・本州とは違う沖縄のお墓の特徴は?
・沖縄のお墓が大きい理由とは?
・沖縄のお墓の種類・形式は?
・沖縄で行うお墓参りの流れは?
・沖縄ならではのお墓のしきたりは?
沖縄のお墓は、地上にある大きい納骨室と墓庭が特徴です。壁と屋根があること・お墓の大きさから「あの世の家」とも比喩され、温かなイメージから県外の人々にも人気があります。
本記事を読むことで沖縄ならではのお墓の特徴、種類や形式の他、独自のお墓参りの流れやしきたりも分かります。後半では現代深刻化する沖縄のお墓問題と、その対策もご紹介しているので、どうぞ最後までお読みください。
沖縄のお墓が大きい理由は?
独自の祖霊信仰を持つ沖縄では「檀家制度」が根付いていません。
一方で全国的には江戸時代から国民の戸籍管理として檀家制度が進められ、どの家でもいずれかの寺院に属していました。
「檀家制度(だんかせいど)」とは地域の寺院など、家が代々に渡り特定の寺院を信仰し、属することです。属した寺院は「菩提寺(ぼだいじ)」「檀那寺(だんなでら)」、属する家は「檀家(だんか)」です。
菩提寺は檀家の法事法要を全て担い、檀家は菩提寺の境内にお墓を建てて管理してもらう代わりに、毎年のお布施や修理修繕費を払い経済的に支えます。
けれども沖縄には檀家制度が根付いておらず、寺院墓地にお墓を建てる必要がありません。
ただし現代では全国的にも沖縄でも、民間霊園の登場により必ずしも檀家である必要は無くなりました。
①沖縄の気候に対応
昔から沖縄は激しい天候に順応し暮らしてきました。毎年訪れる大型台風や梅雨の大雨にも充分に対応できる、頑丈な家「あの世の棲み処」を建ててきたのです。
また海に囲まれた島である沖縄は、日々塩害にもさらされます。そのため生きる者の家も低い屋根で敷地を広く、どっしりとした平屋を建ててきました。
故人やご先祖様が亡くなった後の人生「後生(ゴショウ)」で住むお墓も同じです。沖縄は独自の祖霊文化が根付く地域、どれほど重要視しているかが分かります。
②風葬の歴史
1948年に火葬が義務化されるまで全国的には土葬が葬送の主流でしたが、沖縄には古くから風葬の歴史があります。
「風葬(ふうそう)」とは、人が亡くなるとご遺体を埋葬せずに外気に晒して自然に朽ちるのを待つ葬送方法で、沖縄ではご遺体の周囲に石畳を積み上げて囲ってきました。
風葬では地上にご遺体を置くスペースが必要です。そのため沖縄のお墓は、広い納骨室を設けたお墓になりました。
③ジーシガーミ(厨子甕)
かつて沖縄の風葬では、ご遺体を一定期間外気に晒した後に再びお墓から出し、ご遺骨を洗う「洗骨(せんこつ)」が行われてきました。洗骨されたご遺骨はジーシガーミ(厨子甕)に納められ、再びお墓に納骨されます。
「ジーシガーミ(厨子甕)」も小さな屋敷の姿をしており、「この世を除く窓」があるなど細かな細工も施されているため、一般的な骨壺よりも大きいです。
沖縄のお墓はご遺体を置くスペース、大きなジーシガーミ(厨子甕)を納めるスペースが必要になります。
現代ジーシガーミ(厨子甕)は沖縄で使用されることはほとんどありませんが、その芸術性は海外でも評価されるようになりました。
④お墓参りの風習
全国的にお墓参りは月命日など、気が向いた時にいつでも行くことができます。けれども沖縄ではお墓参り行事以外で、むやみに行くことを良しとしません。
その代わり沖縄のお墓参り行事では、家族や親族など大勢の人々が集まります。そして墓前でご先祖様を囲みながら、一日中賑やかに宴会を催すのです。
