家族が亡くなると、その日から死後の手続きに追われますよね。
死亡届の提出など、基本的な死後の事務手続きには14日以内のものも多く、相続税申告は10ヶ月以内、遺族は悲しむ間もなく追われます。
・死後、速やかに済ませたい手続きは?
・生計を共にした家族に役立つ手続きは?
・期限はないけど、すぐに済ませる手続きは?
今回は、家族が亡くなって、できるだけ早く済ませたい死後6つの手続きと、質問の多い、必要に応じて行う2つの手続きを解説します。
①死亡診断書の受け取り
●死亡診断書を医師から受け取ります
病院で家族が亡くなったら、病室から霊安室へ遺体は移動され、数時間内に斎場の安置室などへ搬送することになるでしょう。
一般的には遺体を安置室へ搬送する際、受付で行う医療費の支払いや事務手続きとともに、死亡診断書をいただきます。
●同居家族・親族が受け取る
[1]病院で死亡確認
・病院の受付
[2]自宅で死亡確認
・訪問医
[3]自宅内での突然死、事故死
・警察医や監察医(死体検案書)
自宅医療で亡くなった時には、家族が死亡を確認したら、すぐにかかりつけの訪問医に連絡をすることで、24時間以内であれば訪問医が死亡診断書を出してくれるでしょう。
●左側が死亡届になり、役所へ提出するためコピーも取っておくと安心です
ただし自宅内での事故死や突然死などでは警察を呼びますので、警察医や監察医による死体検案書が、死亡診断書の代わりになります。
・【沖縄の葬儀】大切な家族を亡くした時、遺族が行う手続き
②死亡届の提出
●死亡届の提出は7日以内です
…死亡届の提出とともに「火葬許可証」の交付申請を行います
死亡届の提出は7日以内ですが、死亡届とともに交付される火葬許可証、埋葬許可証は遺体の火葬や埋葬(納骨)に必要な書類です。
そのため死亡後の手続きとしては、当日~2日以内に提出する人が多いでしょう。
[1]死亡届の提出
・火葬許可証の交付申請、受け取り
[2]火葬(火葬場)
・埋葬許可証の受け取り
(火葬許可証が返却されたもの)
「お墓に納骨+手元供養」など、2か所以上で納骨する予定であれば、火葬場で分骨を済ませることで、分骨した遺骨への証明書「分骨証明書」が発行されます。
「分骨証明書」があれば、手元供養として自宅に安置していた遺骨も、お墓に納骨したい時に納骨できる書類です。
・【手元供養の体験談】火葬場で分骨して手元供養へ。愛用していたお菓子箱に
③社会保険や税金の手続き
●社会保険や税金に関する死亡後の手続きは、14日以内です
死亡後14日以内の手続きなので葬儀の後でも良いのですが、葬儀が終わったらすぐ、役所の各課で故人の税金や保険(社会保険など)の返却手続きを行います。
[1]健康保険証の返却
・葬祭費や埋葬料の請求
[2]介護保険被保険者証などの書類を返却
[3]世帯主変更届を提出
ここで故人の税金や健康保険証を返却すると、後日役所から還付か清算か、いずれかの連絡が来るので、還付や清算は法廷相続人が対応します。
葬祭費や埋葬料の請求とは
●健康保険の被保険者が亡くなると給付される、葬祭費や埋葬料です
自治体によって金額が違いますが、故人が国民健康保険、後期高齢者医療制度のいずれかの被保険者であれば、健康保険の返却時に請求をすることで葬祭費や埋葬料がもらえます。
・葬祭費…約1万円~7万円
・埋葬料…上限5万円
死後の手続きとしては健康保険証の返却のみ(14日以内)であり、葬祭費や埋葬料の請求は死後2年間の申請で有効なのですが、一般的に健康保険の返却と同時に請求手続きも行うでしょう。
・故人の国民健康保険証など、各種証明書
・死亡診断書(コピー)
・葬儀の領収書
・施主の口座情報(金融機関/口座番号)
・印鑑
企業や団体で加入する社会保険に加入していた(会社員など)場合、故人が勤めていた会社が窓口になることが多いので、事前に会社に確認を取ってください。
「葬祭費・埋葬料」として支給されるのではなく、「埋葬料・埋葬費」で上限5万円として支給される自治体が多いです。
葬儀で掛かった費用を賄う目的がありますが、葬儀後の会食やふるまい(精進落としやお斎など)は支給対象ではありません。
世帯主変更届とは
●生前に世帯主だった故人の死後の手続きでは、「世帯主変更届」を提出します
世帯主変更届は必要のある人だけ提出しましょう。
例えば、例え世帯主であっても一人世帯の身内が亡くなった場合には、世帯に誰もいなくなるので提出する必要はありません。
●必要のない人
・故人が1人世帯
・世帯に成人が1人
・2人世帯で1人が亡くなった
●必要のある人
・世帯に成人が2人以上いる
