・沖縄で秋のお彼岸の過ごし方は?
・沖縄で秋のお彼岸でのお供え物や拝み方は?
・そもそも「お彼岸」とは?春と秋で違うの?
全国的にお彼岸にはお墓参りに行きますが、沖縄のお彼岸は仏壇へ向かって先祖供養を行う「イエウガミ(家拝み)」が一般的ですよね。
ただ沖縄では、秋のお彼岸にお墓参りを行う風習もありました。
また沖縄では彼岸の入り日から、屋敷の神々様へ拝む「屋敷の御願(ヤシチヌウグァン)」も行います。
本記事を読むことで、沖縄で秋のお彼岸のお供え物や拝む場所、過ごし方や拝み方の手順が分かります。
沖縄で秋のお彼岸とは?
◇沖縄では必ずお墓参りに行く訳ではありません
あの世「彼岸」とこの世「此岸」がつながる春と秋のお彼岸は、全国的なお墓参り行事ですが、沖縄では必ずしもお墓参りに行く訳ではないでしょう。
沖縄ではお彼岸と言えば、家を守護する神々様へ感謝を捧げ、今後の御守護を祈願する「屋敷の御願(ヤシチヌウグァン)」を行う時期です。
これはお彼岸が日本古来の民間信仰「太陽信仰」に影響を受けた、日本だけの風習であることも影響しているでしょう。
沖縄ではご先祖様をカミ(神)とする祖霊信仰を主軸とし、御嶽(ウタキ)へ参拝するなど、自然崇拝文化も色濃く残っています。
・沖縄の御嶽(ウタキ)とは?琉球開闢七御嶽を巡る、沖縄のカミウガミ(神拝み)を解説!
①屋敷の御願(ヤシチヌウグァン)
◇沖縄でお彼岸と言えば屋敷の御願(ヤシチヌウグァン)です
沖縄では春と秋のお彼岸の時期に、家を守護する6柱の神々様を巡拝します。
この巡拝行事が「屋敷の御願(ヤシチヌウグァン)」です。
昔ながらの沖縄の平屋では、ヒヌカン(火の神)から始まり仏壇、トイレ、門前など6柱10か所のウガンジュ(拝み処)を巡拝してきました。
沖縄で秋のお彼岸に行う屋敷の御願(ヤシチヌウグァン)について、お供え物や拝み方など、詳しくは後ほど解説します。
②家拝み(イエウガミ)
◇沖縄では一般的に御仏前で先祖供養を行います
シーミー(清明祭)やジュールクニチー(十六日祭)など、決められたお墓参り行事以外は、むやみに墓地に行かない沖縄では、秋のお彼岸も御仏前で行う先祖供養「家拝み(イエウガミ)」で済ませる家がほとんどです。
お彼岸ではお盆と同じくご馳走を御仏前に並べて拝み、あの世のお金「ウチカビ(打ち紙)」を焚いて供養します。
旧盆と同じく親族が集まり、ご馳走を前に賑やかに先祖供養を行う地域もあるでしょう。
家拝み(イエウガミ)について、お供え物や拝み方は後ほど詳しく解説します。
③外拝み(ソトウガミ)
◇沖縄では秋のお彼岸のみお墓参りに行く地域もありました
「むやみにお墓参りに行かない」とされる沖縄ですが、なかには秋のお彼岸に限っては、ごく近しい身内や家族のみでお墓参りに行き、先祖供養を行う家や門中・地域もあります。
ただシーミー(清明祭)のように大所帯でお墓参りをする訳ではなく、身内や家族のみの少人数でお墓参りに行くため、重箱料理などを準備する必要はありません。
沖縄で秋のお彼岸に行われる外拝み(ソトウガミ)についても、後ほど詳しくお伝えしますのでご参考にしてください。
沖縄では春と秋のお彼岸で意味が違う?
◇沖縄でお彼岸のお墓参りは、基本的に秋です
沖縄で秋のお彼岸のみお墓参りを行う理由は、秋のお彼岸はより先祖供養の役割を果たしているとされるためでしょう。
一方で沖縄で春のお彼岸は、春の芽吹きを前に自然に感謝する、森羅万象に感謝する役割もあります。
そのため仏教行事でもあるお彼岸は精進料理が基本ですが、特に春のお彼岸には季節を感じるたけのこご飯や山菜などが、全国的にも行事食とされてきました。
①沖縄で春のお彼岸の意味
◇沖縄で春のお彼岸は「内祀り御願(ウチマチヒングァン)」です
沖縄で春のお彼岸は旧暦の時期を取って「二月彼岸(ニングァチヒングァン)」と呼ばれますが、この他にも「内祀り御願(ウチマチヒングァン)」の言葉があります。
「内祀り御願(ウチマチヒングァン)」とは家(内)に祀って供養する拝み事を指すので、イエウガミ(家拝み)と同じ役割を果たしますね。
春が訪れる伊吹を感じながら、自然や命に感謝をする期間です。
沖縄で行う御仏前での先祖供養の拝み方や手順は、後ほど詳しくお伝えします。
②沖縄で秋のお彼岸の意味
◇沖縄で秋のお彼岸は「フカマチヒングァン(外祀り御願)」です
沖縄では秋のお彼岸がより先祖供養の意味合いが強いとされ、かつては秋のお彼岸に限っては、お墓参りに行く家庭もありました。
けれども近年の沖縄では、秋のお彼岸でもお墓参りをしない家が増えています。
沖縄で春のお彼岸にお墓参りが行われない背景には、翌月となる4月頃がシーミー(清明祭り)の時期となり、お墓参り行事が重なることも背景にあるでしょう。
沖縄で行う秋のお彼岸のお墓参りの手順なども、後ほど詳しく解説しますので、読み進めていただいて、どうぞ参考にしてください。
③門中や地域でも違う風習
◇同じ沖縄でも地域や門中で風習は大きく異なります
沖縄のお彼岸は「イエウガミ(家拝み)」が一般的です。
ただ、そんな沖縄でも秋のお彼岸にはお墓参りをする「フカマチヒングァン(外祀り彼岸)」を行う地域もあるように、沖縄のお彼岸と言っても、違う風習を持つ地域や門中・家も多いです。
