・そもそも弔い上げとは?
・弔い上げはいつ、どこで行うの?
・弔い上げを早めることはできる?
・弔い上げの準備とは?
・弔い上げの流れとは?
弔い上げとは故人を供養する最後の法要で、家族にとってはひとつの区切りです。本記事を読むことで、故人のご家族が弔い上げを行うにあたり、スムーズに進めることができます。
また弔い上げを早めたり、しない場合についても解説していますので、どうぞ最後までお読みください。
弔い上げとは
◇弔い上げとは、故人を供養するための最後の法要です
弔い上げとは、亡くなった方を供養するために行われる最後の法要であり、故人の霊を慰めるための儀式です。この儀式は、家族や親族、友人などが一堂に集まり、故人の人生や業績を回顧し、最後の別れを告げる場でもあります。
・お供え物(食べ物やお菓子、花束など)
・読経供養
・お線香
・お墓参り
・位牌の閉眼供養
弔い上げは、その地域や文化、宗教によって様々な儀式がありますが、共通しているのは、故人に対する尊敬や感謝の気持ちを表現する場であることです。
浄土真宗に弔い上げはない
◇浄土真宗には「弔い上げ」の概念はありません
人が亡くなるとすぐに成仏する「往生即成仏」の教えがある浄土真宗では、そもそも死後すぐに故人の霊魂は成仏するため、弔い上げの概念もありません。
浄土真宗でも三回忌・七回忌…と法要を執り行いますが、故人の供養を目的としているのではなく、年忌法要を通して仏様との仏縁をいただくためとされます。
弔い上げを早めることはできる?
◇弔い上げの目安は一般的に三十三回忌ですが、早めることができます
弔い上げの期間には、一般的に三十三回忌が設定されていますが、これはあくまでも目安であり、必ずしも厳格に守る必要はありません。実際、早期に弔い上げを済ませたい場合は、一般的な期間よりも短くすることもできます。
●ただし、まず家族親族で話し合い了解を得ることが大切です。
…また早めに弔い上げを行うことが適切かどうかを考慮し、故人の人生や信仰に沿った形で行うように心がけましょう。
加えて弔い上げには、仏教や神道など、宗教によって異なる慣習があるため、宗旨宗派によるの慣習の違いを事前に確認を行い、適切な形で弔い上げを行います。
弔い上げの期間や形式については、様々な考え方があるものの、故人を偲び、敬意を表す行為であることに変わりはありません。適切な形で行うことで、故人の思い出を大切にし、周囲の人々が少しずつ和らいでいくことができます。
弔い上げをしないとどうなる?
◇弔い上げはあくまでも宗教上の儀式です
そのため無宗教やキリスト教では、弔い上げを行わないこともあります。キリスト教については詳しくは後述しますが、仏教では弔い上げにより故人の霊魂が極楽浄土へ成仏する、との考えです。
●そのため無宗教や、弔い上げを必要としない宗旨宗派であれば、必ずしも必要ではありません。
ただし弔い上げは供養を行う区切りであり、故人を介して生きる人々が集まる最後の場でもあります。そのため弔い上げを早めても、区切りを付けたいとする家族が多いです。
沖縄の弔い上げは?
◇独自の祖霊文化が根付く沖縄では、三十三年忌をもって弔い上げです
沖縄には檀家制度がなく、独自の祖霊文化が根付いているため、年忌法要は呼び名も進め方も独自の風習があります。
・弔い上げ…ウワイスーコー(終わり焼香)
沖縄では神道と同じく、故人は亡くなると家を守護するカミ(神)として崇拝の対象になりますが、故人がカミ(神)となるタイミングがウワイスーコー(終わり焼香)です。
●ワカスーコー(若焼香)
・イヌイ(一年忌)…命日から1年目
・サンニンチ(三年忌)…命日から2年目
・シチニンチ(七年忌)…命日から6年目
・ジュウサンニンチ(十三年忌)…命日から12年目
●ウフスーコー(大焼香)
・ニジュウグニンチ(二十五年忌)…命日から24年目
・サンジュウサンニンチ(三十三年忌)…命日から32年目
※ウワイスーコー(終わり焼香)
今でも地方では、ウワイスーコー(終わり焼香)にはウティジンカビと呼ばれる人の姿を模した絵が描かれた赤い紙を焚いて、ウティン(天)へ送る儀式を行う地域があります。
けれども一般的に、現代では沖縄でも読経供養による弔い上げが多いでしょう。
・沖縄の「スーコー」とは?独自の御願文化を持つ沖縄では、どのように故人を供養するの?
