【余命宣告】リビングウィル(尊厳死)とは?作成4つのメリットとデメリット

2022.10.18
【余命宣告】リビングウィル(尊厳死)とは?作成4つのメリットとデメリット

「リビングウィル(尊厳死)」は、積極的な延命処置を受ける希望の有無など、終末期医療に対して、自分の意思を記載した書面です。今回は、リビングウィル(尊厳死)を意思表示ができる段階で書面に残すメリットと注意点(デメリット)、書き方を解説します。

リビングウィル(尊厳死)」とは、積極的な延命処置を受ける希望の有無など、終末期医療に対して自分の意思を記載した書面です。

俗に「終末期医療における事前指示書」とも呼ばれていますが、尊厳死や自然死などの言葉も含めて、日ごろはピンとくるものではありません。

そこで今回はリビングウィル(尊厳死)を意思表示ができる段階で書面に残す、メリットと注意点(デメリット)、書き方を解説します。

リビングウィル(尊厳死)とは?

リビングウィル(尊厳死)とは?
●「リビングウィル(尊厳死)」とは、まだ意識や判断能力がハッキリしている時に、予め延命治療をはじめとした、自分に死に関する希望を書面にして伝える書類です。

まだ日本では「リビングウィル(尊厳死)=延命治療をしないと言う意思表示」と理解されがちですが、「自分の死」に対して意思表示をする書面であり、より多岐に渡ります

<リビングウィル(尊厳死)の一例>
●治療課程で自分の意思が伝えられなくなった時、例えば下記のような希望を事前に記します。・余命宣告を本人が受けるかどうか
終末期に受けたい医療やケア
延命治療の有無
・医療や終末期のケアに対して決定を委ねる人
・その他、自分の終末期に対して希望すること

…などなどです。
ただし医師からの視点としては、例えリビングウィル(尊厳死)の書面を残したとしても、日本の医療に関する法律の観点から、本人やご家族の希望に応えられないこともあります。

リビングウィル(尊厳死)の難しさ

現代の日本ではリビングウィル(尊厳死)に関する明瞭な法律が制定されていません

そのため医師としては、本人やご家族が希望して行った措置であっても、法的に医師に「免責が掛かるのではないか?」と苦慮するケースもあるので、この点は理解も必要です。

<リビングウィル(尊厳死)、医師の免責問題>
●一例として、リビングウィル(尊厳死)により人工呼吸器を外した医師が、2008年に殺人罪に問われたケースがあります。

このケースは後に不起訴になりましたが、法的に守られていない限り、医師としてもリビングウィル(尊厳死)に必ず応えることは難しい状況です。

[参考資料]厚生労働省:人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドラインより

リビングウィル(尊厳死)の4つのメリット

リビングウィル(尊厳死)の4つのメリット
では、事前にリビングウィル(尊厳死)を書いておくことで、一体どのようなメリットがあるのでしょうか。

前述したようにリビングウィル(尊厳死)、単に延命処置の意思表示だけを示すものではありません。
医師や家族、周囲の人々に「自分の意思はこのようにある」ということを伝えるものです。

<リビングウィル(尊厳死)、4つのメリット>
(1)自分の望む最期を迎える
(2)家族への負担が軽減される
(3)自分の意思が整理できる
(4)家族と相談しながら書ける

終末期の医療行為としては、例えば人工呼吸器胃ろう(胃に直接栄養を流す延命措置)などがありますが、このような治療を本人が嫌がっても、意思疎通ができなければ伝わりません。

また胃ろうや人工呼吸器を付けた場合、一度始めると後で外すことは難しいでしょう。
このような事柄を、まだ意思疎通ができる段階から書面で残すことは、大変なメリットです。

