・沖縄の長寿祝い「カジマヤーユーエー(風車祝い)」とは?
・2024年のカジマヤーユーエー(風車祝い)はいつ?迎える人は?
・カジマヤーユーエー(風車祝い)の祝い方は?
沖縄では毎年旧暦9月7日に97歳の長寿祝い「カジマヤーユーエー(風車祝い)」を行います。97歳を迎える人々を華やかなパレードカーに乗せて走るカジマヤーパレードは、全国的にも有名です。
本記事では、沖縄で毎年旧暦9月7日に行う長寿祝い「カジマヤー」はどんなお祝いか?2024年にカジマヤーを迎える人々や、カジマヤーが行われる日程・お祝いの仕方が分かります。
沖縄の長寿祝い「カジマヤー」とは?
沖縄の長寿祝い「カジマヤー」とは、97歳の長寿を祝う行事です。97歳は生まれてから12年ごとに訪れる干支年にあたり、8巡目にあたります。
「カジマヤー」とは沖縄の言葉で「風車」、子どもの玩具です。沖縄では12の干支「十二支」を8巡して子どもに戻るとされてきました。
また沖縄で97歳の長寿祝いは、正確には「カジマヤーユーエー(風車祝い)」と言います。
2024年のカジマヤーユーエー(風車祝い)はいつ?
沖縄でカジマヤーユーエー(風車祝い)を行う日は毎年旧暦9月7日、明治5年まで使用されていた太陰暦で行います。現代使用している太陽暦ではないので注意をしてください。
今年の旧暦9月7日は2024年10月9日(水)です。ちなみに2025年は10月27日(月)、2026年は10月17日(土)と、大幅に時期がズレる年も多いでしょう。
沖縄ではカジマヤーユーエー(風車祝い)にお祝い金がもらえる?
沖縄では97歳を迎えると、カジマヤーユーエー(風車祝い)のお祝い金を出す自治体が多いです。ただし自治体や年度によって、お祝い金の金額は異なります。
一例として、沖縄県うるま市ではカジマヤー祝い金が1万5千円、糸満市では1万円の年がありました。100歳祝いでは2万円など、年齢を経るごとに長寿祝い金は高くなる傾向です。
沖縄でカジマヤーを祝う由来
カジマヤーユーエー(風車祝い)を祝う97歳は干支年です。「干支年(えとどし)」とは、出生した年の干支と同じ一年間を指します。つまり卯年生まれの人の干支年は、卯年です。
沖縄では干支年を人生の節目「トゥシビー(年目)」と呼び、厄災やトラブルが起こりやすいとして、厄払いを行ってきました。
けれども60歳以降のトゥシビー(年目)は充分に長く生きたと捉えられ、長寿祝いへ「ウフトゥシビー(大年目)」へと変わります。97歳のウフトゥシビー(大年目)で長寿を迎えた高齢者は、8巡目にして子どもに戻ると考え祝ってきました。
沖縄の長寿祝いトーカチとカジマヤーの違い
沖縄ではカジマヤーユーエー(風車祝い)とともに、88歳の長寿祝い「トーカチユーエー(斗掻祝い)」も盛んですよね。88歳は全国的にも長寿を祝う「米寿(べいじゅ)」です。
八十八と感じで書くと、パーツが命をつなぐ「米」になることで米寿祝いとされます。沖縄で88歳は12年ごとに訪れる干支年にはあたりませんが、本州から伝承されました。
沖縄ではトーカチユーエー(斗掻祝い)に行う模擬葬儀で一度亡くなります。そしてカジマヤーユーエー(風車祝い)で新しく生まれ変わり、子どもに戻るのです。
そのためカジマヤーユーエー(風車祝い)では「グソーカラ ムドゥティンチャン(あの世から戻って来た)。」とお声かけをする風習がありました。
・2024年沖縄の米寿祝い、88歳「トーカチユーエー(斗掻祝)」はいつ?供物や祝い方
生まれ変わりのカジマヤーパレード
沖縄のカジマヤーユーエー(風車祝い)では、パレードカーで集落を走るカジマヤーパレード「道ジュネー」が有名ですよね。このカジマヤーパレードは本来、生まれ変わりの儀式です。
実はカジマヤーパレードで通る道筋には、決まり事があります。
沖縄ではあの世を「グソー(後生)」言いますが、カジマヤーパレードはグソー(後生)から戻る道筋を進むためです。
このグソー(後生)から戻る道筋には決まり事があります。ひとつが同じ道を通らないこと、もうひとつの決まり事が、七つ辻(十字路)・七つ橋を渡ることです。七つ橋は道でも良いと言われます。
沖縄では死者がグソー(後生)へ辿り着くまでに七役所(しちやくしょ)を通るとされ、反対を辿り七つの辻・七つの橋を通り戻るためです。
とは言え、現代では通る道筋もそれほど厳しく決めていない自治体が多いでしょう。
沖縄で2024年にカジマヤーを祝う人は?