例えば、夫婦2人暮らしで配偶者が亡くなった場合も、必然的に残された1人が世帯主になるので提出しませんし、家族の主が亡くなった場合も、子どもが皆未成年であれば、必然的に残された配偶者が世帯主です。
世帯主変更届が必要なケースでは、ひとり親が亡くなり、残された3人兄弟のうち2人が成人、などがあるでしょう。
④公的年金手続き
●年金受給者である家族が亡くなった場合、死後の手続きは速やかに行います
故人が年金受給者だった場合は、死後に年金停止手続きが必要です。
市役所ではなく、年金事務所で手続きをしますので、注意をしてください。
[1]年金受給者死亡届の提出
・未支給年金の請求(法廷相続人の書類)
[2]遺族年金・寡婦年金・死亡一時金などの請求
未支給年金の請求や、遺族年金・寡婦年金・死亡一時金は、条件を満たしている場合に請求ができます。
未支給年金の請求とは
●年金受給者は死亡した月まで年金の受給ができるため、未払い分の年金を請求する手続きです
例えば11月1日に家族が亡くなったとして、11月分の年金受給ができます。
下記書類を未支給年金請求書とともに提出しますが、近年ではマイナンバーの導入で簡略化された自治体も増えました。
●未支給年金の請求書類の一例
・未支給年金請求書
・死亡届
・請求者の預金通帳
・年金証書
・戸籍謄本/戸籍抄本(故人と請求者の関係が分かるもの)
・請求者と志望者の住民票の写し
・生計同一証明書(故人と請求者の住まいが違う時)
そのため11月1日に亡くなった人と、11月30日に亡くなった人では、11月分の年金受給額の条件が同じです。
遺族年金・寡婦年金・死亡一時金
●遺族年金は、故人が国民年金や厚生年金(共済年金)に加入していた場合、要件を満たした遺族が給付される年金です
要件とは故人(被保険者)の収入により生計維持していた家族で、遺族基礎年金と遺族厚生年金で要件が異なります。
●死亡日の翌日から、5年が請求期限です。
・遺族基礎年金…子どもがいる配偶者、子ども
・遺族厚生年金…配偶者、父母、祖父母、18歳未満の子ども、孫
※一定の障害のある子どもは20歳まで
また遺族年金以外にも、寡婦年金や死亡一時金があるでしょう。
「寡婦/寡夫(かふ)」とは、婚姻関係にあった配偶者と死別や離婚によって離れた後、再婚していない人を差します。
●死亡日の翌日から、5年が請求期限です。
[1]寡婦の要件
・10年以上婚姻関係が継続していた
・生計を共に維持していた
・老齢基礎年金を受給していない
[2]故人の要件
・国民保険の第1号被保険者だった
・保険料納付期間が10年以上
・老齢基礎年金を受けていない
・障害基礎年金の受給権を有していない
[3]寡婦年金とは
・60歳~65歳まで支給される有期年金
ただひ寡婦年金は女性に給付される年金であり、同じ条件でも男性は給付されません。
2014年4月には、遺族基礎年金において「子のある夫」が適用されるようになりましたが、寡婦年金においては、まだまだ「男女格差のある年金」と言われています。
●死亡日の翌日から、2年が請求期限です
[1]故人の要件
・国民年金第1号保険者
・36か月以上の納付期間がある
・老齢基礎年金を受けていない
・障害基礎年金を受けていない
[2]遺族の要件
・故人と生計を同一にしていた(配偶者に限らない)
・優先順位がある
死亡一時金の「優先順位」とは、配偶者→子→両親→孫→祖父母→兄弟姉妹です。
それぞれ請求期限は2年~5年と長いのですが、家族の死後は早めに済ませたい手続きでしょう。
⑤医療費の払い戻し
●故人に高額医療費などの払い戻しがある場合、法廷相続人が請求できます
「高額医療費」とは、毎月1日から月末までに病院で支払う医療費を、収入によって一定額以下でおさめる、健康保険法等による制度です。
収入によって違いますが、一般的な収入であれば約8万円以上、病院窓口で支払っていれば、請求をすることで払い戻しされます。
[1]高額医療費の請求
●医療費を一定額以下におさめる制度
・法定相続人が請求をする
・(一般的に)2~4か月後に申請が届く
※自治体、健康保険組合など
[2]高額介護合算療養費の請求
●高額な自己負担額を軽減する制度
・1年間の自己負担額が高額
・医療保険+介護保険の合算
・毎年8月1日~翌年7月31日
ただし高額医療費の払い戻しを受けるにあたり、遺族年金などとは違い、故人の財産として扱われるため注意が必要です。
●高額医療費は2年前までさかのぼって請求が可能です。
・相続財産とみなされる
・遺産分割の対象