神道における弔い上げとは
◇神道では五十年祭が「祭上げ」、仏教における弔い上げです
神道では人が亡くなると、仏教の法要に相当する儀式として霊祭(れいさい)・式年祭(しきねんさい)を行います。
そのうち式年祭が、仏教における年忌法要にあたり、式年祭のうちでも五十年祭が祭上げとされる弔い上げです。
・一年祭…命日から1年
・三年祭…命日から3年
・五年祭…命日から5年
・十年祭…命日から10年
・二十年祭…命日から20年
・三十年祭…命日から30年
・五十年祭…命日から50年(一般の人々は祭上げ)
・百年祭…命日から100年
神道では読経に代わり神主が祝詞を唱えて祭り上げます。この御霊祭(みたままつり)を行う日は、法要ではなく祭日と呼ばれ、数え方も満で数えるのが特徴です。
ちなみに神道では仏教の四十九日法要にあたる五十日祭をもって忌明けとし、位牌にあたる霊璽(れいじ)は家庭で祀られます。
・神道の供養で祀る「霊璽(れいじ)」とは?作り方や費用相場・タイミング、置き方を解説
キリスト教における弔い上げとは
◇キリスト教には、死者を弔うための特別な儀式である弔い上げはありません
キリスト教では、死者が神の元へ旅立つことを祝福し、その魂が永遠の命を得ることを願います。多くの場合、教会での葬儀の式は、礼拝や祈りを捧げることで故人を讃えるものです。
●キリスト教では、死者を弔うために特別な祈りや儀式を行うことはありませんが、悲嘆に暮れる家族や友人に対しては、思いやりと支援を示します。
…聖書には、悲しみに暮れる人々を慰め、癒すための言葉が記されています。
弔い上げとは異なる形式の葬送儀礼がありますが、キリスト教の葬儀の式は、故人を神のもとに送り届け、家族や友人を慰め、故人の生涯や信仰について思い出し、感謝するためのものであることが理解されています。
弔い上げを行うタイミング
◇弔い上げは宗旨宗派により異なりますが、仏教では一般的に三十三回忌とする家が多いです
弔い上げの方法には、宗旨宗派によって異なる点があります。しかしながら、一般的に仏教では、故人が亡くなってから三十三日目にあたる「三十三回忌」を迎える際に、弔い上げの儀式を行う家庭が多いです。
●三十三回忌は、故人がこの世を去った後の33日目を意味し、この日は仏教的に、故人の魂がこの世界にとどまる最後の日とされます。
…そのため、故人の冥福を祈り、仏教的な儀礼を行うことが多いのです。弔い上げは、故人を偲ぶ大切な行事であり、故人の冥福を祈るためにも大変意味があります。
ただし弔い上げは一般的には仏教に由来するものですが、宗教にとらわれず、故人を偲ぶこと自体はそれぞれの信仰や文化に基づいて行うことができます。
真言宗の弔い上げ
◇真言宗では三十三回忌が一般的な弔い上げです
真言宗における法事の特徴は、二十三回忌と二十七回忌がない点です。ただ真言宗では二十五回忌があり、次の三十三回忌が弔い上げとなります。
・一周忌
・三回忌
・十三回忌
・十七回忌
・二十五回忌
・三十三回忌…弔い上げ
真言宗では三十三回忌に弔い上げを行った後も、「遠忌法要(えんきほうよう)」として五十回忌、百回忌…と、続く家もあるでしょう。
臨済宗の弔い上げ
◇臨済宗では三十三回忌が弔い上げです
沖縄の寺院にも多い臨済宗では、真言宗と同じく二十三回忌・二十七回忌がありません。二十五回忌を行った後、三十三回忌で弔い上げとなるでしょう。
・一周忌
・三回忌
・十三回忌
・十七回忌
・二十五回忌
・三十三回忌…弔い上げ
沖縄の御願における年忌焼香と似ています。
曹洞宗の弔い上げ
◇曹洞宗でも三十三回忌が弔い上げですが、弔い上げ後も年忌法要を行うことがあります
曹洞宗でも二十三回忌・二十七回忌がなく、二十五回忌を執り行う流れが一般的ですが、現代では二十五回忌を行わずに二十三回忌・二十七回を執り行う家も多いです。
・一周忌
・三回忌
・十三回忌
・十七回忌
・二十三回忌(※)
・二十五回忌
・二十七回忌(※)