沖縄で2024年にカジマヤーユーエー(風車祝い)を祝う人は、数え年97歳(満96歳)を迎える・迎えた、辰年のおじぃ・おばぁです。十干十二支では戊辰(つちのえたつ)になりますね。
カジマヤーユーエー(風車祝い)を迎えるおじぃ・おばぁは、豪華な琉装に金襴羽織を羽織るため、着付けなどが不安な家族は早々に準備を進めると良いでしょう。
沖縄の厄年「トゥシビー(年目)」
前に少し触れたように、沖縄の厄年は本州とは異なります。生まれ干支にあたる干支年が「トゥシビー(年目)」と呼ばれる厄年の「クルブシ(黒星)」です。
沖縄では男性も女性も変わりなく12年に1度「年女・年男」にあたる年が厄年なので分かりやすいですよね。
60歳までのトゥシビー(年目)は厄年として神社で厄払いをする家族が多いでしょう。旧正月明けに最初に迎える干支日に、トゥシビー(年目)の祓いウグァン(御願)を行い厄除けをします。
(ウグァン(御願)」とは沖縄の言葉で祈願・拝みの意です。)
<2024年のトゥシビー(年目)> | |
●数え年13歳 (満12歳) | ・2012年(平成24年)生まれ |
●数え年25歳 (満24歳) | ・2000年(平成12年)生まれ |
●数え年37歳 (満36歳) | ・1988年(昭和63年)生まれ |
●数え年49歳 (満48歳) | ・1976年(昭和51年)生まれ |
ただしトゥシビー(年目)を初めて迎える数え年13歳(満12歳)は、十二支を一巡して全方位の干支神様から守られるとし、生年祝いを行う家族が多いです。子の成長に感謝をし、記念写真を撮る生年祝いも多いでしょう。
沖縄の長寿祝い「ウフトゥシビー(大年目)」
60歳までのトゥシビー(年目)で厄年になりますが、60歳を超えてから迎えるトゥシビー(年目)は長寿祝いです。全てのウフトゥシビー(大年目)を祝う訳ではありませんが、厄祓いの年ではありません。
<2024年のウフトゥシビー(大年目)> | |
●数え年61歳 (満60歳) | ・1964年(昭和39年)生まれ |
●数え年73歳 (満72歳) | ・1952年(昭和27年)生まれ |
●数え年85歳 (満84歳) | ・1940年(昭和15年)生まれ |
●数え年97歳 (満96歳) | ・1928年(昭和3年)生まれ |
数え年61歳・満60歳を超えて迎えるウフトゥシビー(大年目)は長寿祝いの年ですので、沖縄では「ウワイドゥシ(祝い年)」と呼ばれます。
沖縄のカジマヤー:2つの祝い方
全国的に知られる沖縄のカジマヤーユーエー(風車祝い)は、97歳を迎えた主役のおじぃ・おばぁがデコレーションカーに乗って集落を巡るパレードですよね。
一方、家庭では仏壇や神様へお供え物をして長寿を感謝する拝み「ウグァン(御願)」を行います。また長寿を祝いに集落の人々や親族も、家を訪れるでしょう。
集落で開催するカジマヤーユーエー(風車祝い)
全国的に知られる沖縄のカジマヤーユーエー(風車祝い)は、集落で行う「パレード」ですよね。
トラックや車を華やかに装飾した「デコレーションカー」で、数え年97歳になったおじぃ・おばぁが乗り込んで集落を巡るものです。この催しを沖縄では「道ジュネー」とも言います。
沿道には人々が集まり長寿を祝ってくれるでしょう。集まった人々には長寿にあやかってもらうため、小さな風車・お菓子「あやかり昆布」などを配ります。
家庭で行うカジマヤーユーエー(風車祝い)
数え年97歳・満96歳を迎える家族がいる家庭では、ヒヌカン(火の神様)・トゥヌカミ(床の神)・お仏壇へ、感謝のウグァン(御願)を行ってきました。
家にも長寿を祝う親族や集落の人々が訪れるので、おもてなしをしながらお菓子などを配ります。ただ近年では都心部を中心に、ホテルなどで会食の場を設けるご家族も増えています。