例えば、沖縄県で最大規模の門中墓とされる、糸満市の幸地腹門中では、秋のお彼岸に代表者が家族・親族のお線香を預かり、家族分のお墓参りをした後で、自宅へ帰りイエウガミ(家拝み)を行います。
この他、沖縄の大きな門中墓では、秋のお彼岸に仮墓である「シルヒラシ」から、本墓へ遺骨を引っ越す「改葬(かいそう)」を行う風習もあるでしょう。
沖縄の秋のお彼岸:屋敷の御願(ヤシチヌウグァン)
◇家を掃除して屋敷を守護する神々様へ感謝をします
沖縄ではお彼岸の入りから屋敷の御願(ヤシチヌウグァン)を行う家が多いです。
屋敷の御願(ヤシチヌウグァン)は家に結界を張り、家を守護する神々様6柱・10か所それぞれを巡拝して、それぞれに感謝を捧げる拝み事となります。
屋敷の御願(ヤシチヌウグァン)は、下記の流れで巡拝する流れです。
ユンシヌカミ(四隅)の神は東西南北の神様を巡るので10か所を巡拝します。
・ヒヌカン(火の神)
・仏壇(祖霊)
・ユンシヌカミ(四隅の神)
・ジョウヌカミ(門の神)
・フールヌカミ(トイレの神)
・ナカジンヌカミ(中陣の神)
仏壇(祖霊)以降の屋敷の神々は同じお供え物で巡拝できますが、ヒヌカン(火の神)は別にお供えをして拝みます。
供えるお供え物の数など、整え方も異なりますので注意をしてください。
そのため屋敷の御願(ヤシチヌウグァン)を行う前には、家を清浄な状態にするため大掃除を行うでしょう。
①ヒヌカンへのお供え物
◇屋敷の御願(ヤシチヌウグァン)のお供え物は「お米」です
沖縄で秋のお彼岸に行う屋敷の御願(ヤシチヌウグァン)では、神様へのお供え物として、お米やウチャヌク、お酒(ウサク)を供えます。
沖縄ではこの、神々様へ供えるお米を「ハナグミ(花米)」「乾米(カラミハナ)」などと呼び、清浄で表裏のない拝みの心を表すお供え物です。
・ウチャヌク(お茶の子)…3組
・シルカビ(白紙)
・ナイムン(果物)の盛り合わせ
・ウサク(お酒)
・ハナグミ(花米)…2皿
・アライグミ(洗い米)…1皿
「ウチャヌク(お茶の子)」は、白もちを3個積み上げたもので、全国的なもち米をついたおもちではなく、もち粉から水で溶いて作った白もちが沖縄では主流です。
最近では沖縄のお菓子「ターナファンクルー」を3個、積み重ねたウチャヌクもあります。
②ヒヌカンへのお線香
◇ヒヌカンへは「ジュウゴフンウコー(十五本御香)」です
沖縄のお彼岸期間に行う屋敷の御願(ヤシチヌウグァン)で、一番に供えるヒヌカンへのお線香の本数は「ジュウゴフンウコー(十五本御香)」、日本線香15本分となります。
十五本御香は沖縄線香「ヒラウコー(平御香)」では、2枚半を表す「タヒラ半」です。
日本線香で供えるならば15本となりますが、簡易的な数字として5本でも問題ありません。
③仏壇へのお供え物
◇仏壇にはシルカビ(白紙)を添えません
ヒヌカン(火の神)に続いて、仏壇のご先祖様である祖霊神へ拝みますが、家によっては故人の魂として、仏壇をヤシチヌウグァン(屋敷の御願)に入れないこともあるでしょう。
・ウチャヌク(お茶の子)…2組
・ナイムン(果物)の盛り合わせ
・ウサク(お酒)
・ハナグミ(花米)…2皿
仏壇はかつて生きていたご先祖様なので、神様へ供えるシルカビ(白紙)は添えず、お米を供えない家もありますが、今回は洗っていないハナグミ(花米)を供える地域を参考にご紹介をします。
④仏壇へのお線香
◇ヒヌカンへは「ジュウニフンウコー(十二本御香)」です
沖縄のお彼岸期間に行う屋敷の御願(ヤシチヌウグァン)ですが、仏壇へ供える本数は通常通りの「ジュウニフンウコー(十二本御香)」、日本線香12本分です。
十二本御香は沖縄線香「ヒラウコー(平御香)」では、2枚を表す「タヒラ」、日本線香で供えるならば12本、簡易的な数字では4本となります。
⑤屋敷の神々様へのお供え物
◇屋敷の神々様には、同じお供え物を持参し巡拝しても問題はありません
ヒヌカンへの拝みを捧げた後、仏壇からナカジンヌカミ(中陣の神)までの5柱9か所の神々様は、同じお供え物を携えて巡拝をします。
・ウチャヌク(お茶の子)…2組
・シルカビ(白紙)
・ナイムン(果物)の盛り合わせ
・ウサク(お酒)
・ハナグミ(花米)…2皿
・アライグミ(洗い米)…1皿
屋敷の御願(ヤシチヌウグァン)は家の敷地内ながらも、敷地内の四隅など、屋外まで出て巡拝する儀礼なので、お供え物を持ち運びやすいビンシー(瓶子)にまとめても良いでしょう。
⑥屋敷の神々様へのお線香
◇屋敷の神々へは「ジュウニフンウコー(十二本御香)」です
ヒヌカンへの拝みの後、屋敷の神々様へ供えるお線香の本数は「ジュウニフンウコー(十二本御香)」、日本線香で12本分を意味します。
十二本御香は沖縄線香「ヒラウコー(平御香)」では、2枚を表す「タヒラ」、日本線香で供えるならば12本となりますが、簡易的な数字として4本でも問題ありません。
昔ながらの屋敷の御願(ヤシチヌウグァン)では、あたりの土を盛り土にして、そこにお線香を乗せて供えてきましたが、現代ではコンクリートも多いですよね。
家と家の間も狭いため火の用心の観点から、火を灯さず供える「ヒジュルウコー(冷たい線香)」を用いる家庭も多いです。
⑦ビンシー(瓶子)は使う?
