沖縄の「スーコー」とは?独自の御願文化を持つ沖縄では、どのように故人を供養するの?

2022.12.19
沖縄の「スーコー」とは?独自の御願文化を持つ沖縄では、どのように故人を供養するの?

「スーコー」とは沖縄の法事・法要全般を差し漢字で「焼香」です。主には「ナンカスーコー(七日焼香)」と「ニンチスーコー(年忌焼香)」に分かれます。今回はスーコー(焼香)とは何か、いつどのようなタイミングでスーコー(焼香)を行うかを解説します。

●「スーコー」とは沖縄の法事・法要全般を差し、漢字で「焼香」と書きます

主には「ナンカスーコー(七日焼香)」と「ニンチスーコー(年忌焼香)」に分かれ、読み方に違いはあるものの、全国的な法要とほとんど同じ役割です。

・スーコー(焼香)とは
・ナンカスーコー(七日焼香)とは
・ニンチスーコー(年忌焼香)とは

今回はスーコー(焼香)とは何か、また、いつどのようなタイミングでスーコー(焼香)を行うかを解説します。

スーコー(焼香)とは

スーコー(焼香)とは
●スーコー(焼香)とは、沖縄の法事法要など、追善供養の儀礼です

冒頭でお伝えしたように、スーコー(焼香)は全国的な習慣で言うところの法要や追善供養にあたりますが、独自の御願文化を持ち檀家制度が根付いていない沖縄では、必ずしも読経供養が行われる訳ではありません。

<スーコー(焼香)とは>
御願文化に基づく儀礼
・僧侶を手配した、読経供養

…とは言え、現代の沖縄ではスーコー(焼香)の約8割が僧侶による本州式の読経供養です。

その昔の沖縄で行うスーコー(焼香)の司祭者は、沖縄でセジ(霊力)を持つとされるユタやノロでしたが、現在の沖縄ではユタやノロが付く家も多くはありません。

それでも沖縄のスーコー(焼香)は、本州の法要と全く同じかと言えばそうではなく、独自のお供え物や御願文化により整えられ、その上で読経供養を行う家庭が多いでしょう。

※一例として、沖縄の初七日にあたるハチナンカの進め方をご参照ください。
沖縄のハチナンカ(初七日)☆お供え物と進め方

 

スーコー(焼香)の流れ

●沖縄のスーコー(焼香)では、四十九日までのナンカスーコー(七日焼香)、1年後から始まるニンチスーコー(年忌焼香)が基本です

沖縄で故人やご先祖様の供養は、旧暦行事(年中行事)と、スーコー(焼香)とに分かれ、旧暦行事(年中行事)で行う供養行事としては、下記のような行事を行います。

<旧暦行事で行う供養行事>
・ジュールクニチー(十六日)
シーミー(清明祭)
・タナバタ(七夕)
旧盆
・お彼岸

…などなどで、ミーボン(初盆)なども旧暦行事のひとつでしょう。
一方で追善供養としてのスーコー(焼香)の種類は、下記のようなものがあります。

<スーコー(焼香)の種類>
●ナンカスーコー(七日焼香)
・ウフナンカ
・マドゥナンカ●ニンチスーコー(年忌焼香)
・ワカスーコー(若焼香)
・ウフスーコー(大焼香)

四十九日までに行う週忌法要がナンカスーコー(七日焼香)、その後の一周忌にあたるイヌイ(一年忌)から始まる追善供養をニンチスーコー(年忌焼香)と言います。

また四十九日後のヒャッカニチ(百か日)は、ニンチスーコー(年忌焼香)とする家もありますが、どちらにも当てはまらないとして「スーコー(焼香)」と呼ぶ人も多いでしょう。

沖縄のスーコー(焼香)、本州との大きな違い

●沖縄では早めのスーコー(焼香)はタブーです

ここまでお伝えしたように、沖縄のスーコー(焼香)は全国的な法要にあたります。
例えば一周忌など、全国的な法要では命日に執り行うことがベストですが、日程がずれる時には命日よりも前に行うとされてきました。

けれども沖縄のスーコー(焼香)の場合、命日よりも前に執り行うことを良しとしません

<スーコー(焼香)は命日の後>
①全国的な法要…命日よりもに執り行う
②沖縄のスーコー(焼香)…命日よりもに執り行う

全国的には命日に間に合わせることで、故人への敬意を表しますが、沖縄では命日よりも先に執り行ってしまうと「早く済ませたいと思われる」などと言われます。
この点は、全国と沖縄で全く違うマナーが根付いているので、注意をしてください。

