・分骨とは?
・分骨がタブーとされるのはなぜ?
・分骨はいつ、どんなタイミングで行う?
・分骨するには、どうしたらいい?
「分骨」とは、故人のご遺骨を複数に分けて供養することを差します。
分骨をすることで、複数の場所や方法で供養できる点がメリットです。
本記事を読むことで、分骨とはなにか?理解を得にくい理由や、分骨によるメリットやデメリット、タイミングで違う分骨の進め方が分かります。
「分骨」とは?
◇「分骨」とは、故人のご遺骨を複数に分けて供養することです
「分骨(ぶんこつ)」は、故人のご遺骨を分けることをさします。
分骨をすることで、遠方に住む家族とそれぞれに供養できるなど、供養の方法や解決策を見出すこともできるでしょう。
<なぜ分骨をするの?> | |
[複数の場所で供養] | ・家族でそれぞれに供養 |
[複数の供養方法] | ・一部を自然葬にしたい ・一部を手元供養にしたい |
[遺骨を残したい] | ・合祀墓だが、遺骨を残したい ・自然葬だが、遺骨を残したい |
例えば、故人が遺言書やエンディングノートで「遺骨は海に撒いてくれ」など、ご遺族の気持ちと反する遺言を残した場合には、分骨をすることで一部を散骨し、一部をお墓に埋葬できます。
分骨がタブーとされるのは?
◇「分骨はよくない」とされるのには、誤解があります
分骨は故人のご遺骨を分けて供養するため、特に高齢の親族から「縁起が悪い」と反対を受けることがありますが、多くは誤解です。
<分骨がよくないとする声> | |
[分骨がよくない声] | [対策] |
・宗教上の問題は? | ・仏舎利など昔からある |
・縁起が悪いのでは? | ・仏教で行われている |
・魂が引き裂かれる | |
・法的に問題あるのでは? | ・法的に問題ない (墓埋法第5条) |
「仏舎利(ぶっしゃり)」とは、入滅したお釈迦様の火葬後のご遺骨を差します。
お釈迦様のご遺骨を分けて祀り、信仰の対象としました。
一部の熱心な仏教信者のなかには、信仰する宗派の総本山へ本山納骨するために、ご遺骨を一部分骨して、納骨することもあります。
分骨は法律でも明記されている
◇分骨については、墓埋法第5条で明記されています
また「法的に問題があるのでは?」と言う人もいますが、分骨証明書によりご遺骨の証明ができる限り、法的になにも問題はありません。
分骨については「墓地、埋葬等に関する法律施工規則」、通称「墓埋法」の第5条で、下記のように明記されています。
<分骨についての法律> | |
[第5条] | ・墓地等の管理者は、他の墓地等に焼骨の分骨を埋蔵し、又はその収蔵を委託しようとする者の請求があつたときは、その焼骨の埋蔵又は収蔵の事実を証する書類を、これに交付しなければならない。 |
[2] | ・焼骨の分骨を埋蔵し、又はその収蔵を委託しようとする者は、墓地等の管理者に、前項に規定する書類を提出しなければならない。 |
[3] | ・前二項の規定は、火葬場の管理者について準用する。この場合において、第一項中「他の墓地等」とあるのは「墓地等」と、「埋蔵又は収蔵」とあるのは「火葬」と読み替えるものとする。 |
墓埋法第5条により、火葬場や霊園・墓地管理者は分骨希望者へ「埋葬証明書」を発行しなければならないとされています。
・墓地、埋葬等に関する法律施行規則(昭和23年7月13日厚生省令第24号)
分骨トラブルの注意点
◇ただし、分骨を決める権利は「祭祀継承者」にあります
このように分骨は宗教的にも法的にも問題がありませんが、分骨トラブルが深刻になるとするならば、祭祀継承者ではない家族が、独断で分骨した場合です。
<分骨を決める権利は、誰が持つ?> | |
[祭祀継承者] | [例] |
…祭祀財産を継承した人 | ・お墓 ・仏壇 ・位牌 …など |
故人の供養を行うための財産、お墓やお仏壇、位牌、ご遺骨などは、祭祀継承者に決定権があり、混乱を防ぐため祭祀継承者はひとりです。
独断で分骨を進めず、まず祭祀継承者であるご遺族や、家族親族に相談して進めましょう。
分骨のメリットは?
