家族が亡くなったら昔の沖縄のお葬式では、当日かその翌日には通夜、翌々日には葬儀・告別式を行います。
ご遺族としては哀しむ間もないタイトなスケジュールのなか、故人の遺志も汲み取りながら、ご遺族も後々まで満足できる、温かな沖縄のお葬式を執り行いたいですよね。
今回は、現代沖縄のお葬式で増えた、新しいご遺族のさまざまな選択肢について、「【家族が亡くなったら】沖縄のお葬式で、昔と違う10の選択肢|その1」に続き、後半の5項目をお伝えします。
昔と違う、現代沖縄のお葬式10の選択肢
ひと昔前の沖縄のお葬式は、家族が亡くなったら迷う間もなく、新聞の訃報欄(お悔み欄)に訃報の知らせを掲載し、広く参列者を受け入れてきました。
そのため規模の大きな一般葬を執り行ってきましたが、近年沖縄のお葬式では、故人の遺志やご遺族の「形式ではなく心の葬送」の希望から、より自由な選択肢が広がっています。
(1)ご遺体の安置場所
(2)通夜や葬儀のスケジュール
(3)ご遺体を火葬するタイミング
(4)訃報を知らせる範囲
(5)御香典の有無
(6)会食の有無
(7)ナンカスーコーの繰り上げ
(8)納骨式の有無(日程)
(9)御香典返しの有無
(10)初盆の行い方
(1)~(5)に関しては、冒頭でお伝えしたように「【家族が亡くなったら】沖縄のお葬式で、昔と違う10の選択肢|その1」でお伝えしていますが、ここでは(6)~(10)までを詳しく解説します。
(6)会食の有無
参列者が多い昔ながらの沖縄のお葬式では、参列者は葬儀会場に到着すると、列をなしてお焼香済ませて帰るスタイルが多くあります。
そのため沖縄のお葬式では、ご遺族も広く通夜振る舞いや精進落としなどの、会食[お斎(おとき)]の場を設けることはありませんでした。
・昔の沖縄のお葬式…一般参列者へ会食の場は設けない
・現代の沖縄のお葬式…人数によって柔軟に判断する
けれども現代沖縄のお葬式では、会食の場を用意する喪主も増えています。
①現代沖縄のお葬式で会食が増えた理由
現代沖縄のお葬式でも、必ずしも会食(お斎)の場をセッティングする訳ではありませんが、下記のような理由から、会食の場を設ける喪主が増えています。
・本州の慣習に倣って
・参列者の人数が限定している
近年沖縄に増えたお葬式スタイル「家族葬」などでは、参列者が約10人以下~50人以下と限定しているものも増え、人数も明瞭になったため、喪主も振る舞いやすくなりました。
②コロナ禍の影響
前項でお伝えしたように、本州の慣習に倣い通夜や葬儀の後にお食事を振る舞う喪主が増えた背景があります。
けれども2020年のコロナ襲来以降、そもそも本州において、会葬後のお食事の場を控えるようになりました。
・一般参列者への会食の場は控える
・仕出し弁当をお配りする
現代では、以上2つの選択肢が多いでしょう。
また席を用意した限定した人々の数だけ、仕出し弁当を準備する喪主も多くいます。
仕出し弁当を用意する場合、費用は約500円/1人ほどが目安です。
(7)ナンカスーコーの繰り上げ
その昔の沖縄ではお葬式を済ませた後、故人が亡くなった日から数えて七日目に初七日(ハチナンカ)の焼香(スーコー)を行ってきました。
焼香(スーコー)とは本州の法要を差しますが、特に沖縄では、初七日(ハチナンカ)から四十九日まで、七日毎に行う焼香(スーコー)「ナンカスーコー(七日焼香)」を行う風習があります。
・昔の沖縄のお葬式…四十九日まで七日毎に焼香(スーコー)を行う
・現代の沖縄のお葬式…ナンカスーコーを葬儀の日にまとめる
けれども現代沖縄のお葬式では、四十九日まで6度のナンカスーコー(週忌焼香)をまとめて行う「繰り上げナンカスーコー」を選択する喪主が増えました。
