沖縄では相続した実家を売却せず、空き家のまま残す事例も多いですよね。沖縄で相続した実家の場合、その背景にはトートーメータブーも見受けられます。
トートーメーは沖縄の位牌ですが、位牌単体では「イフェー」の呼び名もあるように、「尊い君(トートーメー)」であるように、ご先祖様の魂そのもの、引いては祖霊「カミ」の存在です。
けれども沖縄であっても相続で空き家になった実家を所有すると、割高な固定資産税やメンテナンス費など、維持費もままなりません。
今回は、沖縄で少しでも早く相続した実家を売却した方が良い理由とともに、躊躇する原因でもあるお仏壇じまいについてお伝えします。
空き家を所有するとお金が掛かる?
沖縄では相続した実家に住み続けることなく、空き家のまま維持する事例が多いです。この場合、まず住み続けない実家(空き家)に対して、相続税が割高になる点は理解しておきましょう。
また、全国的に空き家問題が深刻化している今、空き家に対して固定資産税が割高になる点も否めません。
【 沖縄で相続した実家☆相続と維持に掛かるお金 】
(1) 相続税
… 沖縄で相続した実家に住み続ける場合、「小規模宅地の評価減」制度により、相続税を決める基盤となる不動産財産の評価額が8割以下になります。
→ 一方、沖縄で相続した実家を空き家とした場合、この制度が適用しないため、相続税は割高です。
(2) 固定資産税
… 居住用の住居でない場合、固定資産税は割高になります。また築年数が古く倒壊の恐れがあるなど、近隣住民に迷惑が掛かる、景観を害すような家屋は、「特定空き家」に指定されます。
→ 特定空き家に指定されると、通常の空き家よりも約4倍~6倍も固定資産税が割高になる傾向です。
(3) メンテナンス費
… 沖縄で相続した実家は、所有者として苦情にも対応しなければなりません。沖縄では夏場に草木がぼうぼうと繁殖して、近隣住宅の敷地を害することも多いでしょう。
→ このような苦情に対応するメンテナンス費用や、近隣住民にご迷惑を掛けないための定期的なメンテナンス費が掛かります。
現代の沖縄では相続した実家を空き家として残しながらも、本州へ家族で移住する事例も少なくありません。
そうなると業者へメンテナンスを依頼することもありますが、業者への依頼は割高になりますし、自分達で定期的にメンテナンスを行うにしても、交通費が掛かります。
沖縄で相続した実家は、空き家のまま放置すればするほど、固定資産税やメンテナンス費がかさみますから、早々に売却した方が良さそうです。
築30年以上の古い実家の場合
特に沖縄では相続した実家が、築30年以上の古い家屋であるケースも少なくありません。ですから旧耐震基準で建てられた実家も多く、震災予防の視点で見ても危ない事例は多いです。
ただ、このような築30年以上の実家(旧耐震基準)を相続した場合、沖縄で相続発生後、実家を3年以内に売却すると、3,000万円までの特別控除特例に適用するかもしれません。
【 沖縄で相続した実家を3年以内に売却 】
● 旧耐震基準で建てられた昭和56年以前の実家であれば、相続発生後3年以内に家屋を更地にして売却した場合、要件を満たすと売買契約による譲渡所得から、3,000万円までの特別控除特例に適用します。
→ この3,000万円までの特別控除特例は、全国的に深刻化する空き家問題の解消を目的として、一時的に施行された特例です。
※ 実際に実家を相続・売却を検討する時点で、特例の施行や期日を確認すると良いでしょう。
ただ、3,000万円までの特別控除特例は、要件として更地にして売却しなければなりません。そんとあめ沖縄では相続した実家を更地にすることで、「お仏壇を取り壊さなければならない(トートーメータブーに触る)」と躊躇する事例もありました。
ちなみに更地にするにも解体費用が掛かる、固定資産税が高くなるとして躊躇する声があります。
【 沖縄で相続した実家☆解体する時のリスク 】
(1) 固定資産税が掛かる
→ 建物が建つ土地の固定資産税を割り出す土地の計算式は(200㎡以下の住宅用地の場合)「評価額×1/6×1.4」です。(建物の固定資産税は別途)
