・沖縄のミージュールクニチー(新十六日祭)とは?
・沖縄でミージュールクニチー(新十六日祭)は誰が行う?
・沖縄のミージュールクニチー(新十六日祭)のお供えもの、拝み方は?
沖縄で「ミージュールクニチー(新十六日祭)」とは「あの世の正月」です。
毎年旧暦1月16日が沖縄のミージュールクニチー(新十六日祭)の日で、身内が亡くなって間もない家で執り行われます。
本記事を読むことで、沖縄で行う「ミージュールクニチー(新十六日祭)」とはなにか?行う家や日にち、お供えものや拝み方が分かります。
沖縄の「ミージュールクニチー(新十六日祭)とは?
◇旧暦1月16日に執り行われる「あの世の正月」です
沖縄の「ミージュールクニチー(新十六日祭)」とは「グソー(後生)の正月」と呼ばれ、沖縄言葉でグソー(後生)とは「あの世」、つまり「あの世の正月」となります。
毎年旧暦1月16日、生きる身「イチミ(生身)」が旧暦1月1日からの旧正月を迎え、旧正月の節目「ウイミ(折目」を終えたタイミングです。
暦は己未の仏滅、「仏滅」は何事も凶として避ける人もいますが、仏事に関しては良い日ですので、問題はありません。
ミージュールクニチー(新十六日祭)はどんな家が行うの?
◇身内が亡くなって間もない家で執り行われます
ミージュールクニチー(新十六日祭)の「ミー(新)」は、「ミーサー(新霊)」の「ミー(新)」です。
全国的にも喪中の家は、喪中のご案内ハガキを出して年賀状を控えるなど、正月のお祝いを控えますよね。
●身内が亡くなって間もない家
・喪中の家
・身内が亡くなり3年以内の家
●喪中の家が控える行事
・旧正月
・シーミー(清明祭)
沖縄でも正月のお祝いを控え、ミージュールクニチー(新十六日祭)で、故人とあの世の正月を祝うのが沖縄の風習です。
また毎年4月頃、清明(シーミー)の節気に行う沖縄のお墓参り行事「シーミー(清明祭)」も、お墓参りでありながらお祝い事とされるため、喪中の家では控えます。
その代わりにミージュールクニチー(新十六日祭)に、お墓参りを行うとされ、身内が亡くなって3年まではシーミー(清明祭)を控える地域もあるのです。
ジュールクニチー(十六日祭)との違いは?
◇沖縄のジュールクニチー(十六日祭)は年中行事です
沖縄のミージュールクニチー(新十六日祭)とジュールクニチー(十六日祭)は、いずれもあの世の正月ではありますが、ジュールクニチー(十六日祭)は、主に沖縄の離島地域に根付く、年中行事となります。
沖縄の離島地域ではシーミー(清明祭)の風習がない地域も多いです。
その代わりにお墓参り行事として、毎年ジュールクニチー(十六日祭)があります。
ただ、いずれも供養行事・弔事であることは同じです。
そのためお供えものなども供養行事として、祝いものは控えるでしょう。
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シーミー(清明祭)との違いは?
