・死産とは?流産との違いは?
・死産とされるのは何か月から?
・死産届はいつからいつまで?
・死産した赤ちゃんは戸籍に残る?
・死産、流産、中絶した時の手続きは?
・死産、流産、中絶した赤ちゃんはどうなるの?
「死産」とは、子宮外で生きられる時期に達した赤ちゃんが亡くなることです。
厚生労働省では妊娠12週目以降ですが、医学的定義では妊娠22週目以降から死産としています。
本記事を読むことで、死産とはどういう状態か、流産との違いや、死産・流産・中絶した赤ちゃんはどうなるのか、戸籍に残る週数などが分かります。
死産とは?
◇死産とは、子宮外で生きられる時期の胎児が亡くなることです
「子宮外で生きられる時期」は、厚生労働省と医学の定義で見解が異なります。
厚生労働省の定義は行政手続きが変わるタイミングを目安としますが、医学の定義は母体と赤ちゃんの状態から判断するためです。
<死産とは?いつまで?> | |
[厚生労働省] | ・妊娠12週未満…流産 ・妊娠12週以降…死産 |
[医学の定義] | ・妊娠22週未満…流産 ・妊娠22週以降…死産 |
厚生労働省が定義する妊娠12週以降に亡くなった赤ちゃんは、火葬が義務付けられ、相応の行政手続きが必要になります。
一方、医学の定義で死産とされる妊娠22週以降に赤ちゃんが亡くなった場合、お母さんは亡くなった赤ちゃんを、経腟分娩や帝王切開で出産しなければなりません。
それぞれ死産後の処置については、後ほど詳しく解説します。
死産と流産との違いは?
◇流産の時期は、火葬義務がありません
流産とは、子宮外ではまだ生存できない、妊娠早期で赤ちゃんが亡くなってしまうことを差します。
厚生労働省の見解では、死産届や火葬義務を必要としない時期です。
<死産と流産の違いとは?> | |
[厚生労働省] | ・妊娠12週未満…流産 |
[医学の定義] | ・妊娠12週未満…初期流産 ・妊娠22週未満…後期流産 (妊娠22週以降)…死産 |
ただし医学の定義で後期流産に当たる時期でも、行政手続き上は厚生労働省の定義に倣うため、死産届の提出と火葬が義務付けられます。
医学の定義による流産と死産の違いは、赤ちゃんと母体の処置対応によるものが大きいでしょう。
流産をしたら赤ちゃんはどうなるの?
◇流産は、稽留流産と自然流産があります
妊娠12週未満の初期流産では、出血や症状のない稽留流産(けいりゅうりゅうざん)のケースも少なくありません。
<流産をしたらどうなる?> | ||
[流産の種類] | [症状] | [処置] |
[稽留流産] | ・自覚症状がない ・病院で確認される |
・子宮内容除去手術 ・自然排出を待つ |
[自然流産] | ・下腹部痛が伴う ・不正出血 |
・胎嚢は病院へ持参する ・遺残がないか超音波検査 ・自然排出を待つ ・流産手術で取り除く |
自然流産では下腹部痛と出血が伴い、胎嚢(たいのう)が出てくる人も多いです。
胎嚢が出たら、できるだけ早く病院へ持参し、顕微鏡検査をしてもらいましょう。
全てが流出した完全流産であれば、次回の月経を待ちますが、一部が残る不正流産では、稽留流産と同じく流産手術などの処置を受けます。
日帰り手術の場合、周囲の理解を得られないことも多く、子育てなど家庭の事情により、すぐに社会復帰をしがちですよね。
手術後は頭痛や頭重感、ホルモンの乱れによる精神的不調も出てきますが、自分を責めることはありません。
周囲や外部の声に敏感になる時期でもあります。
シャットアウトはなかなかできませんが、自分で傷付くことや人から一線を引いてスルーするスキルを身に付け、自分を守ることを考えてください。
人工中絶ではどうなるの?
