・沖縄のお線香を供える本数は?
・沖縄線香「ヒラウコー(平御香)」とは?
・沖縄線香ではなく、日本線香で良い?
・拝みの内容で沖縄のお線香は供える本数は違う?
沖縄でお線香を供える本数「コーブン(香分)」は、お供え先や拝みの内容により、異なることがあります。
また沖縄には独自のお線香「ヒラウコー(平御香)」がありますが、日本線香とどちらが良いのか、迷うこともありますよね。
本記事を読むことで、沖縄で供えるお線香の本数「コーブン(香分)」や、ヒラウコー(平御香)とは?日本線香を供えても良いのかが分かります。
沖縄ではお線香の本数は重要?
◇沖縄の家庭でも、お線香を供える本数の間違えに怯える必要はありません
沖縄では「〇〇ではお線香〇本でなければならない…。」などなど、少ししきたりに囚われ過ぎている人も見受けます。
不安定な家計(経済)や家族の健康祈願の心の拠り所として、家にヒヌカン(火の神)や神様を迎えたくても、ハードルが高くなってしまう傾向です。
そのため、迎え入れてしまうと、毎日の拝みごと「ウグァン(御願)」が面倒だからいいや、などと感じて、ヒヌカン(火の神)を迎え入れるハードルが高くなってしまう家が多いでしょう。
沖縄で恐れられる「ウグァンブスク(御願不足)」
◇「ウグァンブスク(御願不足)」とは、ウグァン(御願)の手順を間違えることです
沖縄ではお線香の本数や、ウグァン(御願)の手順を間違えると、ウグァン(御願)が不足する「ウグァンブスク(御願不足)」が生じ、「ウグァンブスク(御願不足)による祟りが起きる」と、恐れられてきました。
沖縄の霊能者「ユタ」や、琉球王朝の拝み人「ノロ」による影響かもしれません。
ユタやノロは、ウグァン(御願)の内容が一般家庭と全く違います。
そのため、ユタやノロによるウグァン(御願)は、厳密にお線香の本数(コーブン)が定められてきました。
[お線香の燃え方で占ってきたもの]
・神様の啓示
・吉凶を占う
・ウグァンブスク(御願不足)があるかを計る
けれども沖縄の一般家庭では、お線香の本数(コーブン)で、占いはしません。
亡き人々や祖霊神を降ろすなどのウグァン(御願)はしませんよね。
このように、そもそも目的が違います。
そのため沖縄の家庭で扱うお線香の本数は、それほど神経質にならなくても良いでしょう。
お線香は、もっと純粋に日々の糧に感謝をして、家族の幸せや健康を願うためにあります。
沖縄のお線香「ヒラウコー」とは?
◇沖縄のお線香「ヒラウコー」は、1枚で日本線香6本分です
沖縄独自のお線香を「ヒラウコー(平御香)」と言い、日本線香6本分となり、お線香を繋げた板状の形状をしています。
沖縄線香のヒラウコー(平御香)は、日本線香6本文を横に繋げた黒く平たい板状のお線香です。
縦に6本の筋目が入っており、6本がヒトヒラ(一片)と言います。
<沖縄線香「ヒラウコー(平御香)の特徴> | |
[本数] | ・日本線香6本分を1枚にしたもの |
[1枚の呼び方] | ・チュヒラウコー(一片御香) ・ヒトヒラ(一片) |
[特徴] | ・香りがない ・安い ・煙が多い |
車麩の製造過程で余ったでんぷん、そして木炭の粉末を混ぜ合わせて作られているため、香りがありません。
また煙が多く炭もよく出るため、沖縄線香「ヒラウコー(平御香)」を供えるならば、大きく重厚な、沖縄のウコール(香炉)に供えると良いでしょう。
沖縄の家庭で扱う、お線香の本数は?