◇シーミー(清明祭)はお祝いごと、ミージュールクニチー(新十六日祭)は弔事です
シーミー(清明祭)はお墓参り行事でありながら、父方の血族「門中(むんちゅう)」や家族、親族が墓前に一同に会して行う年中行事、お祝いごとの慶事となります。
一方沖縄本島のミージュールクニチー(新十六日祭)は、ミーサー(新霊)を供養する弔事です。
故人が亡くなって初めて迎えるお盆「ミーボン(新盆)」と同じですが、ミーボン(新盆)では法要を執り行う家が多い一方、ミージュールクニチー(新十六日祭)では、僧侶をお呼びする法要は行いません。
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沖縄でミージュールクニチー(新十六日祭)のお墓参り
◇ミージュールクニチー(新十六日祭)の朝にお墓参りを行い、ミーサー(新霊)を自宅までご案内します
喪中に行う沖縄のミージュールクニチー(新十六日祭)はお墓参り行事ではありませんが、朝に家族でお墓参りをすることが習わしです。
通常のお墓参りと同じように、お参り前にお墓掃除をしてご案内します。
①お墓掃除
②ヒジャイガミ(左神)へ拝む
③墓前でご案内をする
「ヒジャイガミ(左神)」とは、沖縄で墓地を守護する神様で、沖縄ではミージュールクニチー(新十六日祭)に限らず、お墓に着いたら最初にご挨拶をする神様です。
全国的な初盆で、白提灯を持ってお墓参りを行い、自宅までご案内する風習がある地域もありますが、これと同じですね。
ヒジャイガミ(左神)への拝み方
◇墓前ではヒジャイガミ(左神)、墓前の2か所で拝みます
お墓に着いたら、まずはお墓を守ってくださっている土地神様である「ヒジャイガミ(左神)」へご挨拶とご報告をします。
ヒジャイガミ(左神)はお墓の向かって右側、左側にいらっしゃいますので、まずヒジャイガミ(左神)へお供えもの「ウサギムン」を供えてください。
①お供えものを供える
●ジューニフンウコー(十二本御香)
・日本線香12本、もしくは4本
・ヒラウコー(平御香)…タヒラ(2枚)
…のいずれか
●ヒジュルウコー(冷たい御香)
・火を灯さないお線香
・シルカビ(白紙)の上に乗せる
(半紙を4つ切り、2つ折りにする)
②ヒジャイガミ(左神)へ拝む
[拝み言葉]
「日ごろのお墓の御守護、感謝しております。本日はジュールクニチーです。
これからお墓の掃除とご案内をいたしますので、なにとぞ無事に、立派に終わりますように。」
③シルカビを焚く
・お供えしたウサク(お酒)を掛ける
※家に持ち帰っても良い。
かつての沖縄ではヒジャイガミ(左神)への拝みの後、神様への税金とされる「シルカビ(白紙)」を、ヒジャイガミ(左神)の御前で焚いてきましたが、近年では火の用心の観点から、自宅へ持ち帰り、お仏壇に供える家が増えています。
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墓前での拝み方
◇墓前ではご案内をするのみです
喪中に行う沖縄のミージュールクニチー(新十六日祭)は、墓前の拝みはご案内だけですので、特別なお供えもの「ウサギムン」は必要ありません。
ミーボン(初盆)と同じく白提灯「ミグィドゥールー(灯篭)」を準備する家もあります。
①ウサギムン(お供えもの)を供える
・供え花
・ウチャトゥ(お茶)
・ミジトゥ(お水)
・ウサク(お酒)
②ウチカビ(打ち紙)を添える
・家長…5枚
・その他の家族…3枚/1人
③お線香を墓前に供える
●ジューニフンウコー(十二本御香)
・日本線香12本、もしくは4本
・ヒラウコー(平御香)…タヒラ(2枚)
…のいずれか
●ヒジュルウコー(冷たい御香)
・火を灯さないお線香
・シルカビ(白紙)の上に乗せる
(半紙を4つ切り、2つ折りにする)
④ご案内
「本日、ジュールクニチーの日を迎えました。お仏壇にお供養の準備を整えていますので、どうぞお越しください。」
⑤ウチカビ(打ち紙)を墓前で焚く
・ウチカビ(打ち紙)を焚く
・供えていたお酒を掛ける
