・墓じまいで起きがちなトラブルとは?
・墓じまいトラブルを防ぐ方法とは?
・墓じまいトラブルの対策とは?
墓じまいトラブルは、墓主にとって深刻な問題です。
ただ一方で若い人々が地元を離れ継承者がいないお墓や、高齢になりお墓の管理が困難になり、放置されたままのお墓が増えました。
本記事を読むことで、墓じまいトラブルに多い13のケースを挙げ、墓じまいトラブルを未然に防ぐ対策や、起きてしまった時の解決策が分かります。
墓じまいで起きがちなトラブルとは?

◇墓じまいに関わる人々との、丁重な交渉がポイントです
沖縄の墓じまいでは親族間トラブルが多い傾向です。
高齢の家族や親族のなかには「遺骨を墓地から出してはいけない」と考える人も少なくありません。
この他、墓じまいに関わる石材業者(墓じまい業者)や、現存するお墓の墓地管理者(霊園などである場合)にも、先方の立場に立った対応が墓じまいトラブルを回避します。
●親族間トラブル
●石材業者とのトラブル
●墓地管理者とのトラブル
●その他のトラブル
全国的には、江戸時代から代々家が特定の寺院に所属する「檀家制度」があったため、墓じまいトラブルではお墓を日ごろから管理してきた寺院墓地「菩提寺」とのトラブル事例が多く挙げられます。
特に墓じまいにより檀家を離れる時に感謝を込めて包む「離檀料」について、高額な料金を請求される「離檀料トラブル」事例を散見しますが、沖縄ではそもそも檀家制度が根付いていないため、あまり見かけません。
・「檀家制度」とは、「戒名」は必ず必要?菩提寺(檀那寺)との関係性
●墓じまいの親族間トラブル

◇墓じまいの親族間でトラブルは、費用面・お墓の在り方によるものです
故人やご先祖様を偲び供養する、お墓参りをする権利はあります。
そのため祭祀継承者としてお墓の名義人である墓主は、法的に墓じまいの決定権がありますが、一方で墓じまいにより、お墓参りをする権利を奪っていることも忘れずに親族へ相談しなければなりません。
●墓じまいをするお墓に関わる家族や親族には、まず相談をします。
…勝手に墓じまいを進めてしまうと、大きなトラブルになりがちです。
墓じまいは個人で行うものではありません。
また墓じまいの費用相場は約30万円~300万円ですので、一人で抱えるには負担も大きいでしょう。
墓じまいを検討し始めたら、まず親族へ金銭や供養方法などについて相談します。
事前に、心を込めて、お墓に関わる家族、親族全員へ伝えることがポイントです。
進みは遅くても納得しながら進めることで、親族間のトラブルを避けることができるでしょう。
(1)墓じまいへの反対
◇お墓に関わる人々へ、まず相談をします
法的には、祭祀承継者が単独で墓じまいを決定することは違法ではありません。
けれども祭祀承継者であるからと勝手に墓じまいを進めるのではなく、事前に親族への相談、全員が納得する形はスムーズな墓じまいに不可欠です。
また年配の方は、墓じまいに消極的な傾向があり、「先祖に失礼」と言う考え方をするため、なかなか合意が得られないこともあるでしょう。
・親族に何も相談しなかった
・親族全員の合意がないまま墓じまいを進めた
このような墓じまいトラブルにより、信頼関係を失ったり疎遠になるケースも少なくありません。
ただ墓じまいを進めることを説得するのではなく、お墓の維持管理が難しい現状、そして墓主としての役割を辞退する相談をすることで、反対している親族も自分事として墓じまいを検討してくれるケースがあります。
・事を進める前に相談する
・お墓の維持管理が難しい現状を伝える
・無縁仏になる可能性を伝える
・墓主の変更を提案する
・関係者全員での維持管理を提案する
それでも問題が解決しない場合は、石材業者や住職に相談することも1つの手段です。
墓主にとって親を大切に思うのと同じく、親族にとってもお墓で眠る故人は大切な存在であることを理解し、丁重に話し合いを進めます。
(2)費用負担への反対
◇墓じまいを進める時期にも余裕を持って、費用負担の相談をします
墓じまいの親族間トラブルでは、費用負担の割合について揉めるケースも多いです。
誰でも、突然高額な費用が必要だと言われたら、戸惑うことになるでしょう。
そのため墓じまいの費用負担にまつわる相談は、余裕を持って事前に行うことがポイントです。
・長期的にみなで積み立てをする
(墓じまいスケジュールを延ばす)
・墓じまいを進める3か月以上前に相談する
・事前に墓じまいの見積もりを用意する
・墓じまい費用以外にかかる項目にも配慮する
墓じまい費用の負担割合も長男・長女だからと多くの支出を迫られたりするケースもあるなど、墓じまいにおける親族間の費用トラブルは、決して珍しくないです。
墓じまいには、お布施や改葬先、お墓の解体費用など、さまざまな項目で費用が必要になり、数十万円もかかってしまうこともあるでしょう。
墓主が負担できないほどの額になることもよくあります。
だからこそ、親族がどこまで金銭的にサポートしてくれるのか、みんなが納得できる負担にすることが大切です。
(3)連絡忘れによるトラブル
◇墓じまいに関わる親族全員に連絡をしないことは、より大きなトラブルになりがちです
墓じまいトラブルでは、関わる家族・親戚全員に連絡を入れずに、墓じまいを進めてしまった結果、大きな親族間トラブルに見舞われた事例が多くあります。
父方の血族で繋がる沖縄の門中墓や、先祖代々墓になると、墓じまいには多くの家族・親族が関わることになるでしょう。
この場合、墓じまいが大きなしこりとなって、親戚同士の関係が絶たれるトラブルケースも存在しますので、あまりおすすめできません。
・親族全員へ連絡をしなかった
・普段、お墓の管理に関わらない親族に反対される
・裏で陰口を言われる
・嫌味を言われる
大勢いれば、なかには反対しやすい傾向の人もいます。
嫌味や陰口を受けるケースもありますが、直接言ってこないのであれば、淡々と墓じまいを進めるのも良いでしょう。
親族のなかでも高齢の人など、発言力のある人に理解してもらう方法もあります。
また親族間で同意を得ていたはずの墓じまいでも、認識の違いや気持ちのすれ違いによってトラブルに発展するケースもあるので、「みんな同じ見え方・考え方ではない」と意識して、細やかに報連相をしながら進めると良いでしょう。
●墓じまいの石材業者とのトラブル