大勢の人が墓前で宴会を楽しむよう、沖縄のお墓には広い敷地を要します。
⑤門中制度
全国的なお墓は家単位の先祖代々墓ですが、古くから根付く沖縄で親族の単位は一般的に「門中」です。
「門中(むんちゅう)」とは父方血族の集まりですので、全国的な親族よりもずっと規模が大きくなります。門中制度が長く続くほど、倍々になり大きくなるでしょう。
沖縄で最も大きな門中墓とされる糸満市の「幸地腹門中(こうちばらむんちゅう)」では、約5,000人以上の人々がお墓に眠っています。
本州とは違う沖縄のお墓の特徴
「沖縄のお墓は家のよう」と言われますよね。その通りで素材こそ墓石やコンクリート造りではありますが、設計は生きる者が住む平屋のようです。
風葬の歴史からご遺体を囲んでお墓としたたため、壁があり屋根があります。古い沖縄のお墓のなかには山肌に掘り進めたものも見受けますが、いずれも扉が特徴的です。
①納骨室が広い
沖縄のお墓は納骨室の面積が広く低い特徴があります。その理由は前述したように、ご遺体を外気に晒して朽ちるまで待つため、充分なスペースを必要としたことがあるでしょう。
ただ風葬の歴史ばかりではなく、父方血族で共有する門中墓は入る人も多いです。入る人数が多いお墓は、それだけ広い納骨室を必要とします。
②墓庭がある
沖縄のお墓参りは年中行事ですので、家族・親族が集まり大所帯で参ります。そして沖縄の供養はご先祖様を囲み、共に食事や宴会をすることでおもてなしする風習です。
お墓参りに集まった家族・親族が墓前で宴会ができるよう、墓庭は広く取っています。
また沖縄ではお墓参りの最中に墓前で紙や位牌を焚くこともあるので、広い墓庭が作られてきました。
③屋根がある
風葬の歴史から壁だけではなく、ご遺体を雨嵐から守る屋根が設けられます。屋根の形はさまざまですが、入り口には扉、納骨室の部屋があり屋根がある「あの世の家」です。
また沖縄ではお墓参りに集まった家族・親族が天候の心配なく宴会ができるよう、墓庭に屋根を設けた構造も少なくありません。
④個人墓地
沖縄では現代も個人が墓地を所有し管理する「個人墓地」が残っています。一方、全国的なお墓は一般的に寺院墓地や霊園に建つものばかりです。
寺院墓地や霊園にお墓を建てると墓地区画が限られますが、個人が所有する個人墓地は広い敷地を取ることもできるでしょう。
ただし現代では全国に倣い霊園などにお墓を建てることが推奨され、自治体によっては新しく個人墓地にお墓を建てることが難しくなっています。
⑤コンクリート墓
沖縄ではコンクリートを材質とした「コンクリート墓」も多いです。家のように大きなお墓を建てる際、コンクリート墓だとコストも大幅に削減できます。
また沖縄では人々が住む地域から外れた辺境地にお墓を建てる風習がありました。墓石は運搬が困難なケースも多い一方、コンクリートであれば建てやすいことも一因です。
ただしコンクリートは経年劣化によるヒビや破損も激しく、迷っているならば墓石で建てる方が耐久性は良いでしょう。近年では御影石の価格もかつてよりも低い傾向です。
沖縄にあるお墓の種類
沖縄の古いお墓は浦添市にある世界遺産「玉陵(たまどぅん)」が有名ですよね。玉陵は歴代の琉球王が眠るお墓です。
沖縄のお墓はコンクリート墓が多いとご紹介しましたが、琉球王朝時代のお墓は石灰岩が主な材質でした。
沖縄の特徴的なお墓は中国の影響が強く、福建省にはとても良く似たお墓があります。17世紀後半以降、中国南部から伝承されています。
