アフターコロナ時代に変わる沖縄のトートーメー。遺骨なき位牌へ

2021.10.13
昔ながらの沖縄の供養

沖縄で代々続くトートーメー信仰(祖霊信仰)ですが、今では継承した家の負担が大きいことが問題になっていますよね。継承した家をムチスク(宗家)と言い、そこに家族親族が毎年集まり供養と祈願をしてきましたが、新型コロナ到来により、それも難しくなりました。今回は、そんな沖縄で増えた「遺骨なきイフェー(位牌)」への、新しい供養の形をお伝えします。

独自の祖霊信仰が今も残る沖縄では、トートーメー(沖縄位牌)による供養の形も全国とはひと味違いますよね。沖縄ではご先祖様は単なるご先祖様ではなく、七代目からヤー(家)を守る神様として祀られます。

そのため本州ではお仏壇の中心に守護仏様が鎮座していますが、沖縄ではお仏壇の中心がトートーメー(沖縄位牌)です。沖縄のトートーメー(沖縄位牌)は全国的なカライフェー(唐位牌)などとは違い、継承した代々夫婦の氏名が並んでいます。

この代々続く沖縄のトートーメー(沖縄位牌)を継承する家をムチスク(宗家)と言い、そこに家族親族が毎年集まり供養と祈願をしてきましたが、新型コロナ到来によりそれも難しくなりました。

今回は、そんな沖縄で増えた「遺骨なきイフェー(位牌)」への、新しい供養の形をお伝えします。

「遺骨なきイフェー(位牌)」とは

沖縄ではヤー(家)を守る祖霊が宿るトートーメー(沖縄位牌)を、代々継承しますよね。継承した家はムチスク(宗家)として、毎年の旧暦行事やスーコー(焼香=法要)をこなし、ムチスク(宗家)に集まる家族親族をもてなします

けれども旧暦行事が盛んな沖縄では、ムチスク(宗家)は毎年大きな負担が掛かります。ましてや祖霊信仰が今も人々の心に深くあるため、「ウグァンブスク(御願不足=充分に仏様をもてなしていない)」を恐れ、ムチスク(宗家)の女性は準備に追われるのが現状です。

沖縄ではトートーメー(沖縄位牌)を継承するのは「チャッシウシクミ(嫡子追い込み)」と言って、嫡男(長男)とされてきましたから、結婚後の苦労が多いとして婚期が遅くなる現状まであります。

そんななかで起きてきた「ブーム」が、「遺骨なきイフェー(位牌)」です。

【 沖縄のトートーメー(沖縄位牌)☆遺骨なきイフェー 】

★ 沖縄の継承は「ヤー(家)+トートーメー(位牌)+お墓」ですが、このお墓とトートーメー(位牌)を永代供養し、沖縄のトートーメータブーをリセットしよう、と言う考え方です。

→ 大きな門中になると、ヤー(家)のトートーメー(位牌)のみを永代供養するケースもあります。こうすることでムチスク(宗家)としての不自由や苦労を軽減する考え方です。

例えば、今までは沖縄でトートーメーを祀っていて身動きが取れない長男一家であっても、下記のようなことができるようになります。

【 沖縄のトートーメー(沖縄位牌)☆永代供養によりできること 】

・ 新しい家や場所に引っ越しができる。

・ 病気などの理由で執り行うことが難しい時、旧暦行事やスーコー(焼香)を休憩(中止)、延期するなどの判断がより自由になる。

…などなどです。

始祖から続く祖霊信仰のシンボルである沖縄のトートーメー(沖縄位牌)を永代供養することにより、お仏壇は祟りを恐れる祖霊としての神様ではなくなります。

そのため新しくお仏壇を仕立てたとしても、亡き両親や祖父母など、温かな供養の対象として残る訳です。

新しく仕立て直したお仏壇に多いイフェー(位牌)

新しく仕立て直したお仏壇に多いイフェー(位牌)
ただ一度沖縄で永代供養されたトートーメーを改めて仕立てる時には、後々祖霊信仰のシンボルとなるような沖縄位牌を避け、全国的に見るカライフェー(唐位牌)などの単独位牌が多いです。