家庭で行うカジマヤーユーエー(風車祝い)のお供え物や進め方については、後ほど詳しく解説しますので、どうぞ最後までお読みください。
沖縄のカジマヤー①メーニゲー(前祝い)
数え年97歳・満96歳を迎える家族がいる家庭は、事前に今までお世話になってきた神々様やご先祖様へ、カジマヤーユーエー(風車祝い)を行うことをご報告します。
この前報告が「メーニゲー(前祝い)」です。ご報告行事なので、ご家族のみの小さい規模で問題ありあません。
メーニゲー(前祝い)はいつ行う?
カジマヤーユーエー(風車祝い)の3日前です。
カジマヤーユーエー(風車祝い)が毎年旧暦9月7日なので、メーニゲー(前祝い)は毎年旧暦9月4日に行います。
今年2024年は10月6日(日)にあたります。旧暦で数えるので毎年西暦による暦が変わる点は注意をしてください。
メーニゲー(前祝い)ではどこへ拝む?
カジマヤーユーエー(風車祝い)のメーニゲー(前祝い)では、主役の本人が生まれてからお世話になってきた神々様やご先祖様へご報告します。具体的にはウフガー(産川)・集落の神様・神墓が一般的です。
「ウフガー(産川)」とは産まれた時に産湯をいただいた集落の井戸ですが、引っ越して来た方もいるでしょう、集落の水場「ガー」で問題はありません。またヒヌカン(火の神)など神様を繋ぐ「遥拝所(ようはいじょ)」で、遠くの神様へ拝む方法もあります。
集落の神様はハーレー大会や大綱引きなどで最後に拝むウガンジュ(拝み処)で良いでしょう。ウタキ(御獄)や神社でも良いです。
最後に神墓は「按司墓(アジバカ・アジシーバカ)」とも呼ばれる、古いご先祖様や始祖が眠るお墓ですが、神墓まで拝む家・拝まない家があります。
(神墓について、下記コラムでも詳しく解説しています。)
ヒヌカン(火の神)を通したメーニゲー(前祝い)
自宅の台所にヒヌカン(火の神)を祀っている場合、「繋ぎ」の役割を果たしてくれます。「繋ぎ」とは遠方にあるウガンジュ(拝所)の神様を繋ぐ役割です。
何らかの事情で現地まで足を運べない場合、ヒヌカン(火の神)からウフガー(産川)・集落の神様・神墓へ感謝を伝える方法もあるでしょう。
・【沖縄のヒヌカン】ヒヌカンを遠くの御嶽(うたき)と繋ぐ方法☆遥拝所としての役割とは
メーニゲー(前祝い)のお供え物
メーニゲー(前祝い)は屋外のウグァン(御願)なので、沖縄で利用されるビンシー(瓶子)にお供え物を揃えて行くと便利です。沖縄のホームセンターなどに行くと、約5千円~7千円ほどで販売しています。
<メーニゲー(前祝い)のお供え物> | |
①カラミハナ(乾き花) | ・お米 ・左右に一対・2皿を供える |
②アライミハナ(洗い花) | ・お米を7回すすぐ ・カラミハナ(乾き花)の中央に1皿 |
③ンミキ(お酒) | ・左右一対の徳利(とっくり) ・徳利の中央に盃を1杯 |
④白ウブク(ご飯) | ・仏飯器などに3膳 |
⑤ウチャヌク(お茶の子) | ・白もちを3つ重ねる ・白紙を置いて3組供える |
⑥果物の盛り合わせ | ・りんご(母性の象徴) ・バナナ(父性の象徴) ・みかん(子孫繁栄) …など |
しばしば「ビンシー(瓶子)はあの世の実印だから、必ず使用する」と考える方もいます。けれども、実はビンシー(瓶子)の歴史はそれほど長くはありません。
琉球王朝時代にビンシー(瓶子)ではなく盆に供えてウグァン(御願)を行ってきたとされ、戦後になって庶民を中心に広がりました。
カラミハナ(乾き花)・アライミハナ(洗い花)・ウチャヌク(お茶の子)については、後ほど詳しくお伝えしますので、どうぞ最後までお読みください。
メーニゲー(前祝い)のお線香