①亀甲墓(かみーくーばか)
お墓の屋根部分が亀の甲羅の形状をしていることから「亀甲墓」です。「かみーくーばか」「きっこうばか」とも呼ばれます。
「亀の甲羅」に見えるような形状は女性の子宮をデザインしたものです。沖縄では人が亡くなると胎児となり子宮に還る「子宮回帰」「胎内回帰」の考え方が由来しています。
沖縄でも97歳の長寿を祝うカジマヤー(風車祝い)でも、子どもの玩具である風車を配りますよね。88歳で模擬葬を行い一度亡くなった後、97歳で子どもに戻ります。
大きく丸いフォルムはお墓でありながら温かなイメージがあり、移住者にも人気です。また戦時中は防空壕としても利用されました。
②破風墓(はふばか)
代々琉球王朝国王のお墓「玉陵」が破風墓です。
住宅の「風被屋根(はふやね)」を付けたお墓が破風墓ですが、玉陵を代表とする古い沖縄の破風墓は、崖など自然発生的にできた斜面を利用して風被屋根を作っています。
現代の破風墓は小さな家のように横から見ると三角屋根になっている破風墓、一枚の屋根を斜めに乗せた片流れのお墓も多いです。
③屋形墓(やーぐぁーばか)
「屋形墓」は廃藩置県以降、庶民の間で広がった沖縄のお墓で破風墓を真似ています。床と壁・屋根を設けた家のようなお墓ですが、「家墓(いえばか)」とも呼ばれ、破風墓よりも簡易的です。
風被屋根ではなく平ら屋根、全体的にもコンパクトで屋根の高さも低いお墓が多いでしょう。これからご紹介する軸石型の原型でもあります。
④掘り込み墓
1872年明治時代の廃藩置県まで、沖縄では庶民が亀甲羅墓・破風墓・屋形墓のようなお墓を建てることは禁忌です。
そのため崖や斜面から穴を掘り進めたり、洞窟にご遺体を納めて石で埋めるお墓がありました。このような沖縄のお墓が「掘り込み墓」です。遠い始祖・ご先祖様が眠る「按司墓(あじばか)」などで見受けられます。
風葬の歴史を持つ沖縄では、ご遺体が風化するまで納める仮墓としても利用されました。そのため風化する場所「フィンチャー」と呼ばれます。
⑤軸石型
「軸石型」は下部に納骨室・その上に棹石を設けたコンパクトなお墓で、沖縄では霊園に多いです。下部の原型は小さな屋形墓になるでしょう。
沖縄では2000年代以降に民間霊園が登場し、個人墓地から民間霊園へお墓の改葬(引っ越し)が増えました。
地上にご遺骨を納骨する沖縄の風習を世襲しながら、霊園のコンパクトな墓地区画にも対応した沖縄のお墓と全国的な和墓の折衷デザインです。
⑥屋根長型や外柵
沖縄では年中行事で盛大にお墓参りを行います。同じ時期に隣り合わせの複数家族が、お墓参りに来ていることでしょう。そのため沖縄のお墓には、境界性を区切るために外柵を設けたお墓も多いです。
また大勢のスケジュールを調整してお墓参りをするため、天候を気にせず墓前祭ができるよう、屋根が墓庭を覆う「屋根長型」のお墓も多く見受けます。
沖縄に多いお墓の形式
一般庶民は個人でお墓を建てることが禁じられてきました。
庶民がお墓を建てるようになったのは明治以降、琉球王朝が撤廃した1871年廃藩置県の後からです。
近年では民間霊園が沖縄に登場したことにより、個人や血筋を超えた仲間内で建てる形式も増えてきました。
①門中墓
「門中墓(むんちゅうばか)」は、父方血族の門中で共有するお墓です。昔ながらの大きな門中墓では代々嫡男とその嫁など、入る人にしきたりを持つお墓もあります。
けれども現代では父方血族や嫡男継承にこだわらず、兄弟家族や複数の親族で共有するカジュアルな門中墓もあり、入る人の形式・規模の大小もさまざまです。