ナンカスーコー(七日焼香)とは

ナンカスーコー(七日焼香)とは
●「ナンカスーコー(七日焼香)」とは、家族が亡くなった日から数えて、七日ごとに行う法要です

本州の週忌法要は家族のみで執り行いますが、沖縄のナンカスーコー(七日焼香)では、奇数週について、弔問客を受け入れる点が大きく違います。

沖縄で「霊が不安定」「霊が家とお墓を行き来する」とされるシジュウクンチ(四十九日)までのナンカスーコー(七日焼香)の期間は、お墓と自宅のお仏壇、両方で追善供養を行う点が特徴です。

<ナンカスーコー(七日焼香)とは>
偶数週が「マドゥナンカ」、奇数週が「ウフナンカ」です。
・ハチナンカ(ウフナンカ)…初七日
タナンカ(マドゥナンカ)…二七日
・ミナンカ(ウフナンカ)…三七日
ユナンカ(マドゥナンカ)…四七日
・イチナンカ(ウフナンカ)…五七日
ムナンカ(マドゥナンカ)…六七日
・シジュウクンチ(ウフナンカ)…七七日

ナンカスーコー(七日焼香)の期間は、供養をすればするほど、後生(ごしょう=あの世)の故人を後押しすると信じられ、より丁寧に執り行われてきました。

けれども最近では、自宅を開放できないなどの理由から、葬儀の日に「繰り上げナンカスーコー(七日焼香)」を行い、シジュウクンチ(四十九日)までのスーコー(焼香)をまとめる遺族も増えています。

ナンカスーコー(七日焼香)について、詳しくは下記をご参照ください。
沖縄のナンカスーコー☆葬儀から四十九日までのスーコー

 

ウフナンカとは

●「ウフナンカ」とは、ハチナンカ(初七日)、ミナンカ(三七日)、イチナンカ(五七日)、シジュウクンチ(七七日)、ナンカスーコー(七日焼香)の奇数週です

ウフナンカと呼ばれる奇数週は、弔問客を受け入れるため規模も大きなスーコー(焼香)として、重箱料理もチュクン(2セット)と多くなります。

<ウフナンカとは:香典の持参>
●昔ながらの沖縄では、ウフナンカの弔問客は何度弔問をしても、その都度都度で、香典を持参しました。
…ただし、香典を包む金額相場は千円/1回ほどです。

本州の葬儀マナーでは、通夜と葬儀の両方に参列する際、通夜か葬儀のいずれかで1回の香典を包む方法が一般的ですから、本州と沖縄では、習慣が大きく違います

ウフナンカについて、詳しくは下記をご参照ください。
沖縄のナンカスーコー②奇数週ウフナンカの進め方

 

マドゥナンカとは

●「マドゥナンカ」とは、タナンカ(二七日)、ユナンカ(四七日)、ムナンカ(六七日)、ナンカスーコー(七日焼香)の偶数週です

ナンカスーコー(七日焼香)のなかで偶数週にあたるマドゥナンカでは、家族のみで追善供養を行います。

<マドゥナンカとは:読経供養>
●ウフナンカでは読経供養を行う家庭も多い一方、マドゥナンカでは僧侶も呼ばず、家族のみで故人を偲ぶものが多いです。

仏教が根付いていない沖縄では、もともと司祭者はセジ(霊力)が高いユタやノロだったため、そもそも読経供養の習慣もないなか、家付きのユタやノロが減少し、僧侶の読経供養に取り替わった流れがあります。

そのため供える重箱料理も、沖縄でカタシー(片方)と呼ばれるおかず重ともち重の1セットのみとし、現代ではお供え物も重箱にまとめず、お皿にご馳走を供える家庭も増えました。

※重箱料理の詰め方に関しては、下記をご参照ください。
【沖縄の旧盆2022年】お供え物の重箱の詰め方は?慶事と弔事5つの違い

 

ニンチスーコー(年忌焼香)とは

ニンチスーコー(年忌焼香)とは
●「ニンチスーコー(年忌焼香)」とは、ナンカスーコー(七日焼香)以降の法要です

全国的には一周忌(法要)、三回忌(法要)、七回忌(法要)…と呼ばれますが、沖縄では法要をスーコー(焼香)と呼ぶとともに「年」で数えるため、イヌイ(一年忌)、サンニンチ(三年忌)、ナナニンチ(七年忌)となります。

<ニンチスーコー(年忌焼香)とは>
●ワカスーコー(若焼香)
・イヌイ(一年忌)…満1年目の命日
・サンニンチ(三年忌)…満二年目の命日
・シチニンチ(七年忌)…満六年目の命日
・ジュウサンニンチ(十三年忌)…満十二年目の命日●ウフスーコー(大焼香)
・ニジュウグニンチ(二十五年忌)…満二十四年目の命日
・サンジュウサンニンチ(三十三年忌)…満三十二年目の命日

