沖縄で増える「位牌分け」とは?位牌を複数に分けるのはなぜ?メリットデメリットを解説

2023.05.19
沖縄で増える「位牌分け」とは?位牌を複数に分けるのはなぜ?メリットデメリットを解説

沖縄で増えている「位牌分け」とは、ひとつの位牌を複数仕立て、それぞれの家で祀る供養の方法です。人々の暮らしがグローバルになりコロナ禍を経て、沖縄でも位牌分けをする家がふえました。本記事では位牌分けの方法やメリット・デメリットをお伝えします。

・「位牌分け」とは?
・位牌分けの方法は?
・沖縄で位牌分けが増えるのはなぜ?

沖縄で増えている「位牌分け(いはいわけ)」とは、ひとつの位牌を複数仕立て、それぞれの家で祀る供養の方法です。

人々の暮らしがグローバルになり、コロナ禍を経て、沖縄でも位牌分けをする家がふえました。

本記事を読むことで、沖縄で位牌分けが増える理由やメリット・デメリット、昔から伝わる位牌分けの風習や分け方をお伝えします。
 

沖縄で広がる「位牌分け」とは?

沖縄で広がる「位牌分け」とは?
◇「位牌分け(いはいわけ)」とは、ひとつの位牌を複数に分けて、それぞれの家で祀る供養方法です

現代こそ沖縄で位牌分けが注目されていますが、もともとは本州の一部地域で昔から行われていた慣習でした。
 

<位牌分けが行われていた地域>
・中部地方…長野県、山梨県、静岡県
・北関東地方…群馬県

 
けれども今は、核家族化や人々の暮らしがグローバル化し、親族が同じ地域に集まって住む風習が無くなり、沖縄をはじめ各地で位牌分けをする家が増えています。

2020年のコロナ禍を過ぎ、交通手段に飛行機を利用する沖縄では、さらに位牌分けが注目されるようになりました。
 

中部地方に伝わる位牌分けのルール

◇昔ながらの慣習として、中部地方に伝わる位牌分けにはルールがあります

沖縄の先祖代々位牌「トートーメー」にもタブーがあるように、昔ながらの位牌分けには決まり事がありました。
 

<中部地方に伝わる位牌分けのルール>
・仏教宗派を問わない
・嫁いだ人は位牌分けを受けない
・未婚者は位牌分けでを受けない

 
独自の祖霊信仰がある沖縄とは違い、本州では江戸時代から代々家で特定の(集落の)寺院を信仰する「檀家制度」がありますよね。

けれども昔から位牌分けの慣習がある地域では、真言宗でも曹洞宗でも、宗派を問わず位牌分けができます

ただし浄土真宗はそもそも位牌ではなく過去帳を用いるため、位牌自体がありません。
 

 

 

沖縄で位牌分けをする方法

沖縄で位牌分けをする方法
◇位牌分けはタイミングを選ばず、いつでもできます

昔から慣習として伝わる地域では、位牌を仕立てる四十九日法要で位牌分けを行う風習がありますが、沖縄の位牌分けでは決まったタイミングはありません。

ただ四十九日法要やイヌイ(一年忌)などの法要とともに行うと、位牌の魂入れを同時に依頼できて便利です。
 

<沖縄で位牌分けをする方法>
[タイミング]
・四十九日法要
・年忌法要など

[流れ]
・位牌を用意する
・魂入れ(開眼供養)
・祀る

 
ひとつの位牌を分けるのは良くないのでは?」と心配する人もいるので、家族親族には、相談をして進めます。

ただし仏教の教えとしても問題はなく、沖縄の祖霊信仰としても、故人の霊魂は自由にお墓と位牌を行き来するとされ、複数作ることはタブーではありません
 

 

位牌を用意する

位牌を用意する
◇位牌は仏壇仏具店で購入します

沖縄位牌は先祖代々位牌トートーメーなので、それぞれの家で個人を祀る個人位牌を準備すると良いでしょう。
位牌には文字を入れる必要があるので、早めに注文します。
 

<位牌と文字入れの料金相場>
・位牌…約1万円~10万円ほど
・文字入れ…約3千円~1万円ほど

 
1・2週間を文字入れ期間に見て準備を進めると安心です。
特定の寺院を信仰し「菩提寺(ぼだいじ)」があるならば、寺院のご住職が位牌を作ってくれることもあるので、まず相談してみても良いでしょう。
 