法的には墓主がお墓に入る人を決めるため、小さい規模ではしきたりが緩い門中墓も増えているでしょう。
③家族墓
沖縄のお墓は門中墓が特徴的ですが、家族が入るお墓「家族墓」も沖縄では琉球王朝時代からありました。首里・那覇を中心として琉球王朝の王族が家族墓を建てています。
前述したように庶民はお墓を建てることを禁止されていたため、現代のように広がったのは明治・大正時代以降です。
④村墓
居住区域の外れに建てた、集落の人々が共有するお墓を「村墓(むらばか)」です。
ただ現代においては村墓ではなく、墓地管理者のいる霊園や寺院墓地の永代供養墓(合祀墓・合葬墓)を利用します。
現代に村墓は「神墓」とも呼ばれ、始祖の眠るお墓としてシーミー(清明祭)の時期に参拝に行く家もあるでしょう。
⑤模合墓
「模合墓(むぇーばか)」は友人・知人で共有するお墓です。沖縄で盛んな「模合(もあい)」は、定期的に会合を催してお金を出し合う制度となります。
沖縄では管理者が墓地を運営する霊園が登場し、家族に代わりご遺骨を墓地管理者が永代に渡り管理・供養をする「永代供養」が注目されるようになりました。
永代供養は墓主を必要としないため、同世代でお墓を建てる模合墓も増えています。
⑤個人墓
同じく個人単位で入るお墓「個人墓」も、霊園と永代供養の登場により、現代の沖縄で注目される形式です。終活により、生前に亡くなったご本人がお墓を建てる「生前墓」にも個人墓は多くあります。
墓主を必要とせず、墓地管理者が家族の代わりにご遺骨の管理や供養を永代に渡り担ってくれるため、世代が同じ個人や夫婦単位で入るお墓も建つようになりました。
沖縄のお墓のしきたり
全国的なお墓ではご遺骨を納める納骨室を「カロート」などと呼びますが、沖縄では「墓室」が一般的です。
地上にある納骨室は観音扉が設けられ、扉を開けると門が設置されています。納骨式ではかがんで入りますが、室内は大人がひとり充分に入る大きさです。
ジーシガーミ(厨子甕)を納める場所は段々になっているお墓の内部が多いでしょう。お墓によって異なりますが約25年・33年で弔い上げとし、合祀することもあります。
※「合祀(ごうし)」とは骨袋や骨壺からご遺骨を取り出して、他のご遺骨と一緒にまとめて埋葬することです。
①葬儀当日の納骨式
沖縄では葬儀当日に納骨式まで済ませる風習があります。
全国的には葬儀の後に火葬場で火葬を済ませ、故人はご遺骨の状態で自宅へ帰りますが、風葬が残っていた頃の沖縄では、火葬の手順を踏まずに納骨式になるためです。
その名残りから現代でも葬儀の後に納骨式まで済ませます。
ちなみに1948年に火葬が義務化されてから、沖縄では午前中に火葬を済ませて、骨壺を前に午後から葬儀を行う「骨葬(こつそう)」が一般的です。
②新人が入る「シルヒラシ」
沖縄のお墓内部には扉を開けてすぐの所に、亡くなって間もない故人が眠る「シルヒラシ」があります。あの世の新人として「門番」の役割を果たすためです。
ただ実際には、ご遺体を風化し白骨化するまでシルヒラシに納め、一度取り出して洗骨を経る「風葬」の歴史が背景にあるでしょう。
③納骨式に参列してはならない人
沖縄では「故人の霊魂が引っ張る」とされ、納骨式に参列できない人がいます。ひとつは故人と同じ干支の人、そしてふたつ目は妊婦さんや、産まれて間もない赤ちゃんです。
胎児や産まれて間もない赤ちゃんは、まだあの世に近い存在とされています。そのため故人に霊魂が引っ張られやすいと考えられてきました。
