【沖縄の旧暦行事】六月ウマチー・六月カシチーの日は、家計安泰を祈願する

2022.06.27
【沖縄の旧暦行事】六月ウマチー・六月カシチーの日は、家計安泰を祈願する

沖縄の旧暦6月に行う、六月ウマチーと六月カシチーは稲穂や米の収穫祭でしたが、今では「クェーブー(食べる運)」として、家計安泰や収入の安定を祈願する人々が増えました。今回は六月ウマチー・六月カシチー、家族単位での拝み方をお伝えします。

沖縄の旧暦6月に行う、六月ウマチー六月カシチーは稲穂や米の収穫祭でしたが、今では「クェーブー(食べる運)」として、家計安泰や収入の安定を祈願する人々が増えました。

旧暦5月のハーリー(ユッカヌヒー)や旧暦9月のジューグヤ(十五夜)ほど有名ではありませんが、今でも集落行事として大綱引きを行う地域や、門中行事として拝みを捧げる習慣も残っています。
(※)門中とは、父方の血筋を繋げた一族です。

今回は沖縄の旧暦6月に行う六月ウマチー、六月カシチーの基礎知識と、家族単位での拝み方をお伝えします。

六月ウマチーとは

【沖縄の旧暦行事】六月ウマチー・六月カシチーの日は、家計安泰を祈願する
ウマチー(御祭)はその昔、沖縄の重要な農耕儀礼でした。
麦と稲の収穫祈願と感謝祭を意味し、年に四回行われたため「四大祭」とも呼ばれます。

現代でも集落や門中単位で沖縄では、旧暦6月にウマチーを行う様子をたまに見受けますが、家族単位でのウマチーが増えているでしょう。

<六月ウマチーの日程>
●旧暦6月15日…2022年7月13日(水)

(1)門中行事としてのウマチー
(2)集落行事としてのウマチー
(3)家族単位でのウマチー

 

琉球王朝時代や沖縄で農耕が盛んだった時代には、麦や稲の穂を供え、穂を摺り醸して作ったミキやウンサクを供えてきました。これを神酒(ミキ)と言います。

ただ最近では農耕が廃れ、御願の目的も家計安泰や収入の安定となったことから、ヤクルトやヨーグルト、市販のミキなど、発酵した飲み物などを供える人が多いです。

※ウマチーの四大祭とカシチーについては下記に詳しいです。
沖縄のウマチー(御祭)、四つのお祭りとは?その歴史と今に残したい拝み方

 

(1)門中行事としてのウマチー

大きな門中では毎年「アタリ」と呼ばれる、その年の担当者がミキサーで炊いたご飯をすり潰し醸したウンサクをバケツいっぱいに作り集まった人々に配るなど、規模の大きなものもあります。
(ただし、近年ではコロナなどの影響により、中止の門中が多いです。)

門中では先祖代々のトートーメーが祀られている、ムートゥーヤー(宗家)に集まり、昔のご先祖様に当たる祖神を祀る、カミウタナー(神御棚)お仏壇などにお供え物をして拝む家が多いでしょう。

<門中行事としてのウマチー>
●お供え物の一例
・カラミハナ(花米※)
・果物の盛り合わせ
・お菓子の盛り合わせ

※お線香はジュウニフンウコー(十二本御香)
日本線香12本/もしくは4本
・ヒラウコー(平御香)はタヒラ(2枚)

 

門中で行う沖縄の旧暦行事としては、稲穂の感謝祭の意味合いよりも門中の繁栄、子宝、安泰を祈願する意味合いが強いです。

ムートゥーヤー(宗家)に訪問する分家は、1,000円程度の手土産を持参する人が多いでしょう。
帰りには訪問できなかった家族へ、呪力があると伝わる、ウマチーで供えたカラミハナ(花米)を手土産に持ち帰ります。
(※)カラミハナはお米です。

※手土産のカラミハナ(花米)に信じられてきた「呪力」とは
沖縄グングァッチウマチー(五月祭り)5つの御願☆手土産ミハナ(お米)の呪力とは?

