・位牌は処分してもいい?
・どこに位牌の処分を相談できる?
・位牌の処分方法や費用の相場は?
供養の対象として日々お世話をする位牌ですから、誰もが処分に悩みますよね。それでも位牌の継承やスペースの問題など、位牌を処分するきっかけはあります。
本記事を読むことで、不安なく位牌を処分し、ムリなく良い形でご先祖様や故人の供養ができるでしょう。後半には位牌の処分方法や相談先、費用の相場まで解説していますので、どうぞ最後までお読みください。
位牌とは?処分はできる?

◇位牌とは、仏教において故人の霊魂が宿る依り代です
仏教において位牌は、天界にいる故人がこの世に降りる時の依り代になります。生きる者は故人をお倫などでお呼びし供養しますが、位牌がなければ故人の霊魂は帰る場所がありません。
<位牌の処分:位牌とは?> | ||
①仏教 | 位牌 | 故人の霊魂が宿る依り代 |
②浄土真宗 | 法名軸・過去帳 | 故人はすぐに成仏する |
③神道 | 霊璽(れいじ) | 故人の御霊が宿る依り代 |
④祖霊信仰(沖縄) | トートーメー | 故人の霊魂が宿る依り代 |
⑤キリスト教 | なし | 故人は天に召される |
⑥無宗教 | 自由 | 故人を偲び弔う |
このようなことから、そもそも位牌がいるか・いらないかについては、信仰する宗旨宗派の教義によります。
ただ日本や沖縄では一般的に家族が亡くなると位牌を仕立て、開眼供養により位牌に故人の霊魂を移します。
そのため位牌の処分はできますが、霊魂の宿る依り代から霊魂を抜く「閉眼供養(魂抜き)」を済ませて物として位牌を処分する流れです。
・開眼供養・閉眼供養とは、いつ行うの?しないとだめ?進め方やお布施、お供え物まで解説
位牌の処分するきっかけとは?

