沖縄でこそ手元供養が広がるのはなぜ?宗旨宗派のない供養方法

2022.01.11
沖縄でこそ手元供養が広がるのはなぜ?宗旨宗派のない供養方法

今、沖縄では手元供養が広がりつつありますよね。全国的にも手元供養は注目されていますが、自宅でご遺骨を安置する選択は菩提寺との関係性まで考慮しなくてはならず、進めにくいとの声も多いです。今回は、沖縄で手元供養のニーズが急増する背景と、現代沖縄の手元供養やお仏壇に見る、新しい流れをお伝えします。

今、沖縄では手元供養が広がりつつありますよね。沖縄でニーズが急増する手元供養は、家族のご遺骨の全て、もしくは一部を自宅に祀って供養をします。

現代の沖縄では故人のために手元供養を選ぶと言うよりは、残された家族が哀しみを癒すグリーフとしての選択が多いのではないでしょうか。

一方、全国的にも手元供養は注目されていますが、自宅でご遺骨を安置する選択は菩提寺との関係性まで考慮しなくてはならず、進めにくいとの声も多いです。

今回は、沖縄で手元供養のニーズが急増する背景と、現代沖縄の手元供養やお仏壇に見る、新しい流れをお伝えします。どうぞ参考にしてください。

沖縄で「手元供養」が広がる以前

沖縄で「手元供養」が広がる以前
沖縄でも注目される手元供養は、ご遺骨の一部、もしくは全てを自宅に安置し供養をする方法です。ですから「自宅で遺骨をいつまでも安置するなんて、法的に大丈夫なの?」との質問もありますよね。

確かに納骨先のお墓がすでにある場合、沖縄では葬儀後すぐに納骨式が行われますし、全国的にも四十九日法要を目途に納骨します。

家族の納骨をきっかけにお墓を建てる場合、四十九日法要には間に合わず、百か日や一周忌を目安に建墓を進めますが、このケースでも遺骨を自宅安置することに抵抗を感じる家族も多く、一時的に納骨堂などに納める流れが多いでしょう。

【 沖縄で増える手元供養。遺骨の自宅安置は法的に大丈夫? 】

● ご遺体を墓地ではない自宅の庭に埋葬することは「遺棄罪」として法に触れますが、火葬後のご遺骨を自宅で安置することは、それが何年であっても法に触れることはありません

→ そのため沖縄では手元供養が広がる以前から、下記のようなケースで自宅で遺骨安置をする事例はありました。

(1) 納骨先が用意できない
・「門中墓に入りたくない」との故人の遺志による納骨先トラブル
・お墓を建てる充分な予算がない
お墓を建てるまでの期間、遺骨を自宅で安置する

(2) 納骨先トラブル
・個人墓と婚家の墓など、複数の納骨先によるトラブル
(分骨の話し合いや手続きを終えるまで、自宅で安置する)

(3) 残された家族のグリーフケアとして
・家族の喪失感を支えるため、遺骨を自宅で安置する

…などなどです。

ただ沖縄で手元供養が広がる以前は、火葬場から骨壺に入った骨箱のまま、自宅で安置しているケースが多くありました。そのため来客時には(驚かれるため)骨箱を隠して(しまって)招き入れるなど、堂々と自宅で供養をする環境とは言い難い側面があったようです。

仏教の教えから見た手元供養

仏教の教えから見た手元供養
では仏教から見た、遺骨の自宅安置はどのようなものでしょうか。

【 沖縄で増える手元供養、仏教から見た遺骨の自宅安置 】

● 一方、仏教の教えを考慮すると、自宅に遺骨が安置されているうちは「中陰」として扱われます。

→ 「中陰」は故人がまだあの世とこの世を彷徨っている四十九日法要までの状態ですので、自宅に遺骨がある限り、仏教上は「喪中」の扱いです。

仏教には真言宗や浄土真宗などさまざまな宗旨宗派がありますが、なかには「故人との仏縁が結ばれないままになる」「故人は成仏できずに、ずっとあの世とこの世を彷徨う」と説いて、自宅での遺骨安置をさける寺院も見受けます。

【 沖縄で増える手元供養、全国的な傾向 】

● このような事情から、檀家制度が広く根付く本州では、残された家族が手元供養を望んでもあくまでも一定期間とし、どこかで区切りを付けて納骨することを見据えた自宅安置が多い傾向です。

ただし、全国的にも手元供養をきっかけにして菩提寺から離檀し、無宗教となるケースも増え始めました。どちらも故人を偲び手厚く供養をしたい想いは一緒です。

独自の祖霊信仰を持つ沖縄

独自の祖霊信仰を持つ沖縄
ただし沖縄では、そもそも檀家制度が根付いていません。御本尊をお仏壇に祀ることなく、トートーメー(先祖代々位牌)を中心に祀り供養をする「祖霊信仰」が暮らしの中心にあります。

そのため仏教と御願の風習がチャンプルーされていて、本州ほど特定の宗旨宗派に倣い供養事を進める習慣がありません。

【 沖縄で増える手元供養の背景 】

● 檀家制度が根付いていない沖縄では、門中(むんちゅう=父方の血族)の意見やユタ(御願を先導する霊能者)に支持を仰いできましたが、最近では家付きのユタさんも少なくなり、門中との関係性も薄れています。

