沖縄のタナバタ(七夕)にお仏壇事が多いのはなぜ?新調や交換に良い日取り

2022.07.19
沖縄のタナバタ(七夕)にお仏壇事が多いのはなぜ?新調や交換に良い日取り

沖縄でタナバタ(七夕)は日取りを気にせずお仏壇やお墓事ができる、年に一度の貴重な日です。沖縄では建墓やお仏壇の新調でも、家族の干支が重ならないなど、日取りに配慮しなければなりません。今回はタナバタが無礼講な理由と、位牌やお仏壇事を行う豆知識をお伝えします。

沖縄でタナバタ(七夕)は、お仏壇事やお墓事を行うのに良い日とされています。

例えお墓を建てたりお仏壇を新調するのでも、「死は穢れ(けがれ)」とする考え方が根付いている沖縄では、お墓事やお仏壇事を進めるために、家族の干支と重ならないなど、日取りは重要です。

けれども沖縄では年に一度、タナバタ(七夕)の日取りは「神様の目が届かない日」として、日取りを気にせず、お仏壇事やお墓事が出来る日です。

旧暦7月7日に行う沖縄のタナバタ(七夕)、2023年度は8月22日(火)

今回は、沖縄でタナバタ(七夕)がお仏壇の新調や交換に良い日とされる理由と、交換する時の豆知識をお伝えします。

 

神様の目を避けた供養事

神様の目を避けた供養事
アミニズム(自然崇拝)と古代中国の影響が強い沖縄では、「死は穢れ(けがれ)」として、お墓事やお仏壇事では神様の目を避けてきました。

今では本州の仏教から影響も受けているため、昔ほど残ってはいないのですが、昔ながらの沖縄では下記のような風習もあります。

<神様の目を避けた供養事>
(1)故人に黒傘をさす
(2)お墓参りは頻繁にしない
(3)お墓事は日取りに注意する

 

…などなどです。

(1)故人に黒傘をさす

その昔、風葬の風習が残っていた沖縄では、葬儀の日そのままお墓に遺体を納骨しました。

その際、葬儀場(自宅が多かった)からお墓まで、遺族が列を組んでお墓まで向かうのですが、その道すがら、故人の遺体が神様の目に留まらぬよう、黒傘をさしかける風習があります。

(2)お墓参りは頻繁にしない

本州では故人に会いたい時に、いつでもお墓参りをしますが、沖縄では頻繁にお墓参りに行くことは良くありません。

<お墓参りは頻繁にしない>
他のお墓の魂が羨ましがる、無縁仏を連れ帰ってしまうなど、さまざまな事が言われますが、大きな理由のひとつに墓地は彼岸(あの世)とするためでしょう。

 

今では少なくなりましたが、離島など一部地域では、集落のお墓が一か所にまとまっており、生きる人々が暮らす地域と彼岸(あの世)との境界線がありました。

お墓参り行事洗骨(遺体を納骨してから数年後、風化した頃に骨を洗う習慣)などでは、境界線で一度御願儀礼を行う習慣もあります。

(3)お墓事は日取りに注意する

死は穢れ(けがれ)として、イチミ(生きる身)が触れることはあまり良くありませんから、それが例えお墓を建てる建墓などのお祝い行事であっても、日取りを気にしました。

<沖縄で気にする日取り>
●地域や家によっても違いがありますが、特に施主や参加する親族の「干支」が重なる日を避けています。

 

けれども参加する親族が多かったりすると、どの日も誰かの干支に当たるなど、不便が生じやすく、沖縄ではタナバタ(七夕)のような「神様の目が届かない」日取りが役立っています。

日取りについて、詳しくは別記事をご参照ください。
沖縄のヒーナシタナバタ(日無し七夕)ってなに?お墓事や仏壇事を行う日とは?

 

ヒナーシ(日無し)とは

ヒナーシ(日無し)とは
沖縄ではタナバタ(七夕)のように、神様の目が届かない、いわば「無礼講」になる日を「日が無い」として「ヒナーシ(日無し)」と言います。

<ヒナーシ(日無し)とは>
→イチミ(生きる身)には確かにあるものの、神様の世界では、そもそも旧暦7月7日を「日」として認識しません

 

ですから日無し(ヒナーシ)では「神様の目」もないことになり、故人は日ごろ監視をしている神様の目を避けて、この世まで降りてくることができるともされます。

ヒナーシ(日無し)、もうひとつの日取り?