◇沖縄の家庭で扱うお線香の本数は、3本・12本・15本が多いです
沖縄の家庭でお線香は、主にヒヌカン(火の神)・お仏壇(祖霊神)へ供えます。
また地域のウガンジュ(拝所)や、屋敷の神々様へ供える機会もあるでしょう。
そこで主に沖縄の家庭で扱うお線香の本数は下記です。
<沖縄の家庭で扱うお線香の本数> | |
[呼び方] | [本数] |
①サンブンウコー (三本御香) |
・日本線香…3本分(略式1本) ・ヒラウコー(平御香)…半ヒラ(半分) |
②ジュウニフンウコー (十二本御香) |
・日本線香…12本分(略式4本) ・ヒラウコー(平御香)…タヒラ(2枚) |
③ジュウゴフンウコー (十五本御香) |
・日本線香…15本分(略式5本分) ・ヒラウコー(平御香)…タヒラ半(2枚と半分) |
この世の食べ物を味わうことができない故人にとって、お線香の煙をいただくとされます。
またお線香の煙がウティン(御天)へ届き、「これからウグァン(御願)を届けますので、どうぞよろしくお願いいたします。」と伝えているともされてきました。
沖縄では使用する家庭が少ないですが、お倫を鳴らしてお線香をあげることで、ご先祖様や神様も、拝み事「ウグァン(御願)」を受け入れる体制ができます。
生きている世界では、玄関のチャイムを押す、ノックをする感覚ですね。
①サンブンウコー(三本御香)
◇サンブンウコー(三本御香)は、主以外が供える本数です
沖縄でお線香の本数3本は、2通りの意味があります。
主には旧盆やシーミー(清明祭)など、家族や親族、父方の血族門中(むんちゅう)が集う、沖縄の旧暦行事において、ウグァン(御願)を中心で行う主以外が供えます。
<サンブンウコー(三本御香)> | |
[目的] | ●ミティン(三天)へ供える (感謝を捧げる) ・ウティン(御天神) ・ジーチ(土地神) ・リュウグ(竜宮の海神) |
[供える人] | ・主以外の家族 ・他家の人々 |
ムートゥーヤー(宗家・本家)の家長など、ウグァン(御願)を主に行う人のみ、ジュウニフンウコー(十二本御香)やジュウゴフンウコー(十五本御香)を供えます。
またサンブンウコー(三本御香)は「チジウコー(頂御香)」としても扱う本数です。
「チジウコー(頂御香)」とは、個人的な願い事を祈願するときに用います。
②ジュウニフンウコー(十二本御香)
◇主にお仏壇(祖霊神)、お墓、トゥクヌカミ(床の神)へ供えます
沖縄でお線香の本数「ジュウニフンウコー(十二本御香)」は、主にお仏壇(祖霊神)、お墓、床の間に祀る「トゥクヌカミ(床の神)」へ供える本数です。
<ジュウニフンウコー(十二本御香)> | |
[目的] | ●供養をする ・お仏壇(祖霊神・ご先祖様) ・お墓参り ・トゥクヌカミ(床の神) |
[供える人] | ・ウグァン(御願)の主 |
ジュウニフンウコー(十二本御香)は、主にウグァン(御願)を行うムートゥーヤー(宗家)の家長や、一族の高齢者となり、その他の家族は後ろに倣い合掌します。
主のウグァン(御願)が終わった後、その他の家族がサンブンウコー(三本御香)を、順番に供えましょう。
③ジュウゴフンウコー(十五本御香)
◇主にヒヌカン(火の神)など、神様へ供えます
沖縄のお線香の本数「ジュウゴフンウコー(十五本御香)」は、主に毎月旧暦1日・15日のヒヌカン(火の神)へのウグァン(御願)や、神様への屋外の拝みで扱う本数です。
<ジュウゴフンウコー(十五本御香)> | |
[目的] | ●特別な祈願事 ・ヒヌカン(火の神) ・御嶽の神 |
[供える人] | ・ウグァン(御願)の主 |
御嶽(ウタキ)とは、沖縄に残る自然神です。
世界的には斎場御嶽(セーファウタキ)などが有名で、リュウグ(竜宮神)やキンマムン(太陽神)など、沖縄には多くのウガンジュ(拝所)、御嶽があります。
拝み事を頻繁に行う家庭では、そのままお供えができてお線香など、拝む道具を携帯できる木箱「ビンシー(瓶子)」を持参することも多いです。
・沖縄のビンシー(瓶子)とは?神様へ供えるミハナ(御花)、クバンチンとは?詳しく解説
・【沖縄のヒヌカン】旧暦1日・15日ヒヌカンの拝み方☆お供え物やお線香の本数を解説!