ウチカビ(打ち紙)を焚く時は、火の元には充分に注意をしてください。
ウチカビ(打ち紙)を焚く金属ボウルの容器「カビバーチ(火鉢)」がありますので、そのなかで焚くと良いでしょう。
ウチカビ(打ち紙)を焚くための「ジンクラ(銭蔵)」を備えているお墓もあります。
カビバーチ(火鉢)は、アルミボウルの底に金網を敷いて、水を張るとできますが、火箸と底網がセットになって、ホームセンターなどでも販売しているため、購入しておくと便利でしょう。
ただ最近ではお墓と自宅が遠い家も多いですよね。
このようなお家では門前などで簡単にご案内を済ませても問題はありません。
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沖縄のミージュールクニチー(新十六日祭):お仏前
◇沖縄のミージュールクニチー(新十六日祭)はお仏前にお供えものを広げます
喪中に行う沖縄のミージュールクニチー(新十六日祭)でのお供えものは、沖縄では定番の重箱料理、海の幸・山の幸を揃えたご馳走「ウサンミ(御三味)」です。
シーミー(清明祭)のお墓参り行事のお供えものを弔事用にして、そのままお仏前に広げています。
身内のみで執り行うとされますが、親族がお仏前へ弔問に訪れることも多いため、おもてなしの準備も整えておくと安心です。
①お供えものを供える
②お線香を供える
③家族で拝む
④ウハチケーシ(御初返し)
⑤カビアンジ(紙炙り)
⑥ウサンデー(御下がり)
「ウハチ(お初)」とは、ご馳走に初めて手を付ける「お初もの」です。
それぞれ行い方は下記より詳しく解説します。
①お供えものを供える
◇沖縄でミージュールクニチー(新十六日)は、弔事用の重箱料理を供えます
また、尋ねる側は千円程度の手土産を持ち寄るでしょう。
持ち寄った手土産は、まず、お仏壇に真っ先に供えてください。
手土産の上に人数分(3枚×家族の人数)のウチカビ(打ち紙)を添えます。
[日ごろのウサギムン]
・供え花…2立て
・ウチャトゥ(お茶)…2杯
・ウサク(お酒)…1杯
[重箱料理]
●チュクン(両方)4重
・むち重…2重
・おかず重…2重
[弔事用]
●祝いものは控える
・むち重(もち重)…白もち
・豚三枚肉…皮目は上
・かまぼこ…白のみ
・昆布…返し昆布
・おかず…ごぼう、大根など
※ターンム(田芋)などは控える
●お箸
・複数膳を重箱に乗せる
●ウチカビ(打ち紙)
・人数分、重箱の上に乗せる
[その他]
●ムイグァーシ(お菓子)の盛り合わせ盆
●果物の盛り合わせ盆
ムイグァーシ(お菓子)の盛り合わせも、沖縄では昔ながらのこんぺんや、ロールケーキのような「巻きガーシ(巻き菓子)」、花ボウル、桃ガーシなどがあります。
こちらも供養行事なので赤い色は控えて(桃ガーシなど)、白などの落ち着いた色で揃えましょう。
②お線香を供える
◇お仏壇に供えるお線香は、ジュウニフンウコー(十二本御香)です
沖縄のミージュールクニチー(新十六日祭)で、家長がお仏壇に供えるお線香はジュウニフンウコー(十二本御香)、日本線香で12本となります。
沖縄線香のヒラウコー(平御香)は、イップンウコー(日本線香)が6本くっ付いているので、タヒラ(2枚)です。
その他の家族や弔問客は、それぞれサンブンウコー(三本御香)、日本線香3本分なので、ヒラウコー(平御香)では、半分に割ります。
●ジュウニフンウコー
(十二本御香)
・日本線香…12本(略式4本)
・沖縄線香…タヒラ(2枚)
●サンフンウコー
(三本御香)
・日本線香…3本(略式1本)
・沖縄線香…半ヒラ(1枚を半分に割る)
沖縄ではミージュールクニチー(新十六日祭)に訪れる弔問客は、多くが千円~3千円程度の手土産を持参しますよね。
ミージュールクニチー(新十六日祭)は、僧侶による読経供養こそしないものの供養行事なので、お線香の御進物を準備しても良いでしょう。
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③家族で拝む
◇お仏壇へは家長を中心として、家族で合掌します
