・浄土真宗とは?
・浄土真宗の葬儀に参列するマナーとは?
・浄土真宗での供養の仕方や注意点は?
浄土真宗とは、仏教のなかでも一つの分派として存在しています。浄土真宗は自己努力によって救われるのではなく、阿弥陀如来の御恩によって救われるという考えが特徴です。
本記事では、浄土真宗の考え方や教え、他の仏教宗派との違いについて解説します。浄土真宗の葬儀や供養の方法、注意点についてもまとめるので、是非参考にしてください。
浄土真宗とは:基本的な考え方と教え
◇「浄土真宗(じょうどしんしゅう)」とは、真宗としても知られ、大乗仏教の中で最大の宗教的伝統です
浄土真宗の中核的な信仰は、「他力救済」または阿弥陀如来様の慈悲の力「他力(タリキ)」という考え方で、阿弥陀仏様を敬うことに重点を置いています。
・信者が執着から解放される
・より慈悲深い人生を送る
瞑想的な修行、慈悲深い生き方、執着からの解放など、浄土真宗は、不透明な現代において、多くの人が魅力を感じる思想なのかもしれません。
阿弥陀如来とは
◇阿弥陀如来(あみだにょらい)とは、浄土真宗の御本尊様です
阿弥陀如来は、自分を求める人を生前から助けることを誓ったと言われています。
阿弥陀如来は、長い年月をかけて功徳を積み、死ぬ間際に悟りを開きました。そして、阿弥陀如来は、自分を求める人が心から信仰すれば、助けに来てくれるという安心の象徴となったのです。
浄土真宗の八正道とは
◇浄土真宗の教えには、八つの正しい道があります
浄土真宗では、八正道をじっくりと考えるなど、実践的な瞑想の実践に重点を置いています。
●「八正道(はっしょうどう)」とは下記八つの正しい道です。
・正しい見解
・正しい考え
・正しい言葉
・正しい行動
・正しい生活
・正しい努力
・正しい注意
・正しい集中
理論的には、これらの思索的な実践は、信者が阿弥陀仏との関係をより有意義なものにするために役立ちます。
浄土真宗の思いやりのある生活
◇浄土真宗は、慈愛と理解のある生活を送ることの重要性を説いています
これらの原則は、生きとし生けるものへの慈悲という仏教の原則と一致しています。これは、より良い、より平和な世界を作ることを願い、すべての人間、そしてすべての自然にも及んでいます。
浄土真宗は、執着からの解放する
◇浄土真宗の信者は、物質的な所有物への執着や感情的な執着から解放されるよう努力します
これは仏教の最も難しい概念の一つでしょう。所有物や感情への執着を断ち切ることは困難です。そのため、浄土真宗の瞑想修行は、信者がより心に余裕を持ち、執着の原因を自覚できるように導きます。
浄土真宗と他宗派との違いとは
◇浄土真宗では、人が亡くなると阿弥陀如来の恵みより、すぐに成仏する「往生即成仏」の考え方があります
一方で他の仏教宗派は、人が亡くなると四十九日の忌明けまで冥土の道を辿り、故人のご遺族の追善供養により救われ成仏するため、故人の霊魂が存在するのです。
●浄土真宗の中心的な信念は、阿弥陀如来の恵みによって苦しみから救われるのであって、何もする必要はない、というものです。
…他の仏教宗派では対照的に、自分の努力によって救いが得られます。このように浄土真宗は、いくつかの点で他の仏教宗派と一線を画しています。
浄土真宗に「御霊前」がない
◇浄土真宗では故人がすぐに成仏するため「霊魂」の概念がありません
他の仏教宗派では冥土の道を歩み、遺族の追善供養による後押しを受け、四十九日に成仏するまで、この世に霊魂があるとして「御霊前」があります。
また浄土真宗には他の仏教宗派のように、お経を繰り返す「御霊前」はありません。
●浄土真宗の教えは、念仏と呼ばれる瞑想にも重きを置いています。