◇メーニゲー(前祝い)のお線香は「ジュウゴフンウコー(十五本御香)」です
・日本線香…5本、もしくは15本
・沖縄線香…タヒラ半(2枚と半分)
沖縄線香の「ヒラウコー(平線香)」が定番ですよね。「ヒラウコー(平線香)」は日本線香6本文がくっ付いた板状のお線香です。ただ、でんぷんが原料なので香りはありません。
日本線香はウティン(天)まで良い香りが届く「カバシウコー(香線香)」と呼ばれ、特別なウグァン(御願)で使用されてきました。かつて日本線香は高級品でしたが、現代なら日本線香でも良いでしょう。
ビンシー(瓶子)にはヒラウコー(平御香)を入れる引き出しも付いているので便利です。ビンシー(瓶子)やヒラウコー(平御香)は下記コラムにも詳しいので、興味のある方はご一読ください。
・沖縄のビンシー(瓶子)とは?神様へ供えるミハナ(御花)、クバンチンとは?詳しく解説
・沖縄線香「ヒラウコー(平御香)」とは?線香の燃え方に意味がある?日本線香と違いは?
メーニゲー(前祝い)の拝み方
下記はメーニゲー(前祝い)で神々様へお伝えする、昔ながらの拝み言葉ですが、ただ音読するだけでは気持ちが伝わりません。日頃ヒヌカン(火の神)や神々様へお話する慣れた言葉でも良いです。
(あな尊き 〇〇の神様よ、)
チューヤヒガラムトゥー、クマカラウニゲー アゲティウィブール ウクトゥシジヤ、
(今日の良き日に、これからお願いいたしますのは、)
〇〇(干支)ディ 〇〇(性別)ヌ、ウトゥシ クンジューシチヌ カジマヤーユーエー スルトゥンカイナイビティ、メーニゲーヌウグァンタティ スリビーン。
(〇〇(干支)の〇〇(性別)が、今年97歳を迎え カジマヤーユーエーを行うため、前祝いの御願立て(祈願)をしています)
ドゥーリン ウキトゥイジュラサー ウタビミスーリー。
(どうぞ 受け取ってくださいませ。)
クリマディ ジョウブニ カジマヤーンケーラチ クィミスーチ、マクトゥニ ウシディガフーディービル。
(これまで元気にカジマヤーを迎えさせていただき、誠にありがとうございます。)
ミッカアトゥヌ クングァチシチニチ ユーエースル クトゥナンカイナトゥリビングトゥ、ウマムイジュラサァー ウタビニスーリー。
(三日後の9月7日にお祝いをすることになりましたので、どうぞお守りください。)
ムナンジュラサー リッパニ ユーエーシミティ クィミスーリー、ウートゥートゥー。
(何事もなく無事にお祝いできますように、あな尊い。)」
つまりは97歳まで長く生きたことへの感謝と、どこの誰がカジマヤーユーエー(風車祝い)をするのか、無事にお祝いができるよう御守護を祈願する内容です。
沖縄のカジマヤー②ヒヌカンへの拝み
台所にヒヌカン(火の神)を祀る家では、朝一番に拝みを捧げます。主に家事を担い、日ごろからヒヌカン(火の神)のお世話をしている家族が拝んでください。
基本的にヒヌカン(火の神)は担当する家族のみが触れるものとされてきました。かつては女性が台所を担ってきたため、女性のみが触れる神様として知られています。
・【沖縄のヒヌカン】家の守護神ヒヌカンが持つ5つの役割。日々のお世話やタブー3つの知識
ヒヌカン(火の神)へのお供え物
カジマヤーユーエー(風車祝い)の朝は、神様へ供えるウチャヌク(お茶の子)を3組供えましょう。またアライミハナ(洗い花)・カラミハナ(乾き花)と呼ばれるお米を添えます。
アライミハナ(洗い花)・カラミハナ(乾き花)はそれぞれ、アライグミ(洗い米)・ハナグミ(花米)などとも呼ばれますが、同じものです。
<ヒヌカン(火の神)へのお供え物> | |
①ンミキ(お酒) | ・左右に一対の徳利(とっくり) ・徳利の中央に盃を1杯 |
②カラミハナ(乾き花) | ・お米を小皿に盛る ・左右に一対を供える |