ヒジュルウコー(冷たい線香)とは?
◇「ヒジュルウコー(冷たい線香)」とは、火を灯さないお線香です
沖縄では特に屋外のウグァン(御願)で、火を灯さない「ヒジュルウコー(冷たい線香)」を供えることがあります。
ヒジュルウコー(冷たい線香)は、もともと水神へのお供えで用いてきました。
また首里十二支巡りなど、十二支のご本尊を巡る巡拝でも、ヒジュルウコー(冷たい線香)を用います。
<ヒジュルウコー(冷たい線香)> | |
[目的] | ・水神 ・十二方位(十二支巡り) ・屋外の神々(火の用心) |
[供える人] | ・シルカビ(白紙)に乗せる ・白封筒に入れ自宅に持ち帰る ・自宅のウコール(香炉)に火を付けて供える |
ただ現代は、火の用心の観点から、屋外の御嶽やウガンジュ(拝所)ではヒジュルウコー(冷たい線香)を供えることが多いです。
供えたヒジュルウコー(冷たい線香)は、そのままシルカビ(白紙)に包み、さらに白封筒に入れて自宅に持ち帰り、自宅のウコール(香炉)に火を灯して供えます。
・旧盆で焚くウチカビとは?沖縄線香ヒラウコー、神様へ供えるシルカビの作り方も解説!
沖縄でタブーとされるお線香の本数は?
◇セジ(霊力)のあるユタやノロ以外は、扱ってはいけないお線香の本数(コーブン)があります
反対に沖縄のお線香には、セジ(霊力)を持つユタやノロ以外は扱ってはいけない、お線香の本数(コーブン)があることはご存じでしょうか。
①ナナフンウコー(七本御香)
②ジューナナフンウコー(十七本御香)
③ニジュウヨンフンウコー(二十四本御香)
カミンチュ(神人)は、ウティン(御天)と繋がるために、
沖縄ではセジ(霊力)があり、神様の啓示を受ける人を「カミンチュ(神人)」と呼ぶこともあります。
けれども一般の人々が不用意に神様と繋がると、負荷に耐えられず狂ってしまうと言われてきました。
どちらにしろ、沖縄の家庭で供えるお線香はヒヌカン(火の神)やお仏壇(祖霊神)に対してなので、こんなに多くの本数は必要ありません。
①ナナフンウコー(七本御香)
◇「ナナフンウコー(七本御香)」は、あの世と繋がります
「ナナフンウコー(七本御香)」とは、日本線香7本分です
沖縄で「7」は、人が亡くなってから旅立つ「冥土の旅」において、成仏するまでに七つの関所を通るとされ「七役所(しちやくしょ)」などと呼ばれます。
●このような言い伝えから「7」の数字は、沖縄では霊界に繋がる数字ともされてきました。
セジ(霊力)を持たない一般人が、ナナフンウコー(七本御香)を供えて霊界に繋がると不幸が訪れると考えるため、沖縄ではお線香を供えるタブーの本数です。
・沖縄のシジュウクンチ(四十九日)☆お供え物と進め方
②ジューナナフンウコー(十七本御香)
◇「ジューナナフンウコー(十七本御香)」は、願い事を下げる本数です
「ジューナナフンウコー(十七本御香)」は日本線香17本分、沖縄線香のヒラウコー(平御香)では、タヒラ(2枚)+1/2枚(日本線香3本分)+1/3枚(日本線香2本分)で供えます。
●ジュウナナフンウコー(十七本御香)は、先に祈願した祈願事を、請い下げる拝み事「サゲウグァン(下げ御願)」で用いる、沖縄でのお線香の本数です。
祈願事を解くことを「ウスリウグァン(畏れ御願)」、「トゥキウグァン(解き御願)」「サグウグァン(下げ御願)」などと言います。
また、沖縄でのお線香の本数17本は、「ウスリコーブン(畏れコーブン)」です。