…浄土真宗の念仏は、阿弥陀如来の名を念じることに主眼が置かれ、阿弥陀如来の恩寵による救済という宗派の中核をなす教えを体現するためです。
浄土真宗と他の宗派とのもう一つの違いは、浄土真宗では家に先祖の像を置くことが許されていることです。これは、他の仏教の宗派では許されないことです。
浄土真宗の葬儀に参列する際のマナー
◇人は亡くなってすぐに成仏する「往生即成仏」の考え方により、浄土真宗では故人の供養を目的とした葬儀を行いません
例えば、他の仏教宗派との違いは故人の成仏のために行う儀礼「引導」や「回向」を行わない、などがあります。
・末期の水がない
・引導(授戒)がない
・死に装束がない
・お清めの塩がない
・回向の意味が変わる
故人の努力と追善供養により成仏する必要がないため、仏道へ導く「引導(いんどう)」や仏門に戒めを授かる「授戒(じゅかい)」がありません。
また故人の冥福を祈る「回向(えこう)」も目的が変わります。浄土真宗における回向とは、功徳を仏から人々に及ぼしていただくことを喜ぶことです。
浄土真宗では「御霊前」がない
◇そもそも故人の霊魂が成仏している浄土真宗では、四十九日までに扱う表書き「御霊前」がありません
本来「御霊前(ごれいぜん)」とは、故人の霊魂を敬った敬称です。故人の霊魂の御前に供える「故人の霊魂の御前、祀る場所の前」などを差します。
(1)浄土真宗…「御仏前」
(2)他の仏教宗派…四十九日まで「御霊前」、忌明け後から「御仏前」
けれども浄土真宗では、そもそも故人の霊魂が成仏しこの世にないため、お通夜や葬儀から、準備する御香典の表書きは、成仏した後に扱う表書き「御仏前」です。
浄土真宗におけるお悔みの言葉
◇人が亡くなってすぐ成仏する浄土真宗でお悔みの言葉は、残されたご家族に掛けます
浄土真宗の葬儀に参列した人は、故人について優しい言葉をかけることで、家族や友人へのお悔やみを表すことができます。
例えば、浄土真宗の葬儀では、次のような弔辞がふさわしいでしょう
「故人との別れを惜しむために、大きな悲しみをもって参りました。」
「故人の素晴らしい人生に、感謝の祈りを捧げます。」
「この悲しみの時、故人の優しく無私の精神を思い出します。」
「故人のご家族、ご友人に心から哀悼の意を表します。」
浄土真宗の葬儀において、受付で御香典をお渡しする時など、ひと言のみ掛けるお悔みの言葉であれば、「お悔み申し上げます」「哀悼の意を表します」が適切です。
一般的に扱う「ご冥福をお祈りします」などは浄土真宗の葬儀では適しません。
浄土真宗でお香を立てるマナー
◇浄土真宗では、両手に香を持ちながら深くお辞儀をします
浄土真宗の葬儀では、献香の際のマナーを守ることが大切です。お香は故人と心を通わせるものですから、浄土真宗では、会葬者は自分のエゴを捨てて、お香をあげてからお参りすることになっています。
・お香は肩の高さに持つ
・両手を開いて下向きにする
祈りの言葉は、どのように発するべきかという先入観を持たず、心を開いて捧げることができます。
浄土真宗での供養の方法や注意点について
◇浄土真宗と他の仏教宗派では、考え方の違いから供養の仕方や、扱う仏具が微妙に違います
阿弥陀如来の本願力のため、人が亡くなるとすぐ成仏する浄土真宗では、他の仏教で供養の対象となる「故人の霊魂」がこの世にありません。
そのため故人が授かる戒名(かいみょう)や位牌がないなど、細かな部分で供養の形が変わるため注意が必要です。
浄土真宗の「法名」とは
◇「法名(ほうみょう)」とは、浄土真宗における仏弟子となった証の名告り(なのり)です
他の仏教宗派における「戒名(かいみょう)」にあたりますが、生前に授かる戒名はあるものの、現代では一般的に戒名は故人に付けられます。