従来の沖縄でニンチスーコー(年忌焼香)は、サンジュウサンニンチ(三十三年忌)が最後のスーコー(焼香)とされてきました。

そのためサンジュウサンニンチ(三十三年忌)は「ウワイスーコー(終わり焼香)」と呼ばれ、イフェー(位牌や位牌札)のお焚き上げを墓前で行ったり、「ウティジンカビ」と呼ばれる故人の魂を宿した紙をお焚き上げする、天送りの儀礼などがあります。

サンジュウサンニンチ(三十三年忌)の行い方は、下記をご参照ください。
【沖縄のスーコー(焼香)】サンジュウサンニンチ(三十三年忌)の執り行い方とお供え物

 

ワカスーコー(若焼香)とは

●ワカスーコー(若焼香)とは、家族を亡くしてまだ間もない時期、ジュウサンニンチ(十三年忌)までのスーコー(焼香)です

イヌイ(一年忌)からジュウサンニンチ(十三年忌)まで、沖縄では四回執り行われるワカスーコー(若焼香)は、追善供養の意味合いがあり、弔事として執り行います。

<ワカスーコー(若焼香)とは>
●ワカスーコー(若焼香)は、弔事
(1)重箱料理などのお供え物は弔事用で整える
・白かまぼこ
・あんこの入っていない白もちのみ
・昆布は返し昆布
・お目出たいもの(紫芋やターンムなど)を使用しない(2)御香典も弔事用で整える
・白黒の水引き(印刷も可)

現代の沖縄では本州の風習に倣い、通夜や葬儀で持参する御香典を包む金額目安は、約3千円~5千円以上が相場となりつつありますが(昔は千円ほど)、スーコー(焼香)では千円ほどをご香典として包んでも良いでしょう。

※沖縄のワカスーコー(若焼香)に関しては、下記をご参照ください。
【沖縄のスーコー(焼香)】イヌイ(一年忌)の執り行い方。墓前や仏壇へのお供え物まで

 

ウフスーコー(大焼香)とは

●ウフスーコー(大焼香)とは、ニジュウグンチ(二十五年忌)とサンジュウサンニンチ(三十三年忌)で、お祝いとして行います

家族が亡くなってから二十四年目の命日に執り行われる、ニジュウグンチ(二十五年忌)以降のニンチスーコー(年忌焼香)は、お祝いとしてのスーコー(焼香)です。

<ウフスーコー(大焼香)とは>
●ウフスーコー(大焼香)は、慶事
(1)重箱料理などのお供え物は慶事用で整える
・紅白かまぼこ
・あんこ入りや色付きのお餅
・昆布は結び昆布
・紫芋やターンムなどのお目出たい食材を入れる(2)御香典も弔事用で整える
・紅白の水引き(印刷も可)

全国的には十三回忌以降、十七回忌、二十七回忌などがありますが、沖縄ではジュウサンニンチ(十三年忌)以降は、ニジュウグンチ(二十五年忌)とサンジュウサンニンチ(三十三年忌)の2回のみ執り行います。

ウフスーコー(大焼香)の進め方は、下記に詳しいです。
【沖縄のスーコー(焼香)】祝いのスーコー(焼香)、ニジュウグンチ(二十五年忌)とは

 

最後に

以上が沖縄のスーコー(焼香)とは、家族を亡くしてからサンジュウサンニンチ(三十三年忌)の弔い上げまで、ナンカスーコー(七日焼香)とニンチスーコー(年忌焼香)の仕組みや違い、流れをお伝えしました。

昔ながらの沖縄ではユタやノロが司祭者として行ってきた他、読経供養を行わずに、家長を中心として家族や親族のみでスーコー(焼香)を執り行う家も多くあります。

けれども現代では仏教への信仰は根付いていないものの、本州の風習に倣い、スーコー(焼香)に僧侶を手配して読経供養を行う家庭が増えました。

百か日に関して、執り行い方は下記をご参照ください。
【沖縄のスーコー(焼香)】百か日とは?納骨式と併せる家も多い、百か日の進め方を解説

 

まとめ

スーコー(焼香)とは
[1]沖縄の法事法要

[2]ナンカスーコー(七日焼香)
●奇数週がウフナンカ
・ハチナンカ(ウフナンカ)…初七日
・ミナンカ(ウフナンカ)…三七日
・イチナンカ(ウフナンカ)…五七日
・シジュウクンチ(ウフナンカ)…七七日

●偶数週がマドゥナンカ
・タナンカ(マドゥナンカ)…二七日
・ユナンカ(マドゥナンカ)…四七日
・ムナンカ(マドゥナンカ)…六七日

[3]ニンチスーコー(年忌焼香)
●ワカスーコー(若焼香)
・イヌイ(一年忌)
・サンニンチ(三年忌)
・シチニンチ(七年忌)
・ジュウサンニンチ(十三年忌)

●ウフスーコー(大焼香)
・ニジュウグニンチ(二十五年忌)
・サンジュウサンニンチ(三十三年忌)


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