(1)自分の望む最期を迎える

医療が進み人工呼吸器など、延命治療が一般的になった今、「尊厳死」や「自然死」を望む声が増えています。

では「尊厳死」や「自然死」とは、どのようなものを差しているのでしょうか。
リビングウィル(尊厳死)において、比較される「死」は主に、下記3つがあります。

<リビングウィル(尊厳死)、比較される3つの「死」>
①尊厳死
②自然死(平穏死)
③安楽死

リビングウィル(尊厳死)の書面を残す時、以上3つの違いは理解しておくと良いでしょう。
特に安楽死については日本では法律として認められていないため、医師に委ねることはできません。

①尊厳死

●「尊厳死」とは、終末期に積極的な延命治療は行わず、自然な最期を迎えることです。

ただし終末期に穏やかな死を迎えるため、痛みや苦痛を和らげるための治療や措置「緩和ケア」は行います。

②自然死(平穏死)

●「自然死(平穏死)」も、積極的な延命治療を行わない自然な死を差します。

こちらも尊厳死と同じく、死に向かうに至り辛い痛みや苦痛を和らげることはありますが、どちらかと言えば、病気やケガなどで死を迎えるのではなく、老衰などにより自然に衰え迎える死を差すことが多いです。

③安楽死

●「安楽死」は、治療を施しても回復の兆しがない場合に、本人の希望によって積極的な死へのアプローチを行うことを差します。

日本では認められていない方針ですので、基本的に日本の医療機関において安楽死を希望しても叶うことはないでしょう。

(2)家族への負担が軽減される

そもそも「危篤状態」とは?
例えば本人が認知症や脳死状態などにより、意思表示ができない場合、ほとんどのケースで生死などに関わる重大な判断を、家族が担わなければなりません。

特に延命治療の停止や、臓器提供の有無などを家族が決断した場合、一生抱える十字架になることも多いのです。

<リビングウィル(尊厳死)(2)家族の負担が軽減>
●リビングウィル(尊厳死)により意思表示を書面を残すことで、本人の意思に基づいた判断が可能です。

大きな決断を家族のひとりに負わせることなく、負担やストレスの軽減ができます。

(3)自分の意思が整理できる

リビングウィル(尊厳死)の書面を作成すると、その過程で自分の意思を整理されるでしょう。

<リビングウィル(尊厳死)(3)自分の意思を整理>
どのような時間を過ごしたいか
誰と時間を過ごしたいか
・人生でやっておきたい事柄
・残された時間で避けたい事柄
・生前に解決したい心配事やモヤモヤ

…などなどまで言及できて「残された時間を『いかに生きるか』へシフトした」などの声もありました。

また余命宣告を受けてショックのなかにいた体験談では、リビングウィル(尊厳死)の書類を準備するなど、生前整理を具体的に進めて行くことで、「恐れていた死に向き合い、精神状態が落ち着いた」との体験談もあります。

(4)家族と相談しながら書ける

リビングウィル(尊厳死)の書面は1人で書くとも限りません。
周囲の人々や家族と相談しながらの作成もできます。

<リビングウィル(尊厳死)(4)家族と相談>
・生前に有意義な家族の時間が持てる
家族の希望を生前に叶える
・家族と共に進めることで、家族も心の整理ができる
・家族が後々まで納得したお見送りができる

…などなど、家族と相談しながら書き進めるリビングウィル(尊厳死)は、自分自身の意思表示ができるうえに、周りの人にも「あなたの意思はこう思っているんだ。」と認識してもらえて便利です。

リビングウィル(尊厳死)の問題点

リビングウィル(尊厳死)の問題点
次にリビングウィル(尊厳死)の問題点(デメリット)をご紹介します。
リビングウィル(尊厳死)を書面にすることで、柔軟な対応ができないケースなどが、問題点としてあるでしょう。

例えば「心肺停止後に人工呼吸などの装着や補助呼吸をしない」と、リビングウィル(尊厳死)の書類を残していた人のケースでお伝えしていきます。

<リビングウィル(尊厳死)の問題点>
●下記3つの状況場合で…、
・何らかの形で気管に痰が詰まり、呼吸できなくなった
・気管に痰が詰まっただけ
吸引機器を利用すれば処置が可能になる→例えば、「人工呼吸器をしない」リビングウィル(尊厳死)の書面がある場合、呼吸器を扱えない可能性があります。