 

魂入れ(開眼供養)

魂入れ(開眼供養)
◇それぞれの位牌に魂入れ(開眼供養)を行います

位牌を購入して祀っただけでは、位牌はただの物ですので、魂を入れる儀式を行わなければなりません。

現代の沖縄では?位牌分けの際、僧侶をお呼びして読経供養による魂入れ(開眼供養)をしてもらう家が多いです。

一般的に沖縄の位牌分けでは、複数の位牌を並べて一度の読経供養を行います。
 

<沖縄の位牌分け:僧侶の手配>
●お布施相場…約1万円~5万円ほど

・近所の寺院を訪ねる
・仏壇仏具店に相談する
・ネットの僧侶派遣

 
…僧侶の手配には上記の方法などがありますが、位牌を購入した仏壇仏具店で、魂入れの相談もしてしまうと良いでしょう。
霊園にお墓を持つ家であれば、霊園でも提携する僧侶がいるため、相談可能です。
 

 

位牌を祀る

位牌を祀る
◇魂入れを済ませた位牌を持ち帰ったら、それぞれで自由に位牌を祀ります

沖縄の位牌分けで多い相談は、「お仏壇がない時はどうするの?」と言う声ですが、お仏壇がなくても位牌は祀って構いません
 

<沖縄の位牌分け:祀り方>
位牌のみを祀っても良い
・見下げることのない、棚上などに祀る

 
お仏壇を置く場合、宗派に倣った向きや位置を気にする家もありますが、沖縄の位牌分けでは、拝む時に位牌を見下げない配慮以外は、大きなルールはありません。

もちろん、お仏壇を置いて祀っても良いでしょう。
近年ではおしゃれなモダン仏壇や、手元供養用のコンパクト仏壇も増えました。
 

 

沖縄の位牌分けはトートーメーも影響

沖縄の位牌分けはトートーメーも影響
◇沖縄では先祖代々位牌「トートーメー」を閉じる流れが起きています

2000年代から問題視されてきた、先祖代々位牌トートーメーの継承問題も、沖縄で位牌分けが進んだ背景のひとつです。

基本的に次男以降が長男を差し置いてトートーメーを継承できない「チャッシウシクミ(嫡子押し込み)」のタブーにより、嫡男以外が継承できないトートーメーは、現代沖縄の人々に負担が大きいものでした。
 

<沖縄の位牌分けはトートーメーも影響>
●問題視される継承のタブー
・嫡男(長男)継承
・男性が継承

●問題視されるトートーメーのタブー
・位牌を家から出してはいけない

 
位牌を家から出してはいけないトートーメーを、嫡男のみが継承するとなれば、嫡男は家に縛られ、海外や本州への移住はできません。

昔であれば家督継承により家の財産を全てもらえたかもしれませんが、現代の民法では全ての相続人に相応の相続が認められています。

このような状態であれば、なかなか先祖代々位牌であっても、トートーメー継承は続かないのでしょう。
 

 

沖縄で位牌分けは個人の位牌

沖縄で位牌分けは個人の位牌
◇先祖代々位牌トートーメーは閉じ、両親など個人の位牌を兄弟姉妹などで位牌分けするケースが多いです

トートーメーを永代供養やお焚き上げにより閉じた後、両親など家族が亡くなった時、改めて個人の位牌「カライフェー(唐位牌)」を仕立てる家が増えています。
 

<沖縄で今増えている位牌分け>
・トートーメー ほぼない 繰り出し位牌などに交換
・個人位牌 多い 手元供養
・夫婦位牌 多い 夫婦位牌、繰り出し位牌

 
一度、トートーメーを閉じた後、改めて先祖代々位牌を仕立てると、再び継承問題が起こるため、それぞれが思い思いに負担を分担して、より気軽に位牌を仕立てる流れです。
 

位牌はお墓と繋がっている?