◇分骨をすることで、複数の場所や供養が実現します
分骨の最大のメリットは、故人本人の遺志や親族間で、複数の供養方法や場所でもめた時、解決策になることです。
・家族がそれぞれに供養できる
・故人の遺志を尊重できる
・近くで日々供養ができる
・グリーフケアに役立つ
・ご遺骨が残る可能性が増える
分骨の選択肢があることで、遠方に住む兄弟姉妹がそれぞれに供養をして、日々お参りができます。
またお墓がなく合祀墓に合祀する場合など、ご遺骨が残らない供養に抵抗がある場合、それでも何らかの形で納骨しなければならない時に、分骨でご遺骨を残すことも可能です。
個人で手元供養をしたり、身近な納骨堂などに納めて、日々供養をする選択ができるため、大切な家族を亡くしたショックの癒し「グリーフケア」にもなるでしょう。
・沖縄で喪失を乗り越えるグリーフケア☆無意識に訪れる症状と乗り越え方
分骨のデメリットとは
◇分骨によく思わない親族がいる他、手間暇や費用がかかる点です
分骨によって家族や親族、それぞれの意向を実現し解決できますが、一方で分骨後の供養はそれぞれに費用がかかるなど、手間暇・費用が分骨した分かかる点は否めません。
<分骨のデメリットとは> | |
[家族・親族] | ・理解を得にくい可能性 |
[費用] | ・分骨先、それぞれに費用がかかる ・ご遺骨を取り出す費用がかかる (納骨後の分骨の場合) ・分骨する容器が必要 (骨壺など) |
[手間暇がかかる] | ・分骨証明書の保管が必要 ・ご遺骨を取り出す手間暇がかかる (納骨後の分骨の場合) |
特に、一度ご遺骨を納骨した後では、石材業者に依頼をしてお墓の扉を開けて、ご遺骨を取り出さなければなりません。
分骨を行う2つのタイミングとは
◇分骨のタイミングは火葬場と、お墓に埋葬した後、2つのタイミングがあります
分骨をするにあたり、取得する必要書類は「分骨証明書」です。
故人が亡くなってすぐ、火葬場で骨上げの時に分骨をして、火葬場で分骨証明書を発行してもらう流れになるでしょう。
ただし、ご遺骨をお墓に埋葬した後も、希望するなら分骨はできます。
<分骨証明書をもらうタイミング> | |
[タイミング] | [どこでもらう?] |
(1)ご臨終後 | ・火葬場でもらう |
(2)納骨後 | ・改葬時、墓地管理者からもらう |
ただし埋葬後に分骨を行う場合は、お墓からご遺骨を取り出す「改葬(かいそう)」手続きを踏まなければなりません。
けれども他のご遺骨と一緒に合祀埋葬する合祀墓や、自然に還す自然葬などでは、埋葬後に遺骨を取り出すことができず、分骨もできなくなります。
・合祀墓とは?合葬墓や永代供養との違い、メリットデメリットは?合祀墓6種類と費用目安
火葬場での分骨
◇火葬場スタッフに分骨証明書を発行してもらいます
火葬場で火葬後、骨上げ時に分骨をして、火葬場スタッフに分骨証明書を発行してもらうだけです。
分骨の手続きとしては、最もシンプルな方法なので、最初から分骨を検討しているならば火葬場が良いでしょう。
<火葬場での分骨の流れ> | |
[容器を用意] | [費用] |
・タッパー | ・約800円~ |
・専用の骨壺 | ・約8千円~ |
[火葬] | ・火葬 ・骨上げ ・分骨 |
[分骨証明書の発行] | |
・火葬場スタッフに発行してもらう | ・約300円~500円 |
[注意点] | ・火葬場は当日のみの発行が多い |
分骨したご遺骨は、自宅に持ち帰ってから自分達で分骨ができますが、分骨したご遺骨を処分したい時には注意が必要です。
分骨証明書は紛失相談も多いため、骨壺やお仏壇の引き出しに収納するなど、無くす心配のない場所を置き場所としましょう。
「永代供養(えいたいくよう)」とは、家族に代わり施設側が永代に渡って供養をしてくれることで、合祀墓なども永代供養のひとつです。
火葬場での分骨の後は?