ジューナナフンウコー(十七本御香)を供えることで、せっかく祈願した祈願事を請い下げてしまうので、普段のウグァン(御願)ではタブーとなります。
③ニジュウヨンフンウコー(二十四本御香)
◇ニジュウヨンフンウコー(二十四本御香)は、ウティン(御天)と繋がります
「ニジュウヨンフンウコー(二十四本御香)」は日本線香24本分、沖縄線香のヒラウコー(平御香)では、タヒラ(2枚)とタヒラ(2枚)の4枚です。
●神様の啓示を受ける「カミンチュ(神人)」が、天界の神様「ウティン(御天)」を繋ぐために用います。
ただしウティン(御天)の神様と繋がるニジュウヨンフンウコー(二十四本御香)は、セジ(霊力)が薄い一般人が扱うと、重すぎて神経が揺らぐ・気が触れるリスクがあるとして、タブーとされてきました。
そのためニジュウヨンフンウコー(二十四本御香)は、カミンチュ(神人)が扱うお線香の本数(コーブン)です。
沖縄で日本線香は、略式の本数がある?
◇昔の沖縄で日本線香は、特別なウグァン(御願)で用いました
沖縄でなぜヒラウコー(平御香)が積極的に用いられてきたのかと言えば、その昔、日本線香が高級なものだったためです。
・香り高い「カバシウコー(香り御香)」
・特別なウグァン(御願)で用いる
・本数を省略できる
けれども日本線香は沈香や白檀など、香り高い香木(こうぼく)から作られたものが多く、木炭やでんぷんの粉末で作られたヒラウコー(平御香)と比べると、香りが高い特別なお線香でした。
現代は昔よりもずっと手頃に購入できるため、日本線香を供えても良いでしょう。
日本線香で略式の本数は何本?
◇沖縄で日本線香を供える本数は、1/3に省略できます
日本線香は特別なウグァン(御願)で扱う、香り高い「カバシウコー(香り御香)」「カウリコーブン(香り香分)」とされてきました。
そのためお線香を供える「ウティン(御天神)・ジーチ(土地神)・リュウグ(竜宮の海神)」のミティン(三天)を三位一体として、1/3本の略式で供えることができます。
<日本線香で略式の供え方> | ||
[お線香の本数] | [本式] | [略式] |
①サンブンウコー (三本御香) |
・3本 | ・1本 |
②ジュウニフンウコー (十二本御香り) |
・12本 | ・4本 |
③ジュウゴフンウコー (十五本御香) |
・15本 | ・5本 |
特に近年ではコンパクトなお仏壇やヒヌカン祭壇が増えました。
手元供養を選ぶ家庭も増えたため、ウコール(香炉)も小さくコンパクトです。
そこへお線香12本・15本と供えると、お線香の熱でウコール(香炉)が割れてしまう事例もあります。
日本線香の略式でお線香を供えて、安全にウグァン(御願)を行っても問題はありません。
まとめ:沖縄でお線香の本数は、主に3本・12本・15本です
沖縄の家庭で供えるお線香の本数は、主にサンブンウコー(三本御香)の3本、ジュウニフンウコー(十二本御香)の12本、ジュウゴフンウコー(十五本御香)の15本です。
近年は小さなウコール(香炉)が多いため、略式として日本線香1本・4本・5本でも良いでしょう。
一般的に沖縄では、お線香を供えるウコール(香炉)は、ヒヌカン(火の神)やトゥクヌカミ(床の神)が白いウコール(香炉)、お仏壇がハナウコール(青に金の花柄)とされていまよね。
けれどもヒヌカン(火の神)を含めて、昔は仏器も白と限られた訳ではありません。
現代の住まいに合うウコール(香炉)を選んでも良いでしょう。