◇必ずしもビンシー(瓶子)に納める必要はありません
沖縄ではビンシー(瓶子)の表に家紋を描き「あの世の実印」とする考え方もありますが、実は琉球王朝時代にビンシー(瓶子)の風習はなかったようです。
近代になって民衆から生まれたビンシー(瓶子)文化ですので、ビンシー(瓶子)があれば便利ではあるものの、必ずしもビンシー(瓶子)にお供え物を整える必要はありません。
ビンシー(瓶子)がない家では、お盆にまとめたり、タッパーなどに納めても構いません。
ビンシー(瓶子)について、詳しくは下記コラムで解説しています。
・沖縄のビンシー(瓶子)とは?神様へ供えるミハナ(御花)、クバンチンとは?詳しく解説
屋敷の御願(ヤシチヌウグァン)で供えるお米
◇沖縄では神々様へお米を供える風習があります
古くから大地から育つお米や稲は、八百万の神々様が作った賜りものと考えられ、先祖代々からの命をつなぎ、より深い絆を深める役割を持つ、神々様への献上物とされてきました。
申し分なくお米を授かり、このように家族が生きていることを神様へ報告し、感謝を捧げるためにお米を供えます。
①「ハナグミ(花米)」
◇「ハナグミ(花米)」は、そのままのお米です
「ハナグミ(花米)」は、「乾御米(カラミハナ)」とも呼ばれ、まだ炊いていないお米を神様のお食事「神饌(しんせん)」として、そのまま供えます。
神様のお食事はハナグミ(花米)が主食ですが、この他ウサク(お酒)やマース(お塩)、ミジトゥ(お水)、おもちなどがありますよね。
他の神々様への拝み事ではお酒を供えることも多いですが、屋敷の御願(ヤシチヌウグァン)ではお米「ハナグミ(花米)」のみで問題はありません。
②「アライグミ(洗い米)」
◇「アライグミ(洗い米)」はお米を7回すすいだお米です
一方「アライグミ(洗い米)」は「洗御花(アライミハナ)」とも呼ばれる、水で7回すすいだお米を指します。
縁起の良い陽数である奇数、なかでも沖縄では貴重な数字とされる7回、水ですすぐことで、禊(みそぎ)を祓い供えるとされてきました。
またお米を育てるにあたり、肥料に動物の糞尿なども使用するため穢れたものと考え、7回すすいで乾かし供えてきたともされます。
沖縄のお彼岸で屋敷の御願(ヤシチヌウグァン)を行う時には、お盆やビンシーの手前側に、左右1対で整えて、中央に洗い米(洗い米)を配置すると良いでしょう。
③地域で違う「洗い米」の扱い
◇洗い米(アライミハナ)は、先祖供養にのみ供える地域もあります
ただ水で7回すすいで「禊(みそぎ)」を落とした「アライグミ(洗い米)」の捉え方は、そもそも神様は禊(みそぎ)を落とす必要がないことから、地域によって捉え方が大きく異なる点には注意が必要です。
神々様へ洗い米(アライミハナ)を供えない考え方がある地域では、洗い米(アライミハナ)の代わりにマース(お塩)や、十円玉3枚を供える「クバンチン」の風習があります。
・沖縄のビンシー(瓶子)とは?神様へ供えるミハナ(御花)、クバンチンとは?詳しく解説
沖縄では秋のお彼岸のみお墓参りをする?
◇かつての沖縄では秋のお彼岸にお墓参りをする地域もありました
沖縄では一般的に春・秋のお彼岸に限らず、彼岸の入りから屋敷の御願(ヤシチヌウグァン)を行い、お墓参りをせずに御仏前での先祖供養が多いです。
けれども一部地域の沖縄では、秋のお彼岸は「外祀り彼岸(フカマチヒングァン)」と言って、お墓参りを行う家がありました。
対して、家で先祖供養を行う春のお彼岸を「内祀り彼岸(ウチマチヒングァン)」と呼ぶ家や地域もありました。
このような風習があった場合、屋敷の御願(ヤシチヌウグァン)も、秋のお彼岸には行わず、春のお彼岸のみとする地域や家もあります。
また春と秋のお彼岸で、屋敷の御願(ヤシチヌウグァン)で巡拝する順番が変わる地域もあり、取り分け四隅の神(ユンスミヌカミ)への巡拝の順番が変わる地域も多いです。
下記では、このような地域で見受ける、四隅の神(ユンスミヌカミ)へ巡拝する順番の違いを解説します。
①春のお彼岸
屋敷の御願(ヤシチヌウグァン)で四隅の神(ユンスミヌカミ)の廻り方が違う地域では、春のお彼岸では北を起点として右回りに廻る家が多いです。
そのため廻り方としては、ニヌファヌカミ(北の神)→ウヌファヌカミ(東の神)→ンマムファヌカミ(南の神)→トゥヌファヌカミ(西の神)の順番で拝みます。
②秋のお彼岸
屋敷の御願(ヤシチヌウグァン)で四隅の神(ユンスミヌカミ)の廻り方が違う地域では、秋のお彼岸になると、北を起点として左回りに転じます。
そのため廻り方としては、ニヌファヌカミ(北の神)→トゥヌファヌカミ(西の神)→ンマムファヌカミ(南の神)→ウヌファヌカミ(東の神)と、反対廻りになるでしょう。
ユンシヌカミ(四隅の神)は、家の敷地内の東西南北の端に鎮座されています。
ユンシヌカミ(四隅の神)や拝み方について、詳しくは下記コラムも併せてご参照ください。
・【沖縄の春彼岸】屋敷の御願の拝み方(3)ユンシヌカミ(四隅の神)への拝み【図解】沖縄のお彼岸で行う屋敷の御願(3)ユンシヌカミ(四隅の神)拝み処とお供え物
今の沖縄でお彼岸に行う、屋敷の御願(ヤシチヌウグァン)