◇火葬場で分骨したご遺骨は、それぞれ自由に供養します
火葬場で分骨をしたご遺骨は、分けられた家族がそれぞれ自由な供養の形を選ぶことができるでしょう。
家の近くの納骨堂や、永代供養付きのお墓を建てる人もいますが、現代に多い分骨後の供養方法が手元供養です。
<手元供養で分骨をする場合> | ||
[手順] | [依頼先] | [費用] |
(1)火葬場で分骨 | ・火葬場 | ・約0円 |
(2)粉骨 | ・粉骨業者 | ・約5千円~3万円 |
(3)ご遺骨を祀る | ・仏壇仏具店 | ・約3千円~10万円以上 |
火葬場で分骨されたご遺骨は、現代の手元供養では一般的に粉骨業者に依頼してパウダー状に粉骨した後、高さ5cmほどの小さな骨壺で、コンパクトに祀ります。
火葬後すぐの分骨では、故人の意向に倣い海洋散骨なども多いですが、この場合は法律上、ご遺骨と認識できない2mm以下まで粉骨しなければなりません。
お墓に埋葬した後の分骨
◇お墓に埋葬した後の分骨は、まず墓地管理者へ相談しましょう
お墓からご遺骨全体を取り出して、分骨した残りを他のお墓や納骨堂などに移動する場合は「改葬(かいそう)」手続きになります。
ただお墓へ残りのご遺骨を戻すならば、まず墓地管理者へ相談しましょう。
<お墓に埋葬した後の分骨> | |
[容器を用意] | [費用] |
・タッパー | ・約800円~ |
・専用の骨壺 | ・約8千円~ |
[墓地管理者へ相談] | |
・日取りを決める | |
・石材業者の手配 (墓地管理者) |
|
・ご遺骨の取り出し | ・約2万円~3万円 |
・分骨証明書の発行 (墓地管理者) |
・約300円~500円 |
[閉眼供養をする場合] | |
・お布施 | ・約3万円~6万円 (読経供養2回分) |
[注意点] | |
・祭祀継承者に決定権 (お墓の名義人) |
|
・分骨証明書は1柱につき1枚 |
お墓の扉を開けるにあたり、お墓の魂を抜く「閉眼供養」を行う場合には、僧侶をお呼びして読経供養を行います。
閉眼供養を行いご遺骨を取り出すならば、ご遺骨を納めた後に魂を入れる「開眼供養」も行うでしょう。
閉眼供養が行われた場合は、(現代では)読経供養のお礼として、お布施を約1万円~3万円包むと良いでしょう。
・沖縄の法要でお布施を包む。僧侶へ渡す時の準備やマナーとは
個人墓地での分骨は?