※ 一方、更地にすると土地の計算式は(200㎡以下の住宅用地の場合)「評価額×7/10×1.4」ですので、単純計算で約5倍強の固定資産税になってしまいます。
(2) 解体費用が掛かる
→ 解体費用は家屋によりさまざまですが5万円以上は掛かるでしょう。さらに古い家屋の場合はアスベストを使用していることも多く、この場合は割高になってしまいます。
● けれどもそのまま放置をすると、前述した「特定空き家」に指定される可能性は非常に高くなり、結果的に更地よりも固定資産税は掛かり、メンテナンス費もかさみます。
※ 「特定空き家」は土地を更地として計算し、さらに不動産まで含めた固定資産税額を出してくるので、更地にした土地よりも高くなるためです。
このような事情を検討すると、沖縄で相続した実家は早々に更地にして売却した方が良さそうです。あるいは建物を残したまま売却活動を進め、買い手との契約交渉時に更地にして売却とすると良いでしょう。
築年数の古い家屋の場合、買い手としては除却費用(解体費用)も含めて購入価格を想定していますから、断ることはほぼありません。むしろ上記のリスクを持って売却活動を進めたとしても、更地にする条件で売却することで価格が上がる可能性もあるほどです。
残されたトートーメーは永代供養
ここまで売却した方が良い理由が揃っているものの、沖縄で相続した実家を空き家のまま放置してしまう背景には、お仏壇のトートーメータブーがあります。
祖霊信仰の深い沖縄では「トートーメーをお仏壇から出してはいけない」「家の外に出してはいけない」などの伝承がある門中(父方の血族一族)や家、地域も多いです。
そのため沖縄では相続した実家を有効活用しようと、お仏壇(トートーメー)を残したまま、家屋ごと賃貸に出す事例も多く見受けます。
けれども沖縄で相続した実家に限らず、家屋は必ず経年劣化をして朽ちて行くものですので、現実的ではありません。
ではトートーメータブーを恐れず、更地にして売却するにはどのような方法があるでしょうか。
【 沖縄で相続した実家☆お仏壇じまい 】
● トートーメーとともにお仏壇じまいをする家が増えました。お坊さんに依頼して閉眼供養を執り行い、取り出されたトートーメーは民間霊園などで位牌供養墓に永代供養をしてもらいます。
→ トートーメー(位牌)の永代供養は一柱3万円~が目安です。位牌の永代供養を受け付けてくれる霊園では、多くが位牌供養塔を持ち、定期的に供養を行ってくれるでしょう。(頻度や方法などは施設によりさまざまです。)
近しい両親や祖父母などの位牌札のみ取り出して、単独の唐位牌(カライフェー)にしたり、繰り出し位牌(重ねて祀る位牌)の形に変え、現代風のコンパクトでシンプルな仏壇に移す事例も多く見受けます。
トートーメータブーに捉われる家族も多いですが、一度位牌の永代供養をしてしまうと、実家の扱いも位牌やお仏壇の扱いも、より自分達らしいものを選ぶことができますので、一度検討されてはいかがでしょうか。
いかがでしたでしょうか、今回は沖縄で増える相続した実家を放置したままの空き家についてお伝えしました。
トートーメータブーにより、お仏壇と位牌を残したまま、空き家になってしまう家を多く見受けますが、故人の立場に立ってみると、誰もいない空き家に放置されたままですので、家を守護する役割も見いだせず、本末転倒ではないでしょうか。
確かに沖縄では人が亡くなるとその魂は流れ落ち、土地に宿るとされてきましたが、永代供養により軽くする…、と考えることもできます。
「千の風に…」ではないですが、「魂になったからこそ、その土地に縛られたくない」として、海洋散骨や手元供養を選ぶ終活現場の声も多いです。
沖縄で相続した実家の対処をきっかけに、お仏壇じまいについても検討されてみてはいかがでしょうか。
まとめ
空き家になった実家は早々に売却した方が良い理由
・メンテナンスコストが掛かる
・割高な固定資産税が掛かる
・ボロ屋になると特定空き家に指定される
・特定空き家で固定資産税はより割高になる
・築年数の古い空き家は3千万円の特別控除特例の可能性
・特別控除特例は相続発生後3年以内の売却が要件
・特別控除特例は更地にして売却が要件
・お仏壇じまいをして空き家を対処
・トートーメーは位牌供養をすると良い