◇人工中絶であっても、扱いは流産・死産による判断です
死産と流産の違いは、胎内で赤ちゃんが亡くなった妊娠週数により定義されるため、その原因が人工中絶であっても判断は同じになります。
ただ、お母さんがさまざまな事情を抱えるなか、できるだけそっと人工中絶を行いたいこともあるため、人工中絶の決断に期限が求められることが多いのです。
<人工中絶ではどうなるの?> | ||
[判断] | [時期] | [手続き] |
●流産 | ・妊娠12週未満 | ・なし |
●死産 | ・妊娠12週以降 | ・死産届の提出 ・火葬義務 |
このような事情から、さまざまな事情のなか人口中絶を決断するなら、妊娠12週の4ヶ月未満が良いとされます。
また行政手続きが流産や死産と人工中絶で区別がないように、その後の水子供養も流産や死産の赤ちゃんと同じです。
「赤ちゃんが祟るのでは?」との声は昔から多いのですが、実はお母さん自身が傷ついていることが多いです。
あなたも傷付いていることに気付き、あなたが納得できる判断をしてください。
死産届はいつからいつまで?
◇死産届は妊娠12週以降、死産から7日以内に「死産届」を提出します
死産した赤ちゃんの死産届は、7日以内です。
妊娠12週以降の赤ちゃんは火葬が義務付けられているため、死産届を提出して火葬許可証を受け取らなくてはなりません。
<死産届の手続き> | |
[手続き] | [場所] |
(1)死産証書の受け取り | ・病院 |
(2)書類の準備 | ・届出人の身分証明書 ・届出人の印鑑 ・自宅 |
(3)火葬許可証の受け取り |
・死胎火葬許可申請書の提出 ・役所 |
妊娠22週以降の赤ちゃんの死産では、摘出時に僅かでも赤ちゃんが呼吸があった場合、死産ではなく「早産による新生児」が亡くなったと判断されることがあります。
この場合、行政上の手続きは死産届ではなく、死亡届です。
死産で「死亡届」を出すとは
◇妊娠22週以降、医師の判断により死亡届を提出することがあります
妊娠22週目以降、赤ちゃんが摘出時に少しでも呼吸をしていた場合、産まれ出てすぐ亡くなったと判断された場合は、死産届ではなく、「死亡届」です。
<死産届はいつからいつまで?> (医学的な定義より) |
||
[判断] | [時期] | [手続き] |
●死産 | ・妊娠22週以降 摘出時に呼吸なし (医師の判断) |
・死産届の提出 ・火葬義務 ・戸籍は残らない |
●早産 | ・妊娠22週以降 摘出時に呼吸あり (医師の判断) |
・出生届の提出 ・死亡届の提出 ・火葬義務 ・戸籍が残る |
早産と判断された場合、出生届を出した後に、死亡届による除籍手続きの流れです。
出生届では、赤ちゃんの名前を記入し戸籍が作られます。
ご両親にとっては、とても辛い酷な手続きとも言えるでしょう。
難しい時にはムリをせず、代理人にお願いするのも一案です。
代理人は親族だけではありません
◇立ち会った人でも、死産届の提出をお願いできます
さまざまな事情を抱えるなかでは、配偶者や肉親にこそ頼れない、頼ることでさらに傷付くと考えるお母さんもいるでしょう。
死産届の提出は、配偶者や肉親でなくても、依頼できます。
<死産届の代理人> | |
[赤ちゃんとの関係性] | |
●家族 | ・両親 ・同居家族 |
●立会人 | ・立ち会った医師 ・立ち会った助産師 ・立ち会った人々 |
死産と判断されるお母さんの週数は22週以降、一般的には1泊の入院も要しますし、病院やお母さんの体調によっては、7日間の入院を余儀なくされることもあります。
何よりも死産届や死亡届の手続きは、思った以上に精神的な負担が大きいです。
その時は気が張って辛く感じずとも、後々残るので、ムリのないよう周囲に頼ることをおすすめします。
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流産・死産した時、赤ちゃんはどうなるの?