お仏壇へ拝む人は家長が一般的です。
また祖父母など、家で最も年齢の高い人が中心となって拝むこともあるでしょう。
お仏壇には、本日がジュールクニチー(十六日祭)の日であること、そしてお供えものを供えていることをお伝えして、皆で合掌します。
「ウートゥートゥ ウヤフジガナシー、
(あな尊き ご先祖様)
今日の善き日に〇年生まれの女のミージュールクニチー(新十六日祭)のお供養をおこなっております。
心を込めたご馳走をお供えし、家族揃って供養をしておりますので、どうぞお受け取りくださいますように。
そして〇年生まれの女をブジに極楽浄土へ通し、成仏させてください。
また、ウグァンブスク(御願不足)は大目に見てくださいまうように。
ウートゥートゥ。
(あな 尊い)」
拝み事「ウグァン(御願)」は、昔ながらの沖縄言葉で拝む「グイス(祝詞)」を唱えるとする人がいますが、沖縄の家庭で行うミージュールクニチー(新十六日祭)であれば、普段の言葉を使い、心を込めて唱えると良いでしょう。
④ウハチを返す
◇供えていた重箱料理のウサンミ(御三味)を重箱の上に置きます
家族で拝みを終えたら、重箱料理のおかず「ウサンミ(御三味)」から、少しずつ取り出し、ひっくり返して重箱の上に乗せてください。
「ウハチ」は「御初」と書き、ご馳走の最初のおかずを供えることです。
「ウハチを返す」ことを、「ウハチケースン(御初を返す)」とも言いますね。
①ウサンミ(御三味)を取り出す
・数品目を取り出す
②ひっくり返す
③重箱の上に乗せる
ウハチを返した後は、「どうぞお受け取りください」「ウキトゥイジュラサー ウタビミスーリー(受け取ってくださいますように)」、「御初をどうぞ」などとお声掛けをします。
⑤カビアンジ(紙炙り)
◇お供えものに添えていたウチカビ(打ち紙)を焚きます
お供えもの「ウサギムン」に供えていたウチカビ(打ち紙)を燃やしてください。
カビバーチ(紙鉢・火鉢)を用意して焚き、火の元には充分注意を払います。
ウチカビ(打ち紙)を焚くことが「カビアンジ(紙炙り)」です。
●ウチカビ(打ち紙)の枚数
・家長…5枚
・その他の家族…3枚/1人
・弔問客…3枚/1人
ウチカビ(打ち紙)を焚き終えたら、供えていたウサク(お酒)を掛け、鎮火したら終わりです。
昔はウハチケーシ(御初返し)で供えたおかずをカビバーチ(火鉢)に入れていましたが、最近は別皿に取り分けて供える家庭が増えました。
またウチカビ(打ち紙)を焚いた後の灰は、ミージュールクニチー(新十六日祭)が全て終わった頃、玄関先の門前でこぼしていましたが、今ではシンクにこぼす家庭も多いでしょう。
⑥ウサンデー(御下がり)
◇お供えしていた重箱料理のウサンミ(御三味)を家族でいただきます
カビアンジ(紙炙り)を終えたら、ウハチケーシ(お初返し)をしたおかずのみを別皿に盛り分け、残りは家族でいただきましょう。
このように、お供えものを下げて家族でいただき、故人やご先祖様と共食することを、沖縄では「ウサンデー(御下がり)」と言います。
ウサンデー(御下がり)は有難いものなので、残さずに全ていただくと良いでしょう。
まとめ:沖縄のミージュールクニチー(新十六日祭)は仏前行事です
沖縄のミージュールクニチー(新十六日)は、身内が亡くなって間もない喪中~3年ほどの家で執り行われるお仏前の供養行事です。
ミージュールクニチー(新十六日)は主に、喪中でなければお墓参り行事「シーミー(清明祭)」を行う習慣を持つ本島地域に根付く風習で、離島地域のジュールクニチー(十六日祭)とは、少し進め方が異なります。
沖縄離島地域に根付くジュールクニチー(十六日祭)は、沖縄本島のシーミー(清明祭)に変わる、お墓参り行事だからです。
沖縄でミージュールクニチー(新十六日祭)やジュールクニチー(十六日祭)には、今も残るさまざまな伝承があります。
知ることでより感慨深く、ジュールクニチー(十六日祭)を迎えることができるのではないでしょうか。
・沖縄のジュールクニチー(十六日祭)に残る、さまざまな伝承とは