沖縄線香「ヒラウコー(平御香)」とは?線香の燃え方に意味がある?日本線香と違いは?

2024.03.25
沖縄線香「ヒラウコー(平御香)」とは?線香の燃え方に意味がある?日本線香と違いは?

沖縄線香「ヒラウコー(平御香)」とは、歴史や文化から産まれた沖縄独自のお線香で、日本線香6本分が板状にくっ付いていて、その燃え方に意味があるとされます。本記事では沖縄線香の役割や供える本数・扱い方、日本線香との違い、使い分け方が分かります。

・沖縄線香「ヒラウコー(平御香)」とは?
・沖縄線香(ヒラウコー)の燃え方の意味とは?
・沖縄線香と日本線香の違いは?

沖縄線香「ヒラウコー(平御香)」とは、長い沖縄の歴史や御願(ウグァン)文化から産まれた、日本線香6本文がくっついたような板状のお線香です。

沖縄では拝み事「御願(ウグァン)」で沖縄線香(ヒラウコー)を供えた時、その燃え方に意味があるとされます。

本記事を読むことで、沖縄線香「ヒラウコー(平御香)」とは何か?
その役割や供える本数・扱い方、日本線香との違いや使い分け方が分かります。

 

沖縄線香「ヒラウコー」とは?

沖縄線香「ヒラウコー」とは?
◇沖縄線香「ヒラウコー(平御香)」とは、沖縄独自のお線香です

沖縄線香「ヒラウコー(平御香)」とは、日本線香6本分が横にくっついた、板のような形状をした、沖縄独自のお線香となります。

沖縄の拝み「御願(ウグァン)」文化は、ヒジュル(霊石)など、大きな自然とともに歴史が紡がれてきたものです。

 

<沖縄線香「ヒラウコー(平御香)」>
[主原料] ・でんぷん
・木炭
・水
[特徴] ・香りがない
・煙が多い

 
沖縄線香「ヒラウコー(平御香)」は、日々の暮らしや供養、農耕儀礼とさまざまな儀礼で扱われてきた呪具でもあり、その役割はさまざまにあります。

現代の日本線香は暮らしの事情に考慮して、煙の少ない「少煙」タイプが人気がありますが、沖縄線香「ヒラウコー(平御香)」は、煙を天に昇らせることで、神様仏様や故人と繋がるとされました。

 

沖縄線香(ヒラウコー)の役割

◇沖縄線香(ヒラウコー)は、御願(ウグァン)においても重要な役割を果たします

日本線香は一般的に故人の供養、弔意を表すために焚きますが、沖縄線香(ヒラウコー)は、独自の自然信仰において、拝み(祈願事)でも扱われるものです。

そのため祈願事「御願(ウグァン)」の内容に合わせて役割も多様にありますが、今回はその一例をお伝えします。

 

<沖縄線香(ヒラウコー)の役割>
[役割] [例]
①祈願事を伝える ・御願
(ウグァン)
②魂を移動する ・抜魂
(ヌジファー)
③遠くの場所へ繋ぐ ・お通し
(ウトゥーシ)
④願掛けができているか確認 ・御願不足
(ウグァンブスク)
⑤祈願事を解く ・御願解き
(ウグァンブトゥチ)

 
日々の生活のなかでは、ヒヌカン(火の神)とお仏壇へ供える、年中行事においてお墓参りなどで供えることが一般的です。

難しい御願(ウグァン)は、沖縄ではセジ(霊力)を持つユタ・神人(カミンチュ)が行うことが多いでしょう。

 

沖縄線香(ヒラウコー)の燃え方

沖縄線香(ヒラウコー)の燃え方
◇沖縄線香(ヒラウコー)の燃え方で、御願不足が分かるとされます

沖縄線香(ヒラウコー)の燃え方を見て、ご先祖様や神様が喜んでいるかどうかが分かるとされるため、沖縄線香(ヒラウコー)の燃え方を気にする人々も少なくありません。

反対に沖縄線香(ヒラウコー)が上手に燃えずに、黒ずんでいたり、6本のうち、一筋が残ってしまっていたりすると、「御願不足(ウグァンブスク)」を気にする人もいるためです。

 

<沖縄線香(ヒラウコー)の燃え方>
[意味] [燃え方]
①御願ができている ●御香花
・灰が花のように残る
・灰が形になって立つ
・きれいに赤く焚かれる
②御願不足
(ウグァンブスク)
・途中で火が止まった
・沖縄線香が残った
数筋残った
・灰が黒ずんでいる

 
なかには御願不足(ウグァンブスク)を極端に恐れる人がいますが、祟りや霊障のようなものではないので、あまり深く悩むことはありません。

ご先祖様や神様からのメッセージと捉えることで、より温かな気持ちで受け取ることができるでしょう。

 

御願不足(ウグァンブスク)とは?

