沖縄の四十九日焼香☆白木位牌のヌジファー(抜魂)

2021.12.07
沖縄の四十九日焼香☆白木位牌のヌジファー(抜魂)

沖縄では四十九日に仮位牌から本位牌へ交換しますよね。この時に白木位牌からヌジファー(魂抜き)を行い、本位牌へと移す「イフェーノーシ(位牌移し)」、そしてイチミ(生きる身)とグソー(後生=あの世)を分かつ「マブイワカシ」を行います。今回は、沖縄で四十九日に行う儀礼、ヌジファー(魂抜き)、イフェーノーシ、そしてマブイワカシをお伝えします。

沖縄では四十九日焼香(法要)で仮位牌となる白木位牌を、本位牌(沖縄位牌や唐位牌など)へと交換しますよね。

亡くなった直後の枕飾りや納骨後の後飾りまでは、仮位牌である白木位牌を通して追善供養を行いますが、沖縄では四十九日焼香(法要)で本位牌へ故人の魂を移した後は、仮位牌は装具とともに焼却などを行い、本位牌が供養の中心となります。

この時行う儀礼が、沖縄では四十九日焼香(法要)で白木位牌からヌジファー(魂抜き)を行い、本位牌へと移すイフェーノーシ(位牌移し)です。

今回は、沖縄で四十九日焼香(法要)の際、白木位牌(仮位牌)から本位牌へ移す時のヌジファー(魂抜き)の儀礼、イフェーノーシ(位牌移し)の儀礼を、あの世とこの世を分かつ「マブイワカシ(魂分かち)」とともにお伝えします。

白木位牌のヌジファー(魂抜き)

沖縄の四十九日焼香☆白木位牌のヌジファー(抜魂)
故人が亡くなりご遺体が自宅へ運ばれると、枕飾りが祀られますが、この時から沖縄では四十九日焼香まで白木位牌と呼ばれる仮位牌を用います。

この白木位牌は、出棺→納骨時に外で用いる「野位牌」と、その後の後飾りなどで自宅に祀られる「内位牌」の二基を準備してください。

そして、沖縄で四十九日焼香(法要)のあとで用事を済ませた白木位牌に対して、故人の魂を抜く儀礼が「ヌジファー(抜魂/魂抜き)」です。一般的に沖縄では、墓前でその他の装具とともに焼却します。

【 沖縄の四十九日焼香のあと☆ヌジファーの儀礼 】

● 墓前で装具とともに白木位牌(仮位牌)を焼却したら、その灰を少し残します

(1) 墓前に祀られたウコール(香炉)に焼却後の灰を入れる

(2) ヌジファーのお供え物をする

・白餅(3個)
・カラミハナ(花米/ハナグミ※)
・ウサク(お酒)

※ カラミハナはお米(まだ炊いていない)です。

(3) お線香を供える

→お線香の本数は、沖縄線香タヒラ半(2枚半)、日本線香なら15本か5本を供えます。

(4) お線香に向けて、魂を移していただくようにご案内する

→ 「これからお墓へご案内しますので、このお線香に移っていただきますように…。」など。

(5) 供えていたお線香の火を消し、墓前に祀られたウコール(香炉)に拝す

(6) 結びの御願を行う

→ 「〇〇さん、ただ今お墓までご案内をいたしましたので、どうぞコチラに魂を付けてくださり、極楽浄土まで成仏してください。」など。

以上が沖縄で四十九日焼香(法要)のあと、家族で墓前へ出向き行うヌジファーの儀礼です。沖縄では四十九日焼香(法要)まで故人の魂はこの世とあの世を彷徨っている状態で、迷いやすいと言われます。

また、沖縄ではイチマブイ(生魂)の他にシニマブイ(死魂)があると言われ、故人の魂は死魂として不滅だとも信じられてきました(三十三年忌にて我のないカミになり守護神となります。)。

ですから沖縄では四十九日焼香(法要)のあと、故人のシニマブイをお墓へ案内する儀礼があります。

白木位牌から本位牌へのイフェーノーシ

白木位牌から本位牌へのイフェーノーシ
また沖縄では四十九日までに準備された本位牌へ、シニマブイ(死魂)を移す儀礼「イフェーノーシ(位牌移し)」も行ってきました。

【 沖縄で四十九日焼香のあとに行うイフェーノーシ 】

● ただコチラは本州でも行われてきた「魂入れ」「開眼供養」と同じものです。

→ 檀家制度のない(※)沖縄でも、四十九日法要にはお坊さんに読経供養を依頼する家がほとんどなので、この時に読経によって魂入れをお願いします。

※ 本州と違う習慣としては、沖縄では四十九日前(葬儀後すぐ)に納骨を済ませていることが多い点ではないでしょうか。本州では納骨時に本位牌に切り替える家が多いです。

(※)沖縄では臨済宗の寺院は多くありますが、檀家制度は本州のように根付いていません。そのため、沖縄では四十九日などの焼香(法要)や葬儀にのみ、近隣のお坊さんに読経供養を依頼します。

ですから本州では白木位牌(仮位牌)も、本位牌に切り替えた後は菩提寺に納めますが、沖縄ではそもそもその菩提寺がありません。そのため、墓前で焼却をしてシニマブイ(死魂)をお墓へご案内する流れです。

