としては長男が代々継承しているのが現実です。

<現代沖縄のトートーメー:実際の継承>
[1]長男に限る…62.6%
[2]血縁の男子に限る…12.7%
[3]それぞれの家に任せるべき…9.4%
[4]分からない…7.7%
[5]その他…2%
[6]トートーメーを継ぐ必要はない…1.8%
[7]誰が継いでも良い…1.6%
[8]血縁なら女子でも良い…1.4%
[9]無回答…0.8%

このように、現代の沖縄でも実際のトートーメー継承では、「長男に限る」「血縁の男子に限る」と、昔ながらのしきたりに倣う家が75.3%と、個人的な意見や考え方とは逆転現象が起きています。

一方で「それぞれの家に任せるべき」「誰が継いでも良い」「血縁なら女子でも良い」として、現代の沖縄でトートーメー継承を進めた事例は12.4%と、ごく少数でした。

●このことから、現代の沖縄ではトートーメー継承に関する個人の意見や考え方が、現実とかけ離れていることが分かるでしょう

年代が上がるほど「血縁の男子」が継承

●現代沖縄でのトートーメー継承の実際を年代別で見ていくと、年代が上がるに連れて「血縁の男子」の割合が高くなります

ここで注目したいポイントは、実際の現代沖縄で行うトートーメー継承において、年代が上がるほどに「血縁の男子」が継承する事例が増えている点です。

ただ個人の意見や考え方を見る限り、年代が上がっても「血縁の男子」に拘る傾向はありません。

<現代沖縄のトートーメー:年代別の傾向>
[1]20代
●トートーメー継承について個人的意見
それぞれの家に任せるべき…44.5%
・誰が継いでも良い…29.4%
血縁男子に限る…6.5%
・長男に限る…5.9%
・トートーメーは継ぐ必要はない…3.3%●実際のトートーメー継承
血縁長男に限る…62.1%
・血縁の男子に限る…5.2%
それぞれの家に任せるべき…10.5%
・誰が継いでも良い…0.7%
・トートーメーは継ぐ必要はない…3.9%[2]70代
●トートーメー継承について個人的意見
それぞれの家に任せるべき…31.8%
・誰が継いでも良い…17.4%
血縁男子に限る…5.6%
・長男に限る…22.4%
・トートーメーは継ぐ必要はない…3.1%

●実際のトートーメー継承
血縁長男に限る…66.4%
・血縁の男子に限る…15%
それぞれの家に任せるべき…7.2%
・誰が継いでも良い…3.1%
・トートーメーは継ぐ必要はない…0.9%

このようなことから、現代の沖縄で現実的なトートーメー継承においては、年代が高い人ほどしきたりに拘る傾向があることが分かります。

空き家に残されたトートーメーなど、今後の継承問題を解消するためには、根付いたしきたりやトートーメータブーに柔軟になり、現代に合わせた沖縄の新しいトートーメー継承が不可欠です。

※沖縄のトートーメー継承、4つのタブーについては下記をご参照ください。
沖縄のトートーメーでは4つのタブーが継承問題に繋がっている!問題を解決する方法は?

 

トートーメー継承は長男だけど…

●沖縄でトートーメー継承は代々嫡男が継承してきましたが、そのお世話や施主としての負担は、ほとんどが女性が背負ってきました

ここで注目したい事柄は「トートーメーのお世話を誰がしているのか?」です。

沖縄ではトートーメーを継承すると「ムートゥーヤー/ムチスク(宗家)」として、旧正月や旧盆、清明祭(シーミー)などの門中や親族が集まる旧暦行事の主催を担ってきました。
集まった門中や親族へのおもてなしもあり、主催の責任は大きいでしょう。

<女性に負担が集中する>
●行事では、主に誰が料理の準備や後片付けを担っていますか?
・女性 83.5%
・男女両方 12.1%
・男性 2.5%
・その他 1.8%[参考]琉球新報webアンケート(553件回答)

トートーメーは65.3%の家で長男が継承、そのお世話を長男嫁が担う構図が見えてきます。
昔から沖縄では言われてきた構図ですが、現代も残っていることが分かるでしょう。

ただ現代の沖縄は基本的に男女共働きです。
しかも農業など協力して行う共働きではなく、それぞれがそれぞれの職場で働く形態を取り、そのなかで女性の負担が大きい現状が分かります。