リビングウィル(尊厳死)に記載している「心肺停止後に人工呼吸などの装着や補助呼吸をしない」事実に基づき、補助呼吸を行わないとなると話が矛盾してしまうためです。

リビングウィル(尊厳死)の記載する内容

リビングウィル(尊厳死)の記載する内容
それでは具体的にリビングウィル(尊厳死)を残すに当たり、一般的にはどのような内容を記載するのでしょうか。

リビングウィル(尊厳死)は現在法律で定められた書類ではありませんが、主に下記のような内容を残すと、家族や周囲の人々が助かります。

<リビングウィル(尊厳死)に記載する内容>
(1)医療への希望
(2)医療の判断、決定をする代理人
(3)担当医
(4)本人の希望

またリビングウィル(尊厳死)に献体や臓器提供の意思を記載する人も多いですが、あくまでもリビングウィル(尊厳死)に付随する希望です。

リビングウィル(尊厳死)は言葉の通り、自分の希望する最期を遂げるための書面と考えてください。

(1)医療への希望

終末期の医療ではどのような医療を施すかの選択の希望ができます。
例えば、下記のような事柄に対して希望を示すことができるでしょう。

人工呼吸器
・点滴、胃ろうの処置
・延命処置
昇圧薬の投与
・輸血
・人工透析
・血漿交換
苦痛の緩和

これらの処置を希望するかしないかを記入することが可能です。
また鼻管の挿入に対する意思表示も見受けます。

※この他、余命宣告を受ける権利を記載する人もいます。

(2)医療の判断、決定をする代理人

●自分が脳死などで判断ができなくなった時に、リビングウィル(尊厳死)は初めて効力を発揮します。

そのため自己判断ができなくなった時に、自分に変わって判断を委ねる代理人の氏名や連絡先を記入することで、より効果的にリビングウィル(尊厳死)が扱われるでしょう。

(3)担当医

担当医を指定しておくことで、突然のことで日ごろ治療を受けていた医療機関や医師に措置を受けることができなくても、すぐに担当医が共有されます。

●これまで処方された薬や、自身の体調に合わせた医療行為が可能です。

(4)本人の希望

延命措置の有無や苦痛の緩和など、医療的アプローチ以外にも、終末期にはより良い最期を遂げるために、希望したい環境や、会いたい人などもいるでしょう。
このような事柄もリビングウィル(尊厳死)で記すことが可能です。

・最期の時を迎えたい場所
・最期の時を一緒にいたい人
・最期に会いたい人
・流して欲しい音楽
・掛けて欲しい言葉

…などなどがあります。
エンディングノートにもこのような事柄は記すことができますが、リビングウィル(尊厳死)はより、終末期に家族が確認する書類になるでしょう。

最後に

今回はリビングウィル(尊厳死)について、記載する事柄や作成時の問題点、メリットまでご紹介しました。

リビングウィル(尊厳死)は、まだ判断能力がある元気なうちに終末期の希望を残す書類ですので、一度完成したとしても、残された時間のなかで意思が変化することもあります。

まだ病気もなく元気なうちはもちろん、余命宣告を受けた場合などでも、定期的に見直して、必要があれば書き直すと良いでしょう。

また本文中にもあったように、代理人を立てることで、より効力のあるリビングウィル(尊厳死)を残すことができます。
まとめ

リビングウィル(尊厳死)4つのメリットと記載内容
●メリット
(1)自分の望む最期を迎える
(2)家族への負担が軽減される
(3)自分の意思が整理できる
(4)家族と相談しながら書ける

●問題点(デメリット)
・柔軟な対応ができなくなるケースがある

●記載内容
(1)医療への希望
(2)医療の判断、決定をする代理人
(3)担当医
(4)本人の希望


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