【沖縄の相続】公正証書遺言でも無効に?有効を保つ5つのポイント

2022.06.02
【相続対策】公正証書遺言でも無効になるって本当?有効を保つ、5つのチェックポイント

相続トラブルを避けるために遺言書は役立ちますが、無効になっては意味がありませんよね。公正証書遺言でも無効になると聞くと「どうすればいいの?」と戸惑う方も多いのではないでしょうか。今回は、公正証書遺言が無効になった判例をもとに、5つのチェックポイントをお伝えします。

相続トラブルを避けるために遺言書は役立ちますが、無効になっては意味がありませんよね。

法的効力として最も有効な公正証書遺言でも無効になる可能性があると聞くと、「じゃぁ、どうすればいいの?」と戸惑う方も多いのではないでしょうか。

遺言書は自身が亡くなられた後、相続に最も適した対策といえますが、1つ掛け違いがあっただけで公正証書遺言であっても、無効になった事例があるので注意が必要です。

今回は、公正証書遺言が無効になった判例をもとに、5つのチェックポイントをお伝えします。

遺言書3つの種類

遺言書3つの種類
遺言書には「秘密証書遺言」もありますが、一般的に利用されるのは「公正証書遺言」と「自筆証書遺言」ではないでしょうか。

被相続人亡き後、机の引き出しから遺言書が発見された!などの展開を、ドラマなどでしばしば見ますが、これは自筆証書遺言に当たり、より無効になる可能性を避けるために利用される遺言書が公正証書遺言です。

【 遺言書を無効にしない☆種類 】

● 遺言書は、主に下記の3種類が利用されます。

(1)公正証書遺言
(2)自筆証書遺言
(3)秘密証書遺言

 

ちなみに秘密証書遺言は、法定相続人全員に遺言書の存在を知らせ、無効になる事態は避けたいものの、内容は伏せたい場合に有効です。

秘密証書遺言は機械文字でも無効にならない(パソコンやワープロでの文字でも可)ため、自筆文字を書くのに困難がある場合でも、サインと印鑑で作成ができる点もメリットでしょう。

また他の遺言よりも簡単に作成できる自筆証書遺言は、その分無効になる確率も高い種類と言えます。

公正証書遺言や秘密証書遺言のように公証人も必要ありませんし、自宅で保管ができますが、書き損じや形式の間違えなどで、せっかく遺言を作成しても無効になりやすく、被相続人亡き後、遺言書が見つからなければ元も子もありません。

● そこで費用が掛かるデメリットはあるものの、遺言書を無効にしない最も安全な遺言書として公正証書遺言は多く選ばれています。

 

…けれども、そんな最も信頼性の高い公正証書遺言であっても無効になった判例がある、と聞くと驚きますよね。その理由を判例を参考に、下記より解説していきます。

公正証書遺言とは

公正証書遺言とは
公正証書遺言でも無効になる理由の前に、そもそも公正証書遺言は、どのような特徴があるのでしょうか。

【 公正証書遺言で無効を回避 】

● 公正証書遺言とは、公証人役場に行き遺言の内容を、公証人(弁護士や裁判官など)に口頭で伝え、遺言書の内容を公証人が作成する遺言書の種類です。

→ 遺言書を作成された後は、「公正証書遺言」が必要な時が来るまで、公証人役場にて大切に保管され、正本と謄本だけ遺言者に渡されるため、無効の確率は低くなります。

 

自筆証書遺言とは違い、万が一、正本や謄本を紛失してしまっても再発行が可能な点もメリットです。公正証書遺言の原本は誰かに偽造されたりする心配がなく、遺言書を無効にしない対策として、非常に安心できるでしょう。

公正証書遺言が無効になった5つの事例

公正証書遺言が無効になった5つの事例
…では、これだけ正確な公正証書遺言が無効になった判例では、どのようなものがあるのでしょうか。公証人手掛けるため、書き損じなどによる遺言の無効はほとんどありません。

ただ、公正証書遺言を作成した時、「被相続人が適切に遺言の内容を伝えていたか…」が争点になります。また、立ち会う「証人」がどのような人だったのかも、公正証書遺言が無効になる対象です。

【 公正証書遺言が無効になった5つの事例 】

(1)被相続人に適切な判断能力(遺言能力)がなかった
(2)遺言の内容に勘違い(錯誤)があった
(3)被相続人の真意と合っているか、公証人による確認がなかった
(4)遺言に適切な証人ではなかった
(5)道徳的(常識的に)認められない内容だった

 

…被相続人が伝えて専門家である公証人が作成する公正証書遺言の場合、無効になるケースの多くが被相続人や証人の状態・状況ではないでしょうか。

被相続人が精神的・認知的に健康な状態であり、公証人に真意を明瞭に伝える能力がある状態で公正証書遺言を作成していること、被相続人から公証人に意思を伝えるに当たり、正確に真意が伝わっているのか…、が大きく影響します。

また証人がどのような立場であるのかも重要です。

…それでは、公正証書遺言が無効になった5つの事例を、より詳しく解説します。

被相続人の判断能力(遺言能力)

公正証書遺言が無効になった判例でも多い傾向にあるのが、遺言作成時に被相続人に適切な判断能力がなかった事例です。これを「遺言能力」とも言います。

【 公正証書遺言が無効に☆遺言能力 】

● 遺言能力がないと判断される大きな要因は下記です。

認知能力に問題あり(認知症など)
精神的に疾患を抱えている

 

