家計を守る沖縄の現世利益の神様「トゥクシン(床の神)」とは?ヒヌカンとは何が違う?

2023.02.25
家計を守る沖縄の現世利益の神様「トゥクシン(床の神)」とは?ヒヌカンとは何が違う?

沖縄のトゥクシン(床の神)とは、大黒柱である男性を守護する神様として、金銭など現世利益に強いパーソナルな神様です。一時期は廃れていましたが経済的に不安定な現代、見直されるようになりました。今回は、そのご利益や仕立て方、拝み方をお伝えします。

沖縄では男性を守る「トゥクシン(床の神)」がいらっしゃるのはご存知でしょうか。
女性を守るヒヌカン(火の神)とは対照的に、家の大黒柱である男性を守護する神様として、金銭面や立身出世など、現世利益に強いパーソナルな神様です。

・沖縄のトゥクシン(床の神)とは?
・トゥクシン(床の神)のご利益は?
・トゥクシン(床の神)の仕立て方
・トゥクシン(床の神)の拝み方
・現代のトゥクシン(床の神)は?

琉球王朝時代は位の高い家で祀られてきたことから、ヒヌカン(火の神)と比較して一時期は廃れた沖縄のトゥクシン(床の神)ですが、経済的に不安定な現代、改めて沖縄ではトゥクシン(床の神)を祀る家が増えました。

今回は、現代の沖縄で注目されるトゥクシン(床の神)について解説します。

 

沖縄のトゥクシン(床の神)のご利益とは

沖縄のトゥクシン(床の神)のご利益とは
●沖縄のトゥクシン(床の神)は、男性の運勢を上げるとされるため、収入や長寿など、現世利益を叶える神様です

沖縄のトゥクシン(床の神)は「男神」の別名があるように男性の神様であり、(その昔は)家を支える大黒柱としての役割を持った男性の祈願事である、金銭面での現世利益をもたらします。

<沖縄のトゥクシン(床の神)のご利益とは>
ジングトゥ(銭徳)
・ウェードゥク(食徳)
・ヌチドゥク(命徳)

例えば東廻り(アガリウマーイ)などで知られるアマミキヨの霊場は、「この世」の平和を主に叶えますし、そのひとつ、斎場御嶽(セイファーウタキ)や首里城の真玉森御嶽(マダムイウタキ)などは「国」の安泰などを司るなど、同じ神様でも違う役割です。

・アマミキヨの霊場…世の平和
・真玉森御嶽(マダムイウタキ)…国の平和
・トゥクシン(床の神)…家の平和

一方、沖縄のヒヌカン(火の神様)は家庭内を守護し、トゥクシン(床の神)はこの家の大黒柱(家長)の、個人的な祈願事を叶えてくれるとされてきました。

 

沖縄のトゥクシン(床の神)の特徴とは

沖縄のトゥクシン(床の神)とは
●沖縄で「トゥクシン(床の神)」の特徴とは、家を支える大黒柱として、床の間に祀られる神様です

男性を守るトゥクシン(床の神)は「家の大黒柱」を守護するとし、上座の床の間に祀られてきました。
沖縄のトゥクシン(床の神)は、「トゥクヌカミ」とも言われますね。

仏壇に祀るお供え物は家族でいただきますが、沖縄ではトゥクシン(床の神)に祀るお供え物は家長や男性がいただくとされます。

<沖縄のトゥクシン(床の神)の特徴とは>
●沖縄のトゥクシン(床の神)は、家を守護する大黒柱
①男性が担う「男神
父親から嫡男へ代々継承
床の間に掛け軸などで祀られる
④ヒヌカン(火の神)と陰陽のバランス
⑤家によって祀る神様が違う

沖縄のトゥクシン(床の神)は、床の間に掛け軸などの形で祀られる神様です。
現代では沖縄の旧暦行事で拝み事を行う際、ヒヌカンと仏壇へ供えるとされますが、沖縄で床の間にトゥクシン(床の神)を祀る家では、床の間にもお供え物を供えるでしょう。

沖縄のトゥクシン(床の神)は、祀る者拝む者がそのご利益、役割を理解してこそ、効果を発揮する神様です。
そこで、それぞれの特徴について、より詳しくお伝えします。

 