・沖縄のナンカスーコー☆葬儀から四十九日までのスーコー
繰り上げと繰り込み
また現代沖縄ではお葬式当日に、四十九日までのナンカスーコーをまとめて行う選択肢のなかでも、下記2種類の方法があります。
①繰り上げナンカスーコー
②繰り込みナンカスーコー
これは葬儀当日、どのタイミングでナンカスーコーを行うかによって変わるでしょう。
・【沖縄のスーコー(焼香)】繰り上げスーコーや日程調整、全国と違う5つの注意点
①繰り上げナンカスーコー
沖縄のお葬式で「繰り上げナンカスーコー」は、火葬場で火葬を済ませてから葬儀会場へ戻り、焼骨したご遺骨を前に行うナンカスーコーです。
・葬儀・告別式(葬儀会場)
・出棺(葬儀会場)
・火葬(火葬場)
・繰り上げナンカスーコー(葬儀会場)
・お斎(おとき)/精進落とし※沖縄ではお斎/精進落としがない場合も多いでしょう。
このように繰り上げナンカスーコーは火葬を済ませたご遺骨を前に行う焼香(スーコー)です。
本来はこのように、火葬まで済ませてからナンカスーコーを行うところですが、繰り上げナンカスーコーの場合、ご遺族や親族は一度火葬場へ移動してから、また葬儀会場まで戻らなければなりません。
火葬を済ませて葬儀を迎える
最近では、そもそも葬儀の前に火葬を済ませる流れも増えています。
この場合、下記のような流れです。
・葬儀・告別式(葬儀会場)
・繰り上げナンカスーコー(葬儀会場)
・お斎/精進落とし
火葬を済ませてしまうとご遺体の搬送に伴う搬送経路の確保や、(通夜や葬儀まで日数が掛かる場合の)ご遺体の安置などへの配慮が必要ありません。
繰り上げナンカスーコーにおいても、火葬場と葬儀会場を行ったり来たりする必要がないため、喪主の負担も軽減されます。
②繰り込みナンカスーコー
一方、沖縄のお葬式で「繰り込みナンカスーコー」は、火葬場へ移動する前に済ませるスーコー(焼香)です。
・葬儀・告別式(葬儀会場)
・繰り込みナンカスーコー(葬儀会場)
・出棺(葬儀会場)
・火葬(火葬場)
・精進落とし(火葬場で火葬をしている間)
葬儀前に家族で火葬を済ませていない場合、繰り上げナンカスーコーでは、火葬場と葬儀会場を往復しなければなりません。
けれども繰り込みナンカスーコーなら、葬儀会場で全て済ませてしまうため、移動の手間がかからない点がメリットです。
(8)納骨式の有無(日程)
昔の沖縄では、お葬式の後にそのまま納骨式を行いました。
けれども現代の沖縄では、お葬式の後に納骨式を行わない喪主も多いです。
・昔の沖縄のお葬式…葬儀当日に納骨式を行う
・現代の沖縄のお葬式…葬儀当日は納骨しない
昔の沖縄で、お葬式の後に納骨式が行われたのには、風葬の歴史も影響しています。
「風葬」とは、ご遺体をそのまま放置する葬送方法で、沖縄では時が経って再びお墓を開け、骨になったご遺体を洗いました(洗骨)。
火葬をしないため、ご遺骨を自宅に連れ帰ることもできず、昔の沖縄ではお葬式の後、そのままご遺体を納骨したのです。
現代、沖縄で納骨の選択肢
また父方血族による「門中墓」の文化がある沖縄では、お葬式の後すぐに納骨できるお墓があったことも、当日納骨式まで行う要因のひとつでしょう。
けれども最近の沖縄では、お葬式当日に納骨できるようなお墓が、そもそも用意できないケースも少なくありません。
・故人本人が門中墓に入ることを嫌がった
・継承者がいないため、すでに墓じまいされた
・分家として新しいお墓を建てなければならない
などなど、それぞれに事情はありますが、そもそも納骨できないケースもあります。
・【沖縄のお墓】沖縄で増える「入るお墓がない!」問題、5つの解決方法とは
現代沖縄で、ご遺骨の選択肢
このような事情から、沖縄のお葬式の場合、納骨式を行わない喪主のなかでもいくつかの選択肢に分かれる傾向にあります。