 

(2)集落単位でのウマチー

ウマチーカシチージナ
沖縄の旧暦行事としてはあまり広く残っていないのですが、集落単位で行う六月ウマチーもあります。

沖縄の地方エリアではウマチーの四大祭とカシチーの二大祭、合計六大祭のうちバラバラですが、集落単位で「ウマチージナ(綱)」「カシチージナ(綱)」などと言って、綱引き大会が行われてきました。

<集落単位でのウマチー>
●お供え物の一例
・ウンサク(発酵した飲み物など)
・カラミハナ(御花)
・稲穂(あれば)

※お線香はジュウゴフンウコー(十五本御香)
日本線香15本/もしくは5本
・ヒラウコー(平御香)はタヒラ半(2枚と半分)

 

沖縄の旧暦行事で集落単位でウマチーを行う時は、主に集落のウガンジュ(拝所)へお供え物をして拝みます。

集落のノロやユタ(神女)がいれば中心にして、地域によっては集落に住む門中のムートゥーヤー(宗家)が、それぞれ家紋の入ったビンシー(瓶子※)を持って集まり拝むこともあるでしょう。

(※)ビンシー(瓶子)とは、カラミハナ(御花)などウガンジュ(拝所)での供え物をひとつにまとめ、持ち運ぶための木箱です。

(3)家族単位でのウマチー

そして最近増えた沖縄の旧暦行事が、家族単位でのウマチーです。
家族が住む集落のウガンジュ(拝所)を訪れ、<集落単位でのウマチー>と同じお供え物をして拝みます。

<家族単位でのウマチー>
●ウマチーのグイス(拝み言葉)一例:

○○市○○(住所)から来ました〇年○○(家長の干支・名前)の男と、その結び〇年○○(妻の干支・名前)の女でございます。
本日は〇年○○(子どもの干支・名前)も参りました。

いつもお見守りくださりありがとうございます。
これからもどうぞお見守りくださり、ウェーブー(食べる運)に恵まれ、身体も健康に、幸せに繁栄しますように。」

 

門中や集落単位で行う沖縄の旧暦行事とは違うため、「どのように拝めば良いのか…」と戸惑う人も多いですが、専門職(ユタやノロ)ではないので、丁寧に気持ちを伝えれば問題はありません。

※より詳しいウマチーのグイス(拝み言葉)は下記で紹介しています。
沖縄グングァッチウマチーで豊かな暮らしを祈願☆お供え物や拝みの言葉

 

六月カシチーとは

六月カシチーとは
沖縄の旧暦6月には、米の収穫祭のカシチーも行われます。
現在ではウマチーとカシチー、それぞれに定期的に拝むことで、神様とお近づきになりやすいとして、ウマチーカシチー関係なく、家族単位で気軽に拝む家も多いでしょう。

ただ、昔ながらの六月カシチーはお米の収穫祭なので、「カシチー(強飯)」としておこわを炊いて供える習慣がありました。
これがカシチーの特徴的なお供え物です。

<六月カシチーの日程>
●旧暦6月24日・25日…2022年7月22日(金)・23日(土)

(1)アミシの御願
(2)ミメーウイミ(新米節目)

 

沖縄の旧暦行事として、集落単位での綱引きを行う地域もありますが、基本的に拝む先は家庭のヒヌカンとお仏壇です。

ただ地域単位の沖縄の旧暦行事として、南部地域ではアミシの御願、中部地域ではミメーウイミ(新米節目)が見受けられます。

カシチー、ヒヌカン(火の神様)のお供え物

カシチーは「強飯」と書き、いわゆる「おこわ」を供えます。
もち米を炊けば良いのですが、今ではお米2号にもち米1号(お水の量は普通の3号分)で、炊飯器で炊く方法が、簡単で良いのではないでしょうか。