◇妊娠12週目までの赤ちゃんは、専門業者が引き取ります
妊娠12週目以降の赤ちゃんは火葬をしますが、妊娠12週に満たない赤ちゃんは、また未熟な状態なので、専門業者が引き取らなければなりません。
血液や胎盤も残り、血液感染症の感染など、衛生面で危険でもあるからです。
<流産・死産した赤ちゃんはどうなるの?> | |
[時期] | [どうなる?] |
[妊娠12週未満] | ・小さなお袋に納める ・専門業者が引き取る |
[妊娠12週以降] | ・火葬 |
[妊娠24週以降] | ・24時間以上の安置 ・24時間後に火葬 |
赤ちゃんに限らず人が亡くなると、24時間は火葬ができません。
死産の赤ちゃんは24週目までその限りではないのですが、24週を過ぎると、一般と同じように24時間安置後の火葬となります。
死産の赤ちゃんを安置する
◇妊娠24週以降に死産した赤ちゃんは、24時間安置します
24時間の自宅安置では、ドライアイスを赤ちゃんの両脇に挟みます。
ドライアイスはスーパーなどで購入できませんが、葬儀社スタッフに相談すると手配をしてくれるでしょう。
<死産した赤ちゃんの自宅安置> | |
[必要なもの] | [費用目安] |
・お棺 | ・約8千円~2万円 |
・タオル | |
・ドライアイス | ・約5千円~8千円/1日 |
[安置方法] | ・お腹をタオルでくるむ ・お腹と背中にドライアイスを挟む |
赤ちゃんの状態や大きさによって、安置部屋の温度も涼しく設定します。
お通夜を行っても良いですし、赤ちゃんとの時間を家族で大切に過ごすのも良いでしょう。
死産と告げられた後、お母さんは?
◇お母さんの状態にもよりますが、1泊~7泊ほど病院で静養します
死産と告げられた後、お母さんは赤ちゃんを通常の出産と同じ過程で出産し、赤ちゃんを摘出するでしょう。
すでに亡くなっている赤ちゃんを出産することは、お母さんにとって相当な精神的負担を要します。
<死産と告げられた後、お母さんは?> | |
[赤ちゃん分娩まで] | ・陣痛促進剤などの措置 ・経腟分娩(帝王切開) |
[分娩後] | ・子宮をきれいにする ・乳房の張りを抑える(内服薬) ・家族に主治医より説明 |
[翌日] | ・安静 |
[翌々日] | ・退院診察 ・死産証書の受け取り ・退院 |
※病院のスケジュール一例です |
産院は出産直後のお母さんも多いです。
体験談では、自分の病室のカーテン前にキレイなお花が生けられ、同室のお母さんが死産を知ったと言います。
一方で、配偶者や家族・親族にも辛い気持ちを打ち明けられない、理解されないこともあるでしょう。
理解してもらえない人へ理解を求めるよりも、理解してくれる他人に助けられることもあります。
産院内に、お母さんの心をサポートする機関を供えた病院も多くあります。
積極的に利用して、あなたの心に最も適切な方法を選んでください。
赤ちゃんと共に過ごす
◇死産の赤ちゃんとの最期の時間は、その後の癒しに繋がります
死産と告げられてからお母さんは、大きな精神的負担と向き合わなければなりません。
けれども産まれ出た赤ちゃんとの時間を大切に過ごすことで、その後の哀しみを癒す過程も、大きく変わることがあるでしょう。
<赤ちゃんとの時間を過ごす> | |
[分娩時] | ・胸に抱く ・添い寝する ・出生体重の記録 |
[分娩後] | ●母子同室で過ごす ・産湯に入れる ・オムツを替える ・名前を付ける ・体に触れる ・子守歌を歌う ・初乳をあげる |
[記念] | ・髪の毛 ・手形、足形 ・へその緒 ・家族との記念写真 |
※病院のスケジュール一例です |
産院でお願いしても良いですし、自宅で赤ちゃんを安置するならば、その24時間で赤ちゃんへの愛情を示すこともできます。
「我がままでは?」と言うお母さんやご家族もいますが、大切なことは心です。
語り掛け、抱きしめる時間を少しでも作るよう、検討してみてはいかがでしょうか。
死産の後、火葬や葬儀は?