けれども浄土真宗における法名は、阿弥陀仏の教えを守りながら、出家せずに生きる証として授かる名前です。
そのため法名は戒名とは違い、生前にのみ授かる名告りとされます。
浄土真宗には位牌がない
◇浄土真宗には、故人の霊魂の依り代となる「位牌(いはい)」が必要ありません
なぜなら浄土真宗では、故人の霊魂はすぐに成仏して天界に昇天されているためです。そこで浄土真宗のお仏壇には、下記2つの仏具を祀る風習があります。
・過去帳(かこちょう)
・法名軸(ほうみょうじく)
一般的に浄土真宗の仏壇では、法名軸をお仏壇内に祀り、過去帳は日ごろは引き出しなどに保管する家が多いでしょう。
浄土真宗の仏具、過去帳とは
◇「過去帳(かこちょう)」とは、先祖代々の法名や俗名、没年月日や享年などが記された帳面です
浄土真宗のお仏壇では、普段は仏壇の引き出しなどに過去帳をしまい保管しますが、法要の時には対象の故人のページを開いて祀ります。
また過去帳をしまって祀る「過去帳位牌」などもあるでしょう。
先祖代々の情報が記載され、その家の系譜としての役割も果たすため、現代では浄土真宗のみならず、無宗教や他の仏教宗派まで、あらゆる家で扱われるようになりました。
・過去帳とは?位牌とは?何のために必要なの?位牌との違いや使い方・置き方を詳しく解説
浄土真宗の仏具、法名軸とは
◇「法名軸(ほうみょうじく)」とは、位牌に代わる小さな掛け軸です
法名軸には位牌と同じく、故人の没年月日や法名、俗名、享年などの情報が記載されています。
ただ浄土真宗のお仏壇には必ず法名軸を祀らなければならない訳ではありません。お仏壇のスペースが充分ではない家では、法名軸を祀らずに過去帳のみを保管することもあるでしょう。
浄土真宗には弔い上げがない
◇「弔い上げ(とむらいあげ)」とは、一般的に故人を供養する最後の法要です
けれども浄土真宗ではそもそも故人の霊魂がこの世にありませんから、弔い上げの概念もありません。
●ただし、浄土真宗では仏様との仏縁として、他の仏教宗派と同じく年忌法要を執り行っており、一般的に三十三回忌を最後とする家が多いでしょう。
また、そもそも「この法要をもって供養を終えますよ」と言う考え方で執り行う「弔い上げ」は、生きる者の観点によります。本来の「弔い上げ」とは、寺院で執り行う丁寧な法要です。
弔いは故人を想い偲ぶことであり、弔い上げを終えても終えなくても、日々の暮らしのなかでその都度都度、思い出しては偲んで良いものではないでしょうか。
浄土真宗では遷仏法要を行う
◇故人の霊魂が宿る位牌がない浄土真宗では、開眼供養・閉眼供養に代わる「遷仏法要」を行います
「遷仏法要(せんぶつほうよう)」とは、お仏壇をしまう、修復や引っ越しなどのために移動する際、一時的に御本尊様に移動していただくための法要です。
「遷座法要(せんざほうよう)」とも呼ばれ、他の仏教宗派における開眼供養・閉眼供養にあたります。
浄土真宗では人が亡くなるとすぐ成仏します
浄土真宗は他の仏教宗派とは違い、生けとし生きる者全ては「南無阿弥陀仏(なむあみだぶつ)」と唱えることにより、阿弥陀如来様の本願力により、亡くなるとすぐに成仏します。
この「他力本願」の考え方は、現代でこそ「他人の力」と捉えられていますが、本来は阿弥陀如来様の慈悲の働き「他力(タリキ)」です。
浄土真宗は、信仰、慈悲、苦悩を超越する力という安らぎの視点を与えてくれる宗派と言えます。
この宗派は、「御霊前」の考えを持たず、念仏の概念を重視しています。浄土真宗の葬儀では、香典を用意したり、故人を偲ぶ言葉をかけるなど、適切なマナーを守って弔意を表すことが重要です。