・散骨とはなに?
・散骨のメリット・デメリットは?
・散骨の費用相場は?
散骨とは、故人のご遺骨を海や山など、自然に還す形式の一つです。故人の意志を尊重し、自然に還す形式である散骨も、最近では一つの選択肢として注目されるようになりました。
本記事では、散骨について徹底解説します。散骨のメリット・デメリット、散骨の種類、散骨をする費用相場、そして散骨をする手順や注意点まで、細かくお伝えします。
故人を大切にし、遺族の皆様がよりよく送るための情報をご紹介しますので、どうぞ最後までお読みください。
散骨とは?意味と由来について知ろう
◇「散骨(さんこつ)」とは、故人の遺志を尊重し、自然豊かな環境の中で遺骨を散骨することです
亡くなった大切な人との別れを、より個人的で有意義なものにすることができるため、ますます人気が高まっています。散骨の歴史は古代ギリシャ・ローマ時代までさかのぼり、歴史上、故人への敬意を表す方法としても用いられてきました。
散骨の種類と費用相場を徹底解説
◇一般的な散骨の種類には、海洋散骨、里山(山林)散骨などがあります
この他、稀にではありますが宇宙で遺骨を散骨する「宇宙葬」や、バルーンの中に散骨を入れて飛ばす「バルーン葬」なども登場しました。
・海洋散骨
・里山(山林)散骨
海外では風に乗せて散骨するものもあります。「千の風に乗って」ではないですが、風に乗せる散骨は、魂が解放されることを象徴する一般的な選択肢です。
散骨にかかる費用は、選択した散骨の種類によって異なります。海洋散骨、里山(山林)散骨ともに、委託散骨や立ち会い散骨など、さまざまな形式によって費用相場も幅広くなるでしょう。
海洋散骨の費用相場
◇海洋散骨の費用相場は、散骨方法によって約5万円~50万円ほどです
現代の散骨は海に遺骨を撒く海洋散骨が多いでしょう。海洋散骨にはご遺族が散骨に付き添うか、業者に委託するか、など、散骨方法により費用相場も幅が広がります。
<海洋散骨の費用相場> | ||
・委託散骨 | 業者に散骨を委託 | 約5万円~10万円 |
・合同散骨 | 他の家族と船を共有 | 約18万円~25万円 |
・チャーター散骨 | 家族のみで散骨 | 約30万円~50万円 |
やはり船を自分達専用でチャーターすれば、それだけ散骨費用が掛かるでしょう。また散骨にあたるセレモニーサービスや記念品によっても費用が変わります。
「どのような散骨セレモニーがあるか?」内容を確認して比較検討してください。
里山(山林)散骨の費用相場
◇里山(山林)散骨は、約5万円~30万円と比較的安価です
里山(山林)散骨は、散骨業者や霊園などの所有している山林や、故人のご遺族が所有する里山などで散骨するケースが多いでしょう。
散骨セレモニーにあたり僧侶や神職に供養があるかないかで、里山(山林)散骨の費用相場は変わります。
<里山(山林)散骨の費用相場> | |
・散骨のみ | 約5万円~15万円 |
・供養あり | 約10万円~30万円 |
私有地であっても山での散骨は自治体への許可や、近隣住民への配慮が欠かせません。適切な業者に依頼することで、トラブルリスクを避けることができます。
山林は天気の影響を受けやすいため、特に散骨セレモニーに子どもが参列するならば、気候の変化が起こりやすい夏や冬は避け、良い天気の日に行うと良いでしょう。
散骨のメリット・デメリットを理解しよう
◇散骨には故人への哀しみが癒されるプロセスとなりますが、デメリットまで理解して判断してください
散骨は故人を偲び敬意を表し、区切りをつけることができます。悲しみのプロセスを助け平和な感覚をもたらす一方、親族間のトラブルや地域トラブルリスクもあるため、メリット・デメリット双方を理解して家族間で納得しながら進めると良いでしょう。
・散骨について調査する
・散骨業者を複数調べる
・家族で話し合い、関係者の想いを共有する
しかし散骨にはデメリットもあります。遺骨が残らない他、散骨の種類によっては法的な制約がある可能性があるので、散骨業者に依頼するとともに、事前に調べていくことも大切です。
散骨のメリット
◇散骨は故人本人が生前に希望しているケースが多い
散骨は多くが故人本人が生前に、口伝てや遺言で希望していたことが多いでしょう。終活において葬送の希望として散骨はよく選ばれます。
特に2000年代以降、日本でも自然崇拝にあたるアミニズム的価値観をもって、地球環境へ最も負荷が少なく、自然への敬意を表す方法として本人が希望するケースが増えました。
散骨のメリット①自然への敬意
◇自然葬のひとつである散骨は、遺骨を自然に還す葬送です
仏教において遺骨は「埋葬しなければ故人は成仏しない」と信じられてきました。けれども宗旨宗派不問の民間霊園が登場し、特定の寺院を信仰する檀家から離れ無宗教になる家が増えています。
