【沖縄のお墓】「永代使用権」とはなに?契約した墓所の譲渡や売却ができないって本当?

2023.01.31
【沖縄のお墓】「永代使用権」とはなに?契約した墓所の譲渡や売却ができないって本当?

近年の沖縄では、個人墓地から霊園(墓地)へお墓を引っ越す改葬事例が増えましたよね。そこで個人墓地が主流だった沖縄で多い質問が「永代使用権とは?」と言うものです。今回は霊園との契約に不可欠な永代使用権について、基礎知識や注意点をお伝えします。

近年の沖縄では、個人墓地から霊園(墓地)へお墓を引っ越す改葬事例が増えましたよね。
そこで、今まで個人墓地が主流だった沖縄で多い質問が、「永代使用権とは?」と言うものです。

・永代使用権とは?
・永代供養権との違いは?
・霊園(墓地)で区画を購入する注意点は?
・今、沖縄で個人墓地に建墓できるの?
・霊園(墓地)が無くなる可能性は?

霊園(墓地)で区画を購入した後に「登記はどうすれば良い?」などの相談もありますが、これも永代使用権とは何か?、を理解することで解決するでしょう。

今回は個人墓地から霊園(墓地)へ移行する沖縄で多い質問「永代使用権とは?」について、詳しく解説していきます。
 

「永代使用権」とは

「永代使用権」とは
●「永代使用権(えいたいしようけん)」とは、永代に渡りお墓を使用する権利です

霊園(墓地)でお墓を購入する場合、契約後も墓地の所有者はあくまでも墓地管理者側にあり、契約者は購入した霊園の墓地区画を、子や孫の代まで永代に渡り使用する権利を得ます。

この点が住居を購入したり、個人墓地での建墓との大きな違いです。
(住居の購入は、借地権ではなく土地も購入したケースと比べています。)
 

<永代使用権とは>
●所有者は墓地管理者側
・使用者(契約者)は永代に渡り使用する権利を得る
・民法では地上権/貸借権/使用貸借権などにあたる
・「永代使用権」自体は法律にはない用語
・「永代使用許可証」が墓地管理者より発行される
・私有地として自由にできない

 
墓地管理者は霊園(墓地)として、一定の景観衛生環境を整えるため、それぞれに規約を細かく設けています。

例えば本州で以前あった判例では、墓前で仕事をしようと墓主が仕事用の器材や資材を持ち込み設置したところ、霊園(墓地)の規約に反するとして永代使用権が消滅した事例がありました。

個人墓地に慣れ親しんだ沖縄の人々にとっては、私有地ではないため墓地申請登記を必要としない点が、特徴的に映るかもしれません。
 

霊園選びについては、下記に詳しいです。
【沖縄のお墓】沖縄の霊園(墓地)でお墓を建てる。霊園見学時5つのチェックポイント!

 

永代供養との違いは?

●「永代供養(えいたいくよう)」とは、家族に代わって永代に渡り遺骨などを管理・供養することです

そのため永代供養には決まった「形」はありません。
霊園(墓地)でお墓や納骨堂などに対して、墓地管理者が付加するサービスと言えます。
 

<永代使用権とは:永代供養との違い>
①永代使用権…永代に渡り墓地を使用する権利
・墓地
②永代供養権…永代に渡り遺骨などを管理・供養するサービス
・お墓
・納骨堂
・合葬墓
・位牌堂

 
そのため現代の沖縄では①永代使用権を購入する際、②永代供養権も購入して、継承者を必要としないお墓を建てる選択が増えました。

永代供養はあくまでも第三者である墓地管理者と家族により交わされる契約なので、私有地である個人墓地に建つ、古くからある沖縄のお墓では、永代供養の契約はできません
 

※「永代供養」について、詳しくは下記をご参照ください。
【沖縄のお墓】「永代供養」とは?継承者がいらないって本当?

 

永代使用権の注意点

永代使用権の注意点
●墓地を購入して永代使用権を得たからといって、私有地のように全てが自由になる訳ではありません

霊園(墓地)は衛生面や景観、環境維持の観点から、霊園(墓地)管理者による規約がさまざまに定められています。

例えば、沖縄では民間霊園が圧倒的に多いのですが、仮に寺院墓地での建墓を検討している場合、その寺院の宗派に倣う必要がありますし、全国的には一般的に、その寺院の檀家にならなければなりません。
 

<永代使用権とは:5つの注意点>
[1]所有権は墓地管理者にある
[2]勝手にお墓を建てることは不可
[3]墓地管理者の規約に従う
[4]永代使用料は返還されない
[5]霊園(墓地)が無くなる可能性は?