・三十三回忌…弔い上げ
ただ曹洞宗では弔い上げを終えた後も五十回忌・百回忌…と執り行う家もあるでしょう。
日蓮宗の弔い上げ
◇日蓮宗では一般的に三十三回忌を弔い上げとします
ただ日蓮宗は基本的に弔い上げと言う概念が存在しません。そのため日蓮宗の弔い上げは、法要を執り行っていた施主が存命中のみ、法要を続ける流れが多いです。
そのため故人の法要を執り行っていた施主が亡くなると、弔い上げになる家も少なくありません。
天台宗の弔い上げ
◇天台宗では二十五回忌を行い、続く三十三回忌が弔い上げです
天台宗でも二十三回忌と二十七回忌は省略します。そして二十五回忌を執り行い、続く三十三回忌で弔い上げの流れが一般的です。
・一周忌
・三回忌
・十三回忌
・十七回忌
・二十五回忌
・三十三回忌…弔い上げ
天台宗も含め、仏教の教えではどんな罪を犯した人も三十三回忌により成仏するとされ、三十三回忌を終えた後は、故人の戒名を記載した位牌は片付けます。
施主が行う、弔い上げの準備
◇「施主(せしゅ)」とは、法要を執り行う主催者です
弔い上げは、亡くなった方との最後のお別れとして、多くの人々が重要視しています。そして、その弔い上げを主催するのが施主であり、それに当たることは非常に責任ある役割です。
弔い上げの準備:場所の確保
◇弔い上げの場を確保します
故人や遺族に愛された場所や風景が心地よかった場所をリサーチし、参列者が集まりやすい場所を見つけます。自宅での弔い上げができるならば、自宅で行うと良いでしょう。
・自宅
・斎場の個別スペース
・納骨堂や霊園の個別スペース
・寺院
…など
弔い上げの準備にあたり葬祭業者に依頼している場合は、場所の予約や僧侶の読経依頼も進めてくれるでしょう。納骨堂や霊園に遺骨を埋葬、預けている場合には、個別の法要スペースを提供する施設もあります。
菩提寺がある場合は、読経供養はまず菩提寺のご住職へ相談してください。
・「檀家制度」とは、「戒名」は必ず必要?菩提寺(檀那寺)との関係性
弔い上げの準備:読経供養の依頼
◇僧侶へ弔い上げの読経供養を依頼します
一般的に弔い上げは仏式で行います。僧侶に読経供養を依頼し、スケジュール調整をしながら場所の確保も同時に行うと良いでしょう。
・近隣の寺院のご住職
・霊園や納骨堂施設に相談
・仏壇仏具店に相談
・葬祭業者に相談
・ネットの僧侶派遣
…など
また神式であれば神社の神主に依頼すると良いでしょう。キリスト教や無宗教では弔い上げの概念はないため、知人や友人などを集めて、故人を偲ぶことが弔いになります。
弔い上げの準備:参列者への案内
◇スケジュールや弔い上げの場所が決まったら、参列して欲しい人々へ案内状を送ります
ただし小さな規模での弔い上げでは、電話のみで済ませるケースも増えました。案内状を送る際、参列者が迷わないよう、下記の点を明記してください。
・法要後の会食の有無
・参列時の服装(喪服・平服)
・駐車場案内
・ご香典辞退の有無
近年では小さな規模の弔い上げの場合、ご香典をいただかない「ご香典辞退」のケースも増えています。その場合、引き物も準備しない家が多いでしょう。
また会食の有無によっても、参列者は持参するご香典の相場が変わります。案内状を送るに当たり、上記を家族間で決めて送ると丁寧です。
弔い上げの準備:当日の手配
弔い上げに時間を割いて来ていただく参列者や僧侶に対し、快適に過ごしていただけるよう、おもてなしとしての手配です。
例えば、お昼時間がかぶるようであれば仕出し弁当やお斎の場を準備します。駐車場の手配などは施主ひとりでは難しいこともあり、家族や故人と近しい人など、複数の人々へ協力を仰ぐと良いです。
・参列者への案内状の発送
・荷物受付
・駐車場案内
・飲食物やお菓子などを用意
また葬祭業者に弔い上げを依頼した場合、希望を伝えることで整えてくれます。大きな弔い上げになり、引き物を準備する場合もあります。
弔い上げのお布施
◇弔い上げで包むお布施の相場は、約3万円~10万円です