①男性が担う「男神」

沖縄のヒヌカンと共に信仰されるトゥクシン(床の神)とは?今見直される御利益
●沖縄のトゥクシン(床の神)は、代々家長である男性を守護する神様です

沖縄の三大信仰はヒヌカン(火の神)・御嶽(うたき)・祖霊信仰がありますよね。
そのため一般的に沖縄では「ヒヌカン(火の神)は女性、仏壇(祖霊神)は男性が担う」と言われます。

そうなると「男性が担う神様は、トゥクシン(床の神)ではなく仏壇(祖霊神)なのでは?」と疑問に思う人もいますが、仏壇(祖霊神)が一族を守護する存在であるのに対して、トゥクシン(床の神)は、より男性その人を守護する神様です。

<それぞれの担い手と役割>
ヒヌカン(火の神)…家内安全、女性が担う
トゥクシン(床の神)…家の繁栄、男性が担う
仏壇(祖霊神)…家の守護、家長が担う

またあらゆる家族の人生儀礼でご報告をする神様なので、安産祈願や学業成就、商売繁盛、旅の安全など、女性がヒヌカン(火の神)へ拝むように、あらゆるシーンで男性が心の拠り所としています。

 

②父親から嫡男へ代々継承

②父親から嫡男へ代々継承
●昔ながらの沖縄のトゥクシン(床の神)は、「マンジ(真筋)繋ぎの神様」として、代々継承されました

マンジ(真筋)」とは、父系の血が入った血族で、嫡男とされてきました。
次男以降は、次男をグァンス(元祖)とし、新しく掛け軸を迎え入れます。

沖縄でトゥクシン(床の神)の風習は、那覇市久米近郊から始まりました。
1392年、明の時代に中国からやってきた技能集団「久米三十六姓(くめさんじゅうろくせい)」により持ち込まれ、1700年代頃から位の高い家系で広がったとされます。

<沖縄のトゥクシン(床の神):代々継承>
(A)親から嫡男へ代々継承される
掛け軸に神様が宿る
・むやみに新調できなかった
・家付きのユタやノロがハンジ(判断)をしていた
次男以降は新しく仕立てた(B)掛け軸の大きさや神様で力が分かれる
家のセジ(霊力)は掛け軸の大きさ
・家によって神様が違う
※詳しくは事項でお伝えします。(C)女性は灰、男性は掛け軸
ヒヌカン(火の神)…母親から灰を継承
トゥクシン(床の神)…父親から掛け軸を継承

ただ当時の庶民の家ではそもそも床の間がなく、琉球王朝に仕える沖縄の家系でトゥクシン(床の神)を祀る場合でも、神様が違いました

家付きのユタやノロによる「ハンジ(判断)」とは、その掛け軸に神様が宿っているかどうか、掛け軸を新調しても良いか、などを判断していました。

 

③床の間に掛け軸などで祀られる

沖縄に伝わるトゥクシン(床の神)とは☆新しく迎え入れはできる?
●沖縄のトゥクシン(床の神)は床の間で祀る神様でした

その昔の沖縄で住んでいた平屋では、玄関から入ってすぐの部屋が一番座、その向かって左隣が二番座、三番座と続き、裏手に裏一番座・二番座・三番座があります。

そんな沖縄の平屋でトゥクシン(床の神)は一番座、仏壇(祖霊神)は二番座です。
さらにヒヌカン(火の神様)は台所に祀られたことから、家を守護する神々様のなかでは、より権威のある神様ともされました。

<沖縄のトゥクシン(床の神):祀り方>
(A)一番座に床の間があった
・現代ではリビングの一角に祀られる
・仏壇(祖霊)よりも上座に祀る
※一番座だが、拝むのは家族のみ(B)家のセジ(霊力)に見合った大きさ
・大きすぎると掛け軸の力に飲み込まれる
・小さすぎると掛け軸の力が発揮できない
※セジ(霊力)と家柄(位)は違う(C)床の間は一間ほどの空間だった
・掛け軸
・ウコール(香炉)
・ミジトゥ(お水)
・ウチャトゥ(お茶)
・供え花

※沖縄でトゥクヌカミ(床の神)への拝みや、拝む時のお供え物に関しては、後ほど詳しくお伝えします。

もともと沖縄では位の高い家でトゥクヌカミ(床の神)を祀ってきたことや、男性が担う神様であることから、一時期は廃れていましたが、経済的に不安定になった昨今では、ヒヌカン同様、「男性も心の拠り所が欲しい」として、改めて仕立てる家が増えました。