③アライミハナ(洗い花) | ・白もちを3つ積み重ねる ・白紙を敷いて、3組供える |
④ウチャヌク(お茶の子) | ・白もちを3つ積み重ねる ・白紙を敷いて、3組供える |
屋内のお供え物はお盆に揃えることが多いです。ただビンシー(瓶子)に整える場合は、ンミキ(お酒)とカラミハナ(乾き花)・アライミハナ(洗い花)までが入ります。
これをお盆に置いて、ウチャヌク(お茶の子)はお盆に整えれば完成です。
ヒヌカン(火の神)へのお線香
◇ヒヌカン(火の神)へジュウゴフンウコー(十五本御香)を供えます
・日本線香…15本、もしくは5本
・沖縄線香…タヒラ半(2枚と半分)
カジマヤーユーエー(風車祝い)に限らず、ヒヌカン(火の神)へ供えるお線香の本数はほとんどが「ジュウゴフンウコー(十五本御香)」です。
日本線香・沖縄線香(ヒラウコー)どちらでも構いません。
ただ近年では、ヒヌカン(火の神)のウコール(香炉)に小さい器を選ぶ家庭が多いため、割れにくく供えやすいよう日本線香5本を供えることが増えました。
ヒヌカン(火の神)には何を拝む?
ヒヌカン(火の神)には、本日の日が旧暦9月7日カジマヤーユーエー(風車祝い)の日であることをご報告します。そしてカジマヤーユーエー(風車祝い)の一連の儀式が何事もなく、無事に済ませられるように祈願しましょう。
昔ながらの沖縄言葉での拝み言葉「グイス(祝詞)」はありますが、もともと地域や家によって違うものです。沖縄の話し言葉でもあるので、現代の言葉で自分なりにお伝えしても良いでしょう。
沖縄のカジマヤー③仏壇
沖縄のカジマヤーユーエー(風車祝い)で仏壇へ供えるお供え物は、ほとんどがヒヌカン(火の神)と変わりはありません。ただし赤飯などの赤いご飯「赤ウブク」を供えるので、準備をしておきましょう。
朝一番にお供えして、ヒヌカン(火の神様)と同じように拝んでも良いでしょう。ヒヌカン(火の神)は主に台所を担う女性が拝んできましたが、仏壇は世帯主である家長が中心となってウグァン(御願)を行います。
仏壇へのお供え物
ヒヌカン(火の神)へのお供え物にはウチャヌク(お茶の子)など3組を供えましたが、仏壇は左右対称に供えるものが多いため、基本的に2組供えます。
また日頃のお世話も変わらず行うため、ウチャトゥ(お茶)は左右に2杯を供えましょう。供え花も3色・5色の淡い色を中心に、季節の花々を選ぶと適切です。
<仏壇へのお供え物> | |
①ンミキ(お酒) | ・左右に一対の徳利(とっくり) ・徳利の中央に盃を1杯 |
②ウチャトゥ(お茶) | ・左右に1対・2杯 |
③カラミハナ(乾き花) | ・お米を小皿に盛る ・左右に一対を供える |
④アライミハナ(洗い花) | ・白もちを3つ積み重ねる ・白紙を敷いて、3組供える |
⑤ウチャヌク(お茶の子) | ・白もちを3つ積み重ねる ・白紙を敷いて、3組供える |
⑥赤ウブク(赤いご飯) | ・仏飯器などに2膳 |
赤ウブク(赤いご飯)は赤飯や古米を混ぜて炊いたご飯が好まれますが、この他にも白ご飯に食紅を混ぜて赤くすることもあります。どちらでも問題はありません。
仏壇へのお線香
◇仏壇へ供えるお線香は「ジュウニフンウコー(十二本御香)」です
・日本線香…12本、もしくは4本
・沖縄線香…タヒラ(2枚)
沖縄ではカジマヤーユーエー(風車祝い)に限らず、旧暦行事で仏壇へ供えるお線香の本数は、基本的に日本線香12本分のジュウニフンウコー(十二本御香)になるでしょう。
近年では大きな沖縄仏壇からコンパクトな棚上仏壇に買い替える家庭も増え、それに伴いウコール(香炉)の大きさも小さいものが増えました。そこでウコール(香炉)に合わせた本数、日本線香4本のみを供える家庭も増えています。