 
ちなみに「檀家(だんか)」とは、特定の寺院を代々信仰する家を差し、檀家になると毎年お布施を支払うとともに、家での法要法事や戒名の名づけは、その寺院(菩提寺/檀那寺)のご住職に依頼します。
 

本州の檀家制度に関しては、下記に詳しいです。
「檀家制度」とは、「戒名」は必ず必要?菩提寺(檀那寺)との関係性

 

[1]所有権は墓地管理者にある

[1]所有権は墓地管理者にある
●永代使用権を購入する墓地契約では、あくまでも所有権が墓地管理者にあります

「イチミ(生身)の住まい、シニミ(死身)のお墓」が人生の二大買い物とも言いますが、住居購入と比べた時に、最も大きな違いが「永代使用権」の購入です。

永代使用権」ですので霊園(墓地)の利用規約に反することのない限り、子や孫の代まで永代に渡って「使用する権利」はあります。
けれどもその土地の所有者として、土地を自由に扱うことはできません
 

<永代使用権とは[1]所有権は墓地管理者>
●例えば、土地建物を購入した住居との大きな違いは下記です。
・第三者に売却できない
・第三者に譲渡できない
・第三者に貸与できない

 
また正確には法的に墓地の「分譲」はできますが、墓地の一区画は小さなスペースで、これをわざわざ分譲することは、現実的ではありません。

そのため基本的に霊園(墓地)で区画を購入しても、建墓後にお墓参りをして、代々使用できる権利のみを有しています。
 

[2]勝手にお墓を建てることは不可

[2]勝手にお墓を建てることは不可
●私有地であっても、都道府県知事の許可なしに勝手にお墓を建てることはできません

沖縄では個人墓地に建つお墓が代々も続いていますが、本来は私有地だからと言って、勝手に建墓はできません
墓地を運営するには都道府県知事の許可が必要です。

昔から個人墓地の歴史が続く沖縄では、現代も個人墓地に許可が出る自治体もありますが、現在では基本的に、第三者の運営団体がある墓地・霊園での建墓を推奨しています。

墓埋法(ぼまいほう)」とは、正確には「墓地、埋葬等に関する法律」と言い、名前の通り故人の遺骨の埋葬遺体の扱い火葬など全般に関する決まり事です。
 

<永代使用権とは[2]墓埋法>
●墓埋法で、注意すべき事柄とは
・火葬は24時間後以降に行う
埋葬は墓地に限る
許可証(埋葬許可証/改葬許可証など)が必要
・墓地経営には都道府県知事の許可が必要
遺体は埋葬する(土葬や風葬は現代は違法)

 
昭和23年に制定された墓埋法は、あくまでも公衆衛生面から制定された法律なので、一般の人々であれば基本的には上記5点を理解しておけば、問題はないでしょう。

沖縄で特筆すべきは①24時間経たないと火葬ができない、②遺体(法律上は「死体」)は墓地に埋葬する点であり、宗教的な決まり事などは、後でお伝えする霊園(墓地)の規約に倣います。
 

沖縄でも霊園での建墓を推奨

●個人墓地のお墓文化がある沖縄でも、現代は霊園・墓地での建墓を推奨しています

琉球王朝の歴史を持つ沖縄では、私有地を墓地にしてお墓を建てる個人墓地が主流でした。
そのため比較的最近まで、沖縄においては自治体が個人墓地にお墓を建てる申請を許可していました。

けれども今では新しいお墓に対して、個人墓地での建墓を許可しない自治体が多いです。
 

<個人墓地から霊園へ>
●沖縄でも現代は、個人墓地を許可しない自治体が多い
・事前に自治体で受け入れの有無を確認
・許可されない場合は、霊園(墓地)での建墓を検討

 
※ちなみに全国的には、江戸時代の昔から寺院墓地に先祖代々墓を建てる「檀家制度」が根付いています。

本州でも神道の家などで、家の裏山などの私有地に建てたお墓を見受けますが、これらはいずれも墓埋法が制定される昭和23年以前のものでしょう。
 

個人墓地から霊園への改葬については、下記をご参照ください。
【沖縄のお墓】沖縄で増える霊園への改葬。流れや手順、改葬にかかる費用項目まで解説!

 

[3]墓地管理者の規約に従う

[3]墓地管理者の規約に従う
●規約に反した場合、永代使用権は取り消され、墓石は撤去される可能性があります

契約時の規約に従わない限り、永代使用権を購入(墓地の購入)した使用者であっても、墓地管理者は一定の手続きを経て、お墓の撤去・永代使用権の取り消しができます。

ただ墓地の規約は霊園(墓地)によって細かい部分が違うので、契約時に確認をして、理解をしてから進めると良いでしょう。
 

<永代使用権とは[3]規約の確認>
(1)使用者の権利について
(2)年間管理料
(3)建墓や区画内の設備に関して
(4)永代使用権の継承、取り消しについて
(5)墓地の使用規定