◇位牌を処分するきっかけとして、位牌の交換や取りまとめ、弔い上げ、継承問題などがあります
特に沖縄では沖縄位牌「トートーメー」の継承問題が取り沙汰されていますよね。
沖縄位牌のトートーメーは供養ばかりではなく、先祖代々を祀り、7代目にはカミ(神)として崇拝される、信仰のシンボル、礼拝の対象です。
そのため沖縄位牌トートーメーの処分を恐れる声もありますが、魂を抜いて正しく拝みを行うことで、安心して対処できます。
<位牌を処分するきっかけ> | |
・白木位牌(仮位牌)の処分 | 本位牌へ交換する |
・個人位牌の処分 | 夫婦位牌へ交換する |
・位牌がいっぱい | 繰り出し位牌へ交換する |
・弔い上げ | 本位牌をお焚き上げ |
・継承ができない | 本位牌の永代供養、預かり |
沖縄では位牌立てに位牌札が入りきらないとして、古いご先祖様の位牌札を処分することも多いです。いずれにしても霊魂が宿っていますので、ゴミとして捨てるのではなく、霊魂を抜く相談をしましょう。
白木位牌(仮位牌)の処分
家族が亡くなるとまず、お通夜や葬儀に合わせて仮の位牌である白木位牌を仕立てます。白木位牌は一般的に葬儀社などが準備をしてくれるでしょう。
この白木位牌は四十九日法要を目安に、改めて作られた本位牌へ交換します。本位牌は長く祀ることを前提とし、塗り位牌など丈夫に仕立てられた位牌です。
白木位牌に宿る霊魂を本位牌に移した後、白木位牌は処分されます。
夫婦位牌により、個人位牌を処分
配偶者が亡くなり個人位牌を仕立てていた家で、残された配偶者も亡くなった時に多い判断などです。
子ども達の配慮で、夫婦を2基の個人位牌で祀るのではなく、先に亡くなった配偶者もまとめた夫婦位牌を仕立て直します。
・幅広位牌を購入する
・夫婦の名前を記入する
・先に亡くなった配偶者の霊魂を、夫婦位牌へ移す
・後に亡くなった配偶者の開眼供養
・古い個人位牌を処分する
夫婦共に開眼供養を行うこともあります。「幅広位牌」とは、名前の通り幅が広い位牌で、夫婦など複数の家族の情報を記入できます。
・そもそも位牌とは?本当に必要?お仏壇なし位牌はどうする?位牌の代わりになる仏具は?
位牌をまとめて、処分する
お仏壇に祀る位牌がいっぱいになり、ご先祖様をまとめたい時には、複数の位牌札をひとつにまとめる、繰り出し位牌へ交換します。
沖縄では3柱・5柱・7柱など、複数のご先祖様を位牌立てにまとめる沖縄位牌「トートーメー」もあるでしょう。
ただ沖縄位牌のトートーメーは、位牌札が横に並び大きなスペースが必要だったり、嫡男継承などのトートーメータブーに配慮して、繰り出し位牌を選ぶ家も増えました。
<位牌を処分:位牌をまとめる> | ||
・繰り出し位牌 | 位牌札(10柱ほど) | 重ねて祀る |
・沖縄位牌 | 位牌札(7柱ほど) | 並べて祀る |
・過去帳 | 帳面 | しまう・祀る |
過去帳はもともと、位牌を必要としない浄土真宗で使用される仏具でしたが、今では全国的にご先祖様をまとめるものとして重宝されています。
過去帳は、その家の系譜として歴史が子々孫々まで残る他、引き出しにしまうこともできるし、見台に立てて祀ることも可能です。
沖縄でもタブーの多い沖縄位牌トートーメーに代わり、最もタブーのない自由な供養の形として、過去帳を選ぶ家が増えています。
・過去帳とは?位牌とは?何のために必要なの?位牌との違いや使い方・置き方を詳しく解説
弔い上げによる、位牌の処分
◇「弔い上げ(とむらいあげ)」とは、故人を供養する最後のスーコー(焼香/年忌法要)です
本州での弔い上げは三十三回忌や五十回忌、読経供養により弔い上げを行いますが、地域によって下記のような呼び方もあるでしょう。
・上げ法要(あげほうよう)
・問上げ(といあげ)
・問い切り(といきり)
沖縄では25年忌(25回忌)・33年忌(33回忌)は、ウフスーコー(大焼香)と呼ばれ、弔事としてではなく慶事として執り行う「イワイスーコー(祝いスーコ)」として、いずれかで弔い上げを行う風習があります。
・ウフスーコー(大焼香)
・繰り上げスーコー
ただ近年では、年忌ごとのスーコー(焼香/年忌法要)を済ませて弔い上げを行い、位牌を処分する流れだけではありません。
七年忌(七回忌)などでも、残りのスーコー(焼香/年忌法要)をまとめて執り行い、繰り上げる「繰り上げスーコー」も増えています。
・沖縄の「スーコー」とは?独自の御願文化を持つ沖縄では、どのように故人を供養するの?
位牌の継承ができずに処分
◇家族や親族が亡くなり遺品整理をするなかで、位牌の継承、お世話ができない時に処分します
「遺品整理」とは、故人が暮らしていた家や部屋を整えるなかで、故人が大切にしていたものを整理することです。家族が行う他、現代では?遺品整理業者が請け負うこともあるでしょう。
・位牌の永代供養
・位牌のお焚き上げ
・位牌の預かり
位牌を処分する時は、閉眼供養(魂抜き)により霊魂を外して「物」としますが、継承問題による位牌の処分では、一時的に位牌を寺院や霊園施設に預かってもらう選択もあります。
位牌の処分はどこに相談する?