沖縄位牌は継承した夫婦の氏名を代々記入していきますから、沖縄位牌を仕立てることで、改めて故人を始祖とした沖縄のトートーメー(沖縄位牌)が産まれます。

そこで純粋に親しい個々の故人を偲ぶ位牌として、もともと門中文化の薄い宮古島などのように単独のカライフェー(唐位牌)を仕立てる流れです。

ただ、人々の心の拠り所としての「祖霊信仰」は残したいと考える家も多い傾向にあります。そこで沖縄で増えているのが「名前なきトートーメー」です。

【 沖縄のトートーメー信仰☆名前なきトートーメーとは 】

★ 昔ながらの多くのタブーを持つ沖縄位牌(トートーメー)を永代供養しリセットした後、祖霊信仰の対象としての「名前を記載しないイフェー(位牌)」を差します。

→ 神様となった「祖霊」ですので、琉球ガラスのイフェー(位牌)やデザイン性の高いイフェー(位牌)が選ばれやすい傾向です。

この、沖縄で新しい「名前なきトートーメー」はシンボルですから、ムチスク(宗家)だった家ばかりが祀る訳ではありません。その兄弟や親族でも、日々ヤー(家)子々孫々を守ってくれる神様として迎え入れたい家で祀っています。

それぞれの家で供養をする

それぞれの家で供養をする?
もともと沖縄ではお墓とトートーメー(位牌=お仏壇)が繋がっているとの考え方も、この流れを大きくしていますが、特に「故人は七代目にしてヤーを守る神となる」と考える沖縄では、遺骨と魂を分けて捉える傾向にあります。

また魂は七つの魂があるとも言われ、同時に複数(七つの場所と考える家もありますが)の場所に存在できると考える家もありました。

【 沖縄の新しいトートーメー信仰☆複数の家で祀る 】

★ そこで前項でお伝えした沖縄の新しい「名前なきトートーメー(位牌)」を、長男の家のみならず、次男以降の兄弟や親族の家でも祀る流れがあります。

→ 祀る時には下記の手順が一般的になってきました。

(1)お墓やムチスク(宗家)のお仏壇でヒジュルウコー(冷たい線香=火を灯さない線香)を供)える。

(2)「自分達の家にも迎え入れたい」ことを祖霊様へ伝える。

(3)ヒジュルウコーを持って帰宅する。

(4)自宅の仏壇のウコール(香炉)で火を灯す。

(5)どうぞウコール(香炉)に移ってくださいと手を合わせる

…これで迎え入れが終わります。

※ 準備をするお仏壇は以前のような大きなスペースを取るものではなく、手元供養などで扱われるミニ仏壇や近代の小さなモダン仏壇などが多いです。

こうして兄弟親族の家で沖縄のトートーメー(位牌)を迎え入れたら、それぞれの家で旧暦行事や供養を気軽に行います。

なかにはリモートなどで場所は別々ながらも、共に供養をする流れもあり、スーコー(焼香)時にはリモートで読経をお願いして、それぞれが画面を共有する流れも起きているほどです。

 

いかがでしたでしょうか、今回は新型コロナ到来により急速に増えた、沖縄のトートーメー(位牌)の永代供養と、新しい形の祖霊信仰、そして供養の形をお伝えしました。

現代の感覚に違和感を感じる方々もいるかもしれませんが、誰も世話や管理をしないイフェー(位牌)「ヒジュルグゥアンス(冷たい位牌)」になることを考えると、自分達の暮らしのなかに溶け込み、無理なく供養ができる新しい流れは決して悪い流れではありません。

地に未練を残さない新しい沖縄のトートーメー(位牌)、祖霊信仰のお陰で、長男であってもご先祖様を敬い、脈々と祖霊信仰を引き継ぎながら、現実的な暮らしに合わせて自由に動くことができます。

まとめ

沖縄で増えた新しい祖霊信仰の形とは
・継承問題となる位牌やお墓の永代供養が増えた
・一度リセットして新たに仏壇や位牌を仕立てる
・新しい位牌は個々の魂を祀るカライフェー(唐位牌)
・祖霊信仰の対象として、名前なき位牌を仕立てる家もある
・名前なき位牌にはタブーがない
・家を守って欲しい兄弟親族が自由に祀ることができる
・それぞれの家で祈願や供養ができる
・家同士でリモートによる祈願や供養もできる



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