 
特に年間管理料の滞納や、永代使用権の取り消しについては、よく確認をしてください。

①継承者が長期間に渡り決まらず連絡先が分からない
②年間管理料が何年も滞納している

②も継承者が決まらないことが背景にある事例が多いのですが、このような事情で永代使用権が取り消されることが多くあります。

また沖縄では少ないものの、寺院墓地などではその宗派に倣うことが前提であり、継承者が改宗した場合などには、永代使用権も取り消される可能性が高いです。
 

[4]永代使用料は返還されない

費用比較で選ぶ
●墓地を返還しても、契約時に支払った永代使用料は返還されません

こちらも住居の購入とお墓の購入での大きな違いです。

住居を購入した場合、売却すると売却益を受け取ることができますし、賃貸住宅でも契約時の敷金が返金されることがあります。
けれども永代使用権は、これらの料金とは性質が異なるため、注意をしてください。
 

<永代使用権とは[4]返還されない>
●「墓じまいをして墓地を返還したけれど、永代使用料が返還されなかった!」などの相談があるのですが、基本的に永代使用料は返還されません

 
霊園(墓地)のお墓を墓じまいする時、墓主は石材業者に依頼をして墓石を撤去し、更地にしてから、墓地管理者へ返還します。
 

※現代の沖縄で増えた、墓じまいや仏壇じまいについては下記に詳しいです。
沖縄で墓じまいや仏壇じまいをするには。手続きや費用の目安、個人墓地まで解説!

 

[5]霊園(墓地)が無くなる可能性は?

[5]霊園(墓地)が無くなる可能性は?
●霊園(墓地)が無くなる可能性はありますが、運営団体は営利目的ではありません

確かに民営墓地(霊園)であれば、倒産の可能性が全くないとは言えません。
2022年度は北海道で納骨堂の倒産が世間を騒がせましたが、基本的に霊園(墓地)の経営主体は倒産の可能性が少ない団体に限られています。

では、現代においてどのような団体が墓地や霊園を全国的に運営を許可されているのでしょうか。
 

<永代使用権とは[5]霊園(墓地)の経営主体>
①自治体(公営墓地)
②宗教団体(寺院墓地)
③公益法人(民営墓地)
…だけです。

 
つまり営利目的での運営(株式会社)は、墓地経営として認められていないことになり、より社会的に信頼性の高い団体が、霊園(墓地)を運営していることになります。
 

安心して契約を進めるために

それでも「安心して契約できない!」と言う場合は、運営母体の規模財務状況を確認するのも一案です。
 

・アンバランスな宣伝費を掛けている
・見学時、霊園(墓地)施設や公共設備(道路など)の管理状況
・墓地区画の販売状況

 
…などなど、霊園(墓地)購入の決定前には複数の霊園(墓地)を見学して回るでしょう。
この時に上記のような事柄を確認してから契約を進めると、より安心です。
 

最後に

以上が個人墓地が主流だった沖縄で質問の多い「永代使用権」とは何か?について解説しました。

もともと沖縄では戦後の混乱のなか、公営墓地の周辺に集まるように個人墓地が建設されたため、墓地としての定義も曖昧なものも多いです。

そのため山奥の辺境にある門中墓を継承しなければならず、代替わりによりお墓の境界線が曖昧だったり、共同所有者(墓地を共有している)ことが発覚するなど、「どのように整理して良いのか…」との相談も少なくありません。

この点、霊園(墓地)は分譲マンションのようなもので、墓地全体の管理者・責任者が運営や(個人墓地ではないので)墓地申請登記を担ってくれますし、トラブルへの相談相手がいて心強いです。
 

※沖縄で個人墓地から霊園(墓地)への改葬で起きたトラブル事例は、下記をご参照ください。
【沖縄のお墓】沖縄で今のお墓を霊園へ移す「改葬」。経験者が語る5つのトラブル体験談

 

まとめ

永代使用権とは?契約時の注意点
●永代使用権とは
・永代に渡りお墓を使用する権利
・永代供養とは違う
(永代供養は永代に渡り供養すること)

●5つの注意点
[1]所有権は墓地管理者にある
・売却できない
・譲渡できない
・貸与できない

[2]勝手にお墓を建てることは不可
・都道府県知事の許可が必要

[3]墓地管理者の規約に従う
・使用者の権利
・年間管理料
・建墓や区画内の設備
・永代使用権の継承、取り消し
・墓地の使用規定

[4]永代使用料は返還されない

[5]霊園(墓地)が無くなる可能性は?
<経営主体が限られている>
・自治体(公営墓地)
・宗教団体(寺院墓地)
・公益法人(民営墓地)

<契約前の確認をするなら>
・宣伝費の掛け方
・霊園(墓地)の管理状況
・墓地区画の販売状況


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