最近の沖縄では「お墓がないけど、遺骨はどのように供養したら良いか?」との相談も多いです。近年の沖縄では継承者問題から墓じまいも増え、「ではこれから家族を亡くした時はどうするの?」と不安に感じる方も多いのではないでしょうか。
かつては個人墓地に建つお墓がほとんどでしたから、沖縄でお墓がないと建墓費用が随分掛かりました。
ただその分、門中などお金を出し合う相互扶助の形が整っていましたが、現代ではこのような繋がりも薄れ、建墓ではひとりひとりの経済的負担が重くのしかかることも事実です。
けれども今では民間霊園も沖縄に進出し、お墓がない葬送が可能になっています。しかも予算に合わせた葬送を選ぶことができるでしょう。
今回は現代の沖縄でお墓がない時の遺骨の供養方法、葬送3つの選択肢についてお伝えします。
お墓がない場合の3つの葬送の仕方
檀家制度が根付いていない沖縄では、昔から「寺院墓地」の習慣がないため、個人で墓地を購入(もしくは土地を墓地申請して)、そこにお墓を建ててきました。けれどもこれは、沖縄の風習を重んじた特別なものです。
確かに全国的にもその昔は、裏山にお墓を建てる姿もありましたが、今では基本的には、法的に個人の土地に遺骨を埋葬することは禁じられています。
【 沖縄でお墓がない。墓地埋葬法 】
● 日本には「墓地埋葬法」という墓地・埋葬に関する法律があり、この法律では「埋葬又は焼骨の埋蔵は、墓地以外の区域に、これを行つてはならない」となっています。
簡略すると「どこにでも埋めていいわけではない」と言う意味合いで、沖縄でお墓がないとして、ご遺骨を許可なく埋葬できません。基本的な事柄ですが、今では沖縄でも個人墓地の新たな墓地申請が難しくなっていますので、ぜひ注意をしながら葬送を進めてください。
【 沖縄でお墓がない時にできる、3つの選択肢 】
● そこで現代の沖縄で主にお墓がない時に選ぶ葬送方法は、下記3つの選択肢となるでしょう。
(1)墓石のお墓(一般墓/合葬墓)
… もちろん沖縄でお墓がない場合、予算があれば新しくお墓を建てることは可能です。霊園内に建てるのであれば、継承者がいなくても永代供養(※)を付けることで、霊園側が遺骨の管理や供養をしてくれます。
※ 一方で他の遺骨とともに合祀埋葬される合葬墓を選ぶ方法もあるでしょう。他の遺骨とともに合祀埋葬されるので、個別スペースに安置される訳ではないものの、費用は安く抑えることが可能です。
(2)散骨(海洋散骨/里山散骨/空中葬など)
…粉骨した遺骨を散骨する供養方法です。ただし自然に還すため遺骨が残りません。そのため沖縄ではお墓がない場合の選択肢と言うよりは、故人の遺志を叶えるためのひとつのセレモニーとして、分骨した遺骨で行う遺族が多い傾向にあります。
(3)自宅で管理(手元供養/自宅供養)
…現代の沖縄では、お墓がない時に最も選ばれるようになりました。費用を抑えた葬送が可能なうえ、心情的にも日々手を合わせて手厚く供養ができます。
…以上が沖縄でお墓がない場合の選択肢になりますが、この他にも納骨堂や樹木葬(自然葬)なども見られるようになりました。どちらも永代供養付きプランを契約する場合、最終的には合葬墓に合祀埋葬される仕組みが多いです。
それでは、沖縄でお墓がない時にニーズが高い上記3つの葬送方法(墓石のお墓/散骨/自宅で管理)について詳しくお伝えしていきます。
墓石のお墓
沖縄で墓じまいによりお墓がない家では、新しくお墓を建てる場合は永代供養を付けることが多いでしょう。永代供養は本来継承すべき遺族(子どもや孫)に代わり、霊園側が永代に渡り管理や供養をしてくれる、形のないサービスのようなものです。
ですから永代供養を付けることにより、墓じまい後にお墓を改めて建てたとしても、継承者の必要がなくなります。(ただし個人墓地に永代供養を付けることはできません。)
