・沖縄の御願で使う「ビンシー」とは?
・「ビンシー」はどうやって使うの?
・沖縄の御願にビンシーは必ず必要?
沖縄の御願で使う「ビンシー(瓶子)」とは、屋外で神様への拝み事「御願」のお供え物を入れる三段の木の箱です。
本記事を読むことで、沖縄の御願におけるビンシーの使い方、ビンシーに入れる神様へのお供え物ミハナ(御花)やクバンチンは何か?が分かります。
沖縄の御願で扱うビンシーとは?
◇沖縄の御願で使う「ビンシー(瓶子)」とは、お供え物をまとめる木箱です
屋外で神様を拝む沖縄の御願では、ビンシーをお供えをまとめるために使います。
また屋内でも、屋敷内の神様であるヒヌカン(火の神)や、屋敷の神々への拝み「ヤシチヌウグァン(屋敷の御願)」で使用することもあるでしょう。
●神様への御願で使用
[上段]
・お供え物を供える6つのスペース
[下段(引き出し)]
・御願用具をしまう場所
沖縄の「御願用具」とは沖縄線香のヒラウコー(平御香)や、半紙を千切って作った神様へのお金(税金)であるシルカビ(白紙)などです。
※沖縄の御願ではヒラウコーを用いる人が多いですが、日本線香でも構いません。
・旧盆で焚くウチカビとは?沖縄線香ヒラウコー、神様へ供えるシルカビの作り方も解説!
ビンシーに揃えるお供え物
◇沖縄の御願では、ビンシーにお米を入れます
沖縄の御願でビンシーは、神様へのお供え物で扱うため、ご先祖様(ご仏壇)へのお供えでは扱いません。
そこで沖縄の御願において、神様へ供えるお供え物は「お米」です。
・徳利(とっくり)×2本
・ウサク(お酒)
・アライミハナ(洗い米)
・カラミハナ(乾米)
またビンシーには下に引き出しが付いているものが多く、そこには屋外での御願用具を入れます。屋外での沖縄の御願で、持ち歩くのに便利です。
それでは、それぞれのお供え物について、詳しくお伝えしていきます。
ビンシーに揃える「徳利」
◇お酒を入れる徳利(とっくり)を、神様方の左右に入れます
徳利は銚子(ちょうし)、沖縄では瓶子(びんす)とも言いますね。
お酒を入れる瓶であれば良いので、陶器の他、ガラス製でも問題はありません。
左右一対であることがポイントです。
ビンシーに揃える「ウサク」
◇ウサク(お酒)は、神様方の中央に供えます
おちょこにお酒を注ぎ、神様方の中央に供えてください。
ビンシーのお酒を供えるスペースは、盛り上がっている造りが多いので、供えやすいです。
・泡盛…ウグシー(御五水)
・日本酒…ウミキ(御神酒)
お酒の内容は、泡盛でも日本酒でも、どちらでも構いません。
泡盛を供える時には、「ウグシー(御五水)」とも言いますね。
沖縄ではウサク(お酒)の他、神様のお酒として「ウミキ(御神酒)」と呼ぶこともあるでしょう。
農作の御願であるウマチー(御祭)では、稲の穂を摺り潰して醸した「ミキ(神酒)」などもあります。
ビンシーに揃えるアライミハナ(洗い米)
◇「アライミハナ(洗い米)」は、お米を7回研いだものです
ビンシーの手前、中央スペースには「アライミハナ(洗い米)」を供えます。
「アライミハナ(洗い米)」とは、お米を7回研いだものです。
・アライミハナ(洗い御米)
・アライグミ(洗い米)
・ナナシルヌミハナ(七汁の御花)
お米を七回すすぐことは禊(みそぎ)を表します。
身も心も清めて拝みを捧げているとし、「七回」は陽の数字として、沖縄の御願では大切にされる数字です。
アライミハナの上に「クバンチン」
◇地域や家によっては、アライミハナの上に「クバンチン」を差します
「クバンチン」とはあの世のお金のことで、広くはシーミー(清明祭)のお墓参り行事や、旧盆で焚く「ウチカビ(打ち紙)」を差す家が多いでしょう。
ただ地域や家によっては、「フソク(不足)」として、クバンチンを30円、もしくは35円、差すこともあります。ここでは、ビンシーに揃えるクバンチンの解説です。
●クバンチン
・十円玉×3枚(30円)
・十円玉×3枚+五円玉×1枚(35円)
[目的]拝み不足「フソク」を補うため