◇今の沖縄では一か所のみの拝みも増えました
マンションなど集合住宅が増えた現代の沖縄では、間取りも昔の平屋とは違うため、全ての屋敷の神々様を巡拝するのは難しい家庭も多いですよね。
また忙しい現代において屋敷の御願(ヤシチヌウグァン)に充分な時間を取ることは難しいため、力の大きな神様や、屋敷の神々様をつなげる神様、1か所のみを拝むケースが増えています。
沖縄で屋敷の神様をまとめる存在はナカジンヌカミ(中陣の神)とされますが、ナカジンヌカミ(中陣の神)は玄関と門の間に鎮座されますよね。
そのため庭のない現代のマンションやアパートでは、「ナカジンヌカミ(中陣の神)への拝み処が見つからない」などの声も多いです。
そのため今の沖縄では、主に下記3つの神様への拝みとする家が多い傾向にあります。
①ヒヌカン(火の神)
◇ヒヌカン(火の神)は神々様をつなぎます
「ヒヌカン(火の神)」は沖縄で昔から、台所に祀られる神様です。
主に台所に立つ家族、かつては女性がお世話を担い、他の家族は触れることを控えられた存在でした。
このヒヌカンは神々様へのネットワークとしての役割を果たし、屋敷の神々はもちろんのこと、遠くの御嶽(ウタキ)の神様へ拝む「遥拝所(ようはいじょ)」にもなってくれます。
ただしヒヌカンは台所に祭壇を仕立てて、日ごろから拝む神様でもあるので、ヒヌカンを通すならば、仕立て祀る必要があるでしょう。
・【沖縄のヒヌカン】ヒヌカンを遠くの御嶽(うたき)と繋ぐ方法☆遥拝所としての役割とは
・【沖縄のヒヌカン】ヒヌカンの始め方。親から引き継ぐ、一から仕立てる2つの方法を解説
②祖霊神・カミ(神)
◇お仏壇に拝み、神々様へつないでいただきます
沖縄でお仏壇の中心に祀られているのはご先祖様ですよね。
ご先祖様は亡くなってから7代を過ぎると、家や一族を守護する存在「カミ(神)」となります。
祖霊信仰が根付く沖縄において「カミ(神)」の存在は絶大なので、お仏壇に拝みを捧げて屋敷の神々様へつないでいただく方法です。
沖縄のお彼岸では御仏前で先祖供養を行いますが、こちらは故人としての供養となり、家の守護神・祖霊神である「カミ(神)」への拝みとは異なるものと言えます。
③フールヌカミ(豚便所の神)
◇フールヌカミ(トイレの神様)はパワーの強い神様です
家のなかで最も不浄の象徴でもあるトイレの邪気を吹き飛ばす、トイレの神様「フールヌカミ(豚便所の神)」は、屋敷の神々様のなかでも、最も力がある神様とされてきました。
例えば悪口や噂話など、特に外部から訪れる厄災や攻撃を跳ね付けてくれます。
日頃の拝み事でヒヌカンを仕立てていない家では、悩み事が起きた時にフールヌカミ(豚便所の神)へ拝むと良い、とも言われてきました。
④トゥパシラヌカミ(戸柱の神)
◇トゥパシラヌカミ(戸柱の神)は家の大黒柱です
家の大黒柱とされる「戸柱の神(トゥパシラヌカミ)」は、家を支える柱に鎮座される神様ですが、マンションやアパートなどでは玄関に鎮座されると言われます。
沖縄の屋敷の御願(ヤシチヌウグァン)で一か所のみ拝む場合、なかでもトゥパシラヌカミ(戸柱の神)を選ぶ家は多いでしょう。
玄関の扉を開けて、玄関から外へ向かってお供え物を供え拝みます。
トゥパシラヌカミ(戸柱の神)へのお供え物や拝み方について、詳しくは下記コラムも併せてご参照ください。
・沖縄のお彼岸で家に拝む「ヤシチヌウグァン(屋敷の御願)」|マンションでの拝み方は?
そもそも「お彼岸」とは?
◇「お彼岸」は、あの世(彼岸)とこの世(此岸)が最も近くなる日です
全国的にも沖縄でも、お彼岸は春と秋の2回ありますよね。
春分の日・秋分の日を中心に前後3日、合計7日間がお彼岸なので、毎年日程が異なります。
そのためお彼岸行事は毎年決まった暦ではありません。
ちなみに「彼岸の入り」はお彼岸が始まった日、「彼岸明け」は最終日です。
①春分の日・秋分の日
◇春分・秋分の日を中心として、前後3日間の7日間です
お彼岸の中心にあたる春分の日・秋分の日は、太陽の自転がそれぞれ春分点・秋分点に達した日となり、この日を境に季節が変わります。
春分の日・秋分の日は、赤道に太陽が到達する日、太陽の移動線である「横道」と赤道が交差する地点です。
そのため太陽の出入りが一直線(180℃)になる日でもあり、太陽は真東から真西に向かって一直線に沈みます。
春分の日であれば、この日を境にだんだんと暑くなり、秋分の日なら、この日を境にだんだんと寒くなる、温かい季節と寒い季節の境界線です。
②あの世とこの世がつながる
◇春分・秋分の日は、昼と夜の時間帯が半々になります
太陽の動きが直線(180度)になる春分・秋分の日は、あの世(彼岸)とされる夜の時間と、この世(此岸)とされる昼の時間が同じ、半々になる日です。
昼と夜の時間も同じくらいになり、太陽の動きも直線になること、特に沖縄では、人が亡くなると行く遥か西方の西方浄土「ニライカナイ(西方彼方)」へ近づきます。
このような考え方から、お彼岸はあの世(彼岸)とこの世(此岸)が、1年で最も近づく日と信じられてきました。
③春分・秋分の日はどうやって決まる?