【 沖縄でお墓がない時の選択肢☆永代供養付きのお墓 】
● 新しく永代供養付きのお墓を建てる場合、墓石の引き渡しは約2〜3ヶ月程かかるので、葬儀後すぐの納骨はもちろん、墓石の工事・引き渡しには時間がかかり、四十九日の納骨には間に合いません。
→ 墓石を新しく建てる場合は、イヌイ(一年忌)や三年忌などに合わせて納骨すると、工事も間に合うのでおススメです。
一方沖縄でお墓がないけれど充分な予算がないなど、建墓をためらう場合には、他の遺骨とともに埋葬される合葬墓を選ぶ家も多いでしょう。
永代供養付きの個別墓は継承者の必要はありませんが、個別の区画にお墓を建てるため、定期的なお墓掃除やお参りは行いたいところです。遠方に住んでいるなどでお墓掃除などが難しそうな場合には、合葬墓を選ぶ家が多い傾向にあります。
散骨(海洋散骨/里山散骨/空中葬など)
「散骨」とは、遺骨を自然界に撒く葬送の方法です。もともとは某寺院の私有地である山林に遺骨を撒いたことから始まったのですが、最近ではさまざまな「散骨」が見られるようになりました。
【 沖縄でお墓がない時の選択肢☆散骨 】
● 沖縄で人気が高い散骨方法は海に粉骨した遺骨を撒く「海洋散骨」です。南の島国沖縄の海を愛する人々は世界中にいるため、沖縄県内のみならず、全国や海外から沖縄の海へ海洋散骨をしに来る人々がいます。
→ この他、山林に撒く「里山散骨/山林散骨」や、風船で粉骨した遺骨を空まで上げて割って撒く「空中葬」などもあるほどです。
沖縄でお墓がない場合には、一般的にはお墓を建てたり、永代供養の選択が多いのですが、故人が自然派指向で遺志を確認した場合や、費用を抑えた「0葬(遺骨が残らない葬送方法)」を希望する場合に選ばれています。
自宅で管理
今までは「遺骨は埋葬するもの」との観念が強かった方も多いのではないでしょうか。けれども実は、遺骨はご自宅に置いておく事も可能です。
【 沖縄でお墓がない時の選択肢☆自宅で管理 】
● 現代では哀しみを和らげるグリーフケアの一環として、お墓に埋葬せずに自宅に遺骨を保管して、日々故人と向き合う「手元供養」は大切な位置づけになっています。
→ この他、納骨詐欺に困ったり、お墓を建てる際の費用が工面できない場合にも、一時期的に自宅で保管(自宅供養)を進める事例もあるでしょう。
※ 仏教的には(浄土真宗以外)「早く納骨した方が良い」などと言われますが、法的に納骨に期限はありません。
ただ沖縄でお墓がない時に手元供養(自宅供養)を選んだ場合、自分亡き後の遺骨の管理や継承まで考慮しなければなりません。
近年ではコロナ禍もあり複数の遺骨を粉骨して自宅供養を進める家も増えましたが、自分亡き後に遺骨をどうするか、家族親族との話し合いや理解も必要です。
費用比較で選ぶ
ここまで沖縄でお墓がない時に選ぶ、3つの葬送法をお伝えしてきましたが、やはり費用は選ぶ際に重要なポイントです。それぞれの費用を比較検討していきましょう。
墓石のお墓(建墓で約150万円~/合葬墓約10万円~)
まず沖縄でお墓がないものの、新しくお墓を建てるとなると、今の沖縄で墓石を購入する費用の平均額は121.83万円でした(お墓案内センター)。
ただしあくまでもコンパクトなお墓ですので、沖縄の大きなお墓をイメージすると上限はありません。全国的にも立派なお墓を建てようとすると約300万円~600万円と言われています。
【 沖縄でお墓がない、永代供養 】
● 一方、合葬墓で永代供養をお願いする場合、費用の目安は約10万円/1柱~です。
永代供養には合葬墓にもさまざまな種類があるので、まず霊園で相談をしてみてはいかがでしょうか。
