・沖縄の旧暦行事「十五夜」とは?
・沖縄の十五夜はいつ?
・沖縄の十五夜でのお供え物「フチャギ」とは?
旧暦行事が盛んな沖縄で旧暦8月15日は「十五夜(ジューグヤ)」、お月様を愛でて拝む「月拝み(チチウガミ)」を行います。
集落では大綱引き行事が有名ですが、沖縄の家庭では十五夜に「フチャギムチ」と呼ばれるおもちをお供えするでしょう。
本記事を読むことで、沖縄の家庭で行う十五夜拝みの仕方や、お供え物「フチャギムチ」とは、作り方や供え方、拝み方が分かりますので、どうぞ最後までお読みください。
沖縄の旧暦行事「十五夜」とは?
◇沖縄の「十五夜(ジューグヤ)」は、旧暦8月15日に行われる月拝みです
…2024年、沖縄の十五夜は9月17日(火)になります。
沖縄の旧暦行事「十五夜(ジューグヤ)」は、全国的なお月見と同じように、お月様へ日ごろのお見守りへの感謝を捧げる「月拝み(チチウガミ)」でした。
また旧暦8月15日頃はお米の収穫時期でもあるため、お月様に豊作を感謝する農耕儀礼でもあります。
<沖縄の「十五夜」とは> | ||
[家庭内での拝み] | ●ウチチウグァン (お月御願) |
・家族の健康、子孫繁栄祈願 ・お月さまを愛でる ・フチャギムチを供える |
[集落での拝み] | ●ジューグヤーウイミ (十五夜折目) |
・農作物の豊作祭 ・来年は豊作か不作かを占う |
[集落での奉納行事] | ●ウチチウマチー (月お祭り) |
・大綱引き ・角力(相撲)大会 ・八月踊り ・ハチグァッチアシビー(八月遊び) …など |
詳しくは後述しますが、「フチャギムチ」とは、沖縄のもち粉で作ったおもちに小豆をまぶしたもので、小豆は子どもを表し、小豆が多くまぶされていると、子孫繁栄に繋がるとされました。
・2024年、沖縄の大綱引きはいつ・どこで?那覇大綱引き・糸満大綱引き・与那原大綱曳
昔の沖縄の十五夜とは
◇琉球王朝時代の沖縄では、ノロが殿内にて月拝みをしたと言います
現代に残るものは、北谷町のノロ(祝女)殿内での伝承です。旧暦8月15日、沖縄の十五夜では、フチャギムチを供えて拝みを捧げました。
●ノロ(祝女)殿内の庭にて
・フチャギムチ
・豆
・麦
・米
また前項で沖縄の十五夜では「来年の豊作・不作を占う」としましたが、これも昔の慣わしと言えるでしょう。
琉球王朝時代の沖縄では、十五夜にお月さまの状態を見て、豊作・不作を占ってきました。
沖縄の十五夜:家庭でのお供え
◇沖縄では十五夜に、「フチャギムチ」を供えてきました
昔から沖縄では十五夜の拝みは豊作への感謝や、家の繁栄を祈願してきましたが、それととも、家族ひとりひとりが願い事をお月様に伝える日でもあります。
そこで沖縄の十五夜では、家族それぞれが自由に願い事をしながら、下記3箇所にフチャギムチを供えてきました。
・ヒヌカン(火の神様)
・お仏壇
・トゥクヌカミ(床の間)
(現代はリビングでも良い)
「トゥクヌカミ」とは漢字で書くと「床の神」で、床の間に鎮座される神様です。
けれども現代の住まいには、そもそも床の間がない家庭も多いでしょう。
そのためリビングのテレビ脇など、供えやすい場所に供える家庭が増えました。
・家計を守る沖縄の現世利益の神様「トゥクシン(床の神)」とは?ヒヌカンとは何が違う?
ヒヌカンへのお供え物
◇ヒヌカンには、フチャギムチをお皿に盛って供えるのみです
ヒヌカンは神様ですので、日ごろのお供えに、お皿に盛りつけたフチャギムチを供えるのみ、お箸は添えません。
<沖縄の十五夜:ヒヌカンへのお供え物> | |
[日ごろのお供え物] | ・ウサク(お酒) ・ミジティー(お水) ・マース(お塩) ・供え葉(チャーギなど) |
[十五夜のお供え物] | ・フチャギムチ |
[お線香] | ●ジュウゴフンウコー(十五本御香) ・日本線香…15本もしくは5本 ・ヒラウコー(沖縄線香)…タヒラ半(2枚半) |
ヒヌカンは主に台所を担う家族が、日々お世話をしていることでしょう。
その昔は妻・母と言った家の女性でしたが、現代は主に台所を担う家族であれば問題はありません。
ただ、お世話をする家族がヒヌカンへの拝みを担当し、その他の家族は極力触れないとされてきました。
・【沖縄のヒヌカン】旧暦1日・15日ヒヌカンの拝み方☆お供え物やお線香の本数を解説!