◇個人墓地で分骨証明書を発行するのは、墓地の名義人です
沖縄では個人墓地が今も多く残っています。
個人墓地に埋葬したご遺骨を取り出して、一部分骨をする場合、分骨証明書は墓地の名義人である祭祀継承者「墓主」の発行です。
内容は下記のような事柄を記入します。
<個人墓地の分骨証明書> | |
[ご遺骨について] | |
●故人の情報 | ・本籍 ・住所 ・氏名 ・生年月日 ・没年月日 |
●火葬情報 | ・火葬場所 ・火葬年月日 |
[分骨について] | ・分骨の理由 ・分骨予定年月日 ・分骨予定場所 |
[分骨申請者について] | |
●申請者情報 | ・住所 ・氏名 ・故人との続柄 |
[個人墓地について] | ・墓地名称(あれば) ・墓地の住所 ・名義人の氏名 |
[分骨証明書について] | ・交付年月日 |
基本的に墓地の監督権限は墓地がある地域の自治体、市長です。
分骨証明書を個人墓地で発行する場合には、まず自治体に相談すると良いでしょう。
お墓から取り出したご遺骨の手入れ
◇お墓から取り出したご遺骨は、カビや菌で汚れています
湿気が多いお墓の納骨場所「カロート」に納められてきたご遺骨は、カビが生えて衛生状態の悪いものも少なくありません。
そこで特に、お墓からご遺骨を取り出して手元供養とする場合などは、まずご遺骨の殺菌や洗浄、乾燥を、専門業者へ依頼します。
<ご遺骨を洗骨・殺菌する> | |
[洗骨・殺菌の手順] | ・見える部分をキレイにする ・水で洗う ・洗浄機を洗骨 ・殺菌 ・乾燥 |
[洗骨・殺菌後] | ・粉骨 ・真空パック |
[費用目安] | ・火葬した遺骨…約2万円~3万円/1柱 ・土葬した遺骨…約5万円~8万円/1柱 ・風葬した遺骨…約5万円~8万円/1柱 |
[費用を決める要素] | ・ご遺骨の柱数 ・ご遺骨の状況 ・ご遺骨の大きさ |
墓じまいなどでお墓から取り出した遺骨など、パック料金として提供してくれる業者も多くあります。
自分達で洗い天日干しで乾燥・殺菌もできますが、ご遺族が故人のご遺骨を扱う作業は、精神的な負担も大きいため、業者に相談すると良いでしょう。
手元供養だけど、分骨証明書は必要?
◇手元供養でも、いずれ納骨する可能性があれば、分骨証明は必須です
「分骨証明書」は納骨時に必要になる書類となります。
けれども現在では、ご遺骨を扱う業者はみな、分骨証明書がなければ作業を受け付けないことが多いでしょう。
<分骨証明書が必要になる場面> | |
[散骨] | [提出先] |
・散骨 | ・散骨業者 |
[納骨] | |
・納骨堂 | ・納骨堂施設 |
・お墓に戻す | ・既存墓地管理者 |
・他の納骨先に納骨 | ・納骨先 |
手元供養の場合、自宅でご遺骨を供養するため、当面は分骨証明書の必要性を感じないでしょう。
けれども供養者が亡くなるなど、何らかの事情で手元供養にしていたご遺骨を納骨したい、処分したい時に分骨証明書の提出が求められます。
骨壺と一緒にするなど、紛失することのないように保管しましょう。
分骨証明書を紛失したら?
◇分骨証明書を紛失したら、自治体で再発行手続きを取ります
分骨をする時は分骨証明書を発行し、自治体へ提出するため、お墓がある自治体へ行くと再発行をしてくれるでしょう。
<分骨証明書の再発行手続き> | |
[場所] | ・お墓がある自治体(役所) |
[確認事項] | ・故人の氏名 ・没年月日 ・火葬日 |
基本的に故人の没年月日や火葬日が分かれば、分骨証明書の発行はスムーズに進みますが、忘れた日にちがあると、待ち時間が長くなる可能性は否めません。
お仏壇の引き出しなど、誰もが分かる所定の場所を決めて保管しておきましょう。
まとめ:分骨はタブー、違法ではありません
分骨は法的にも違法ではなく、宗教的にもお釈迦様のご遺骨を分ける「仏舎利(ぶっしゃり)」があったように、忌むべきものではありません。
ただし分骨証明書を発行してもらい、大切に保管をしておきましょう。
分骨証明書は取り分けられたご遺骨が、誰のご遺骨かを証明するためです。
そのため分骨したご遺骨を納骨する時に必要なだけではなく、散骨などでも業者から分骨証明書の提出を求められます。