沖縄のカジマヤー③トゥクヌマ(床の間)
沖縄の旧暦行事では多くが仏壇をメインにウグァン(御願)を行いますが、カジマヤーユーエー(風車祝い)・トーカチユーエー(斗掻祝い)などの長寿祝いは、トゥクヌマ(床の間)が中心です。
トゥクヌマ(床の間)には大黒柱である「トゥクヌカミ(床の神)」が鎮座されていました。
かつて玄関すぐ仏壇よりも先に表れる、種類は違いますが仏壇にいらっしゃる「ウヤフジガナシー(ご先祖様)」よりも位の高い神様とされます。
ヒヌカン(火の神)が家内安全を担う神様であるのに対して、トゥクヌカミ(床の神)は社会的な祈願事に向いている現世利益を担う神様です。特に収入・立身出世・商売運などですね。
担い手は家長である男性が一般的で、トゥクヌマ(床の間)に飾る掛け軸などにより、ご利益がかわります。沖縄に多いトゥクヌカミ(床の神)は、子育てや健康の観音様・果報が訪れる七福神・長寿祈願の鶴亀・商売神である関帝王などが人気です。
・家計を守る沖縄の現世利益の神様「トゥクシン(床の神)」とは?ヒヌカンとは何が違う?
トゥクヌカミ(床の神)へのお供え物
トゥクヌカミ(床の神)へのお供え物(ウサギムン)はカジマヤー(風車)を差したお米です。97歳にちなみ、お米9升7合を盛ったお米の山に風車を9本差します。 たくさんのお米が必要になるので、予め準備・手配が必要です。
そもそも現代はトゥクヌマ(床の間)のない家庭も多いでしょう。リビングなどお客様を招き入れる部屋に飾れば問題はありません。
<トゥクヌカミ(床の神)へのお供え物> | |
①お米 | ・9升+7合をお盆に盛る |
②風車 (おもちゃの風車) | ・9本をお米の山に差す |
③枡(ます) | ・計った枡 ・お飾りとして |
大きな器など準備も大変ですよね。
仕出し料理店などトゥクヌカミ(床の間)のお飾りのセット販売も見受けます。
・(有)つむぎ弁当
カジマヤーユーエー(風車祝い)の拝み方
沖縄でカジマヤーユーエー(風車祝い)当日は、以上ヒヌカン(火の神)・仏壇・トゥクヌマ(床の間)にお供え物や飾り物を済ませた後、家族が97歳を迎える家では、下記のように拝みを捧げます。
基本的に97歳を迎えるご本人ではなく、その家の家長や家族である祝う側が中心となって拝みましょう。
クトゥシ〇〇(親・祖母など)ヌ 〇〇(干支)ディ 〇〇(性別)が クンジューシチヌ カジマヤーンケール クトゥンカイ ネービタン。
クマンカイ、ナンジャビンシー・クガミビンシー アギャビティ、ウチャヌク・ミハナ・ウブク・ンミキ、ウミヌエームン・アギヌエームン、クァッチー アギャビトゥティ ユルクビヌ ウニゲーアギャビラ。
(これから、銀の瓶子・金の瓶子を供えまして、ウチャヌク(お茶の子)・ミハナ(お米)・ウブク(ご飯)・ンミキ(お酒)、海のご馳走・地のご馳走をお供えし、慶びのお願い事をしています。)
〇〇(干支)ディ〇〇(性別) クヌトゥシマディ カラダジョーブニ ウタビミスーリー、マクトゥニ ウシディガフーディービル。
(〇〇(干支)ディ〇〇(性別)をこの年まで体も丈夫にさせていただき、誠にありがとうございました。)
ヒャクハタチマディ マムイ ウタビミスーチ、カラダジューク テージュークアラチ ウタビミスーリー、ユルクビヌ ウニゲーディービル、ウートゥートゥー。
(120歳まで守っていただいて、体も丈夫に健康にありますように、慶びのお祝いをいたします、あな尊い。)」
仏壇はご先祖様・祖霊への拝みなので「ウヤフジガナシー(ご先祖様)」ですね。その後、長寿を祝う方々がいらっしゃるので、小さな風車やお菓子を配りおもてなしをします。
沖縄でカジマヤーユーエー(風車祝い)のお返しは?