このヒナーシ(日無し)ですが、沖縄では年に一度、タナバタ(七夕)のみです。

けれども、もうひとつ、不定期に訪れるヒナーシ(日無し)期間があります。
この期間は旧暦で1年間とするため、建墓などにも便利です。

<ヒナーシ(日無し)2つの日取り>
(1)沖縄のタナバタ(七夕)
(2)ユンヂチ(閏月)

 

沖縄のタナバタ(七夕)は、ここまでお伝えしたきた通り旧暦7月7日、2023年度は8月22日(火)に当たります。

旧盆初日となる旧暦7月13日の6日前になり、お仏壇事やお墓事を行わない場合にも、家族でお墓参りをして旧盆のご案内(ソーローウンケー)をする日です。

ユンヂチ(閏月)とは

一方、ユンヂチ(閏月)は、旧暦と新暦の誤差を埋めるために、定期的に訪れる、旧暦のおいて「月が重なる」一カ月を差しますが、お仏壇事やお墓事をする「ヒナーシ(日無し)」としては、その年(旧暦)の一年まるまるとします。

※沖縄タナバタ(七夕)に行う旧盆のご案内「ソーローウンケー」は下記に詳しいです。
【沖縄の旧盆】2023年8月22日(火)タナバタ(七夕)☆お供え物と拝み方

<ユンヂチ(閏月)とは>
…暦の調整をするために、33ヶ月に1度旧暦の1カ月がまるまる重なる月
例)5月が重なっていたら、2回目の5月が日無し(ヒナーシ)

 

ユンヂチの月自体を日無し(ヒナーシ)とする地域もありますが、ユンヂチが訪れる年全体(旧暦)を日無し(ヒナーシ)とする地域がほとんどです。

●次回のユンヂチ(閏月)は、2023年1月22日(旧暦1月1日)~2024年2月9日(旧暦12月30日)!

 

一年まるまる日取りを気にせずお仏壇事やお墓事を進行できるため、建墓などを予定している家では便利ではないでしょうか。

近年増えた、お仏壇の交換・新調

近年増えた、お仏壇の交換・新調
そこで近年の沖縄では、タナバタ(七夕)やユンヂチ(閏月)のヒナーシ(日無し)に合わせて、大きな沖縄仏壇から、コンパクトなモダン仏壇などに交換する家が増えています。

また先祖代々位牌であるトートーメーの継承問題が深刻化する沖縄では、この機械にトートーメーの永代供養をして、近しい故人のみの位牌を仕立て直し、新しくお仏壇を新調する事例も増えました。

<近年増えた、お仏壇事>
(1)トートーメー問題の解消
・位牌の預かり
・位牌の永代供養

(2)仏壇の交換
・コンパクトな仏壇へ交換

(3)仏壇の新調
・近しい故人のお仏壇を新調

…などなどです。

(1)トートーメー問題の解消

先祖代々位牌のトートーメーは、その昔からさまざまなタブーがあり、沖縄の人々はそのタブーに悩まされてきました。

<深刻化するタブーの一例>
(1)代々長男しか継承できない
(2)家から出してはいけない
(3)その他、トートーメーの処分ができない
・アジカイグァンス(預かり位牌)
・サギブチタン(下げ仏壇)
・脇位牌

…などなど。

アジカイグァンス(預かり位牌)

ちなみにアジカイグァンス(預かり位牌)は、継承者のいないトートーメーを、御恩があったり、嫁方の実家などの理由で「一時的に預かっている」ケースです。

サギブチタン(下げ仏壇)

サギブチタン(下げ仏壇)は、独身や離婚して戻った独身女性子どもの位牌で、昔は台所などに祀っていたため、古い家で位牌が台所にあるケースも見受けます。

脇位牌

脇位牌は昔の先祖代々位牌のトートーメーの脇に祀られてきたイフェー(位牌)で、主に兄弟の位牌です。

トートーメータブーについて詳しくは、下記をご参照ください。
沖縄のトートーメー信仰☆悩ませる禁忌が変わる現代

 