位牌はお墓と繋がっている?
◇沖縄では「お墓とお仏壇が繋がっている」と言う考え方があります

また近年、沖縄で位牌分けが広がるのには、もともと「お墓と位牌が繋がっている」と考えられてきたためでしょう。
主には「お墓参りに行けなくても、位牌があれば供養ができる」という考え方です。
 

<位牌とお墓ネットワーク>
・お墓と位牌が繋がっている
・位牌は、ご先祖様がこの世と繋がる依り代
・位牌に手を合わせれば、ご先祖様に伝わる

 
寺院や民間霊園など管理者がいる本州の墓地とは違い、沖縄では個人の家が管理するお墓も多く残っています。
辺境地の個人墓地に建ち、道程が非常に危ないお墓も多いです。
 

<沖縄では頻繁にお墓参りをしない>
・辺境地にある個人墓地も多い
・かつて風葬の歴史があった

 
沖縄でお墓参りに行くタイミングが旧暦行事で定められた暦に限られています
本州のように「思い立ったらお参り」する風習がないのも、このようなお墓事情が影響しているのではないでしょうか。
 

沖縄で位牌分けをするメリットとは

沖縄で位牌分けをするメリットとは
◇位牌分けをすることで、それぞれの家庭で供養ができます

沖縄で位牌分けをする最大のメリットは、子どもがそれぞれに毎日両親の供養ができる点です。

また、それぞれが家庭で供養をすることで、旧盆などでもてなす側だった、本家の負担も軽減します。
 

<沖縄で位牌分けをするメリット>
・それぞれの家庭で供養ができる
・全員が、毎日の供養ができる
・本家の負担が軽減する
・新たな継承問題が起こらない
・コロナなど世界情勢に影響されない

 
また純粋に故人を偲び、日々の暮らしのなかで手を合わせながら心の拠り所としたい、分家の人々もいるでしょう。

位牌は供養の対象になるため、日々手を合わせることで、大切な人を亡くした喪失によるショックや哀しみ「グリーフ」のケアにも役立ちます。
 

 

位牌分けをするデメリットとは

位牌分けをするデメリットとは
◇位牌の処分では「魂抜き(閉眼供養)」が必要です

位牌分けであっても、故人の魂がはいっている位牌は、処分する時に魂抜き(閉眼供養)を行わなければなりません。
 

<沖縄の位牌分けをするデメリット>
・位牌の処分に魂抜き(閉眼供養)が必要
・親族が集まる機会が少なくなる
・位牌を祀った家庭では、お世話が必要

 
またそれぞれの家庭に位牌分けをすることで、本家である「ムチスク(宗家)」と分家の関係性が希薄になります。

現代はムチスク(宗家)の家族も負担が軽減するとして歓迎される傾向ですが、親族が集まる機会は少なくなるでしょう。

とは言え、沖縄では位牌分けをした後も、シーミー(清明祭)などのお墓参り行事は参加する分家が多いです。
 

 

沖縄の位牌分けで多い質問

沖縄の位牌分けで多い質問
◇故人の供養を日常的にしたいならば、沖縄で位牌分けは問題はありません

現代の沖縄ではトートーメーを閉じた後、位牌分けをするパターンが多いですが、なかにはトートーメーとは関係なく、位牌分けが行われることも多いです。

毎日供養がしたい」と言うのが多い理由ですが、問題はありません。
 

<沖縄の位牌分けで多い質問>
●トートーメーがあっても位牌分けは可能?
…供養したい気持ちを尊重し、位牌分けをしてください。

●位牌分けを受ける際、お金を包んだ方が良いですか?
…位牌の魂入れは法要にあたるため、「ご仏前」を包みます。

 
位牌分けの魂入れを行う際、ムチスク(宗家)が全ての位牌を予め準備しているならば、ご仏前に位牌代金を加味し、多めにお金を包むと良いでしょう。
 

沖縄で位牌分けをすると、それぞれで供養ができます

沖縄で位牌分けをすると、それぞれで供養ができます
沖縄で位牌分けが注目されるようになったのは、特にコロナ禍を経てからです。
帰省したいけどできない」状況がハッキリと現れました。

一方で近年では、そもそも位牌を持たない供養も増えています。
なかでも遺骨を祀る手元供養はお墓も持たず、夫婦など、ごく近しい人々のみが故人を偲び供養する方法です。

この手元供養のケースでも、遺骨の一部を分骨したり、遺骨とともに複数の位牌を分けて供養する「位牌分け」を選ぶ家族も増えています。
 

 



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