沖縄で四十九日焼香(法要)に行われる「マブイワカシ」

沖縄で四十九日焼香(法要)に行われる「マブイワカシ」
また沖縄独自の四十九日焼香(法要)あとに行われる儀礼に「マブイワカシ(魂分かち)」があります。コチラは、生きている人々(イチミ=生身)と故人(シニミ=死身)を分けるために行われる儀礼です。

このマブイワカシ(魂分かち)ですが、実は沖縄でも地域によって違います。そもそも四十九日に行う地域もあれば、百か日に行う地域もあり、そうかと思えば無くなってすぐに行う地域もあるなどです。

ここでは南部に伝わるマブイワカシ(魂分かち)の一例をお伝えします。

【 沖縄の四十九日法要のあと、マブイワカシ 】

● 沖縄南部の某地域では四十九日焼香(法要)のあと、故人の臨終に立ち会った人々を中心にして後ろ髪を引かれないよう、行うとされてきました。

(1) お供え物を供える

・ミジトゥ(水)
・シルカビ(白紙※1)
・アライミハナ(洗米=お米を七回すすいだもの)
・ウサク(お酒)

(2) サン(※2)を右手に、お線香を左手に持つ

(3) 故人の氏名を言いながら、ご遺体を安置していた部屋をサンとお線香で叩いて回る(家によっては故人が寝ていた寝具の枕・胸・足元の三か所を叩く)

(4) 故人が寝ていた足元→頭へ流れるように、サンを右回りに三回渦巻きを巻くように回す(魂を絡めとるように)

(5) 「ただいま、四十九日が終わりましたので、極楽浄土にて成仏できますように。」と御願を行う

最後の言葉は、「イチミとシニミはお別れをいたしますので、どうぞ、御魂は追いまわし歩きまわらないでくださいませよ。」と言う地域もあります。

※ 沖縄の言葉では「イチミトゥグスーヤワカリーグトゥ(生身と後生は分かれますので)、ウッティアックナヨォ(追いかけて歩くなよぉ)」です。

またお供えをしたミジトゥ(水)を、臨終に立ち会った人々の額にミジナディ(指先に水を浸けて三回チョンチョンチョンとつけること)する地域も見受けます。

(※)シルカビは、カミ様へ供えるあの世の税金と言われ、半紙で作ります。作り方など、詳しくは別記事「【沖縄の御願】ヒラウコーの供え方と、シルカビ・ウチカビ」でお伝えしています。

(※2)サンはススキの葉で作った魔除けの呪具です。作り方などは別記事「【沖縄の葬儀】自宅で行う通夜。ヌジファーの儀礼と迎え方」のなかでお伝えしていますので、コチラも併せてご参照ください。

白木位牌

いかがでしたでしょうか、今回は沖縄で四十九日焼香(法要)あとに行う、白木位牌(仮位牌)の魂を抜くヌジファー(抜魂)の儀礼と、本位牌に魂を入れるイフェーノーシの儀礼についてお伝えしました。

マブイワカシ(魂分かち)は故人が亡くなったことを自分で理解していない時、家族を探して迷い歩いたり、連れて行こうとして災いをもたらすとされるため、離島地域など一部地域ではユタさんなどを中心に行う地域も多いです。

なかにはヌジファー(抜魂)の儀礼などは一般人には難しい、とする声もありますが、供養全てにユタさんなどが付き添う家も少なく、近しい家族の声で温かくご案内したり、故人へ状況を教えて分かつ地域も多く見受けます。

まとめ

沖縄で仮位牌を焼却する際のヌジファー(抜魂)

● 仮位牌のヌジファー

・沖縄では四十九日焼香のあとが多い
・墓前で装具とともに焼却する
・焼却後の灰を墓前に祀った香炉の灰に混ぜる
・お供え物をして線香に移ってもらう
・お線香を墓前の香炉に拝する

● 本位牌のイフェーノーシ

・読経供養で魂入れをお願いする

● 生身と死身を分けるマブイワカシ

・故人のご遺体があった部屋で行う
・お供え物をする
・サンとお線香で頭胸足元三か所を叩く
・右回りに三回転回してお線香に移ってもらう
・天国で成仏できますように願う

※地域や家によってマブイワカシの手順はさまざま


前の記事
次の記事

関連記事

神道の供養で祀る「霊璽(れいじ)」とは?作り方や費用相場・タイミング、置き方を解説
神道の供養で祀る「霊璽(れいじ)」とは?作り方や費用相場・タイミング、置き方を解説
【沖縄のヒヌカン】ヒヌカンを遠くの御嶽(うたき)と繋ぐ方法☆遥拝所としての役割とは
【沖縄のヒヌカン】ヒヌカンを遠くの御嶽(うたき)と繋ぐ方法☆遥拝所としての役割とは
沖縄の法要でお布施を包む。僧侶へ渡す時の準備やマナーとは
沖縄の法要でお布施を包む。僧侶へ渡す時の準備やマナーとは
【家族が亡くなったら】沖縄のお葬式で、昔と違う10の選択肢|その2
【家族が亡くなったら】沖縄のお葬式で、昔と違う10の選択肢|その2

カテゴリー

topへ戻る