前述したような一定年数のみ個別スペースで永代供養できる納骨堂や自然葬(樹木葬など)、コンパクトな集合墓(約50万円~が目安)などもあります。
散骨相場と注意点
散骨には前述したように、さまざまな散骨方法があるでしょう。そのなかでも付随するサービスなどが多岐に渡るため、10万円~100万円以上と価格幅は広いです。
【 沖縄でお墓がない、海洋散骨 】
● ただし沖縄でお墓がない時に多い海洋散骨の費用相場は約10万円~50万円ほどとなります。
→ 遺骨を送って代行を依頼すると安くなります(約2万円~)し、立ち合いでも他の遺族と合同散骨になれば安く(約10万円~15万円)、個人で船をチャーターすると高くなる(約20万円~)でしょう。
※ また散骨の前に遺骨の粉骨もお願いします。粉骨費用の目安は9千円~3万円です。
ちなみに自分で散骨することもできますが、散骨エリアによっては地域住民からの苦情など、トラブルも多いに考えられます。
「自分で散骨して0円で抑えたい」などの相談もしばしばありませんが、そのためには自分で遺骨を粉骨しなければならないなど、精神的なストレスは相当なものです。やはり専門業者に依頼をすることをおすすめします。
※ 海洋散骨業者などでは粉骨から散骨まで、パック料金で提示してくれるものも多いです。このような仕組みを利用することで、安く抑えることができます。
ご自宅で遺骨を管理
沖縄でお墓がないとして遺骨を自宅安置する場合には、特別な費用は掛かりません。「納骨ができない」として、火葬場から持ち帰った遺骨をそのまま、自宅に置いて日々供養する様子もしばしば見受けますよね。
けれども「しっかりと手元供養(自宅供養)をしよう」と決めた場合には、遺骨を粉骨して仏壇やステージ(祭壇)を揃える家が多いでしょう。
【 沖縄でお墓がない、自宅供養(手元供養) 】
● まず粉骨は9千円~3万円が費用目安です。その上でインテリアや希望に沿った仏壇やステージ、仏具を揃えることになりますが、最近では手元供養用のステージや仏具が増えたことに伴い、価格幅も広いです。
→ 数千円のステージから数十万円の仏壇まで、選択肢はさまざまでしょう。手元供養では、必ずしも遺骨を仏壇に祀る必要はないため、数千円から始めることもできます。
この他、アクセサリーのチャームに納めるなど、手元供養でも方法はさまざまにあるので、実際に仏具店へ行って確認しながら揃えても良いでしょう。
※ 仏壇仕立てや仏具については別記事「沖縄の仏壇で揃える仏具には何が必要?仏壇仕立てで一緒に購入したい基本の仏具」などでもお伝えしています。
いかがでしたでしょうか、今回は沖縄でお墓がない時にできる遺骨の葬送方法についてお伝えしました。
最近の沖縄では墓じまいとともに仏壇じまいが増え、継承者問題は解消されつつあるものの、反対に「家族や配偶者など、思い入れのある故人の供養をどうするか?」戸惑う声も増えてきました。そんななかで最もニーズが高い供養方法が手元供養です。
これは全国的な習わしと違い、沖縄では「年中行事以外でむやみにお墓参りをしてはいけない」と考える方々が多いためでもあります。
ただしこれは、風葬の歴史により今に残った慣わしで、現代は個人墓地から霊園に移りつつあることも加えて、頻繁にお参りする方も増えました。
一部を手元供養にして、一部を散骨や合葬墓に埋葬など、今の沖縄でお墓がない事例では、分骨の選択肢まで加えて、より自由に供養の形を選ぶようになっています。
※ 沖縄の墓じまいや仏壇じまいについては別記事「沖縄で墓じまい後、お仏壇はどうする?永代供養後の位牌、4つの選択肢」などにも詳しいです。
まとめ
お墓がない時、3つの葬送
・合葬墓など墓石に埋葬(永代供養)
・散骨(海洋散骨/里山散骨/空中葬など)
・自宅で供養(手元供養/自宅供養)建墓の場合にも永代供養は付加できる