●「ユンヂチ」とは、旧暦と新暦のずれを修正するために、旧暦で同じ月が2回訪れる「閏月(うるうつき)」です
沖縄ではお墓を建てるなど、お目出たい事柄であっても、お墓事やお仏壇事を行う時には日取りを充分に配慮しなければならない、とされています。
けれどもユンヂチとは、神様の目が届かない月なので、日取りを気にせずお墓事やお仏壇事ができるのです。
・「ユンヂチ」とは?
・次回のユンヂチはいつ?
・沖縄ではユンヂチに何をするの?
今回は、沖縄でユンヂチとは何か?次回のユンヂチや、沖縄ではユンヂチに何を行うのか、をお伝えします。
ユンヂチとは
●「ユンヂチ」は新暦と旧暦のズレを修正する「閏月(うるうづき)」です
新暦は365日ですが、旧暦は30日で終わる月も多いため354日となり、新暦と旧暦では11日の誤差があります。
そのため毎年旧暦と新暦の間でズレが広がるのですが、このズレが大きくなる33か月ごとに、旧暦を1年13か月にして、暦を調整することが「ユンヂチ」です。
●旧暦が33か月に1度、1年13か月になる「閏月(うるうづき)」を沖縄ではユンヂチ呼びます。
・ユンヂチ期間は1ヶ月
・お墓事やお仏壇事では、ユンヂチ期間がある1年間
・神様の世界では日が無い「日無し(ヒナーシ)」
・お墓事やお仏壇事に適している
・トートーメーのシジタダシ(筋正し)も行われてきた
例えば、2020年のユンヂチ(閏月)は旧暦4月でしたから、旧暦4月が一度巡った後、再度「閏4月」が巡ります。
そこで本来は旧暦4月は1ヶ月のみなので、「閏4月」は神様の世界では暦上「日が無い」「ヒナーシ(日無し)」となる訳です。
●神様がこの世を見ていないため、イチミ(生きる身)は神様の目を気にせず、日取りを気にせずにお墓事やお仏壇ことができて「便利だね」と言うのがユンヂチ(閏月)と言えるでしょう。
次回のユンヂチは2023年1月22日~!
●次回のユンヂチ(閏月)期間は、2023年1月22日~2024年2月9日の旧暦の1年です
ユンヂチ(閏月)期間は、本来同じ月が巡る旧暦の1ヶ月ですが、お墓事やお仏壇事をしたい家にとって、1ヶ月はあっと言う間ではないでしょうか。
そのため民衆文化のなかで、神様の目が届かないユンヂチ(閏月)期間は、「閏月がある1年をまるっとユンヂチ(閏月)」と捉えるようになりました。
●2023年(令和5年)1月22日(日)~2024年(令和6年)2月9日(金)
(旧暦1月1日~12月30日)
ちなみに2023年の閏月は旧暦2月、新暦の暦で言うと、2023年(令和5年)3月22日(水)~4月19日(水)にあたり、本来の意味合いを鑑みると、この月がベストです。
日取りを気にする沖縄の人にとっては、非常に便利なユンヂチ(閏月)なのですが、33か月に1度と期間が長いので、毎年訪れる訳ではありません。
そこで少し、2023年以降のユンヂチ期間もご紹介しますね。
・2025年(令和7年)1月29日(水)~2026年(令和8年)2月16日(月)
2025年の閏月は旧暦6月、新暦では2025年(令和7年)7月25日(金)~8月22日(金)にあたります。
ただこの他にも、ヒナーシ(日無し)には旧暦7月7日のタナバタがあるので、小さなお墓事やお仏壇事なら、タナバタを狙っても良いのかもしれません。
・沖縄のヒーナシタナバタ(日無し七夕)ってなに?お墓事や仏壇事を行う日とは?
ユンヂチには何をしたら良いの?