来訪者には「長寿へあやかる」として、お土産を渡しもてなします。
寸志を配るならば五百円~千円ほどの少しのお金を包んだポチ袋で、「ありがとう」などの表書きを添えますが、現金を配ることはほとんどありません。
昆布を結んだお祝いのお菓子「あやかり昆布」・小さな風車・お菓子などを小さな袋に包んで配る家庭が多いでしょう。
カジマヤーパレードでも沿道に集まり長寿を祝ってくださった人々へ、あやかり昆布・小さな風車・お菓子などを配る習慣があります。こちらは自治体や集落の人々が用意してくれることが多いです。
カジマヤーユーエー(風車祝い)に祝儀を包むなら
基本的に沖縄のカジマヤーユーエー(風車祝い)で大きなお金を包むことはありません。
お祝いを包むよりも、集まった家族・親族がみんなで食べるオードブルやお菓子の詰め合わせ、ビールなどが多いでしょう。
それに家族でなければ、目下の者が目上へお金を包むことは失礼にもあたります。
何らかの事情でぜひお金を包みたいならば、相手がお返しの気遣いをする必要のない千円~3千円ほどの金額に留めると良いでしょう。
全国的な長寿祝い
沖縄でカジマヤーユーエー(風車祝い)を祝う97歳、全国的には長寿を祝う年ではありません。最も近い長寿祝いでは数え年99歳・満98歳にあたる白寿(はくじゅ)があるでしょう。
全国的にも沖縄でも長寿祝いは中国の儒教から影響を受けています。中国では敬老思想が古くから根付き、長寿を尊ぶ風習がありました。
日本では奈良時代・鎌倉時代に長寿を祝う節目が生まれ、平安時代には長寿を祝い詩を贈る風習が貴族間で広がりました。
全国的な長寿祝いの年齢
全国的な長寿祝いは数え年60歳の還暦は「赤」、数え年70歳・77歳の古希・喜寿は「紫」など、祝う節目によりテーマカラーを持つことが特徴です。還暦に赤いちゃんちゃんこを贈る風習は有名ですよね。
<全国的な長寿祝い> | |
①還暦 (かんれき) | ・数え年61歳(満60歳) ・1964年(昭和39年)生まれ ・赤 |
②古希 (こき) | ・数え年70歳(満69歳) ・1955年(昭和30年)生まれ ・紫 |
③喜寿 (きじゅ) | ・数え年77歳(満76歳) ・1948年(昭和23年)生まれ ・紫 |
④傘寿 (さんじゅ) | ・数え年80歳(満79歳) ・1945年(昭和20年)生まれ ・紫、もしくは黄色 |
⑤米寿 (べいじゅ) | ・数え年88歳(満87歳) ・1937年(昭和12年)生まれ ・黄色 |
⑥卒寿 (そつじゅ) | ・数え年90歳(満89歳) ・1935年(昭和10年)生まれ ・紫、もしくは黄色 |
⑦白寿 (はくじゅ) | ・数え年99歳(満98歳) ・1926年(大正15年)生まれ ・白 |
⑧百寿 (ももじゅ) | ・数え年100歳(満99歳) ・1925年(大正14年)生まれ ・桃色、もしくは白 |
100歳の百寿を超えた後は、「茶寿(ちゃじゅ)」108歳、「皇寿(こうじゅ)」111歳、そして120歳で「大還暦(だいかんれき)」を迎えます。
全国的な長寿祝いの進め方
全国的には長寿を迎える方のご家族・親族で集まり、会食を催します。自宅で宴を催すご家族の他、近年ではホテルなどで会食会場を設けて集まるプランも多いです。
長寿祝いのプレゼントや祝儀を包み集ますが、一般的に長寿祝いへのお返しは必要ないとされます。長寿を祝うことで、祝う側も長寿にあやかるとされるためです。お礼状を後日送ることで感謝の気持ちが伝わります。