公正証書遺言作成時点で、認知能力や精神疾患を理由に病院に掛かっていた場合、担当医や看護記録などの検証により、遺言書が無効になる可能性があるでしょう。

遺言の内容に勘違い(錯誤)

公正証書遺言は被相続人の伝達により作成しますから、公証人の受け取り方(勘違い)により、被相続人の意図した遺言と内容が違えば、無効になる可能性が出てきます。

この伝達の勘違いを「錯誤(さくご)」と言い、打ち合わせ時の書類などと照らし合わせることで、勘違い(錯誤)と判断された判例がありました。

【 公正証書遺言が無効に☆錯誤 】

● 「錯誤」とひとくちに行っても、錯誤が起きる過程にはいくつかの要因があります。

・被相続人の意図を公証人が勘違いする(意味合いの錯誤)
・そうなる理由に対する見解が違う(理由の錯誤)
・意図や理由は理解していたが、表現を間違えた(表現の錯誤)

 

この錯誤による遺言の無効を回避するには、遺言書を作成した後、公証人が改めて読み上げ、被相続人に意図が合っているか、確認をして完成させると良いでしょう。

公証人による確認がなかった

前項で触れたように、公証人が遺言書を作成した後、被相続人に確認を取る工程がなかった場合も、遺言が無効になる可能性もあるでしょう。

公証人が被相続人に遺言書の内容を確認する工程を「口授(こうじゅ)」と言い、言葉の通り公証人は口頭で被相続人に、完成した遺言書の内容を伝えて確認を取ります。

【 公正証書遺言が無効に☆口授を欠く 】

● この口頭で確認を取る「口授」の工程を省略、もしくは正確に読み上げることなく、簡単に確認をして終わらせた(口授を欠く)場合、証人の証言によって遺言が無効になった判例がありました。

 

ただ、実際に公証人による口授があったかどうか…、後から確認することが難しいかもしれません。多くは同席している証人に確認を取りますが、証人自身も確認していなかった事例もあります。

不適格な証人だと、遺言も無効になる

自筆証書遺言では必要ありませんが、より法的な有効性の高い公正証書遺言の場合、必ず自身が2人の証人を手配しなければなりません。

ただこの2人の証人の立場や状況によって、公正証書遺言が無効になる可能性が出てきます。

【 公正証書遺言が無効に☆証人 】

● 次に該当する方は証人として不適格と判断されますので、注意をしてください。

・未成年者
・推定相続人 配偶者 直系血族
・遺言を作成する公証人の配偶者、四等身内の親族

 

以上の証人は、遺言を執行する際に相続人から指摘された場合、公正証書遺言が無効となります。

道徳的(常識的)に認められない内容だった

遺言の内容が社会的な秩序から外れた内容…、例えば妻子がいるにも関わらず、「愛人に全財産を譲る」との遺言が残されていたなど…、でも、法定相続人が意義を唱えることで遺言書が無効になる可能性は高いでしょう。

【 公正証書遺言が無効に☆公序良俗に反する 】

● 相続ではこのような内容を「公序良俗(こうじょりょうぞく)に反する」と表現します。「公序良俗」とは、つまり「公(おおやけ)の秩序、良い風俗」を意味した言葉です。

 

明瞭に決められた境界線がないため、なかなか「公序良俗に反する」かどうか、迷う方も多いですが、弁護士など専門の方々に相談しながら進めることで、この可能性は少なくなるでしょう。

生前には祭祀財産の生前整理も

手元供養のメリットとデメリット
終活では遺言書など相続トラブル対策や相続税対策を行う方々が多いですが、実は被相続人亡き後、問題になりやすい事柄が祭祀財産です。

祭祀財産は故人を供養するためのお墓やお仏壇などを差しますが、相続税は掛からないものの、継承者は一人と法的に定められるため、継承者の負担が大きくなりやすく、皆が継承したがらない問題があります。

【 生前に整理したい祭祀財産 】

● そのため現代では墓じまい・仏壇じまいが急増し、特に沖縄ではタブーの多いトートーメーの永代供養ニーズが急激に増えました。

→ それでも手を合わせる場所を残すため、よりお世話がしやすい小さな仏壇や個人の位牌などを新調し、移す流れが起きています。

 

「供養が足りないと祟りがおきるよ」などのタブーを解消して、そのうえで亡き家族やご先祖様が見守ってくれると信じる強さ、安心感を残してあげるためにも、終活をきっかけに祭祀財産の在り方を検討してみてはいかがでしょうか。

 

いかがでしたでしょうか、今回は、手間やコストが掛かるものの、最も遺言が無効にならないとして信頼性が高い公正証書遺言が、それでも無効になり得る5つのポイントをお伝えしました。

ただ公正証書遺言はコストも掛かり、第三者である証人も2人必要であるなど、何かと手間暇がかかるのも事実です。

自筆証書遺言であっても、書き損じに注意をするなど、遺言が無効にならないポイントを押さえることで、より気軽に相続対策ができるツールですので、それぞれの希望に合わせて自筆証書遺言の選択もあるでしょう。

自筆証書遺言が無効にならないチェックポイントについては、別記事「【相続対策】自筆証書遺言が無効にならない5つのチェックポイント」でお伝えしますので、コチラも併せてご参照ください。

まとめ

公正証書遺言が無効になった5つの事例

・被相続人に適切な遺言能力がない
・遺言の内容に錯誤があった
・公証人による口授がなかった
・遺言に適切な証人ではなかった
・公序良俗に反する内容


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