◇御願不足(ウグァンブスク)の印は、先方からのメッセージです

御願不足(ウグァンブスク)」とは、言葉の通り御願(ウグァン)が足りないことを指しますが、内容はさまざまです。

単純に御願(ウグァン)が足りない、手順や拝み方が違う、などと捉えることもありますし、そもそも仏壇やヒヌカン(火の神)の仕立て方が違う、と捉えることもあります。

 

<御願不足(ウグァンブスク)とは>
●ただひとつ言えることは、「家を守護する神様やご先祖様からのメッセージがある」と言うことです。

 
なかには「ご先祖様が怒っている」などと畏れる声もありますが、慌てず冷静に、日々の暮らしや気になる事柄を反芻しながら、気になる点と向き合ってみると良いでしょう。

 

沖縄線香と日本線香

沖縄線香と日本線香
◇沖縄線香(ヒラウコー)は、さまざまな用途で使われます

特徴的な扱い方として沖縄線香(ヒラウコー)は、故人や神様の魂(マブイ)の依り代となる、呪具としての役割がある点です。

 

<依り代としての沖縄線香(ヒラウコー)>
・ヒヌカン(火の神)はウコール(香炉)の灰に宿る
・御嶽(ウタキ)の神様を迎え入れる際、お線香に移っていただく
・人が逝去すると、魂(マブイ)お線香に移して、家へ連れて帰る

 
沖縄の御願(ウグァン)では沖縄線香(ヒラウコー)やお線香に、神様や人々のマブイ(魂)が移る呪具として扱われやすいです。

 

●また沖縄の御願(ウグァン)は、日常的に用いるため、沖縄線香(ヒラウコー)も「今日もご飯が食べられますように」など、常久的な祈願事で供えられることが多いでしょう。

 
家の繁栄や家庭円満など、家ごとに関する祈願で扱います。
例えば沖縄線香(ヒラウコー)を2枚重ねて供えると、「夫婦和合」を意味するなどです。

神人(カミンチュ)が沖縄線香(ヒラウコー)を利用する場合、世の中の平和「ユガフー(世の平和)」祈願など、大きな祈願事で扱うことも多くあります。

 

日本線香

◇民衆において日本線香は、主に供養で用いられます

沖縄において香りがある日本線香は、その昔は高級品として扱われました。
そのためかつては、特別な御願(ウグァン)で日本線香を用いており、「カバシウコー(香御香)」や「イップンウコー(一本御香)」などと呼ばれます。

けれども主には、故人の供養の場で日本線香が用いられることが多いでしょう。

 

<供養としての日本線香>
●故人と繋がる、供養する
・通夜や葬儀
・供物として
・香典代わりの供物

 
沖縄には檀家制度は根付いていませんが、本来は寺院で参拝をする場合、寺院の仏教宗派に倣った参拝をしますので、日本線香を用います。
また祈願事で日本線香を用いる場合、より個人的な内容で扱われることが多いです。

 

・「商談が成功しますように」
・「○○学校に合格しますように」

 
ちなみに「檀家制度」とは、本州で寺院墓地にお墓を建て、その寺院を経済的に支え、信徒となる制度となります。

現代では宗旨宗派自由な霊園も増えましたが、かつて本州では檀家制度が根付いていました。

 

 

コンパクト仏壇と日本線香

◇現代の沖縄ではコンパクト仏壇が増え、日本線香を使う家庭も増えています

現代の沖縄では分譲マンションやアパート住まいの人々も増えました。
その住まい環境の変化に合わせて、仏間のない「リビング仏壇」なども増え、仏壇もコンパクトになっています。

ただ沖縄のウコール(香炉)が大きいため、仏壇のサイズに合わせて香炉も小さなものが増えました。

 