◇石材業者は相見積もりを取り、複数の業者を比較検討します
…墓石の撤去工事費用の相場は、大まかに約8万円~15万円/1㎡です。
墓じまいは石材業者へ依頼して進めますが、この時に石材業者から撤去工事費用の見積もりで高額な請求を受ける墓じまいトラブルも多くあります。
・墓石の大きさ
・墓地の大きさ
・墓地の立地環境
(重機が入る場所か)
また民営墓地や寺院墓地では、特定の石材業者が決まっており、自由に選べない場合もありますので、事前にお墓の管理者にも確認しておきましょう。
(4)撤去後に高額な費用請求があった
お墓によって費用は変わるため、正確な費用相場はありません。
そのため石材業者から高額な請求があっても、気づかない墓主は多いです。
●高額な費用で撤去工事を行った後、他の石材業者から「うちだったらもっと安く工事できたよ」と言われた。
ただ石材業者に感情的に対応すると、トラブルに発展するリスクもあるでしょう。
そうならないように初めから、複数の石材業者から見積もりを取ることで、相場観が分かり、比較検討もできます。
(5)墓石の処分が悪質だった
◇墓じまいで撤去された墓石の処分が不法投棄されたケースなどです
墓石は撤去後に破砕処理が行われ、土木工事などで再利用されます。
けれども、まれにですが墓石撤去後、墓じまいで撤去された墓石が不法投棄されていた、山中に埋められていた、などの墓じまいトラブル事例もあります。
●「マニフェスト」をもらいましょう
…「マニフェスト」とは、産業廃棄物に関する書類のことです。
石材業者が産業廃棄物の処理を依頼することでマニフェストは交付されます。
そのため正当な処理が行われていれば、墓石は産業廃棄物としての処理がされてマニフェストが発行されているはずです。
石材業者はマニフェストの提示が可能か確認すると良いでしょう。
また、見積もりが安すぎる業者には注意が必要です。
墓石の処理費を削減するため、適切な処理を行っていない可能性があります。
(6)墓石が倒れ、隣のお墓を損傷した
◇墓石の解体撤去工事のずさんさにより、他のお墓に損害を与えたケースです
墓石の解体工事が不適切で、基礎を解体しないでそのまま埋められたなど、他のお墓に損害を与えてしまった場合は、深刻な墓じまいトラブルになり得ます。
・お墓は石材業者に依頼する
・墓地の指定業者を利用する
・施工実績を確認する
・その墓地での経験を確認する
深刻な墓じまいトラブルのケースでは、損傷の事実が発覚した後、墓石の解体工事が終わっていないのに、急に連絡が途絶えることもありました。
そうなると自己負担で工事を再依頼、墓石の修復費用を負担しなければなりません。
●墓じまいの墓地管理者とのトラブル