◇位牌の処分は、仏壇仏具店・葬祭業者・霊園・遺品整理業者などでも可能です
位牌を処分するならば、位牌に宿した霊魂を外す「閉眼供養(魂抜き)」を行うため、寺院や神社、沖縄ではユタさんなどへの相談を考えるでしょう。
・祭祀者(寺院・神社・ユタさん)
・仏壇仏具店
・葬祭業者
・霊園・寺院墓地
・遺品整理業者
けれども現代では祭祀に関わる、仏壇仏具店や葬祭業者などでも受け付けてくれます。その時々で関わる業者に相談してみると便利です。
位牌の処分:祭祀者
◇僧侶や神主、ユタさんなどに依頼して、閉眼供養やお焚き上げを行います
僧侶であれば位牌の処分、神主であれば神道で位牌の代わりとなる霊璽(れいじ)の処分です。沖縄ではしばしば、ユタさんによるヌジファー(抜魂)も見受けます。
主には四十九日法要(神道であれば五十日祭)など、法事を終えた後に行う流れが多いでしょう。
<位牌の処分:祭祀者> | ||
・僧侶 | 寺院 | 約1万円~10万円/1基ほど |
・神主 | 神社 | 約1万円~10万円/1基ほど |
・ユタ | 個人 | 相場なし |
ユタさんの場合は言い値ですので、決まった相場はありませんが、自分達で準備をするならば、僧侶や神主へ包む金額を目安にします。
特定の寺院を信仰する「菩提寺(ぼだいじ)」を持つ家では、菩提寺のご住職にまず相談をして、ご住職に閉眼供養やお焚き上げを依頼してください。
・「檀家制度」とは、「戒名」は必ず必要?菩提寺(檀那寺)との関係性
位牌の処分:仏壇仏具店
◇仏壇仏具店へ位牌の処分を任せる方法です
お仏壇をしまい処分する「仏壇じまい」や、位牌の交換など、仏壇仏具店にお世話になる場合は、そのまま仏壇仏具店で位牌の処分を任せることもできます。
・費用相場…約1万円~3万円/1基ほど
ただ仏壇仏具店では個別の閉眼供養を執り行わないケースが多いです。閉眼供養をする場合は、別に場所を整えると良いでしょう。
閉眼供養は仏壇仏具店で相談することもできますし、自分達で僧侶を依頼し整えることも可能です。
位牌の処分:葬祭業者
◇位牌の処分を受けてくれる葬祭業者も多いです
ただし葬祭業者も仏壇仏具店と同じく、個別の閉眼供養を執り行わず、位牌を預けて処分を託す流れが一般的でしょう。
・費用相場…約1万円~3万円/1基ほど
葬祭業者は四十九日法要や弔い上げなど、法要の後に位牌を処分するにあたり、位牌の処分も依頼することが多いです。
そのため費用面では別途支払いになりますが、相談をすると閉眼供養まで法要と併せて執り行ってくれることもあります。
位牌の処分:霊園や寺院墓地
◇位牌堂など、位牌の永代供養やお預かり、お焚き上げを扱う霊園や寺院墓地も多いです
お墓が建つ霊園や寺院墓地では、位牌の処分の相談ができる施設もあるでしょう。
なかには位牌を合祀供養する「位牌供養塔」や、位牌を個別に安置するスペース「位牌堂」などを併設した施設も見受けます。
<位牌の処分:霊園や寺院墓地> | ||
・位牌堂 | 位牌の預かり | 約10万円~50万円/1基 |
・位牌預かり | 寺院など | 約1万円~3万円/1基 |
・位牌供養塔 | 位牌の永代供養 | 約3万円~10万円/1基 |
・お焚き上げ |
位牌の浄火 | 約1万~3万円/1基 |
位牌堂など、個別スペースで位牌を安置する場合は、個別スペースがある間は年間管理料を必要とする施設が多いです。
一般的には数年経つと他の位牌とともにお焚き上げされ、合祀供養される永代供養の流れになるでしょう。寺院墓地では位牌を預かる「位牌預かり」を受ける寺院もあります。
位牌の処分:遺品整理業者
◇位牌の処分を受け付ける遺品整理業者も多いです
家族が亡くなり遺品整理をするなかで、位牌を引き取れない・継承できない場合には、遺品整理業者が位牌を預かり処分することもあります。
・費用相場…約5千円~1万円/1基ほど
仏壇仏具店や葬祭業者と同じく、遺品整理業者も費用相場は安い傾向ですが、位牌の処分を託すのみです。
閉眼供養を行いたいなら、別に僧侶へ依頼するなど、整える必要があります。当然閉眼供養に関するお布施などの費用も、別途必要です。
位牌を処分する前の、「閉眼供養」とは

◇「閉眼供養(へいげんくよう)」とは、対象物に宿した霊魂を外す儀礼です
故人の霊魂を宿した位牌は、閉眼供養を行うことで霊魂を外し、物になります。
閉眼供養を済ませた位牌は、ゴミとして処分できますが、長年お世話をしてきた位牌ですので、お焚き上げなどにより丁重に処分する家がほとんどです。
・僧侶による読経供養…約3万円~10万円ほど(お布施として)
・ヌジファー(抜魂)…費用相場なし
沖縄の御願文化では、ユタさんや家の家長によるヌジファー(抜魂)の儀礼もありますが、現在ではほとんど見かけません。
・沖縄の四十九日焼香☆白木位牌のヌジファー(抜魂)
沖縄位牌のトートーメーは、「家からむやみに出してはならない」規律を持つ家もあるため、寺院や霊園で永代供養やお焚き上げを依頼するにあたり、家から出すために閉眼供養を行うケースも見受けます。
・開眼供養・閉眼供養とは、いつ行うの?しないとだめ?進め方やお布施、お供え物まで解説
霊魂を宿す位牌は、丁重に処分しましょう

このように位牌の処分はさまざまな方法でできますが、例え閉眼供養をして「物」になっても、礼拝対象である仏具です。丁重に処分します。
霊園や仏壇仏具店、葬祭業者や遺品整理業者など、家族が亡くなるとお世話になる祭祀業者は、経験も豊富で頼れる相談相手となるでしょう。
本記事を参考にして、位牌の処分や扱いに迷った時、また沖縄ではトートーメータブーや継承問題に二の足を踏んだ時など、適切な方法を選び正しい位牌の処分を進めてみてはいかがでしょうか。
・沖縄の法要でお布施を包む。僧侶へ渡す時の準備やマナーとは