◇春分・秋分の日は国立天文台で発表されます
沖縄でも全国でもお彼岸日程が毎年変わるのは、国立天文台が発表するためです。
国立天文台では毎年2月1日に、翌年の春分・秋分の日を記載した「暦要項(れきようこう) 」を発表します。
そのためお彼岸は沖縄の旧暦行事ではなく全国的な行事ですが、毎年少しずつ日程が異なりますので注意をしてください。
沖縄で秋のお彼岸:家拝み(イエウガミ)
◇沖縄で秋のお彼岸は家拝み(イエウガミ)が一般的です
このように沖縄で秋のお彼岸にはお墓参りに行く家もありますが、基本的には御仏前で先祖供養を行う、「家拝み(イエウガミ)」が一般的でしょう。
お彼岸に先祖供養を行う朝は、まずヒヌカンへ拝みを捧げて、ブジに拝み事を済ませるよう祈願しながら、午後や夕方頃から御仏前へご馳走を供え先祖供養を行う家が多いです。
家族や親族が訪れて賑やかに進める家もあるでしょう。
下記より沖縄で秋のお彼岸に行う家拝み(イエウガミ)を、手順を追って解説します。
それぞれお供え物や拝み方など、詳しくは後ほど詳しく解説しますので、どうぞ最後までお読みください。
①ヒヌカン(火の神)へ拝む
沖縄でお彼岸に先祖供養を行う朝は、ヒヌカンへウサク(お酒)・ミジティー(お水)・マース(お塩)・ウチャワキ(お茶脇)のおかずを供えて、ご報告の拝みをします。
ヒヌカンは主にお世話をする家族のみ、触れることができるともされるため、日ごろからお世話をしている家族が拝みを担うと良いでしょう。
②お供え物を並べる
沖縄でお彼岸のお供え物は重箱に詰めた重箱料理のご馳走「ウサンミ(御三味)」ではありますが、近年では運動会などで作る行楽弁当のようなご馳走も多いです。
お供え物のご馳走は、豚の三枚肉の煮つけやこんにゃく、魚の天ぷらなどがありますが、奇数品目とされ、賽の目のようにキッチリと分ける詰め方が良いとされます。
お供え物は「ウハチケーシ(お初返し)」と言って、重箱の上に乗せたり、別皿に取り分けて供えて残りは家族でいただくので、家族が喜ぶご馳走で良いでしょう。
「ウハチケーシ(お初返し)」について、詳しくは後ほどお伝えします。
・沖縄の旧盆で供える重箱料理、定番おかずの作り方☆豚三枚肉の煮付けや昆布の結び方は?
③お線香を上げて拝む
◇家長を中心にしてお線香を供えて拝みます
お線香の本数は日本線香12本分を表す「ジュウニフンウコー(十二本御香)」です。
最初は家長がジュウニフンウコー(十二本御香)を供えて拝み、集まった家族は家長に付いて手を合わせます。
家長は本日、お彼岸の拝みを捧げていること、いつも御守護いただいていることへの感謝を伝えて、家族でウートゥートゥーしてください。
家族での拝みを終えたら、集まった家族が1人ずつ、日本線香3本分「サンブンウコー(三本御香)」を順番に供えて拝みます。
お線香の上げ方・拝み方など詳しくは後ほど解説します。
④ウサンデーをする
◇お供え物を下げて、家族でいただきます
御仏前に供えたお供え物は、暫くしたら仏壇から下げて、家族でご先祖様を囲みながら共食しましょう。
ご先祖様は家族と一緒に楽しく食事をいただくので、とても喜びます。
仏壇に取り分けて供えたウハチ(お初)は、これからウチカビ(打ち紙)を焚いた後、ウチカビ(打ち紙)を焚く容器「カビバーチ(紙鉢)」に入れると良いでしょう。
⑤ウチカビ(打ち紙)を焚く
◇御仏前でウチカビ(打ち紙)を焚きます
「ウチカビ(打ち紙)」は沖縄であの世のお金とされ、故人があの世で使うお金です。
ウチカビ(打ち紙)は沖縄のスーパーなどでも販売しているでしょう。
旧盆やお彼岸などの先祖供養では、火の元の安全のために「カビバーチ(紙鉢)」のなかでウチカビを焚くため、沖縄では秋のお彼岸を迎える前に準備をします。
アルミボウルに水を張り、ネギなど魔除けになるものを浮かべることでカビバーチ(紙鉢)になりますが、沖縄ではホームセンターなどで、アルミボウルに底の金網や火箸もセットにした「カビバーチセット」などが販売されていて便利です。
家族で焚くウチカビ(打ち紙)の枚数や、焚き方など、詳しくは後ほど解説します。
・旧盆で焚くウチカビとは?沖縄線香ヒラウコー、神様へ供えるシルカビの作り方も解説!