一方で日本では昔ながらの太陽信仰とも言われる、自然崇拝・アミニズム的価値観を持つ人々が増えました。
「自然から産まれてきた私の体は、自然に還して欲しい」との希望が多いです。
散骨のメリット②グリーフケア
◇散骨セレモニーを通して、残された遺族のグリーフケアになります
「グリーフケア」とは、大切な人を失ったショックや喪失感から立ち直れない状態へのケアと回復の道です。「グリーフ」は大切な人を失った喪失感を差します。
グリーフケアのひとつに、「セレモニーを通して大切な人の死を受け入れる」流れがありますが、散骨セレモニーもそのひとつになり得るでしょう。
お通夜や葬儀、それに続く一連の法要も、忙しいではありますが、残されたご遺族にとって、グリーフケアの一助になるものです。
散骨のメリット③継承や管理がない
◇お墓を建てずに遺骨を全て散骨した場合、お墓の継承や管理の負担がありません
自由に住処を選ぶ現代、お墓の継承問題は深刻化しています。経済面でも霊園にお墓を建てると年間管理料が必要ですし、沖縄では個人墓地に建つお墓も多いものの、その管理は墓主にとって大変です。
散骨では故人の遺骨は自然に還されるため、遺骨は残りません。必然的にお墓の管理の負担もなく、継承問題も勃発しないことになります。
散骨のメリット③費用が抑えられる
◇お墓を建てる選択と比べて、散骨は各段に費用が抑えられます
ひと昔前のように一基300万円~600万円と高価なものではなくなったものの、お墓を建てるとなると、平均的に100万円以上は予算を組まなければなりません。
・納骨堂…平均83.6万円
・樹木葬…約69.6万円
[参考](株)鎌倉新書2022年度「お墓の消費者全国実態調査」より
けれども海洋散骨を例にとると、散骨業者に依頼したとしても、前述したように代行散骨で約5万円~、立ち会い散骨であっても約18万円~散骨ができます。
散骨のメリット④どこでも供養ができる
◇海や山、空へ散骨をすることで、自然へ向かい供養ができます
海外に多い考え方ですが、海や山、空へ散骨をした後、残された家族は毎日の暮らしのなかで、ふと海や空を見上げながら、故人を弔い偲び、供養が可能です。
「いつも見守ってくれている」そんな感覚で、故人との新しい関係性を築くことができるでしょう。
散骨のメリット⑤故人の自由
◇散骨を選ぶご遺族のなかには「故人を自由にしてあげたい」とする人もいます
例えば、「長い闘病生活で入院生活が続き、故人が生前に自由に動き回れなかった…」などのケースです。
この他にも、母親が「義理の家族と同じお墓に入りたくない」と遺言を残したケースでは、息子が「嫁姑問題や介護で、苦労の多い人生だった」として、「亡くなった後は自由にのびのびと過ごして欲しい」と散骨したケースがあります。
散骨のデメリット
◇散骨のデメリットを理解して、後悔のない選択が必要です
散骨にはメリットもありますが、当然デメリットもあります。ただ散骨を済ませてしまうと遺骨が残らないため、後々後悔しても取り替えしが付きません。
この点を理解して家族や親族で話し合い、関係者が納得してから散骨を選ぶと良いでしょう。
散骨のデメリット①遺骨が残らない
◇自然に遺骨を撒く散骨は、後々手元に遺骨が残りません
散骨の最大のデメリットは遺骨が手元に残らない点です。後々後悔したり、家族や親族から不満の声があっても、散骨してしまったものは取り替えしがつかないため、注意をしてください。
●分骨により一部を残す選択もあります
ただし故人の遺骨を分骨して、一部のみ散骨することは可能です。そのため近年では、「散骨+手元供養」として、残された遺骨を手元に残す選択肢も広がっています。
・沖縄で増えた分骨の手続きと予算の目安。埋葬した後も分骨はできるの?
散骨のデメリット②親族間のトラブルリスク
◇日本では馴染み深い方法ではない散骨は、親族に反対を受けやすいです
檀家制度が長年根付き、意識的にも無意識的にも仏教の教えに馴染みが深い日本では、「遺骨は埋葬しないと成仏しない」とする家族や親族もいます。
またお墓に遺骨を埋葬しない場合、状況によってはお墓の継承や相続問題にも発展しかねません。
●分骨により、一部をお墓に埋葬するなどの解決策もあります
お墓や遺骨に対する思いは人によってさまざまです。終活で本人が散骨を希望するとしても、まずは家族や親族、関係者と話し合って進めましょう。
散骨のデメリット③近隣住民トラブル
◇散骨は遺骨を撒くため、散骨する地域や近隣住民から苦情を受けるリスクがあります
散骨は亡くなった人の遺骨を撒くセレモニーです。故人を知るご遺族であれば問題はなくても、関係のない近隣住民にとっては、良い気持ちはしないでしょう。
●散骨は専門業者に依頼して行います
そのため確かに散骨は個人でできないこともないですが、近隣住民や地域とのトラブルリスクを回避するため、散骨業者に依頼して行います。
散骨のデメリット④法的な問題は?