現代の暮らしに合わせた選択

フェイクフラワー
ただ、今は昔のような沖縄の民家も少なくなりました。

<昔ながらの沖縄仏壇の問題点>
●昔は二番座に大きなスペースを取って、沖縄仏壇にトートーメーや脇位牌を祀ることもできましたが、現代の住まいは洋風の間取りがほとんどで、仏間がないことも多いです。

 

このようななかで、昔ながらのトートーメー継承は難しいとして、沖縄ではタナバタ(七夕)やユンヂチ(閏月)のヒナーシ(日無し)に、現代の住まいに合わせたモダン仏壇ミニ仏壇への新調を検討する家が増えています。

そのなかでトートーメータブーを永代供養などでリセットし、近しい故人の位牌や仏壇を新しく仕立てたり、コンパクトな仏壇に合う位牌に交換したりする流れが起きました。

 

あの世とこの世を繋ぐもの

あの世とこの世を繋ぐもの
前述したように沖縄ではいつでもお墓参りはできません。
ただその代わり、「お墓とお仏壇は繋がっている」とされてきました。

<お墓で拝したお線香で繋ぐ>
●そのため、沖縄ではタナバタにお仏壇を新調する家のなかには、お墓参りで拝したお線香の灰を持ち帰り、お仏壇のウコール(香炉)の灰に混ぜる家も見受けます。

 

そうすることで、お墓とお仏壇を繋げる意味合いがあるのですが、故人と話す時には、お線香を拝して煙でつなぐとされてきました。

故人の魂は香りが好き

沖縄のお線香と言えばヒラウコー(平御香)ですが、値段が安く日ごろの御願には便利なものの、香りがありません

そこで昔の沖縄でも、お墓と仏壇の「繋ぎ」など、特別な御願の時には香りを届けるため、日本線香を用いる家も多くありました。
香りがする日本線香を「カバシウコー(芳しい御香)」とも言います。

<沖縄のタナバタ☆カバシウコー>
●特に故人と話をしたい時、カバシウコー(日本線香)で故人の魂と繋ぐ

 

お墓とお仏壇で線を繋ぎ、カバシウコー(日本線香)で電話をかける…、そんな感じがして興味深いですね。

カバシウコー(日本線香)は本州に倣い1本のみ拝する家もありますし、沖縄のヒラウコー(平線香)の本数に倣い3本を拝する家もあります。

 

本州式の仏壇の新調や交換

ただ近年では沖縄でも、タナバタ(七夕)にお仏壇の新調や交換をするに当たり、本州式として、僧侶を呼んで閉眼供養・開眼供養を行う家が増えました。

 

最後に

その昔、沖縄ではタナバタ(七夕)には神様の目が届かないため、故人の魂がより自由にこの世へやって来るとして、「故人の魂と会える日」と言う人もいました。

織姫と彦星は本州の新暦7月7日に行う「七夕」の伝説ですが、まるであの世とこの世の七夕のような話です。

お仏壇で香りが届くカバシウコー(日本線香)を拝し、煙を通して後生(あの世)と繋ぐ体験談もありました。

・なぜか天井から水が一滴落ちて起きた。(夫が熱中症から救ってくれた。)
・朝起きたら、夫の存在を感じた。

それが本当かどうかは本人のみが知るところです。
ただ1年に1度、こい偲ぶ故人と会える言い伝えは、ロマンティックでもあり、残った者の心の支えにもなりそうではないでしょうか。

 

まとめ

ヒナーシ(日無し)は仏壇事に良い日取り

・旧暦7月7日は「日無し」の日
・神様の世界ではない日なので目が届かない
・神様の目を避けて、故人がこの世に降りる
・この世でもお墓事やお仏壇事がしやすい日
・お墓とお仏壇は繋がっている
・お墓で焚いた線香の灰を香炉に混ぜる家もある
・故人と話す時には日本線香を拝する家もある


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