<カシチー、ヒヌカンへのお供え物>
ウサク(お酒)
白カシチー(白米のおこわ)
・供え葉(チャーギやクロトン)
・お塩
・ミジトゥ(お水)

※お線香はジュウゴフンウコー(十五本御香)
日本線香15本/もしくは5本
・ヒラウコー(平御香)はタヒラ半(2枚と半分)

 

ヒヌカンへお供え物をして拝んだら、続いてお仏壇(祖霊様)へもお供え物をして拝みます。

お仏壇へのお供え物

お仏壇は人間だった記憶のあるご先祖様・祖霊様なので、おこわの他に汁物やウサチ(酢の物)を付け添えた御膳を供える家が多いでしょう。
基本的な日ごろのお供え物である、供え花/ウチャトゥ(お茶)/ウサク(お酒)は省略してお伝えします。

<カシチー、お仏壇へのお供え物>
●御膳(お箸を添えて)
白カシチー(おこわ椀)
・汁椀(お吸い物やお味噌汁など)
・ウサチ(巣の物)

※お線香はジュウニフンウコー(十二本御香)
日本線香12本/もしくは4本
・ヒラウコー(平御香)はタヒラ(2枚)

 

沖縄の旧暦行事では、ウマチーやカシチーのグイス(拝み言葉)はほとんど同じ内容なので、上記<家族単位でのウマチー>をご参考にしてください。

昔でも農作以外の仕事では収入安定などを祈願しましたが、今では家庭の繁栄祈願の意味合いが強いため、仕事の成就子どもの成長(家の繁栄)など、末広がりを祈願するのが一般的です。

アミシの御願

アミシの御願は、主に沖縄県南部地域の旧暦行事で、雨乞い行事でもありました。

<アミシの御願>
●朝一番のお水にお酒を加えて、お米(新米)を炊き、ヒヌカンとお仏壇へ供えます。

 

集落のガー(水場)で沐浴をしたり、ガーで汲んだ水「若水(ワカミジ)」でミジナディー(水撫で※)をしてきましたが、今では朝一番に汲んだ家のお水をいただいたり、ご飯を炊いたりする家が多いでしょう。

(※)ミジナディー(水撫で)とは、大人が指の腹にお水を浸けて、赤ちゃんや子どものおでこにチョンチョンと付ける儀礼です。

ミメーウイミ(米の節目)

沖縄の旧暦行事でも旧暦6月24日・25日になると、中部地域では「ミメーウイミ(米の節目)」を行います。
ミメーウイミも米の収穫祭なので、意味合いとしては同じです。

ミメーウイミでも、(米農家は収穫仕立ての)新米やお米を炊いて、ヒヌカンやお仏壇へ供えます。

沖縄の旧暦6月は、六月ウマチー(ルクグァッチウマチー)と六月カシチー(ルクグァッチカシチー)が重なる時期です。

ただその昔は、全てのウマチー(四大祭)とカシチー(二大祭)で拝んできましたが、今ではそれぞれの門中や集落で、いずれかのウマチーカシチーに合わせて儀礼を進めています。

家族での旧暦行事であれば、より気軽にできるので全ての日程でウガンジュ(拝所)で拝むのも良いですが、ヒヌカンを通して離れた場所から拝む遥拝(ようはい)もできるので、気負わず、楽しんで行うと良いでしょう。

沖縄の旧暦行事であるウマチーカシチーを通して、収入が上がったり家計が安定する出来事などがれば、お礼に訪れるとされています。

 

まとめ

沖縄の旧暦6月、ウマチー・カシチー

<六月ウマチー>
●旧暦6月15日…2022年7月13日(水)
(拝所)神御棚、集落の拝所
・門中行事としてのウマチー
・集落行事としてのウマチー
・家族単位でのウマチー

<六月カシチー>
●旧暦6月24日・25日…2022年7月22日(金)・23日(土)
(拝所)ヒヌカン、お仏壇
・南部…アミシの御願
・中部…ミメーウイミ(新米節目)


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