納骨式に限らず、お墓の扉を開ける時には、参列できない習わしです。ただかつては辺境地にあるお墓も多かったため、妊婦さんや赤ちゃんは事故のリスクもあったのでしょう。
④墓地を守護する「ヒジャイヌガミ(左神)」
沖縄のお墓には左側(お墓に向かって右側)には、墓地を守護する神様「ヒジャイヌガミ(左神)」が鎮座されています。
沖縄ではお墓参りに行くと、まず最初にヒジャイヌガミ(左神)へ祈りを捧げる習わしです。そして日頃の御守護への感謝とともに、本日の目的をご報告し、無事にお墓参りを済ませるよう御守護を祈願します。
⑤遠い始祖のお墓「按司墓」
沖縄の風葬ではご遺体が風化する過程で「人の姿を無くし神様になる」と考えられました。
諸説ありますが、沖縄に根付く祖霊文化で人の霊魂は長い年月を経て「カミ(神)」となります。
この考え方から沖縄の拝み処「御嶽(うたき)」には、もともとお墓だったものも多いです。このような沖縄の古いお墓を「按司墓(アジバカ・アジシーバカ)」「神墓」などと言います。
沖縄のお墓参りのしきたり
沖縄ではむやみにお墓参りをしませんが「三大お墓参り行事」と呼ばれる年中行事では、家族・親族が一同に集まり、盛大にお墓参りをするのがしきたりです。
また亡くなって間もない故人の霊魂は、四十九日を経て成仏するまでお墓と仏壇を行ったり来たりしている不安定な存在とされます。
そして成仏した後もお墓と仏壇は繋がっているとされ、沖縄では月命日など、故人を供養したい時には仏壇に向かい拝んできました。
①沖縄の三大お墓参り行事
沖縄の三大お墓参り行事は、ジュールクニチー(十六日祭)・シーミー(清明祭)・タナバタ(七夕)です。
ジュールクニチー(十六日祭)は毎年旧暦1月16日、旧正月が落ち着いた頃に訪れる「あの世の正月」とされ、沖縄県の離島地域で弔事としてお墓参りをする家が多いでしょう。離島出身の家族は、この日に那覇市三重城から故郷へ繋ぎ拝みます。
シーミー(清明祭)は、毎年二十四節気「清明(せいめい)」の期間に行うお墓参り行事です。按司墓を参る「カミウシーミー(神御清明祭)」も、この時期に行います。シーミー(清明祭)より前に参拝しましょう。
タナバタ(七夕)は毎年旧暦7月7日のお墓参り行事で、ご先祖様へ旧盆のご案内をします。タナバタ(七夕)に行くお墓参りだけは、家族のみの小さい規模です。
タナバタ(七夕)は神の目が届かない「ヒーナシ(日無し)」でもあるので、墓じまいや改葬(お墓の引っ越し)なども、この日を利用します。
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②沖縄のお彼岸
全国的にお彼岸にはお墓参りをしますよね。一方で沖縄のお彼岸は、主に屋敷の神々様へ感謝をする「ヤシチヌウグァン(屋敷の御願)」を行う風習があります。
沖縄でもご先祖様を供養する役割も果たしますが、基本的に仏壇で拝む仏前供養です。
ただし地域によっては春のお彼岸は家のなかで仏前祭を行う「ウチマチヒングァン(内祀り彼岸)」、秋のお彼岸はお墓参りをする「フカマチヒングァン(外祀り彼岸)」とする風習もあります。
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②沖縄でむやみにお墓参りをしない理由
沖縄では年中行事とは関係なくむやみにお墓参りをすると、墓地にいる無縁仏やチガリムン(魑魅魍魎)が参拝者に付いてくると忌まれてきました。付いてはこなくても、周辺のお墓で眠る霊魂が寂しがるとされます。