<コンパクト仏壇と香炉>
●けれども小さな香炉に沖縄線香(ヒラウコー)を供えると、香炉が熱に耐えきれずに割れてしまう事態も度々起き、日本線香が利用されています。

 
…日ごろは小さな香炉で拝み、旧盆など旧暦行事になると、沖縄の香炉「ウコール(香炉)」を出して、沖縄線香(ヒラウコー)を供えるなどです。

そのため近年では、供養事において沖縄線香(ヒラウコー)の代わりに日本線香を用いる家庭が増え、沖縄線香3本を日本線香1本として、供える家庭が増えました。

沖縄には「ウティン(天)・ジーチ(地)・リュウグ(竜宮)」の三神がいるとされ、三神でひとつの世界を創る「三位一体」の考え方から、3本を1本とするようになっています。

 

沖縄線香(ヒラウコー)を供える本数

沖縄線香(ヒラウコー)を供える本数
◇基本的に客人は3本、仏壇には12本、ヒヌカン(火の神)には15本です

沖縄では御願(ウグァン)の内容で、沖縄線香(ヒラウコー)を供える本数が変わります。
けれども一般的な沖縄線香(ヒラウコー)を供える本数であれば、15本・12本・3本、3通りのいずれかで判断すると良いでしょう。

 

<沖縄線香(ヒラウコー)の本数>
[意味] [燃え方]
①ヒヌカン(火の神) ●ジュウゴフンウコー(十五本御香)
沖縄線香…2枚半(タヒラ半)
(日本線香15本分)
②仏壇(祖霊) ●ジュウニフンウコー(十二本御香)
沖縄線香…2枚(タヒラ)
(日本線香12本分)
③家長以外が供える
(その他の家族、客人など)
●サンブンウコー(三本御香)
沖縄線香…半分(半ヒラ)
(日本線香3本分)
※お線香3本分(半分)に割る

 
「家長以外が供える」場合は、サンブンウコー(三本御香)とお伝えしましたが、これはお仏壇についてです。

沖縄の御願(ウグァン)では、ヒヌカン(火の神)は家の女性(妻や母など、台所を担う女性)のみが拝み、それ以外は触ったり、拝まないとされてきました。
(現代では、台所を担う者であれば男性でも良いとする家も増えています。)

ヒヌカン(火の神)に供えたウサギムン(お供え物)も、ウサンデー(下げたもの)は女性のみがいただくとされてきました。

 

日本線香を供える場合

◇沖縄線香の本数の1/3で供えることもできます

前述したように日本線香を仏壇に供える家庭では、住まい環境や諸事情により、コンパクト仏壇が多いです。

なかには家族が息うリビングにコンパクト仏壇を置く家庭もあるでしょう。
そのため日本線香を供える場合、沖縄線香(ヒラウコー)を供える本数の1/3本を供える家庭が多いです。

ヒヌカン(火の神)もまた、自分で器を選び小さくまとめた祭壇が増えました。

 

<沖縄線香(ヒラウコー)の本数>
[意味] [燃え方]
①ヒヌカン(火の神) ●ジュウゴフンウコー(十五本御香)
・日本線香15本、もしくは5本
②仏壇(祖霊) ●ジュウニフンウコー(十二本御香)
・日本線香12本、もしくは4本
③家長以外が供える
(その他の家族、客人など)
●サンブンウコー(三本御香)
・日本線香3本、もしくは1本

 
また近年増えた、遺骨を自宅で供養する「手元供養」では、A4サイズほどの小さな祭壇も見受けます。
このようなケースでは、毎日1本を供えて供養することも多いでしょう。

ただし、この日本線香の本数は檀家に属していない沖縄においての本数です。
全国的には仏教宗派によって、お線香の本数や供え方が違うので注意をしてください。

 

[全国的なお線香の本数、あげ方]
・仏教宗派で違うお線香の本数やあげ方とは?全国の自宅弔問、法要でお線香のあげ方マナー

 

ヒジュルウコー(冷たい線香)とは

◇ヒジュルウコーとは、火を灯さずに供えるお線香です

ヒジュルウコー(冷たい線香)」とは、火を灯さずに供えるお線香で、主に火の用心の観点から、屋外の御願(ウグァン)で行うようになりました。

ヒジュルウコー(冷たい線香)は、習字の半紙を四つ切にして、さらに二つ折りにした「シルカビ(白紙)」を座布団のようにお線香の下に敷いて供えます。

以上、沖縄線香(ヒラウコー)を供える、祈願の内容で違うさまざまな本数の解説や、ヒジュルウコー(冷たい線香)を供える手順などについては、下記コラムをご参照ください。

 

 

贈答用線香は沖縄線香?