故人を供養する最後の法要となる弔い上げでは、普段の法要よりも包むお布施も高くなるでしょう。
●沖縄ではお布施相場が低い傾向にあります。
・平均的に約3万円~10万円
●お布施とともに包むもの
・御車代…約3千円~1万円(タクシー代を目安に)
・御膳代…約3千円~5千円(会食1人分を目安に)
また弔い上げ当日に位牌の閉眼供養などを行う場合は、2回の読経供養として2回分のお布施をまとめて包みます。僧侶に出張いただいているならば、御車代も包むと良いでしょう。
・沖縄の法要でお布施を包む。僧侶へ渡す時の準備やマナーとは
弔い上げの流れ
◇弔い上げは一般的に施主の挨拶から始まり、読経と焼香を行います
また弔い上げに伴い、位牌から故人の霊魂を外す閉眼供養や、お墓参りを行う家もあるでしょう。故人を介して親族や知人友人が集まる最後の法要となるため、弔い上げの後には会食の場であるお斎(おとき)を設ける施主もいます。
・施主挨拶
・読経供養(弔い上げ)
・お焼香
・閉眼供養(位牌の霊魂を外す)
・お墓参り
・お斎
位牌の閉眼供養を行うタイミングは家によりさまざまです。ただ僧侶をお呼びしているため、同日に合わせて済ませる家は多いでしょう。
また現代では位牌を仏壇仏具店に預け、閉眼供養まで託すことも多いですが、もしも閉眼供養を執り行いたい場合は、弔い上げと同日が便利です。
弔い上げの施主挨拶
弔い上げでの施主挨拶は、まずお忙しいところ参加してくれた参列者の皆さまへの感謝を述べます。続いて、年忌法要を終える弔い上げにあたり、気持ちをお伝えすると良いでしょう。
参列者は弔い上げの施主挨拶には遅れないよう、注意をしましょう。
弔い上げ
◇弔い上げでは施主挨拶を終えるとすぐに読経供養が始まる流れが一般的です
読経供養が始まり少し経ったら、施主を筆頭に故人と近しい関係性の人から、順番にお焼香を済ませてください。
最後に知人友人などの一般参列者が、家族親族に続きます。しばしば、ごく近しい親友などが家族親族と一緒にお焼香を行うこともあるでしょう。
位牌の閉眼供養
◇弔い上げをもって故人の霊魂を位牌から外します
故人の霊魂を位牌から外す儀礼は、一般的に読経供養よる閉眼供養です。魂抜きなどとも呼ばれます。
閉眼供養を終えた位牌は、故人の霊魂が宿らない「物」になりますが、長く供養をしてきた位牌ですから、お焚き上げや永代供養として処分すると良いでしょう。
・位牌は処分できる?きっかけや相談先、5つの処分方法と費用の相場、注意点を詳しく解説
弔い上げ後のお墓参り
弔い上げの法要会場からお墓が近い場合、お墓参りを行う家も多いです。参列者にご案内を出す場合には、お墓参りまで行うことをご案内してください。
もしくは弔い上げの法要までは知人友人などの一般参列者まで参加し、お墓参りは家族のみ、とすることもあります。
弔い上げ後のお斎
弔い上げの後に会食の場「お斎(おとき)」を準備している場合にも、弔い上げ法要のご案内状にその旨を記載してください。一方、お斎の場がない弔い上げでも、ないことをお知らせします。
お斎がある場合、弔い上げを依頼する僧侶にも出欠を確認して、欠席の場合にはお布施とは別に「御膳代」をお渡しするのがマナーです。一般的に3千円~5千円を包みますが、お斎の食事代1人分が目安となります。
弔い上げは早めることもできます
このように弔い上げは早めることもできますし、基本的な読経供養やお焼香以外は、内容も施主の判断によります。
亡くなった方への哀悼の意を表し、家族や大切な人たちと一緒に時間を過ごすことは大切なことですが、弔いは必ずしも長期間行わなければならないものではありません。
弔いは一定の期間を過ぎたら、自然な形で終わらせることが望ましいと言えます。ただ、故人への愛情は永遠であり、彼らが私たちの心の中に生き続けることを忘れてはなりません。
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