ただ現実的には風葬をすると、白骨化する過程でご遺体が異臭を放つため、あまり気軽にお墓参りには行けなかったのかもしれません。
ただし現代の沖縄で増えた霊園や納骨堂、室内墓所などは墓地管理者が管理をするため、開園時間(開館時間)であれば、お墓参りができるでしょう。
③沖縄では豚肉を供える
仏教において肉や魚は殺生をイメージさせるとし、法要ではご法度の食材です。お墓参りに持参するお供え物も、豆腐や野菜などを食材とした精進料理ですよね。
けれども独自の御願文化が根付く沖縄では、墓前に海や山の恵みから料理したご馳走「ウサンミ(御三味)」を重箱に詰めてお供えします。
重箱料理のウサンミ(御三味)の定番は豚三枚肉の煮つけです。また魚の天ぷらなども供えますよね。通夜の枕飾りでは、味付けをせずに茹でただけの「シラベーシ」を供えます。
どれもかつての沖縄では、滅多にいただくことのできない「ご馳走」だからです。
④納骨翌日から7日間の「ナーチャミー(七日参り)」
沖縄ではむやみにお墓参りをしませんが、故人が亡くなってからの7日間は、友人や家族・親族が故人を囲んでお墓参りをする風習がありました。この風習が「ナーチャミー(七日参り)」です。
「故人が寂しがるから」などと言われますが、実際にはご遺体を火葬せずにそのまま置く風葬の時代に、時間が経って息を吹き返す「生き戻り」の確認とも言われます。
⑤沖縄独自のお墓参り道具
沖縄でお墓参りに行く持ち物には、本州にはない珍しい道具も多いです。沖縄独自のお墓参り道具で有名な品は、あの世のお金「ウチカビ(打ち紙)」がありますよね。ウチカビ(打ち紙)は墓前で焚いて、煙としてあの世へ送ります。
この他にもウチカビ(打ち紙)を焚く器「カビバーチ(紙鉢)」や沖縄線香「ヒラウコー(平御香)」、ヒジャイヌガミ(左神)への税金「シルカビ(白紙)」などがあるでしょう。
屋外で行う沖縄のお墓参りでは、しばしば道具の持ち歩きが便利なビンシー(瓶子)を必須道具とする家もありますが、ビンシー(瓶子)の歴史は浅いです。無ければお盆やタッパー等で代用します。
現代、沖縄のお墓事情
個人墓地に建つ沖縄のお墓は、現代街中で突然現れることもしばしばです。登記簿上も墓主が墓地を所有するため、墓地管理の責任も生じるでしょう。
さらに現代は相続人全員に一定の相続分が保証される「遺留分」が認められ、お墓を継承しても相続財産に影響を及ぼしません。
このようなことから沖縄ではお墓を継承する人々が激減し、お墓の継承問題が深刻化しています。そのまま放置されたお墓「無縁墓」も増え、予算の問題からお墓の撤去ができず、廃墟と化すお墓があるほどです。
①永代供養とは
そこで現代、沖縄で注目されるようになったサービスが「永代供養」です。
「永代供養(えいたいくよう)」を依頼することで、霊園や納骨堂などの墓地管理者が、家族に代わって永代に渡りご遺骨の管理・供養を担ってくれます。
永代供養を付加したお墓に墓主は必要なく、継承問題が解消されるでしょう。家族は故人を偲びたい時にお墓参りをすれば良いだけです。
ただし永代供養だからと言って、永代に渡りご遺骨が個別に残るとも限りません。契約した一定期間が過ぎると、ご遺骨は永代供養墓などに他のご遺骨と一緒に合祀され、永代に渡り「合同供養」されるシステムがほとんどです。
半永久的にご遺骨を個別に残したいならば更新できるプランや、個別安置期間が25年・50年など、長いプランを選びましょう。