沖縄で秋のお彼岸:ヒヌカンへ拝む
◇朝一番に、主に台所を担う家族がヒヌカンへ拝みます
沖縄では秋のお彼岸の朝、台所を担う家族が最初にお供え物をしてお線香を上げ、今日がお彼岸の日であることをご報告します。
「これからお彼岸を行いますので、ブジにご先祖様へ届きますように。」
また沖縄では家によって、お彼岸に屋敷の御願(ヤシチヌウグァン)を行います。
屋敷の御願(ヤシチヌウグァン)を行う場合は、屋敷を守護する神々様へ供える盆を用意しましょう。
①秋のお彼岸、ヒヌカンへのお供え物
◇いつものお供え物、そしてウハチ(お初)を供えます
ヒヌカンを祀っている家では日常的に供えているお供え物が基本です。
ヒヌカンへ日常的に供えるお供え物は、ウサク(酒)・ミジトゥ(水)・マース(塩)・チャーギなどの供え葉となります。
そして御仏前に供える重箱料理のご馳走の数品をお皿に盛り、添えましょう。
神様へのお供え物ですから、ご先祖様のお供え物のようなお箸を添える必要はありません。
②ヒヌカンへ秋彼岸のお線香
◇ヒヌカンへのお線香はジュウゴフンウコー(十五本御香)です
基本的にヒヌカンへ供えるお線香は、ジュウゴフンウコー(十五本御香)を供えます。
屋敷の御願(ヤシチヌウグァン)を行う家でも、すぐに秋のお彼岸の先祖供養を行う家でも、ヒヌカンへ供えるお線香の本数は同じです。
「ジュウゴフンウコー(十五本御香)」は日本線香15本分を指しますが、簡易的に5本の日本線香でも問題はありません。
沖縄線香ヒラウコー(平御香)であれば「タヒラ半」の2枚半です。
沖縄で秋のお彼岸②お仏壇への拝む
◇仏壇には重箱料理を供えます
沖縄で秋のお彼岸のお供え物は重箱料理に詰めたご馳走「ウサンミ(御三味)」です。
ただ近年では核家族化の傾向もあり、小さな重箱に整えたり、ご馳走をお皿に盛り付けて供えるだけの家庭もあります。
お供え物の他、集まった家族分のウチカビ(打ち紙)や、ウチカビ(打ち紙)を焚くアルミボウルの容器「カビバーチ(紙鉢)」、お線香も充分な本数を用意しましょう。
仏壇へ基本のお供え物
◇基本のお供え物に、お彼岸の御膳を供えます
仏壇のある家で常日頃から供えている基本のお供え物を供えた後、秋のお彼岸の御膳、果物の盛り合わせなどを準備します。
基本のお供え物は、左右一対2組の供え花・ウチャトゥ(お茶)、そして中央に一杯のウサク(お酒)です。
仏壇へ沖縄で秋のお彼岸のお供え物
◇お菓子の盛り合わせ、果物の盛り合わせを左右に供えます
そこに沖縄で秋のお彼岸の日は、ムィグワーシ(お菓子)を盛り合わせた盆と、ナイムン(果物)を盛り合わせた盆を左右に供えます。
沖縄の先祖供養行事でナイムン(果物)は何でも良いのですが、子孫繁栄を表すみかん・母親を表すりんご・父親を表すバナナが多く選ばれるでしょう。
仏壇へ沖縄で秋のお彼岸の御膳
◇おかず皿とダーグ(団子)を乗せたお皿を御膳にします
かつて沖縄で秋のお彼岸は、重箱料理のウサンミ(御三味)を供えました。
本家には家族の他、親族も集まって先祖供養をしたため、重箱料理も大きなチュクン(4段)、おもち重2段+おかず重2段でしたので、準備もそれだけ時間が掛かります。
けれども、いつしかカタシー(2段)の、おもち重1段+おかず重1段に変わり、最近では重箱に詰めない家が増えました。
三枚肉の煮つけや魚の天ぷらなど、ご馳走のウサンミ(御三味)のみを、お皿に盛り付けて供える家が多いです。
またご先祖様へ供える御前には、祀っているご先祖様の人数分だけお箸を添えましょう。
例えば、故人一柱であれば一膳を、複数であれば複数のお箸を添えてください。
お供え物にウチカビを乗せる
◇お供え物にはウチカビ(打ち紙)を乗せます
供えた重箱料理や御膳に乗せ、最後に乗せておいたウチカビ(打ち紙)を焚く流れです。
家長が添えるウチカビ(打ち紙)は5枚、集まった家族や親族がお供え物に乗せるウチカビ(打ち紙)は3枚を添えます。
いただいたお供え物などは、家長が供えてウチカビ(打ち紙)を乗せると良いでしょう。
家族以外に集まった親族が、持ってきたお供え物にウチカビ(打ち紙)を乗せる場合、「〇〇(住所)から来た〇〇(干支)の〇〇(性別)、〇〇(氏名)からのお供え物です。」
など、ご先祖様がどこからのお供え物か分かるよう、伝えると良いでしょう。
ウハチ(お初)を抜く
◇「ウハチ(お初)」とは最初に差しだすご馳走です
「ウハチ(お初)」とは最初にいただくご馳走で、「ウハチ(お初)を抜く」とは沖縄の言葉で「ウハチケーシ(お初返し)」とも言い、重箱料理のおかずをひっくり返すことを言います。
重箱料理からおかずを取り出してひっくり返し、重箱の上に乗せるお供えの仕方が昔ながらの方法ですが、最近ではお皿に取り分けて御仏前に供え、残りは家族でいただく方法も増えました。
最初にお皿に取り分けることで、家族もすぐにご馳走を楽しむことができて実用的です。
仏壇へ沖縄で秋のお彼岸のお線香
◇御仏前に供えるお線香はジュウニフンウコー(十二本御香)です
沖縄で秋のお彼岸に仏壇「御仏前」に供えるお線香は「ジュウニフンウコー(十二本御香)」、日本線香12本・もしくは4本、沖縄線香「ヒラウコー(平御香)」はタヒラの2枚を供えます。
かつての沖縄では沖縄線香ヒラウコー(平御香)が一般的でしたが、近年では仏壇がコンパクトになったこと、そして日本線香の金額が安価になってきたことから、香りを楽しむことができる日本線香を供える家庭も増えました。
マンションなどのリビングに置く、コンパクトなお仏壇での新しい先祖供養の風習については、後ほど詳しく解説しますので、どうぞ最後までお読みください。
沖縄で秋のお彼岸③集まった人々が拝む
◇家長による先祖供養を終えたら、続いて家族・親族が拝みます
沖縄で秋のお彼岸では、まず家長を中心として、集まった家族・親族のみんなで先祖供養の拝みを終えた後、個々が順番にお線香を供えて拝む順番です。
しっかりと順番に個々がお線香を供えてウートゥートゥーと拝んでから、みんなでお供え物をウサンデーして宴に入る家庭もありますし、他の家族は早速、宴を楽しむなかで、順番に拝むこともあります。
集まった人々が供えるお線香
◇順番にサンブンウコー(三本御香)を供えて拝みます
集まった家族や親族が供えるお線香は「サンブンウコー(三本御香)」です。