アライミハナにクバンチンを差す地域では、一般的に十円玉3枚の30円が多い傾向にありますが、クバンチンのみを供える地域では35円が多い傾向にあります。
※アライミハナを供えない家や地域については、後ほど詳しくお伝えしますので、最後までお読みください。
ビンシーに供えるカラミハナ
◇「カラミハナ(乾御花)」は、洗わないお米です
アライミハナは7回研いで禊(みそぎ)を落としますが、カラミハナは洗いません。
これはカラミハナがもともと無垢であること、純潔であることを表します。
・カラミハナ(乾御花)
・ハナグミ(花米)
カラミハナは一般的にビンシーの手前中央に供えますが、一部地域などでは、神様へのお供え物にあたり、手前両脇に供えることもあるでしょう。
年始に一年の祈願事を行う「タティウグァン(立て御願)」やヒヌカンを仕立てる「ヒヌカンシタティー(ヒヌカン仕立て)」など、あらゆる御願で供えます。
・【沖縄のヒヌカン】ヒヌカンの始め方。親から引き継ぐ、一から仕立てる2つの方法を解説
地域によって違うビンシー
◇「アライミハナはご先祖様へ供えるもの」と考える地域もあります
沖縄南部など、アライミハナはご先祖様へ供えるものとし、神様への御願ではビンシーに揃えない門中や地域もあるでしょう。
この場合、カラミハナを手前両脇に配置し、中央にアライミハナの代わりになるお供え物を置くなどです。
●塩
●クバンチン
・十円玉3個
・十円玉3個+五円玉
沖縄の御願は地域や家で代々伝わり、家によって違うこともあるでしょう。
「七回すすぐ」の七回を、沖縄に伝わる故人が冥土に至るまでの七つの関所「七関所」と捉える家もあります。
ご先祖様のビンシー
◇アライミハナを供えない独自のビンシーを供える地域もあります
また沖縄南部など、地域によっては独自の形をしたビンシーもあり、ご先祖様用のビンシーとして利用することもあるでしょう。
・沖縄県南部など
千人以上など、大きな門中では皆で集まるお墓参り行事「シーミー(清明祭)」を行う代わりに、それぞれ家長が拝みに訪れます。
家長がそれぞれ並んで短時間で拝むため、ご先祖様へのビンシーを持っている家が多い傾向です。
ビンシーとともに供えるもの
◇ビンシーとともに供えることの多いものは、ウチャヌクがあります
ビンシーはお供え物を形態するのに便利な木箱ですが、多くの沖縄の御願では、ビンシーの他にもお供え物があるでしょう。
特にウチャヌクやナイムンをセットで供える御願は多いです。
●ウチャヌク…白い丸もちの3段重ね
・もち粉で作る
●ナイムン…果物
・リンゴ…母性
・みかん…子宝
・バナナ…父性
ウチャヌクはもち米を付いたおもちではなく、沖縄ではもち粉で作った白もちが一般的です。ウチャヌクを供える時には、お盆の上に白紙を敷き、供えます。
ウチャヌクは御願により2組をチュカザイ(一飾り)とすることもありますが、多くの御願で3組でチュカザイです。
ビンシーは仮ビンシーでも良い
◇ビンシーがない家では、お盆にビンシーの内容を揃えた仮ビンシーで構いません
沖縄の一部地域ではビンシーに家紋を入れ、「家の実印」として代々大切にしてきましたが、実はビンシーの歴史自体は浅いです。
●ビンシーのない家では、お盆にお供え物を揃えて「仮ビンシー」としても問題はありません。
琉球王朝時代はビンシーは広まっておらず、近世になってから一般的に扱うようになったとされます。
[参考]沖縄タイムス「沖縄大百科事典」
ビンシーとは、お供え物を供える木箱です
ビンシーとは、神様へのお供え物を揃える木箱となり、下の2段には沖縄線香「ヒラウコー」や、神様へのお金「シルカビ」など、沖縄の御願に必要な道具をしまうことができます。
屋外の携帯用として便利なので、常日頃から氏神様へ拝み事をする家や、主に沖縄で旧暦行事や御願を担う、門中一族の本家「ムートゥーヤー(元家)」などでは、古くからのビンシーを代々継承してきた家もあるでしょう。
現在でも沖縄のホームセンターに行くと、ビンシーを7千円ほどで販売している様子も見受けますので、ぜひ活用してみてはいかがでしょうか。
・【沖縄の春彼岸】お彼岸に行う屋敷の御願とは?六柱の神々と十ヶ所の拝み処