②霊園への引っ越し「改葬」
個人墓地での永代供養はできません。永代供養を利用したいならば墓地管理者がいる霊園・納骨堂・室内墓所などに改葬(お墓の引っ越し)をします。
「改葬(かいそう)」は現存のお墓からご遺骨を取り出し、新しい納骨先へ納骨する流れです。ご遺骨を全て取り出したお墓は撤去され、墓地は更地に戻します。
個人墓地は墓地として売買はできませんが、墓地登録を抹消し用途を変えることで土地売買も可能です。
現代では取り出した遺骨の新しい納骨先を決めることで、納骨先の墓地管理者が現存のお墓についても相談に乗ってくれるでしょう。「改葬プラン」としてパック料金サービスも見受けるので、まずは相談が適切です。
③納骨堂や室内墓所の登場
霊園に新しくお墓を建てるとコストが掛かりますよね。霊園の区画内に納まるコンパクトなお墓でも約100万円前後以上は想定して選びます。
一方で納骨堂は、個別のスペースにご遺骨を収蔵する屋内施設です。墓地を必要とせず、墓石を建てないため格安でご遺骨の供養ができます。永代供養が付いているため墓主も必要とせず、屋内で管理され定期的なメンテナンスも必要ありません。
室内墓所は屋内の家族墓で、多くは納骨堂と同じシステムで提供されます。
このようなメリットから、現代の沖縄ではそもそもお墓を必要としない、納骨堂や室内墓所のニーズが急増しています。継承問題を抱えているお墓を墓じまいし、納骨堂へ改葬するケースも多いでしょう。
④手元供養や自宅墓
「手元供養(てもとくよう)」とは、ご遺骨を自宅や手の届く範囲で保管することです。「自宅墓(じたくばか)」とは、複数のご遺骨を手元供養する方法で、仏壇の下に保管用の棚を設けたタイプが多いでしょう。
沖縄では古い門中墓や先祖代々墓を墓じまいした後、取り出したご遺骨を埋葬せずに自宅で保管する人も増えています。
ご遺骨を洗浄・乾燥してから2mm以下のパウダー状にする「粉骨」サービスが登場し、見た目にも清潔で衛生的に自宅保管が可能です。自宅墓では真空パックにしたご遺骨をブック状の骨箱に納め、並べて保管するスタイルが増えています。
⑤沖縄の海洋散骨
近年の沖縄では、ご遺骨が残らない海洋散骨を選ぶご家族も増えています。「海洋散骨(かいようさんこつ)」とは、粉骨したご遺骨を海に散骨する葬送方法です。「沖縄の美しい海に撒きたい」と、県外からの海洋散骨希望者も多くいます。
法的に海洋散骨はグレーゾーンとも言われ、個人で散骨することもできるでしょう。ただ禁止している自治体もある他、近隣住民とのトラブル事例も見受けられるため、業者に依頼すると安心です。
後々ご遺骨が手元に残らない葬送方法なので、手元供養と併せて検討するご家族も多くいます。
まとめ:沖縄でのお墓の悩みをお聞かせください
古い沖縄のお墓は門中墓も多く、広い敷地に大きな納骨室(墓室)と墓庭を供えた、個人墓地に建つスタイルが一般的です。
けれどもお墓の継承問題が深刻化し無縁墓が急増する現代の沖縄では、県が墓地管理者がいる霊園や寺院墓地を推奨しています。新しくお墓を建てる場合、個人墓地では許可が下りない自治体もあるでしょう。
また現存する沖縄のお墓も、継承者や維持管理問題から墓じまいをして、霊園や寺院墓地へ改葬するケースが増えています。
コンクリート墓は経年劣化も激しく、修理修繕費に悩む墓主もいるでしょう。沖縄でお墓問題を抱えて悩んでいるなら、まずは霊園などにお墓の悩みを相談して、どのような対策があるか知ることが問題解決の第一歩です。