●沖縄ではユンヂチに行う事柄と言えば、お墓事やお仏壇事です
沖縄では墓じまいや仏壇じまいはもちろん、お墓やお仏壇の新調も、日取りを気にして進めなければなりません。
お墓やお仏壇の開眼供養などの儀礼を行うにあたり、集まった人々の干支日と重ならないように配慮する他、大安などの六曜を気にする家もあるでしょう。
けれどもそれでは、お墓事やお仏壇事を進める日取りが、ごく限られてしまいます。
この点、ユンヂチは旧暦の1年間、まるっと日取りを気にせず、お墓事やお仏壇事を進められるのです。
[1]お墓事
[2]お仏壇事
昔ながらの沖縄の葬儀では、ご遺体をお墓まで運ぶ時にも黒傘をご遺体に差しかけて、神様の目に触れないようにしてきました。
ですから「神様の目が届かない」ヒナーシ(日無し)にあたるユンヂチでは、主に祭祀財産(ご先祖様の供養に必要な財産)の整理や修繕だと考えると、分かりやすいです。
[1]お墓事
●お墓事は、お墓を建てるお目出たいことであっても、ヒナーシ(日無し)のユンヂチがベストです
沖縄の御願文化は仏教よりも、より神教に近い信仰が多くあり、「死は穢れ(けがれ)」とする考え方があります。
そのため内容としては故人を供養する、お墓を建てる場合でも、神様に「穢れ」を見せないよう、日取りを気にしてきました。
・お墓を建てる
・お墓の建て替え
・お墓のリフォーム
・お墓の改葬(かいそう)
・墓じまい
沖縄で昔から建つコンクリート造りのお墓は、ヒビが入ると水が染み込みやすく、劣化も激しいため、日取りを気にして修繕リフォームを先延ばしすると、後々建て替えが必要になるでしょう。
①「改葬(かいそう)」とは…遺骨を新しいお墓へ移動すること
②「墓じまい」とは…お墓を閉じること
…ですから改葬をして遺骨を取り出し、お墓を閉じた場合は改葬ですが「墓じまい」でもあります。
沖縄では個人墓も多いですが、継承者がいない個人墓は荒れたまま、無縁仏としても誰にも処理されないまま、辺境で放置され劣化するケースも少なくありません。
遺骨を取り出してお墓を撤去する「墓じまい」の後、遺骨を合祀墓や納骨堂などで「永代供養」を行い、継承者を必要としない葬送を選ぶ家も多いです。
(※)「永代供養」とは、墓地管理者が家族に代わり遺骨を永代に渡り管理・供養することで、永代供養を行うことにより、継承者の必要がなくなります。
[2]お仏壇事
●沖縄でユンヂチに行うお仏壇事も、お墓事と同じくお仏壇の新調であっても、ユンヂチがベストです
現代はユンヂチにこだわる家も少なくなりましたが、お仏壇事にも良い時期です。
特に一部沖縄の地域では「お仏壇を家の敷地から出してはいけない」とする家もありました。
そうなると仏壇を修理業者に託すこともできませんよね。
ですからお仏壇を家から出すような修理や交換、仏壇じまいにも適切です。
また沖縄では、お仏壇に祀るトートーメーや位牌事もユンヂチには良いでしょう。
・お仏壇の新調
・お仏壇の交換
・シジタダシ(筋正し)
・お仏壇の修理
・仏壇じまい
シジタダシ(筋正し)とは、その家に代々祀られているご先祖様が、どこかで血筋を違えた場合に血筋を正すことです。
けれども実際には昔の血筋が正しいかどうかを正確に判明できる訳ではありません。
多くは家付きのユタさんが、セジ(霊力)により判断します。
そのため、現代ではそもそも家付きのユタさんがいる家も少なく、シジタダシ(筋正し)を行う家も少ないでしょう。
最後に
以上が2023年(令和5年)1月22日(日)~2024年(令和6年)2月9日(金)、33か月に1度巡ってくるユンヂチです。
この他、沖縄で同じくヒナーシ(日無し)とされ、無条件でお墓事やお仏壇事ができる暦が、タナバタ(七夕)ですが、タナバタ(七夕)はユンヂチと違い、たった1日なので注意をしましょう。
●2023年8月22日(火)が、2023年度の旧暦7月3日のタナバタ(七夕)です
ただ2023年はまるっとユンヂチが被るので、お墓事やお仏壇事は他の日程で調整して、通常の沖縄の旧暦行事のように、約1週間後に訪れる旧盆に向け、ご案内の御願を行うスケジュールの方が、良いのかもしれません。
・【仏壇じまいの体験談②】ユンヂチに墓じまい・仏壇じまい。親族が集まるシーミーの後に
まとめ
ユンヂチとは?
・旧暦と新暦のズレを埋める閏月
・33か月に1度訪れる
・旧暦が1年13か月になる
・閏月にあたる月が2回巡る●次回のユンヂチ
・2023年1月22日~2024年2月9日
・うち閏月は旧暦2月
(2023年3月22日~4月19日)●ユンヂチはヒナーシ(日無し)
・神様の目が届かない
・お墓事やお仏壇事に適している
・神様の世界では死を穢れとするため