ただ昔のような床の間はない家がほとんどなので、祀り方も変わっています。
(現代の沖縄で増えるトゥクヌカミ(床の神)の祀り方は、後ほどお伝えします)

 

④ヒヌカン(火の神)と陰陽のバランス

ヒヌカンが持つ5つの役割
●沖縄では、ひとつの家にトゥクシン(床の神)とヒヌカン(火の神様)を祀ることで、陰陽のバランスを取ります

男神であるトゥクシン(床の神)は、外に向けた社会的な御運(立身出世/収入の向上/商売繁盛など)であり、女神であるヒヌカン(火の神)内に向けた家族の御運(夫婦和合/家族の健康/安産)に強いです。

<男神と女神でバランスを取る>
ヒヌカン(火の神)…女性性、内向け(家内)
トゥクシン(床の神)…男性性、外向け(社会)

詳しくは後ほどお伝えしますが、沖縄ではトゥクシン(床の神)への御願(拝み)も、ヒヌカン(火の神)と同じタイミングである、旧暦1日と15日となっています。

⑤家によって祀る神様が違う

昔から伝わる沖縄のトゥクシン(床の神)
●沖縄のトゥクシン(床の神)は、掛け軸に描かれた神様によって、ご利益も違います

沖縄で家を守護する他の神々様、ヒヌカン(火の神)や仏壇(祖霊)のように、どこの家でも同じ神様、ご利益ではありません。

ただ沖縄のトゥクシン(床の神)として広く好まれてきた掛け軸は、関帝王(カンテイオウ)、七福神、鶴と亀などで、いずれも金銭や繁栄など現世利益に強い神様です。

<沖縄のトゥクシン(床の神):祀る神様>
(1)関帝王(カンテイオウ)  ジングトゥ(金銭)の神様
商売繁盛
・家計安泰
・立身出世
・仁義を貫く
(2)七福神 五穀豊穣(大黒天)
・商売繁盛(恵比寿)
・厄除け(毘沙門天)
芸能運/人気運(弁財天)
・延命長寿(寿老人)
長寿/子孫繁栄(福禄寿)
・夫婦和合/笑門来福(布袋)
(3)鶴と亀 長寿の御利益(鶴は千年、亀は万年)
・亀…財運(銭亀)
・鶴…夫婦和合(夫婦鶴)
(4)寅 ・権威
・社会的立場
勝利、成功
(5)観音様(観音菩薩) この世の悩み苦しみからの解放
・救いを施す
・子どもの健やかな成長
家族の平和
・和合

七福神の掛け軸の他、長寿を担う福禄寿のみを祀る家などもあります。

関帝王(カンテイオウ)と観音様は、それぞれ1月・5月・9月の「正五九月」、それぞれの神様と御縁が近くなる「縁日」に拝みを捧げる家が多いです。

 

【おまけ】観音様の「七難」

●特に沖縄では観音様が「世の七難」から人々を守るとされる「観音信仰」があります

また観音様は三十三の姿に変化するため(阿弥陀如来など六観音もありますね)、そのお姿によって特徴もあるのですが、人々の悩み苦しみを聴き、救いを施すとされました。

観音様が祀られるウガンジュ(拝所)も多いですが、沖縄のトゥクシン(床の神)として観音様が祀られる際、御守護いただける「七難」があります。

<観音様が守護する「七難」とは>
・火難(かなん)
・水難(すいなん)
・羅刹難(詐欺など人を惑わす魔物)
・刀杖難(凶器による難)
・鬼難(死霊)
・迦鎖難(悪事を働くこと、罪、逮捕)
・怨賊難(悪人・罪人による難)

沖縄では観音様の拝みを行う「縁日」は18日、正五九月(1月・5月・9月)の18日に、紅白まんじゅうなどを供える御願です。

 

沖縄のトゥクシン(床の神)への拝み方

沖縄のトゥクヌカミ(床の神)
●沖縄のトゥクシン(床の神)は、毎日のお世話と、毎月旧暦1日・15日の御願(拝み)を行ってきました

前述したように沖縄のトゥクシン(床の神)を拝むタイミングは、ヒヌカン(火の神)と同じ、新月(旧暦1日)と満月(旧暦15日)の月2回です。

<沖縄のトゥクシン(床の神)へ拝む>
①日々のお世話…日々の感謝(取り換える)
・ウチャトゥ(お茶)
・ミジトゥ(お水)
※ミジナディー(水撫で)②旧暦1日、15日…祈願と感謝
・ウチャトゥ(お茶)…1対2膳
・ミジトゥ(お水)
・ウサク(お酒)
・マース(お塩)
・供え花
ウブク(ご飯)…1対2膳