日本線香であれば3本・もしくは1本、沖縄線香ヒラウコー(平御香)はお線香を縦半分に割った3本分にあたる半ヒラを供えます。
お供え物をいただいたら、家長や家族が代わりにお線香を供えてあげましょう。
「〇〇から〇〇をいただきましたよ」と、ご先祖様へご報告します。
ウチカビ(打ち紙)を焚く
◇宴の終了間近にウチカビ(打ち紙)を焚きます
お供え物をウサンデーして宴が終盤を迎えたら、御仏前でウチカビ(打ち紙)を焚き、煙を通してあの世へ「あの世のお金」を贈ります。
家内でウチカビ(打ち紙)を焚くため、前述したようにカビバーチ(紙鉢)のなかで、家族が囲みながら焚きましょう。
それぞれのウチカビ(打ち紙)を焚いた後は、供えていたウサク(お酒)をかけて、ウサク(お酒)も天国へ届けるとともに、火の元をしっかりと消しながら、火の用心をします。
なかには御仏前に供えていたウハチ(お初)を、さらにカビバーチ(紙鉢)に入れる家庭もあるでしょう。
かつての沖縄では、焚き終えたカビバーチ(紙鉢)の中身を門前に捨てていましたが、現代の家庭では難しいため、ゴミとして捨てる判断が多いです。
沖縄の秋彼岸:現代のお線香
◇お線香の本数が香炉の大きさに合わせて少なくなっています
本来、沖縄で御仏前にお線香をあげる本数は、家長が日本線香12本分「ジュウニフンウコー(十二本御香)」、沖縄線香のヒラウコー(平御香)ではタヒラの2枚分でした。
続く子どもや孫など、家族や親族がそれぞれ供えるお線香の本数は「サンブンウコー(三本御香)」、日本線香で3本分、沖縄線香のヒラウコー(平御香)では半ヒラの半分です。
けれども現代の住まいは、分譲マンションやアパートも多く、かつてのような沖縄仏壇は大きすぎて暮らしに合わなくなっています。
仏壇とともに沖縄のウコール(香炉)も小さくなり、お線香も少ない本数を供える家庭が増えました。
現代のお線香の本数
◇本来の本数の1/3本分のお線香を供えます
現代の沖縄では、天の神を表す「ウティン(御天)」・地の神を表す「ジーチ(土地)」・海の神を表す「リュウグ(竜宮)」、3柱の神様を三位一体として1柱と捉え、本来のお線香の1/3本分を供える考え方が増えました。
例えば日本線香12本分を表す「ジュウニフンウコー(十二本御香)」であれば、日本線香を4本分、「ジュウゴフンウコー(十五本御香)」であれば、日本線香5本分を供えます。
そのため現代のお線香の本数で供えるとすると、日本線香6本分が1枚板になっている沖縄線香ヒラウコー(平御香)では、折り分け方が難しくなるため、日本線香が基本です。
日本線香には香りがある
◇もともと沖縄でも、大切な拝みに日本線香を供えてきました
「沖縄の旧暦行事で日本線香を供えるなんて!」と考える人もいるかもしれません。
けれどももともと、沖縄でも大切なウグァン(御願)の時には、香料が入っている日本線香を供えてきました。
かつての沖縄では香木を練りこんだお線香は高級な品だったためです。
一方、沖縄線香ヒラウコー(平御香)はでんぷんなどでできていて、安価に入手できますが香りはありません。
沖縄で日本線香は「カバシウコー(香り御香)」と呼ばれてきたほどです。
そのため、比較的手に入りやすくなった現代では、「日本線香を供えても良い」と考える家庭も増えています。
小さなウコール(香炉)は割れやすい
◇小さなウコール(香炉)に12本・15本のお線香は負荷が高いです
また現代では、昔のような大きな沖縄仏壇を置く家庭も少なくなりました。
分譲マンションやアパート、モダンな戸建て住宅にもマッチした、おしゃれでコンパクト仏壇や家具調仏壇へと、交換する家庭が増えているためです。
リビングの隅に祀ることができるコンパクトな棚上仏壇などは、ウコール(香炉)も小さいものを用意しますが、そこに12本・15本と大量のお線香を供えウコール(香炉)が割れたケースも出てきました。
沖縄で秋のお彼岸③外拝み(ソトウガミ)
◇沖縄では友引・赤口、参拝者の干支日を避けます
沖縄で秋のお彼岸に外拝み(ソトウガミ)をする場合、厄日を避けて家族のみでお墓参りに行く家庭が多いです。
沖縄で厄日は参拝者と同じ干支日、寅年であれば寅の日が厄年になります。
また全国的な風習に倣い、暦を占う暦注の六曜を意識する人も多いですよね。
六曜においてお墓参りが避けられてきた暦は、特に友を引く「友引」と、赤い血をイメージして怪我や事故のリスクを避けた「赤口」です。
ただ仏滅に関しては、仏事は良いとしてお墓参りに行く家庭もあるでしょう。
特にお彼岸は彼岸(あの世)とつながるとされるため、「あの世の時間」と言われる夕刻~夜間のお墓参りは避けられます。
2024年秋のお彼岸期間の六曜や干支日、それぞれの細かな注意事項は、下記コラムに詳しく解説していますので、コチラも併せて参考にしてください。
・沖縄でも秋のお彼岸にはお墓参りに行くの?お墓参りに避ける暦や時間帯、お参りのタブー
納骨堂はいつでも参拝できる
◇屋内施設の納骨堂はいつでも参拝できます
また近年増えた屋内のご遺骨を安置する屋内施設の納骨堂や、屋内に先祖代々のご遺骨を納めた室内墓所では、施設の開館時間であればいつでも参拝できるスタイルです。
開館時間は常時、明るい照明が調整され、屋内も常に清潔に保たれて警備員が常時付いている施設が多いため、怪我や転倒のリスクもなく気も清浄に保たれます。
ただし屋内施設ゆえに、電子線香だったり、お供え物を禁止しているなど、施設それぞれの規約を設けていますので、これに倣うことも大切です。
納骨堂や屋内施設の参拝マナーについては、下記コラムも併せてご参照ください。
・納骨堂にお参りに行くマナーとは?お参りに行く時間や頻度、お供え物は?友人でもいい?
・やすらぎの室内供養「花さくら」
自宅墓は御仏前供養
◇自宅墓はイエウガミ(家拝み)と同じ手順です
最近の沖縄では、代々続く門中墓や先祖代々墓など、既存のお墓を墓じまいして、新しい納骨場所には納骨せずに、自宅に複数のご遺骨を安置する「自宅墓」も増えました。
ただ自宅墓も、ご遺骨は粉骨されて本型の箱に整えられて仏壇下に納められているなど、一見する限りでは、一般的な仏壇であることがほとんどです。
そのため基本的にお墓参りの作法ではなく、御仏前で行う先祖供養としてイエウガミ(家拝み)と同じ手順で、秋のお彼岸を進めます。
喪中で迎える沖縄のお彼岸は?