◇沖縄では墓地管理者とのトラブルはあまり多くありません
全国的に墓じまいにおける墓地管理者とのトラブルは、主に寺院墓地で起こります。
本州の寺院墓地はその昔から、家が代々属し、お墓の管理や供養を受ける代わりに、その寺院を経済的に支える「檀家制度」がありました。
(なかには檀家制度を続けたまま、お墓のみ撤去する事例もあるでしょう。)
けれども沖縄では墓地が墓主所有の個人墓地が多いこと、本州のように檀家制度が根付いていないことから、墓地管理者との墓じまいトラブルは少ない傾向です。
(7)指定石材業者しか入れなかった
◇墓じまい業者は、墓地管理者が指定する業者しか入れない墓地があります
提携している石材業者「指定石材業者」を持つ寺院墓地や民間霊園が多いです。
指定石材業者がある場合、それ以外の業者は墓地に出入りすることが許されまない施設も多く、この場合は他の石材業者を選ぶことはできません。
そのため、複数の石材業者を比較するための相見積もりも出すことができないことになります。
<指定石材業者の有無> | |
[墓地の種類] | [指定石材業者の有無] |
(1)民間霊園 (民間企業が経営母体) | ・アリ |
(2)寺院墓地 (宗教法人が経営母体) | ・アリ |
(3)公営墓地 (自治体が経営母体) | ・ナシ |
(4)個人墓地 (個人が所有する墓地) | ・ナシ |
…ただ一方で、民間霊園や寺院墓地が提携している石材業者ですから、それだけ作業内容に信頼がある点はメリットです。
まずは墓じまいを検討し始めたら、指定石材業者の有無を確認してください。
また、場合によっては複数の石材店が指定されていることもあるので、そういった場合には各業者の費用やサービス内容を比較することをおすすめします。
(8)過去に遡り管理費の請求が来た
◇お墓が現存する墓地管理者から、過去に遡り年間管理料を請求されたケースです
長年お墓の年間管理料が支払われていない場合、墓地管理者から未納管理費を遡って請求されることがあります。
例えば、墓主が亡くなった後に継承者が不在となり、長年放置されていたお墓や、前の墓主が年間管理料を払っていなかったケースなどです。
●このような場合、5年以上前の未納分については支払う必要はありません。
ただ何らかの事情で年間管理料を滞納していた事実があるならば、充分な予算がある場合には、請求された金額を支払う誠意を見せることで、より深刻な墓じまいトラブルを防ぐことができます。
(9)遺骨の引き渡しを拒否された
◇墓地管理者との交渉がこじれ、遺骨の引き渡しを拒否されるケースです
遺骨の引き渡しを墓地管理者から拒否される「墓じまいトラブル」で多いケースは、事前に寺院や霊園の墓地管理者に伝えず、石材業者とだけ話しを進めてしまった場合が多いでしょう。
・事前に墓地管理者に相談する
・改葬許可を先に取っておく
…そもそもお墓がある自治体へ「改葬許可証」を発行してもらわなければ、遺骨の取り出しは法的にできません。
「改葬許可証」を得るためには、お墓のある墓地管理者から「埋葬(埋蔵)証明書」を発行してもらう必要があるため、墓じまいの相談は不可欠です。
墓じまいにおける遺骨の引き渡しトラブルは、まずお墓がある墓地管理者に相談をすることが先決です。
そして早い段階から、改葬許可申請を進めることで、余裕ある墓じまいができます。
●その他のトラブル