旧暦1日の新月には出世などの祈願事を伝え、旧暦15日の満月には感謝(成果)を伝えます。
この他、ヒヌカン(火の神)と同じく祈願事の他にも、男性が日々の暮らしのなかで気掛かりなことを相談しても良いですし、嬉しいことまで伝える身近な存在です。

沖縄でトゥクシン(床の神)を仕立てる

沖縄でトゥクシン(床の神)を仕立てる
●沖縄のトゥクシン(床の神)は自由に仕立てて問題はありません

新しく仕立てる時には、好きな神様の掛け軸を購入し、床の間に飾ります。
沖縄のトゥクシン(床の神)は、仕立てる時よりも仕立ててからの御願(拝み)が重要です。

●現実的な言い方で言えば、毎日トゥクシン(床の神)に手を合わせて誓いを立てることで、男性の力が養われて、実社会で成功します

言わばヒヌカン(火の神)の灰と同じで、毎日の拝みがトゥクシン(床の神)のセジ(霊力)を高めるとされてきました。
そのためか現代の沖縄では掛け軸にこだわらないトゥクシン(床の神)が増えています。

<沖縄でトゥクシン(床の神)仕立てる:現代の変化>
●リビングに小さく祀る
ウコール(香炉)
②小さな掛け軸
③ご本尊
④名前のない位牌
シンボル(霊石など)

その昔、沖縄の平屋の家ではトゥクシン(床の神)を祀るスペースが予め用意されていましたが、現代の住まいではそもそも床の間がなく、掛け軸も家のインテリアに合いません

そこで現代は、リビングの一角に、A4用紙ほどの小さなスペースを用意し、シンボルとなるものを祀る家が増えました。
なかにはインテリアのようなトゥクシン(床の神)もあります。

何よりも沖縄でトゥクシン(床の神)は、日々の拝みの積み重ねが、より深く神々様とのパイプを繋げるとの考え方があるためです。

最後に

以上が沖縄に伝わる男神「トゥクシン(床の神)」についてですが、忙しい現代では、昔ながらの旧暦行事や御願(拝み)がおっくうになる人も多いですよね。
門中単位で拝むこともない現代では、日々の簡単な挨拶だけでも大丈夫です。

また、沖縄でトゥクシン(床の神)・ヒヌカン(火の神様)の双方を祀る家では、年に3回行う「ヤシチヌウグァン(屋敷の御願)」も、家長が代表してトゥクシン(床の神)への拝みで済ませる家も見受けます。
(お線香は日本線香15本もしくは5本)

これはトゥクシン(床の神)が、トゥパシラ(戸柱)に鎮座する最も権威のある神様として、全ての神様へウトゥーシ(お通し)してもらうためです。

家や地域によってそれぞれの信仰もありますが、細かな御願行事に疲れてしまった時には、拝み方のひとつとして参考にされてみてはいかがでしょうか。

ヤシチヌウグァン(屋敷の御願)に関しては、下記をご参照ください。
【沖縄の春彼岸】お彼岸に行う屋敷の御願とは?六柱の神々と十ヶ所の拝み処

 

まとめ

沖縄のトゥクシン(床の神)とは?
●トゥクシン(床の神)とは?
・男性を守護する神様
・家を守護する大黒柱

●ご利益とは
・ジングトゥ(銭徳)
・ウェードゥク(食徳)
・ヌチドゥク(命徳)

●特徴とは
・男性が担う「男神」
・父親から嫡男へ代々継承
・床の間に掛け軸などで祀られる
・ヒヌカン(火の神)と陰陽のバランス
・家によって祀る神様が違う

●祀る神様
・関帝王(カンテイオウ)
・七福神
・鶴と亀
・寅
・観音様(観音菩薩)

●仕立て方
・床の間に祀り日々拝む
・拝むことで魂が入る
・拝むことでセジ(霊力)が高まる

●拝み方
・日々のお世話
・旧暦1月、15日の御願(拝み)

●現代、変化するトゥクシン(床の神)
・リビングに小さく祀る
・ウコール(香炉)
・小さな掛け軸
・ご本尊
・名前のない位牌
・シンボル(霊石など)


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