→ さらに厳しい門中墓やトートーメータブーにより、門中墓に入れない故人も多いです。この場合、対処法は数多くありますが、下記のような事例がありました。

・ 個人墓地の多い沖縄で、墓地の隅に小さな祠を建ててそこに埋葬する。
・ 新しく故人から始まる代々墓(門中墓)を建てる。
・ 永代供養(※)が付いた個人墓を建てる。
・ 合祀墓や樹木葬(合祀タイプ)などで永代供養をする。
・ 納骨堂に安置する。

(※)「永代供養」とは、墓地管理者が家族に代わり永代に渡って維持管理・供養をするサービスです。多くの永代供養墓で、一定年数を過ぎると合祀墓に合祀供養されます。

…このような事例もあるので「どうせ納骨先がないのなら」と、沖縄では手元供養を選ぶ家族も見受けるようになりました。

何よりも沖縄は個人墓地に建つお墓が多く、菩提寺を持たない家が多いため、沖縄では手元供養を選ぶ時に特定の宗旨宗派に倣ったり、特定の寺院にお伺いを立てる必要がありません。

さらに門中(父方の血族)やユタさんとの関係性が薄れた今、沖縄では手元供養に限らず、故人や家族の意思(遺志)が反映されやすい環境にあります。

沖縄の手元供養とトートーメー

沖縄の手元供養とトートーメー
ただ沖縄では、トートーメー(先祖代々位牌)をシンボルとした祖霊信仰が根付いています。

沖縄で手元供養を選択する家の多くが、そもそも自宅にトートーメーを祀る「ムチスク/ムートゥーヤー(宗家=本家)」ではありませんが、もしも先祖代々のお名前が並ぶトートーメーを祀っている場合、抵抗を覚える方も少なくありません。

【 沖縄で広がる手元供養、トートーメーを祀る家 】

● 沖縄でムチスク(宗家)が手元供養を選ぶ場合、下記のような事例がありました。

(1) トートーメーを祀る仏壇とは別に、小さな手元供養のお仏壇を仕立てる。
※ ワキブチダン(脇仏壇)のように、隣に位牌(や位牌代わりになる骨壺)を祀るのではなく、全く別のステージ(お仏壇)を仕立てる家がほとんどです。

(2) トートーメーを永代供養して、新しく手元供養のお仏壇を仕立てる。
※ 今までのトートーメーを寺院や民間霊園などで永代供養を依頼し、全く新しく沖縄で手元供養の仏壇を仕立てます。

(2)のトートーメーの永代供養は、位牌堂(納骨堂の位牌版)に預けて一定期間が過ぎた頃に位牌の永代供養を進める家も多い傾向です。

この事例の多くは、厳しすぎるトートーメータブーにより、後々の継承問題や子や孫に負担を掛けないよう、トートーメー自体を自分の代で終わりにしよう、と選択した背景がありました。

「床の間」が消えた沖縄で増える「守り本尊」

「床の間」が消えた沖縄で増える「守り本尊」
ただ、本州でお仏壇の中心にご本尊があるように、沖縄でトートーメー(先祖代々位牌)を中心に配置すると言うことは、ご先祖様を信仰している(祖霊信仰)ためです。

沖縄ではご先祖様は亡き後七代目にして、その家・一族(ヤー)を守る「カミ」として信仰されますが、トートーメー(先祖代々位牌)を永代供養することで、この祖霊信仰のシンボルもなくなります。

【 沖縄で広がる手元供養、床の間の神様 】

● そこで見直されたのが、今ではすっかり見なくなった床の間の神様です。また、先祖代々位牌としてではなく、「祖霊」として名のない位牌を祀る家も増えました。

床の間自体がすっかり少なくなった沖縄ですが、リビングや沖縄で増えた手元供養の小さなステージに、観音様など、それぞれの家で祀りたい神様を祀る、自由な信仰が見受けられます。

※ 詳しくは別記事「沖縄で守り本尊を祀るミニ仏壇☆床の間が見直される理由とは」でお伝えしていますので、コチラも併せてご参照ください。

 

いかがでしたでしょうか、今回は全国的にも注目されるなか、いち早く沖縄で手元供養が広がる背景をお伝えしました。

供養文化において本州と沖縄の大きな違いは、檀家制度が沖縄に根付いておらず、独自の祖霊信仰と御願文化が供養の中心にあることです。

そのなかで沖縄で供養の中心にあり、お寺と同じような役割を果たしてきた、家や門中(父方の血族)付きのユタさんとの関わりも、現代では希薄になってきたため、より家族単位の意思が通りやすい、自由度の高い環境になりました。

そのためお仏壇もあり読経供養もしますが、豚肉をお供えするなど、もともと沖縄では仏教の教えが本州ほど暮らしに根付いていません。(実際には沖縄独自の供養文化がありますが)現代の沖縄では手元供養を行う「無宗教」に近い環境とも言えます。

これが、純粋に大切な家族を偲び弔う想いを込めて、沖縄で手元供養を選ぶ家族が増えた背景です。
まとめ

沖縄で手元供養が広がる背景
・檀家制度がないため仏教上の敷居が低い
・沖縄独自の供養文化「祖霊信仰」がある
・トートーメータブーが多く悩む家も多い
・トートーメーを永代供養して手元供養を選ぶ家も多い
・トートーメーの永代供養の代わりに守り本尊を迎える家もある


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