ただ、ご祝儀をいただいてお返しが気になるようであれば、いただいた金額の1/3~1/2ほどの品を選び、お礼状とともにお送りすれば良いでしょう。
全国的な厄年
沖縄では生まれ干支の年が厄年ですが、全国的な厄年は全く違うので注意をしてください。全国的な厄年は江戸時代に広がった考え方で、諸説ありますが陰陽道が由来とされます。
全国的に厄年や「厄災が訪れやすい時期」と捉えがちですよね。けれども厄年は人生の転換期ですので、今後の新しい人生への道が見えやすい時期でもあります。
また後半生の厄年は身体の変化、社会的立場の変化に合わせて良い意味で「仕方ない」と捉えるタイミングとも言われます。「仕方ない」として、より楽しい人生を歩もう、との考え方です。
気になる方は早々に厄祓いの儀式を済ませて、快適な厄年を迎えましょう!
国的な厄年:男性
全国の長寿祝いや厄年は、沖縄とは考え方は異なります。
沖縄では男女共に年男・年女の年が厄年で分かりやすいのですが、全国的には男女それぞれ異なります。
<全国的な男性の厄年> | |
●数え年4歳 (満3歳) | ・2021年(令和3年)生まれ |
●数え年25歳 (満24歳) | ・2000年(平成12年)生まれ |
●数え年42歳 (満41歳)(大厄) | ・1983年(昭和58年)生まれ |
●数え年61歳 (満60歳) | ・1964年(昭和39年)生まれ |
さらに前年と後年の前厄・後厄もあるので、3年間は注意をする時期です。男性の身体的な変化により病気などを注意すると言われますね。細かな箇所まで健康診断を受けるのも良いでしょう。
全国的な厄年:女性
女性の厄年も人生の転換や、女性ならではの身体的な変化が厄年に反映される人も多いです。結婚や出産などの転換期には、ご自身の健康にも気遣ってあげてください。
<全国的な女性の厄年> | |
●数え年19歳 (満18歳) | ・2006年(平成18年)生まれ |
●数え年33歳 (満32歳)(大厄) | ・1992年(平成4年)生まれ |
●数え年37歳 (満36歳) | ・1988年(昭和63年)生まれ |
●数え年61歳 (満60歳) | ・1964年(昭和39年)生まれ |
なかには厄年にあたる数え年37歳前後を、出産のタイムリミットと取る人もいます。ただ現代は医療も進化し人の人生も長くなったため、40代での出産も多いです。
「厄年だから」と引っ込み思案になったり気に病み過ぎることなく、厄祓いをしてスッキリとしたら、転換期と捉えて積極的に進むのも良いでしょう。
まとめ:沖縄で旧暦9月7日はカジマヤーユーエー(風車祝い)です
沖縄で毎年旧暦9月7日は、97歳の長寿を祝うカジマヤーユーエー(風車祝い)を行います。2024年は10月9日(水)ですね。全国的には100歳を越える長寿祝いはありますが、沖縄では一般的に97歳が最高齢でしょう。
88歳のトーカチユーエー(斗掻祝い)は全国的な米寿祝いの影響を受けていますが、97歳のカジマヤーユーエー(風車祝い)は沖縄独自のトゥシビー(年日)にあたるお祝いです。
カジマヤーユーエー(風車祝い)では、黄色い羽織を着るトーカチユーエー(斗掻祝い)の衣装の上に、さらに赤金色の金襴羽織を羽織ります。
生年祝いの衣装などをセットで購入できるお店もあるので、利用しても良いでしょう。
・生年祝いセット