ですから以前から沖縄ではトートーメー継承を憂いて、長男へ嫁ぐことを避ける風潮がありますよ。

現代沖縄でトートーメー継承の問題点

モダン仏壇が広がる沖縄。無理なく引き継ぐトートーメー
●現代の沖縄ではトートーメー継承において、①トートーメータブー、②沖縄仏壇、③お世話の負担、が問題点です

平屋に家族が住み、長男が代々トートーメーとともに家督を継いで、家を守ってきた時代から、現代はグローバルになりました。

誰もが世界中で暮らすようになりましたし、家自体も分譲マンションやアパートなど、コンパクトな間取りが増えるなか、現代の沖縄ではトートーメーのしきたりに倣った継承やお世話が現実的ではなくなっています。

<現代沖縄のトートーメー:継承の問題点>
①トートーメータブー
・血縁男子の継承者がいない
・核家族化が進んでいる②沖縄仏壇
<仏壇/トートーメー共に>
・現代の暮らしに大きすぎる
・住まいの雰囲気を壊す③お世話の負担
・ウグァンブスク(御願不足)による祟り
・旧暦行事やスーコー(焼香)の施主
・火の番(火事の不安)

…現代の沖縄でトートーメー継承を躊躇する人々の意見では、上記のような問題点を挙げる声がありました。

けれども興味深い点は、両親や祖父母などは「ご先祖様」ではなく家族として故人の魂を供養したいため、「問題がなければ継承したい」との声も少なくはない点です。

※沖縄でトートーメーへの日々のお世話など、考え方は下記をご参照ください。
沖縄の先祖代々位牌「トートーメー」とは?そもそも家を守護する「祖霊信仰」ってなに?

 

①トートーメータブー

●現代沖縄のトートーメー継承では、古いご先祖様を永代供養するなどして、タブーをリセットする選択が増えています

トートーメータブーさえリセットできれば、気軽に誰もが継承ができて、ウグァンブスク(御願不足)による祟りを心配する必要はありませんし、仏壇もコンパクトに、自分なりの供養を行えば良い訳です。

そのためには身近な故人以外の、ご先祖様を供養しますが、まず魂抜きを行わなければなりません。

<現代沖縄のトートーメー:タブーをリセット>
●トートーメーの魂抜き(閉眼供養)
[1]ウタナー(神棚)へ移す
[2]永代供養
[3]お焚き上げ

現代の沖縄でトートーメーの継承問題が起きた場合、この他にもイフェー(位牌)の一時預かりの選択肢もありますが、施設へ年間管理料が掛かったり、将来的には改めて決断が必要になるため、今回は省きます。

そこで現代の沖縄では、トートーメータブーをリセットした後、身近な両親や祖父母など、故人のイフェー(位牌)のみを仕立て直す家が増えました。

※トートーメータブーをリセットする3つの方法については、下記をご参照ください。
沖縄のトートーメーでは4つのタブーが継承問題に繋がっている!問題を解決する方法は?

 

②沖縄仏壇

●大きな沖縄仏壇から、現代の暮らしに合わせた仏壇へ交換をします

古い沖縄の平屋では、リビングにあたる二番座の壁に大きく沖縄仏壇を仕立ててきました。
また近年でも、押し入れをひとつ明けて沖縄仏壇を差し込む家は多く見受けます。

けれども現代の分譲マンションやアパート、オシャレなモダンな家には合いません。
そこで、モダン仏壇手元供養用の小さな仏壇に祀る家が増えました。

<現代沖縄のトートーメー:現代の仏壇>
●現代の暮らしに合わせた仏壇
・棚上仏壇
・モダン仏壇
・手元供養の仏壇(祭壇)●タブーのないイフェー(位牌)
・繰り出し位牌
・カライフェー(唐位牌)
・琉球ガラス位牌●小さな仏壇に合わせた仏具
・三具足
・五具足

現代の沖縄ではトートーメータブーをリセットすることで、スペースに合わせた仏壇(祭壇)を自由に選ぶ人が増えたために、返って供養の習慣が復活しています。

例えばA4用紙サイズほどの出窓スペースに、水子の魂を祀り、供養をしながら共に暮らし、喪失のショック「グリーフ」を癒す事例もありました。

※現代の仏壇について、種類や仏具、配置などは下記をご参照ください。
現代の沖縄で増えるタブーなきトートーメーの種類☆ムリなく供養できるイフェーの祀り方

 

③お世話の負担

●仏壇じまい(トートーメーの弔い上げ)をします

現代の沖縄では仏壇じまい(トートーメーの弔い上げ)をして、我のないカミ(神)になっていただきます。
つまりはトートーメータブーをリセットするのと同じことです。

そこで継承者としての負担が無くなるので、大きなスーコー(焼香)や旧暦行事をしまう(取りやめる)選択肢も見受けるようになりました。

<現代沖縄のトートーメー:お世話の負担>
①トートーメーの弔い上げ
・お焚き上げ②タブーのないイフェー(位牌)の購入
・近しい身内のみ③お線香の簡略化
・日本線香
・1本~5本を供える