◇散骨は2023年現在、違法ではありません。ただし自治体で禁止していることもあります
2023年現在、散骨は違法ではありませんが、法の整備が行き届いていない「グレーゾーン」とも言われてきました。そのため自治体によっては、散骨を禁じる地域もあります。
●散骨業者に依頼します
ただし散骨業者も船を持っているから良い訳ではありません。例えば遊覧船で散骨を行う業者の場合、散骨にあたり許可を得ていない可能性もあるでしょう。
現代ではほとんどありませんが、散骨実績がある、母体が葬送業者や霊園など、より信頼のおける散骨業者を選びましょう。
粉骨していない遺骨を屋外に放置した場合、刑法190条(死体損壊等)に抵触する可能性もあります、注意をしてください。
散骨のデメリット⑤お参りができない
◇お墓や仏壇のある供養とは違い、墓標や供養の対象がありません
例えばお墓やお仏壇に祀られる位牌が、供養の対象になりますよね。日本では長年、供養の対象をもってお線香をあげて手を合わせてきました。
・お盆
・法要
沖縄では清明祭(シーミー)などもありますが、このような行事をお墓やお仏壇を前に執り行うことが難しくなります。
ただし、日々の暮らしのなかで故人を思い出し偲ぶことはもちろん、散骨業者のなかには定期的に散骨地点まで船を出すメモリアルクルーズなどを提供している業者もあるでしょう。
散骨の手順と注意点を知って、安心して散骨しよう
◇散骨にはまず、遺骨を粉骨します
2023年現在、散骨については違法にはあたりませんが、前述のように刑法第190条に抵触する恐れもあるため、遺骨を粉骨してから散骨するのが一般的です。
死体,遺骨,遺髪又は棺に納めてある物を損壊し,遺棄し,又は領得した者は,三年以下の懲役に処する。
粉骨は遺骨の大きさや粉骨の仕方によっても異なりますが、平均的に約1万円~3万円です。最初に散骨業者を決めて依頼することで、粉骨も受けてくれる流れが多いでしょう。
・必要があれば分骨(火葬場)
・散骨業者を決める
・散骨依頼
・粉骨
・散骨
・散骨後のアフターケア
…以上になります。散骨後のアフターケアとは、手元供養や合祀埋葬など、残された遺骨の供養方法を決めたり、今後の供養を行うなどを差します。
・沖縄でお墓がない時にできる遺骨の供養とは。予算で選ぶお墓のない3つの葬送
散骨は専門業者に依頼しよう
◇散骨は地域の許可や自然環境への配慮もあるため、専門業者へ依頼します
散骨セレモニーを行うにあたり、地域や住民への配慮、海洋散骨であれば航路を避けた場所選びなど、複雑な確認があるため、専門業者へ依頼した方が安心です。
・航路から離れた場所を選ぶ(海洋散骨)
・地元自治体に制限がないことを確認
・セレモニーを実施する許可
また散骨業者では粉骨も併せて受ける業者が多いでしょう。この他、散骨セレモニー後の供養やメモリアルサービスをそれぞれに提供してくれます。
散骨後のアフターケア
◇散骨業者を選ぶならば、散骨後の供養についても確認して選びます
散骨はこの時限りですが、残された者はこの先も故人を偲び供養を続けますよね。故人を偲びセレモニーを積み重ねることで、グリーフケアにも繋がります。
<散骨後のアフターケアの一例> | |
・メモリアルクルーズ | 散骨後の定期的な運航 |
・メモリアル品 | 記念品 |
・合同の墓標など | 散骨後に特定の墓標 |
・手元供養 | 残された遺骨を手元供養 |
・合同供養 | 合同で定期的な供養 |
そこで散骨業者を選ぶならば、アフターケアも比較検討すると良いでしょう。
・沖縄の海洋散骨とは?違法ではないの?安心して託せる沖縄おすすめ海洋散骨5社をご紹介
散骨はメリットデメリットを理解して、業者に依頼しましょう
散骨は故人の遺骨を自然に還すという、個人的な意味や象徴的な性格を持つことから、現代においてより一般的な形態となりつつあります。
散骨には多くのメリットとデメリットがあり、実施する前にすべての詳細と手順を理解することが重要です。
散骨のあらゆる側面を理解することで、大切な人を安心して送り出すことができ、後々まで温かな気持ちをもって、故人を偲ぶことができるでしょう。