高額医療の払い戻しは、生前の請求であれば「領収書+請求書」で事足りたのですが、亡くなると戸籍謄本など、故人と請求者の関係が分かる書類を準備する必要があります。
⑥ライフラインや公的証明書などの諸手続き
●水道や電気などライフラインの解約、名義変更などの諸手続きや、クレジットカード、免許証などの返却も早めに済ませたい手続きです
故人が世帯主である場合、水道や電気代などのライフラインは故人の銀行口座から自動引き落とし手続きをしている世帯が多いですが、故人の銀行口座は、金融機関が死亡を確認した時点で凍結されます。
[1]ライフラインの解約、もしくは名義変更
・電気
・水道
・ガス
・電話
[2]公的証明書の返却
・自動車免許…所轄の警察署、運転免許センター
・パスポート…都道府県パスポートセンター、日本大使館、総領事館
[3]クレジットカードの返却、処分
クレジットカードはカード会社により対応は異なりますが、多くはカード裏面などに記載される電話番号に問い合わせ、契約者の死亡を報告することで、法廷相続人であれば解約が可能です。
ただしクレジットカードに借金が残されていた場合、負の遺産として相続人に相続されます。
その他、必要に応じた手続き
●必要に応じて、死後4ヶ月以内の手続きに準確定申告があります
「準確定申告」とは、亡くなった人が所得に対して済ませるべきだった確定申告です。
例えば、故人がフリーランスだったり、アパートなどの収益物件を有していた場合に行います。
●死後4ヶ月以内が期限です
[1]準確定申告が必要な故人(被相続人)
・事業所得者
・不動産所得がある(収益物件など)
・副業がある
・給与所得が2,000万円以上
[2]年末に亡くなった場合は?
・毎年2月15日~3月15日の申請期限内で行う
ただし故人(被相続人)が副業などをしていても、準確定申告を必要としない人はいるので、確認してから死後の手続きを進めると良いでしょう。
[1]故人が給与所得者
・会社員、パート、アルバイトなど
[2]故人が年金受給者
・年金…受給額400万円以下
・その他所得…20万円以下
[3]相続放棄をした
必ずしも準確定申告が必要ではなくとも、故人が年末調整を行っていないために源泉徴収が超過している、故人の医療費が高額だった、などのケースでは、準確定申告によって還付金をもらうことがあります。
実は多い戸籍手続き
●故人の死後、戸籍手続きにより、故人の親族との関係性を断つケースも多いです
また死後の手続きとしては期限はなく、必要を感じる人が落ち着いたタイミングで行う事柄ですが、近年では故人の親族との婚姻関係を終えるために、戸籍手続きを済ませる人が増えました。
[1]姻族関係終了届
・故人の親族との婚姻関係を終える
[2]復氏届(ふくうじとどけ)
・旧姓に戻り、実家の戸籍に復帰する
復氏届(ふくうじとどけ)は、例えば「夫の家のお墓に入りたくない!」「旧姓に戻りたい」などの目的で、実家の戸籍に復帰して、実家のお墓に入るケースなどが見受けられます。
最後に
以上が家族が亡くなったら、留意しておきたい死後に必要な6つの手続きと補足です。
この間にも遺族は四十九日法要や百か日、納骨などがあり、さらに10ヶ月以内に相続税申告を済ませなければならない、一連の相続手続きがあります。
相続手続きは遺言があったり、法廷相続人全員で遺産分割の割合を決める「遺産分割協議」がスムーズに進めば問題はありませんが、時に、相続が発生してから新たな法定相続人の存在を知るなど、思いもよらぬ事態も起きがちです。
同居家族などが一人で抱え込むことも多い死後の手続きですが、家族・親族で協力しながら、それでも大変な時には司法書士などの専門家に相談して進めてみましょう。
・【家族が亡くなったら】沖縄で遺体搬送~葬儀まで、費用相場10項目|その1
まとめ
死後に家族が行う6つの事務手続きとは
①死亡診断書の受け取り②死亡届の提出
・火葬許可証の交付申請、受け取り
・埋葬許可証の受け取り(火葬場)③社会保険や税金
・健康保険証の返却
・葬祭費や埋葬料の請求
・介護保険被保険者証などの書類を返却
・世帯主変更届を提出(必要な人)④公的年金手続き
・年金受給者死亡届の提出
・未支給年金の請求(法廷相続人の書類)
・遺族年金・寡婦年金・死亡一時金などの請求⑤医療費の払い戻し
・高額医療費の請求
・高額介護合算療養費の請求⑥ライフラインや公的証明書
・ライフラインの解約、もしくは名義変更
・公的証明書の返却
・クレジットカードの返却、処分⑦その他、必要に応じて
・準確定申告
・戸籍手続き
(姻族関係終了届/復氏届)