贈答用線香は沖縄線香?
◇贈答用線香は、一般的に日本線香を贈ります

沖縄で贈答用線香を贈るタイミングの多くは、通夜や葬儀、法要(法事)などです。
香典とともに供物として持参する他、通夜や葬儀、法要(法事)に参列できない時、欠席の代わりに郵送することがあります。

 

<贈答用線香を贈る時>
・通夜や葬儀
・年忌法要や命日
・初盆、初彼岸
・旧盆に参加できない
・シーミー(清明祭)に参加できない
・喪中ハガキで訃報に触れた

 
…などが一般的ですが、どれも供養行事となるため、日本線香を贈る人が多いです。

また沖縄線香(ヒラウコー)は日常的に使用するお線香なので、価格帯も安いことから、贈答用にはカジュアル過ぎて、あまり向いていません。

日本線香は贈る目的に合わせて、高級なお線香もあることから、贈りやすいです。

 

沖縄における日本線香の役割

◇仏教における「香食」の考え方から、故人の供養に用いられます

もちろん沖縄線香(ヒラウコー)も、シーミー(清明祭)や旧盆など、あらゆる供養行事で用いられますが、日本線香を供える時は、通夜や葬儀をはじめとした故人への追善供養が多いでしょう。

これは仏教で仏様(故人)は香りを食べると言う「香食(こうじき)」の考え方によるものです。

 

<沖縄における日本線香の役割>
①故人と繋がる ・故人への贈り物(贈答用線香)
・故人と会話をする
②遠くへ繋ぐ ・遠くから供養する

 
日本線香が香り高い「カバシウコー(香御香)」と呼ばれてきたことはお伝えしましたが、香りにより故人と繋がったり、遠くまで想いを届けると考える人もいました。

また日本線香に限らず、沖縄線香(ヒラウコー)でも言えることですが、沖縄ではお線香を通して生きる人々の魂(マブイ)に、メッセージを送るともされます。

例えば、ケンカをして絶交した人へ謝りたい、行方知れずの人へメッセージを残したい、などです。

贈答用線香の送り方や包み方マナーなどについては、下記コラムをご参照ください。

 

 

お線香をもらったら?

◇法要や年中行事などでお線香をもらったら、「代わりウコー」をします

お盆や旧盆、法事(法要)などに参列できない人からお線香をもらったら、代わりにお線香をあげてくようをする「代わりウコー」をすると良いでしょう。

贈答用線香が届いたら、仏壇のお線香からご先祖様へお線香を供え、贈答用線香は御仏前に供物として供える家が多いです。
下記は旧盆やお彼岸など、年中行事でお線香をもらった時の流れをお伝えします。

 

<贈答用線香が届いたら?>
●御仏前で行う事柄
①家のお線香を拝する
②いただいたお線香(供物)を供える
③「○○○○からのお供え物です。」とご先祖様に伝える
ウチカビ(打ち紙)を3枚、供物の上に置く
⑤家族でウチカビ(打ち紙)を焚く時、供物の上に置いたウチカビ(打ち紙)を一緒に焚く
⑥「○○○○からのウチカビ(打ち紙)です。」とご先祖様に伝える

 
一方、通夜や葬儀の香典代わりにいただいた供物は、御霊前に供えた後、四十九日法要の後、7日間までを目安にお礼の品「香典返し」を送ります。
この時、お礼状を添えてお送りください。

香典返しの金額相場は、いただいたお線香の金額の1/3~1/2ほどとされますので、約2千5百円~5千円ほどが目安です。

ただし、約3千円以下の供物をいただいた場合、「香典返しを送る必要はない」とする地域もあります。

また供物とともに「香典返しは辞退させていただきます」の一文がある場合には、香典返しを送る必要はありません。

 

 

まとめ:沖縄線香(ヒラウコー)は、沖縄独自のお線香です

まとめ:沖縄線香(ヒラウコー)は、沖縄独自のお線香です
沖縄線香(ヒラウコー)は、沖縄独自の長い歴史や文化から産まれた独自の沖縄線香で、でんぷんや木炭を水で練って作られてきました。

日本線香は沈香や白檀など、香木から作られていますが、かつては沖縄線香(ヒラウコー)も、つなぎに木(タブ)の葉が用いられたこともあるようです。

長い歴史のなかで、沖縄線香(ヒラウコー)は、芋カスや戦後では馬糞を用いるなどして、今に残りました。

でんぷんと木炭を主原料とした沖縄線香(ヒラウコー)は、日本線香のように香りが高くありませんが、ウティン(御天)へと昇る煙と、ほのかな木炭の香りがします。

 



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