ただ、前述したようにタブーの多いご先祖様のお供養は負担が掛かるけれど、「両親や配偶者、家族などの魂は供養したい」との声は少なくありません。

このような場合には、タブーのないイフェー(位牌)の購入してコンパクトに祀り、思い思いに供養をすれば良いのです。

沖縄では一般的にトートーメーの弔い上げはサンジュウサンニンチ(三十三年忌)法要の後ですが、全国的にも沖縄でも「繰り上げる」家が増えました。
例えば、七年忌や十七年忌などで弔い上げをする選択もあります。

※沖縄でトートーメーの弔い上げについては、下記に詳しいです。
沖縄トートーメーの仕立てる方法。最初に仕立てる・すでにある家、仕立てる時期はいつ?

 

お線香の簡略化

お線香の簡略化
●現代の沖縄ではトートーメーのお世話にあたり、火の用心の観点から、日本線香を1本~5本供える家が増えています

そもそも昔から「故人は香りを食べる」と言われるため、日ごろは値段が手ごろなヒラウコー(沖縄線香)を供えても、沖縄の特別な御願行事では、より香りが立つ日本線香を供えていました。

この香り高い日本線香を「カバシウコー(香り線香)」と呼び、以前からヒラウコー(沖縄線香)の1/3分を供える習慣も地域や家によってあります。

<現代沖縄のトートーメー:お線香の簡略化>
①沖縄のサンブンウコー(三本御香)とは…、
日本線香で三本分
・ヒラウコー(沖縄線香)②サンブンウコー(三本御香)の意味
・ウティンヌカミ(御天の神)
・ジーチヌカミ(地の神)
・リュウグヌカミ(竜宮=海の神)③「三位一体(三神は一体の世界)」の考え方
日本線香一本分(3÷1)

ですから、例えばジュウニフンウコー(十二本御香)であれば、日本線香四本分(12÷3=4)として供えます。

日本線香は灰が出にくい

●現代は煙や灰が出にくい日本線香が増え、仏壇のコンパクト化に伴い、選ぶお線香も変化しています

このような流れから沖縄ではトートーメーを中心に祀りながら、コンパクトな仏壇仏具、ウコール(香炉)を揃えるようになりました。

ただヒラウコー(沖縄線香)は灰や煙が出やすく、小さなウコール(香炉)や仏壇では危ないと感じる人が増えています。

<現代沖縄のトートーメー:火の用心>
日本線香を使う
本数を少なくする
・灰ではなくさざれ石を用いる

…などなど、特に分譲マンションやアパートなどでは、煙や灰が出にくい「備長炭」の日本線香が人気です。

また実際に小さなウコール(香炉)にヒラウコー(沖縄線香)でジュウゴフンウコー(十五本御香)を供え、ウコール(香炉)がその熱に耐えきれず、割れてしまった事例もあります。

最後に

以上が、現代の沖縄で増えた、新しいトートーメー継承の形です。
ただ現代も信仰が根強い沖縄では、トートーメー継承の形が新しく変わっていくことに抵抗を覚える人々も少なくありません。

けれども沖縄では今、トートーメーの継承問題が深刻化しています。

・トートーメーが取り残された廃墟(空き家)の増加
・放置された「ヒジュルイフェー(冷たい位牌)」の急増

しきたりやタブーを守るがために、根源となる沖縄独自の祖霊信仰が失われてしまうことは、誰もが避けたいところではないでしょうか。

後世まで残したい信仰の根源を残しながら、現代の暮らしに合ったムリのない、現代沖縄のトートーメー信仰が密やかに進んでいます。

まとめ

現代の沖縄、トートーメー継承と意識調査
●個人の意見
・それぞれの家に任せるべき46.8%
・誰が継いでも良い24.9%
・血縁なら女子でも良い9.7%
・長男に限る7.0%
・血縁の男子に限る4.8%

●実際の継承
・長男に限る62.6%
・血縁の男子に限る12.7%
・それぞれの家に任せるべき9.4%

●継承の問題点
・トートーメータブー
・沖縄仏壇
・お世話の負担

●コンパクトな仏壇と位牌
・トートーメーのリセット(弔い上げ)
・家族の位牌のみ仕立てる
・コンパクトな仏壇と位牌

●火の用心から、お線香の変化
・三位一体の考え方
・本来の本数÷3
・ジュウゴフンウコー(十五本御香)なら5本


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