お仏壇へのお供え物
◇お仏壇もフチャギムチのみですが、お箸を添えて供えます
お仏壇もヒヌカンと同じく、フチャギムチを供えれば良いのですが、ご先祖様へのお供えであるお仏壇には、お箸を添える点が違いです。
<沖縄の十五夜:お仏壇へのお供え物> | |
[日ごろのお供え物] | ・ウチャトゥ(お茶) ・ウサク(お酒) ・供え花 |
[十五夜のお供え物] | ・フチャギムチ ※お箸を添える |
[お線香] | ●ジュウニフンウコー(十二本御香) ・日本線香…12本もしくは4本 ・ヒラウコー(沖縄線香)…タヒラ(2枚) |
先祖代々位牌「トートーメー」など、複数のご先祖様を祀っている場合には、フチャギムチも複数盛り付け、お箸も複数膳を添えましょう。
・【沖縄のお供養】御願で違う☆ヒラウコー(お線香)の本数とは
トゥクヌカミへのお供え物
◇トゥクヌカミへのお供え物は、基本的にヒヌカンと同じです
トゥクヌカミ(床の神)もヒヌカン(火の神)も、基本的に供え方は同じで問題はありません。
<沖縄の十五夜:トゥクヌカミへのお供え物> | |
[日ごろのお供え物] | ・ウサク(お酒) ・ミジティー(お水) ・マース(お塩) ・供え葉(チャーギなど) |
[十五夜のお供え物] | ・フチャギムチ |
[お線香] | ●ジュウゴフンウコー(十五本御香) ・日本線香…15本もしくは5本 ・ヒラウコー(沖縄線香)…タヒラ半(2枚半) |
ただしヒヌカンが台所を担う者が供えるのに対して、トゥクヌカミは一家を経済的に支える大黒柱が「家長」として供えます。
戸籍上の世帯主でも良いですし、最も年齢が高い家族でも良いでしょう。
現世利益の神様なので、家計を助けるとされます。
沖縄での十五夜のグイス(拝み言葉)
◇家付きのユタさんがいない現代は、それぞれの言葉で自由に拝んで構いません
現代の沖縄では十五夜に、ユタさんなどの「神女」を呼んで儀礼を行う家はほとんどないでしょう。
そのため「正式なグイス(祝詞)を唱えなければならない!」と緊張する必要はありません。
それぞれの言葉で心を込めてお話をすしてください。
ただ参考として、どのような事柄を祈ってきたか、沖縄で今も残る十五夜の拝み言葉の一例をお伝えします。
「ウートゥートゥー ヒヌカンヌウカミガナシー、
(あな尊い ヒヌカンの神様)チューヤ、ハチグァッチヌ ジューグヤー ディビル。
(本日 八月の十五夜の日になりました。)
クマカラ フチャギヌムチ アギャビトゥーティ シディガフゥ アギトゥーリビーグトゥ
(こちらからフチャギムチをお供えいたしますので)
ウキトゥイジュラスァー ウタビミスーリー。
(受け取ってくださいませ。)
クリカラン ヤーグナームル、ミーマンティー クィミスーチー、
(これからもこの家を見守ってくださり、)
カラダガンジュー シスンハンジョーシミティー、ウタビミスーリー。
(体も丈夫に子孫繁栄しまうように。)
ウートゥートゥー。
(あな尊い)」
…沖縄の十五夜では、このような言葉をお月様へ伝えてきました。
現代、集まった家族はそれぞれ自由に願い事をお願いしたり、家族それぞれの願い事をするようになっています。
沖縄の十五夜:フチャギムチとは?
◇沖縄の十五夜で供える「フチャギムチ」とは、もちに小豆をまぶしたものです
フチャギムチは簡単で、もちに小豆をまぶしただけのものとなりますが、沖縄のおもちはもち粉やだんご粉を使用する点が違います。
・もち…お月さま、満月、守護神
・小豆…星、雲、子ども
とてもロマンティックですよね。
ただ、もちに小豆をまぶしているので、甘い印象がありますが、昔ながらのフチャギムチは甘く煮ないため甘さはなかったのです。
現代はお砂糖を加えて甘いフチャギムチを作る家庭も見受けます。
フチャギムチの作り方
◇沖縄のスーパーで販売されるもち粉やだんご粉で作ります
多くはスーパーなどで販売されている「もち粉」や「だんご粉」を使い、適度な柔らかさになるまで水と混ぜて茹でたお餅を使います。
<フチャギムチの作り方> | ||
●小豆作り | (1)小豆を処理する | ・小豆を目の部分から洗う ・たっぷりのお水で茹でる ・強火で沸騰させる ・中火にして10分ほど |
(2)小豆の渋切り | ・アクを取る ・ざるに取る ・軽く水洗い |
|
(3)小豆を茹でる | ・たっぷりのお水で茹でる ・アクを取る ・落し蓋で30分ほどおく |
|
(4)茹でた小豆を潰す | ・軽くすり潰す (あまり潰し切らないように) |
|
●もち作り | (5)もち粉に水を入れる | ・もち粉に水を入れる (だんご粉でも良し) |
(6)もちのタネをこねる | ・混ぜ、こね合わせる (耳たぶほどの固さ) |
|
(7)おもちの成形 | ・縦長の切り餅のような形 | |
(8)おもちを茹でる | ・たっぷりのお湯を沸騰 ・おもちを投入する |
|
(9)おもちをすくう | ・ぷっかり浮かんだらすくう | |
●完成! | (10)小豆をまぶす | ・おもちをバットに取る |
・小豆をおもちにまぶして完成! |
もちろん、普通のおもちでも問題はありません。
前述したように、昔ながらのフチャギは砂糖も入っていません。
甘い食べ物ではないため、お砂糖で味付けをしても良いでしょう。
沖縄の十五夜では、フチャギムチを供えます
沖縄の十五夜は旧暦8月15日、2024年は9月17日(火)です。
旧暦で数えますから、毎年日にちが違うので注意をしてください。
ウチチウマチー(お月お祭り)としての集落行事は、糸満市などで現代も大綱引きや角力(相撲)大会が盛大に行われています。
ただなかには、平日を避けるため旧暦8月15日の後、最初に訪れる日曜日をウチチウマチー(お月お祭り)とする集落もあるでしょう。
お出掛けの際には、予めそれぞれの集落でのスケジュールを確認してください。
・2024年、沖縄の大綱引きはいつ・どこで?那覇大綱引き・糸満大綱引き・与那原大綱曳