・本州に倣い、四十九日を目安に納骨する
・新しいお墓を建ててから納骨する
・グリーフケアとしてしばらく仏壇に安置する
・手元供養の選択
・納骨堂に収蔵する
・樹木葬など、自然葬の選択
…などなどです。
現代の沖縄では、一般的にはお葬式当日の納骨式は避けるものの、本州の慣習に倣って、四十九日を目安に別日の納骨式を検討するご遺族が多いでしょう。
けれどもお墓がない場合は、そもそもお墓を建てない、必然的に納骨式も行わない選択肢も見受けるようになりました。
・【沖縄の納骨堂】お墓を持たない「納骨堂」とは。メリットと5つの注意点
(9)御香典返しの有無
また現代沖縄のお葬式では、御香典や御香典返しの判断も迷う喪主が多いです。
もともと沖縄の御香典は、「不幸が重ならない」ように、あまり多くのお札を重ねないとされ、その分、葬儀当日の返礼品でお礼の品も充分でした。
けれども最近では、本州の風習に倣い約5千円~1万円以上の御香典を包む参列者も増え、それに合わせて沖縄でも、四十九日以降を目安に、改めて御香典返しを送る判断も増えています。
・昔の沖縄のお葬式…葬儀当日の御香典返し
・現代の沖縄のお葬式…喪主が判断する
一方、現代は全国的にご遺族の負担を減らすため、葬儀当日の返礼品を御香典返しとする、新しい葬儀スタイルも増えました。
そのため沖縄のお葬式では、喪主の判断により葬儀当日の御香典返しか、改めて四十九日以降に御香典返しを送るか、を決める傾向です。
・【沖縄の葬儀マナー】参列者が御香典を包む金額、本州式と沖縄式の判断目安
(10)初盆の行い方
最後の沖縄のお葬式と言うよりは、その後の判断ですが、最近の沖縄では「初盆をどのように行うか」悩むご遺族が増えました。
…と言うのも、沖縄の初盆の考え方と、本州の初盆の考え方が正反対だからです。
最近では那覇市都心部を中心に、本州式の初盆を迎えるご遺族も増えています。
・沖縄の初盆(みーぼん)…家族のみで静かに行う
・本州の初盆…通常よりも広く参列者が集まり、大きな規模で行う
…と言うのも、沖縄では初盆(はつぼん)に当たり、「死は穢れ(けがれ)」としてご遺族は、親族の訪問も控えてもらい、静かに行う慣習があります。
けれども本州で初盆は追善供養の意味合いも大きく、僧侶に読経供養を依頼するためです。
親族にも広くご案内して、法要と同じ流れで行います。
・【沖縄の旧盆2022年】沖縄では初盆はしないの?「お盆」と5つの違い
最後に
以上が、家族が亡くなったら喪主が理解しておきたい、昔と今の沖縄のお葬式10の違いを、前回「【家族が亡くなったら】沖縄のお葬式で、昔と違う10の選択肢|その1」のコラムと併せてお伝えしました。
本文中で御香典返しをどうするか…、当日返しか改めて送るかの判断についてお伝えしましたが、当日の御香典返しを選ぶのであれば、礼状に一筆添えておくと安心です。
「なお、御香典のお礼は本日の返礼品をもって代えさせていただきます。」
など、ひと言添えておくと良いでしょう。
また「繰り上げナンカスーコー」についても、葬儀の御案内ハガキにひと言添えておくことで、参列者が繰り上げナンカスーコーの分として、多めに御香典を包むなどの対応ができます。
・【沖縄の葬儀】御香典返しを改めて贈る人は?失礼にならない5つのマナー
まとめ
現代沖縄の新しい葬儀、10の選択肢とは|その2
<その1>
(1)ご遺体の安置場所
(2)通夜や葬儀のスケジュール
(3)ご遺体を火葬するタイミング
(4)訃報を知らせる範囲
(5)御香典の有無———-
<その2>
(6)会食の有無
(7)ナンカスーコーの繰り上げ
(8)納骨式の有無(日程)
(9)御香典返しの有無
(10)初盆の行い方