◇死産の赤ちゃんは火葬のみでの供養も多いです
妊娠12週以降の赤ちゃんは火葬が義務付けられていますが、葬儀はご両親の判断によります。
菩提寺があれば、まず菩提寺のご住職へ相談しますが、檀家制度が根付いておらず、独自の祖霊信仰がある沖縄では、菩提寺を持たない家が多いでしょう。
<死産の後、火葬や葬儀の選択> | |
[選択] | [内容] |
[火葬] | ・ご両親で火葬のみ |
[直葬] | ・宗教者に供養を依頼 |
[家族葬] | ・家族、親族だけで葬儀 |
[一般葬] | ・お通夜や葬儀を執り行う |
ご両親や家族で火葬のみを行う場合、自分で火葬場を予約することも多いです。
ただ妊娠24週以降は24時間の安置を必要とし、ドライアイスなどの調達があるので、葬儀社へ相談すると助かります。
死産の赤ちゃんの火葬
◇胎児の赤ちゃんは、火葬後ご遺骨が残らないことも多いです
赤ちゃん専用の「胎児専用火葬炉」もありますが、全ての火葬場で胎児専用火葬炉を備えている訳ではありません。
<死産の赤ちゃんの火葬> | |
[棺] | …赤ちゃん用の小さい棺 |
[骨壺] | …小さい骨壺 |
[副葬品] | …ベビー服、オモチャなど (燃えるもの:火葬場と相談) |
死産の赤ちゃんは体も小さく、火葬後のご遺骨も少ないでしょう。
棺は病院、もしくは葬儀社で相談すると入手できます。
また骨壺も葬儀社や火葬場でも準備してくれますが、仏壇仏具店で赤ちゃんをイメージした可愛く小さな手元供養用の骨壺を準備するご両親も増えました。
火葬時の服装は?
◇火葬場での服装は、一般的に「平服」が多いです
多くの人々が参列するお通夜や葬儀を伴う場合、通常のセレモニーと同じように喪服で整えますが、火葬のみ、家族のみでの供養が多いため、平服で揃える家族が多いでしょう。
<平服とは:火葬時の服装> | |
[男性] | ・ビジネススーツ ・黒、濃紺、グレーなど ・白いYシャツ ・光沢のない黒革靴 (ビジネス用) ・アクセサリーは控える (結婚指輪は可) |
[女性] | ・黒、濃紺、グレーなど ・ワンピース ・アンサンブル ・フォーマルスーツ ・パンツでも良い ・ヒール3cm以下のパンプス ・アクセサリーはパールのみ ・化粧は控えめ |
「平服」とは、畏まったお出掛け着を差し、あまりカジュアルな服装や、露出の激しい派手な服装は避けます。
まとめ:法的には、妊娠12週目から死産となります
「死産」とは、子宮外でも生きられる赤ちゃんが亡くなったことを差し、医学的には妊娠22週以降とされますが、厚生労働省の定義では妊娠12週以降が死産です。
妊娠12週未満の流産と、妊娠12週以降で何が違うのかと言えば、火葬の有無でしょう。
火葬に伴い、妊娠12週以降では、死産届を役所に提出します。
これは自然流産でも人工中絶でも、妊娠何週目かによって扱いが分かれるため、手続きに代わりはありません。
死産により火葬した赤ちゃんは、妊娠24週未満の赤ちゃんは火葬のみの供養が多く全体の6割以上、一方で妊娠32週を過ぎて死産を迎えた赤ちゃんは、8割以上がお通夜や葬儀を執り行っています。