◇お墓の内部調査をすることで、余裕をもって墓じまいが進みます
お墓の内部は湿気がこもり、衛生環境があまり良くはありません。
そのため遺骨を取り出してみると、骨壺に水が溜まっていたり、カビが生えてひどい状態になっていることもあります。
墓じまいの過程で不測の事態が起きると、対応に戸惑うことがありますが、事前にお墓の内部調査を済ませることで、落ち着いて対処法を検討できるでしょう。
(10)火葬していない遺骨が出てきた
◇火葬場で火葬をして、改葬先へ納骨します
風葬の歴史が長い沖縄では、墓じまいにより火葬していない遺骨が出てくることも少なくありません。
この場合、改葬先の墓地管理者に納骨が可能かを確認すると良いですが、一般的に改葬先から納骨を拒否されるケースが多いです。
<火葬していない遺骨はどうする?> | |
[問題] | [解決策] |
(1)改葬先に納骨を拒否された | ・火葬場での火葬を経て、納骨する |
(2)火葬場に遺骨の持ち込みを拒否された (土の付着が激しいため) | ・遺骨洗浄の専門業者に依頼する |
ただ火葬場に遺骨を持ち込む際に、遺骨から付いた土を取り除くよう指示されることがありますが、遺骨にくっついた土はなかなか取り除けません。
また遺骨は非常に丁寧に扱う必要があるため、遺骨の洗浄や粉骨などを受け付ける、専門業者に頼むことを検討しましょう。
遺骨を洗ってもらった後、しっかりと乾燥させてから火葬場に持ち込みます。
(11)骨壺から水漏れがあった
◇内部調査で予め確認をしておきます
湿気が多いお墓のカロート(遺骨を収納するスペース)に何十年間も納められている遺骨のなかには、骨壺内に水が溜まっていることが多々あるでしょう。
内部調査により遺骨や骨壺の状態を把握していれば、カロート内を水浸しにせずに遺骨を取り出すよう、対策を取ることができます。
また改葬先で骨壺に水が溜まるトラブルを防ぐためには、骨壺の底部に穴を開ける方法が役立ちます。
(12)遺骨が誰だか分からない
◇供養を行いお墓から出しましょう
沖縄の古い門中墓や先祖代々墓になると、お墓から身元不明の人の遺骨が発見されるケースも少なくありません。
家系図や墓誌など、あらゆる資料を辿っても分からない遺骨などです。
そのお墓に納められている遺骨ですから、ご先祖様や関わりのある人の遺骨ではあるのですが、身元不明の遺骨が現れた場合は、不安も残りますよね。
丁重な読経供養により、安心して墓じまいを進めることができるでしょう。
墓じまいトラブルが起きてしまったら?

◇「国民生活センター」へ相談する方法があります
「国民生活センター」は、暮らしのなかで起きたトラブルの相談窓口です。
国民生活センターには、お墓や葬式に関わるトラブルも多いため、悩み相談だけでなく、事例も参考にすることもできるでしょう。
国民生活センターの相談事例には、価格やサービス内容に、納得できる説明がない、安い葬儀を依頼したのに高額な料金を請求された、などがあります。
<国民生活センター> | |
[住所] | ・那覇市泉崎1-2-2沖縄県本庁舎1階(沖縄県) |
[TEL] | ・188(全国) ・(098)863-9214(沖縄県) |
[受付時間] | ・平日9:00~16:00 (昼休み等:12:00~13:00) |
[HP] | 独立法人国民生活センター |
沖縄県の国民生活センターは、沖縄在住の人のみを受け付けてくれます。
その他の地域にお住まいの場合は、全国の国民生活センターを案内してくれる窓口「188」へコールしてください。
弁護士に相談する
◇弁護士に相談すると、短期間で解決する可能性が高まります
もし「もう自分だけではトラブルを解消できない!」と思ったら、料金はかかりますが、弁護士などの専門家に相談する方法も検討してみてはいかがでしょうか。
・約5万円~10万円ほど/1件
弁護士を介さず個人間で話し合いを続けると、時間が経てば経つほどお互いに感情的になりがちで、交通費がかさんだ結果、弁護士に依頼した方が安くつくケースもあります。
また、弁護士に相談するには迷いがある場合、「日本司法支援センター法テラス」などの国の公的機関の相談窓口を利用するのも一案です。
<日本司法支援センター法テラス> | |
[住所] | ・那覇市楚辺1-5-17プロフェスビル那覇2F(沖縄県) |
[TEL] | ・0570-078374(全国) ・0570-078368(沖縄) |
[受付時間] | ・平日9:00~17:00 |
[HP] | 日本司法支援センター法テラス |
法テラスへの電話はナビダイヤルを利用しているため、料金がかかります。
固定電話からは税込み9.35円/3分間、携帯電話からは税込み11円ほど/20秒間となるため、注意をして電話をしてください。
まとめ:墓じまいトラブルはこまめな報連相がポイントです

墓じまいトラブルには石材業者や墓地管理者とのトラブルもありますが、沖縄では親族間トラブルが多い傾向です。
高齢の親族のなかには「ご先祖様の魂が居場所を失う」と反対することもありますが、現状のまま放置するとどうなるかまで、説明すると理解を得やすいでしょう。
さらに墓主ひとりでお墓の維持管理をすることの、経済的・肉体的・精神的負担を説明し、お墓の管理ができない、継承者がおらずに放置される現状を伝えます。
沖縄ではトートーメー(位牌)にしろ、お墓にしろ、放置されることを最も忌むため、お墓を放置して無縁仏になる可能性を理解することで、墓じまいに賛同してくれるケースは多いです。