◇沖縄で喪中のお彼岸は、弔事として行います
忌中や喪中ではない時期であれば、沖縄で秋のお彼岸は「祖先祭」でお祭りですから、清明祭(シーミー)と同じく、お祝い事である慶事です。
けれども家族が亡くなって1年を満たない喪中の場合、弔事として先祖供養を進めます。
喪中は全国的に、故人が亡くなって1年間を指しますが、沖縄の一部地域では3年間を喪中とする家もあります。
忌中(きちゅう)のお彼岸
◇忌中に迎えたお彼岸は行いません
「忌中(きちゅう)」とは故人が亡くなってシジュウクンチ(四十九日)の法要「スーコー(焼香)」までの四十九日間です。
この四十九日の間、故人はまだ成仏していない、魂が彷徨う期間とされ、故人の魂はお墓と家を行ったり来たりするとも言われます。
そして家族も、この期間は「死の穢れ(けがれ)」をまとうため、外出やお祝いの席を控える、贈り物などを贈らないとされてきました。
このようなことから、家族が亡くなって四十九日までの忌中に迎えたお彼岸は、基本的に先祖供養行事を行いません。
家族のみで静かにご先祖様へ手を合わせて拝みましょう。
喪中(もちゅう)のお彼岸
◇喪中に迎えたお彼岸は、弔事として行います
「喪中(もちゅう)」は故人が亡くなってイヌイ(一年忌・一周忌)までの1年間を指し、喪中の家族は故人を偲び、喪に服す期間です。
忌中を過ぎて喪中に迎えるお彼岸の場合、先祖供養行事は行いますが、お祝い事の慶事ではなく、弔事として進めます。
そのため特に注意をしたいのはお供え物です。
おもちはあんこの入っていない白もち、おかずはお祝い事ではない、返し昆布などのおかずを詰めます。
ちなみに喪中に迎える清明祭(シーミー)も、慶事なので控える行事です。
後生(あの世)のお正月である十六日祭(ジュールクニチー)は弔事なので、清明祭(シーミー)に代わり、十六日祭(ジュールクニチー)にお墓参りを行います。
・【沖縄の旧盆2024】お供え物の重箱料理とは?慶事・弔事で違う作り方・並べ方を解説
沖縄で秋のお彼岸に実家に行けない場合
◇行けない代わりに供物を贈ります
沖縄で秋のお彼岸に、先祖代々位牌のトートーメーを祀るムチスク(宗家)、実家などに行けない場合には、できるだけ早くに行けない旨を伝えるとともに、気持ちとして供物を届けると気持ちも伝わり丁寧です。
先祖供養を行う家族は供物を受け取ると、御仏前に供物を供えながらご先祖様へ報告し、代理でお線香を供え、ウチカビ(打ち紙)も焚いてくれるでしょう。
個別包装のお菓子などの他、沖縄で秋のお彼岸は先祖供養の行事なので、故人への贈り物としてお線香を送るのも良いかもしれません。
沖縄で秋のお彼岸に供物が届いたら
◇代理でお線香をあげて、ご先祖様へご報告します
沖縄で秋のお彼岸の時期に供物をいただいたら、ありがたく受け取って御仏前に供えましょう。
御仏前に供物を供える時には「○○家の○○からです。」とご先祖様へ伝え、代理でお線香「サンブンウコー(三本御香)」、もしくは日本線香1本を供えます。
そして供物の上にウチカビ(打ち紙)3枚を置き、最後にウチカビ(打ち紙)を焚く儀式の際に、供物を贈ってくださった家族や親族の代わりに焚きましょう。
位牌分けをしてイエウガミ(家拝み)
◇位牌分けにより、帰省できなくでも先祖供養ができます
「位牌分け」とは、位牌を複数の場所で祀ることを指し、沖縄だけではなく全国的にも位牌分けの風習がある地域も多いです。
沖縄の場合は東京に移住をすると、家族の航空券など費用もかさみ、そう頻繁に帰省ができない実情もありますが、身近な両親や配偶者などは供養がしたいですよね。
そこで位牌分けにより自宅に小さなステージ(祭壇)を設けて位牌を祀り、毎年お彼岸や旧盆に合わせて、それぞれが先祖供養を行う家族も増えています。
仏壇も大きなものではなく、手元供養で扱うほどの数千円~数万円の簡易的なステージ(祭壇)に祀ったり、ステージ(祭壇)はなく、思い出のコースターなどに祀る事例もありました。
・沖縄でミニ仏壇が広がるのはなぜ?意外な5つのニーズとは
まとめ:沖縄のお彼岸は家拝み(イエウガミ)が基本です
全国的にお彼岸は、彼岸(あの世)と此岸(この世)が最も近づく日として、お墓参り行事を行いますよね。
けれども現代、沖縄のお彼岸は、秋のお彼岸に限ってお墓参りに行く「ソトウガミ(外拝み)」を行う地域が一部あるものの、基本的に御仏前で先祖供養を行う「イエウガミ(家拝み)」が一般的です。
また人が亡くなると、7代目にして家を守護する祖霊神「カミ(神)」になるとされる、沖縄独自の祖霊信仰があります。
そのため沖縄にとって秋のお彼岸は、本州の故人を供養する意味とは異なる、子々孫々に脈々と続く血筋や、それにより「今ここにいる」ことへの感謝を捧げる御願が多いです。
・沖縄のお彼岸…祖霊への感謝を捧げる
けれども沖縄のお彼岸であっても、大切な家族である故人を供養する役割でも全く問題はないので、それぞれの家がその時々で必要な拝みや供養を捧げると良いでしょう。
2024年秋のお彼岸日程や過ごし方など、詳細は下記コラムをご参照ください。
・2024年沖縄の秋のお彼岸は9月19日~9月25日!秋のお彼岸は参拝するって本当?